楽の家に向かう一行。
道中、楽は考えていた。
「俺が好きなのは中学のときからずっと小野寺・・・だった。それは今も変わらない。
・・・だけど、最近はふとしたときに小野寺のことよりも橘のことを考えるようになってる。少し前までだったら、今日みたいに頼まれてもなんだかんだ言って断ってたかもしれない。
・・・俺は今、どっちのことが・・・?
・・・いや、今はあまりぐるぐる考えるのはやめよう。集も言ってたっけな。」
一人悩んでいる楽。
ふと両脇を見ると、集とるりが楽の顔を凝視している。
「!?な、なんだよ二人して!?」
「ふふーん、悩んでるね悩んでるねー♪」
「・・・別に。ただやらしい顔だなーと思って」
「なんで突然けなされたの俺!?」
他方、他のメンバーもそれぞれ楽しそうに話しつつも考えていた。
「あんのエロもやし・・・最近どう考えても万里花に鼻の下伸ばしてるわよね・・・全く・・・!
・・・もやしは、万里花のこと、それにあたしのことはどう思ってるのかな・・・?」
「一条楽の家・・・い、いかんいかん妄想が・・・
・・・(いかがわしい妄想中)はっ!いかんいかーーーん!!私はなんてことを・・・!」
「最近一条くんとあまり話せてなかったしな・・・いっぱいお話できたらいいな・・・」
人それぞれ。
そして楽の家に着いた。
「坊っちゃん、おかえりなさいやせー!」
「おう。ただいま、竜。今日は友達と勉強会することになったから。」
「おお!」
メンバーを一通り見る竜。
「・・・さすが坊っちゃん、この歳で既にかわい子ちゃんをはべらせるようになったんですね!あっしは鼻が高いです!」
ぶほっっ
「ば、ばか言ってんじゃねえ!(殺される・・・!)部屋に行くから、邪魔はしないでくれよ。」
「へい!」
楽の部屋へ向かう一行。
「後で差し入れを持っていかにゃなー!何が良いかな・・・お、これなんかいいかもな!」
差し入れるものを見繕ってご満悦の竜。後の大惨事に繋がる。
「さて、じゃあ早速勉強するかー」
勉強会を始める一行。
「ほら、小咲、一条くんの隣を陣取るのよ・・・」
「む、むりだよ~るりちゃん・・・」
「楽様~ここがわかりませんわ~♪」
「開始30秒で!?あと胸をひっつけるなー!(今やられると本当に顔に出ちまう・・・!)」
「お~い、楽。顔がゆるっゆるのでろっでろだぞ~。」
「うおえ!!?」
「ダーリン・・・?」
「おい・・・一条楽・・・?」
「ち、ちがうちがう!!ちがうんだー!!」
まるで勉強にならない。
しかし15分もすると落ち着き、お互い真面目に教えあうようになっていた。橘がしばしば楽に胸を押し付けては楽が千棘と鶫にぼこぼこにされるという流れだけは何度も繰り返された。
1時間半も経った頃。
「ふー。だいぶ疲れたわね。ダーリン、休憩しない?」
「ああ、そうだな。じゃあちょっくらジュースでも持って・・・」
楽が立ち上がろうとしたとき、竜がお盆に飲み物とコップを乗せて持ってきた。
「坊っちゃんとお友達のみなさん、差し入れに参りましたー!まあどうぞどうぞ!」
「おー、竜。ありがとな!」
「あ、おいしい!これは何なんですか?」
「ほんとだ。すごくフルーティー♪」
みんなおいしそうに飲んでいる。
「あー、うめえなこれ。竜、こんなのうちに置いてたんだな。」
「へっへっへ。そうなんすよ坊っちゃん。さあさ、まだたくさんありますから、みなさん気兼ねなくお飲みくだせえ!」
そう言うと部屋を出た。
「いやーありがたいわ。じゃ、ちょっとこれ飲みながら休憩するか」
「はーい!そうしましょう♪」
休憩中、雑談の中で集が話題を切り出した。
「そういやさー、前新年会で女の子がウイスキーボンボンで酔っ払ったときがあったよね~。」
「・・・?そうだったっけ?」
ぎくっ
女性陣が固まる。
「あれ?・・・あ、そうか、楽は覚えてないんだっけ?いやー大変だったよ!」
ぎくぎくっ
女性陣が更に固まる。俯いたまま、鶫がそっと銃を出す。
「そうだったっけか・・・?」
「(あれ、誠士郎ちゃん俺を口封じするつもり・・・?)そうだよ、桐崎さんなんてね」
「鶫」
「はい」
ジャキッ
「はい、ギブ!ギブ!俺はまだ死にたくありません!」
集に銃口を向ける鶫。集は即座に両手を上げる。周りは全員俯いたままである。
「・・・みんな何かしたのかな・・・?」
知らぬが仏である。
しかしこの期に及んで集はまだ煽りにかかる。
「ま、まあそのときのことは置いておくけど。人が酔ったときってさ、その人が普段我慢したり抑圧してることを言ったりやっちゃったりするらしいよ。理性が弱くなるんだろうね~。」
「へー、そうなのか。」
ぼしゅっぼしゅっぼしゅっぼしゅっ
橘、千棘、鶫、小野寺から湯気が噴き上がる。各々がやらかしたことを思い返しているようだ。
るりだけは「私は・・・普段もっと喋りたがってるということ・・・?」などと考えていた。
そんな話をしつつ、20分程休憩していた。
「さて、そんじゃあそろそろ再開するか・・・
・・・ん、さっきからなんでこんな静かなんだ・・・?」
ふと楽が見渡すと、周りがみな顔を赤らめぽわんとした表情をしている。
「・・・あれ・・・なんかこの光景、前にも見た気が・・・」
楽は既視感に襲われていた。ちなみにあのときよりも状況は悪化しているということに、わずか数分後に気付くことになる。
「・・・まさか・・・!」
先程までみんなで飲んでいた飲み物の瓶を手に取る楽。
よく文字を読んでみると
「とってもフルーティーな、日本酒☆」
の文字が。
吐血する楽。それと同時に以前の記憶もうっすら蘇ってきた。
「・・・これは・・・前のウイスキーボンボンのときより遥かにまずい事態なのでは・・・?」
楽が頭を抱えていると、
「ね~、楽~」
「おい・・・一条楽・・・」
千棘と鶫が二人がかりで楽を押し倒してきた。何故か妙に手慣れている。
「うおおお!!??お、おい急になにすんだおまえら・・・」
楽が必死に抵抗していると、
「えへへ~・・・一条くーん・・・前の続きしよ~」
小野寺が一条の服を脱がそうと覆いかぶさってきた。こちらも何故か手慣れている。
「うおおお小野寺ああああ!!??
お、おい、集、助け・・・!」
楽が助けを求めようと集を探すと、部屋の隅でるりと二人で話し込んでいる。
「るりちゃんは好きな人いないのー?」
「・・・いないわよ・・・。そういうあなたこそ、そういう人はいないの?」
「んー?今は~・・・そうだな、気になる人ならいるかな・・・」
「(・・・!)ど、どんな人なの・・・?(な、なんで聞いちゃってるの私・・・!?)」
「おや!?おやおや気になる~!?」
「・・・う・・・」
少し俯き、すねるるり。
「(かわいいなあ、もう♪)そうだな~、ヒントをあげよう!
まずはメガネで~・・・ポニーテールで~・・・背は低めかな。それでキツいところもあるけど、なんだかんだすごく優しくて良い子。あとメガネを外すとすごい綺麗でどきっとするんだよね~。」
「え・・・そ、それって・・・」
「・・・。」
何も言わず笑顔でるりを見つめる集。
「・・・!!」
ぼしゅううううううっっっ
るりの顔から、今まで見たことが無いほどの湯気が吹き上がる。
大学生の飲み会の隅っこで行われているような会話だ。
「(えええ良い感じになってるううう!?おめでとう!?いや、今はそれどころじゃ・・・)ってうおお、小野寺ああパンツに手をかけないでくれえええ!!」
千棘と鶫は楽の両腕を抑えたままキスを迫り、小野寺は楽のパンツをずり下ろしかけている。3人とも顔は恍惚としたままだ。
もはや貞操の危機である。
「これは・・・い、いかーーーん!!!」
力を振り絞って3人から逃げ出す楽。良かったような残念なような、なんとも言えない気持ちを抱きつつ隣の空き部屋へ逃げ込む。
なんとか逃げ切り、楽は一息ついていた。壁に背中をつけへたりこむ。
「あぶねえあぶねえ・・・なんで3人ともあんな・・・
『人が酔ったときってさ、その人が普段我慢したり抑圧してることを言ったりやっちゃったりするらしいよ。理性が弱くなるんだろうね~』
・・・マジか・・・。」
集の言葉を思い出し、顔を赤らめる楽。
「あれが3人の・・・抑圧してること・・・?」
妄想が溢れ出しかけていたとき、先程まで見かけなかった橘が声をかけてきた。
「楽様・・・♪どうしましたの、こんなところにお一人で?」
「お、おう橘。いや・・・ちょっとな!橘こそどうしたんだ?」
「私はお手洗いに行ってまして・・・」
「そうだったのか。
(よかった~橘は今回は無事そうだ・・・な・・・)」
ふわっ
楽が安心した矢先、橘が抱き付いたきた。
「楽様・・・」
するっするっするるっ
いつものハグと違い、右手は楽の後頭部に、左手は楽の服の隙間に手を入れ腰に直接、そして脚は女の子座りをして楽の腰に密着する。
「(うおおおおおおお!!!???!!??まてまてまてまてこれは・・・本当に・・・!!)
お、おい橘!これはいくらなんでも・・・」
「・・・やだ」
「・・・え?」
「離れたくなか・・・」
そう言うと、切なげな表情で楽を見つめる橘。
あまりに切なく、そして真剣な眼差しに、楽は何も動けなくなる。
「・・・なんで・・・なんでおまえは、そんなにかわいいんだよ・・・」
橘と小野寺それぞれへの想いで揺れていた楽だったが、今後どうしようかと言った細かいことを考える余裕は吹き飛んだ。
目の前にいる橘が、ただただ、愛おしくなった。
そして、そっと橘を抱きしめ返す楽。
橘の顔が幸せに満ちる。
「らっくん、嬉しか・・・」
抱きしめる力を優しく強める橘。
「・・・真ん中はまだ少し早いけん、今はこっちで・・・」
そう言うと、橘は楽の右頬に口付けをした。
「・・・!!」
固まる楽。
「・・・えへへ・・・♪・・・もっと・・・」
それだけに留まらず、続けて左頬にも口付けをする。
そしてそのまま首筋にも口付けをし、舌を這わせ始めた。
「・・・!!!!・・・う・・・あ・・・」
未知の感覚に完全になすがままの楽。
「うふふ・・・♪・・・あら・・・腰の方がなにやら熱いですわ・・・?♪」
「・・・!!」
橘が左手をつつつ・・・と楽の身体の下部へ這わせ始めたそのとき。
ばああああんっっっ
「いた~~~・・・ダーリン・・・♪」
千棘に部屋の襖をものすごい勢いで開けた。後ろから鶫と小野寺が顔を出す。
「・・・マジかよ・・・」
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結局その後、夜中まで逃げ回っているうちに3人は寝てしまい、橘と居た部屋に戻ると橘も寝てしまっていた。集とるりはいつの間にか帰っていた。
「・・・まったく、なんつう夜だよ・・・。
・・・あそこで千棘が入ってこなかったら、俺はどうしてたんだろう・・・」
橘との時間を思い出し、どうしようもないくらいに心臓がばくばくするのを感じながら、その日を終えた。
「・・・つうか集と宮本・・・いつの間に帰ってたんだ・・・」
続く。
第8話まで書いているうちに、集とるりの組み合わせも段々書きたくなりまして、一部ではありますが書いてみました。好きですあの2人。
そしてマリーは・・・いよいよもって妄想が爆発しまして、段々と際どい表現を書き始めました。今後こういう描写、あるいはもっと踏み入った描写をすることがあるかと思います。これどこからがR-15なんでしょうか・・・適宜指定の方もして行こうと思います。
新年が明けて最初にしたことが小説の投稿と言う、ほんの一週間前までなら想像もつかない展開になっております。
次話以降は適宜平和などたばたも入れつつ行きたいと思います。ああマリー。
読んで頂きありがとうございました(^^)!