楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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集とるりのお話の後編です。


集とるり。第65話「アイタイ」

放課後を集と屋上で過ごした後、何事も無く帰宅したるり。

 

シャワーも浴びて、明日提出の数学の課題を解いていた。

 

 

「…ふう、問3は終わり。次は問4…と」

順調に解き進めるるり。

「次の定積分の値を求めなさい…か。あら、結構式がややこしいわね…」

ぽそぽそと独り言を言いながら、シャーペンを顎でかちかちと押す。

「…。」

ふと、その細い指でそっと唇に触れた。

まだ、先程の感触をはっきりと覚えていた。

「…少し休憩しないとね」

自分に言い聞かせるようにして、一度教科書を閉じる。

そして、なんとはなしに携帯を手に取り、LINEで集とのトーク画面を開く。

連絡を取りたい。

しかし、いつも連絡をよこすのは集からで、彼女は集がフった話題に対して乗っかれば自然と会話が成り立っていた。

そんな訳で自分から連絡することはあまり無かったため、何を言えば良いか分からなかった。

…声が、聞きたい。

恥ずかしすぎて、集に言わないどころか独り言としてぽそりと呟くことすらせず、更に言えば心の中で思うことさえしないようにしていた。

照れ屋もここまで来ると、筋金入りである。

 

「…あ」

不意に、何かを閃いた。

「…も、問題の答え合わせをするだけ、答え合わせをするだけ…」

集への理由付け兼、自分への理由付けであった。

しかしそれでも、るりにとっては大きな前進である。

ほんの少しばかりの笑顔を浮かべて、通話ボタンを押した。

通常であれば、コールが2回3回と鳴る度に心臓を高鳴らせる展開がやって来るのであろうが…

「プルルルはいもしもーし!るりちゃんじゃーん!♪」

「…早すぎて情緒もへったくれも無いわね…」

自分からかけておいて難だが、非常に難だが、すぐには出ないで欲しいと思ってしまうるりであった。

「ん?どうしたの?まあいいか♪それにしてもどうしたの?」

「そ、それなんだけど、明日提出の数学の課題の問」

「もしかして、声が聞きたくなった?♪」

「なっ…!?」

言葉を遮られた上に(集は意図していないが)、ものの見事に意図を言い当てられて、思わず言葉に詰まるるり。

「ば、ば、バカ言ってんじゃないわよ!そんな訳…!!」

冷静に切り返したかったのだが、自然と声が思い切り上ずってしまう。

「そうなの?…じゃあ、会いたくなった?」

「な、え…それは…」

本音を言えば、今すぐに集に会いに行きたかった。夜を越えて学校で会うまで待つなんて、耐えられる気がしなかった。

それほど、放課後の屋上での出来事はるりの脳裏に強烈に焼き付いていた。

しかし、そんな本音をさらりと言えるような性格ではない。

るりは、ただただ言葉に詰まった。

「俺は…会いたいな。」

「!」

集が、穏やかな口調で本音をぶつける。

「るりちゃんは…?」

先に本音を言われ、真剣に聞かれる。

照れてる場合では、無かった。

「わ、私は…あ、会いたい、会いたいわ…。」

絞り出すように言葉を紡ぐ。

…るりちゃん、顔が真っ赤になっているんだろうな。…かわいいなあ、もう。

電話越しに、集はそう思った。

「…よし、じゃあ、今から俺、るりちゃんに会いにそっち行くね♪」

集が明るく言った。

「え?でも…」

るりはこの提案には戸惑う。

家が隣近所くらいならばまだ良いのだが、二人の家はそれなりに離れているからだ。

「大丈夫大丈夫!飛ばせば…10分くらいで着くから♪じゃあ、10分後にるりちゃんは家の外に出てて。迎えに行くよ。」

「そんなに頑張ってくれな…いえ、そうね…待ってるわ。」

会えると言う嬉しさが、遠慮の気持ちを上回った。

彼女にとってそれはとても珍しいもので、何とも言えない新鮮な感じがした。

「分かった。じゃ、また後で♪」

「ええ」

そう言って、互いに電話を切った。

 

「…。」

通話終了ボタンを押した後、集はほんの数秒だけ画面を見つめて、先程の会話を思い返す。

「…うあああああるりちゃんかわいすぎるだろおおおおお…!!?」

ベッドに飛び移って、悶えに悶えていた。

しかし今すぐ行かないと、10分後には間に合わない。

「…っと、余韻に浸ってる暇はあんまないよな。さて…」

もっと反芻していたい気持ちを抑えて、出かける支度を始めた。

 

「…。」

一方、るりはるりで通話を終えた後の画面を見つめていた。

妙なタイミングでシンクロする二人である。

しかしるりは、こう言うときにどう悶えれば良いのかが分からず、生まれたての仔鹿のごとくぷるぷると震えていた。ほんの…数十秒ほど。

そして、はっと我に返ると次にとるべき行動を考え出した。

「…急いで着替なくちゃ。…あ、でもまずは歯磨きをしないと…」

少し、慌てる。

ただただ、会える嬉しさが彼女を慌てさせていた。

 

 

10分後。

るりは自宅の前に居た。

「…結局、歯磨きにまるまる10分使っちゃって着替えられなかった…」

よっぽど慌てたのだろうか。

少しばかり、息が切れている。

…歯磨きで息を切らすことも、中々ないだろう。

何とか息を落ち着かせて、周りを見渡す。

「舞子君、まだかしら…」

ぽそっと呟いた次の瞬間。

「やっ♪」

集が、るりの肩にぽんと手を置いた。

「…~~~!!?」

どむっっ

「おふぅっっ!?」

後ろから手で触れられたことに心底驚き、振り向きざまに思い切りエルボーをかましてしまった。鳩尾に。

「あ…ごめんなさい」

「い、いや、急に触った俺が悪いし…げふっ」

お腹を押さえながら屈みこみ、ぷるぷるしている。

るりは申し訳なさそうに背中をさすっていた。あまり意味は無さそうだが。

 

数分後。

「…ふう、ありがとるりちゃん、さすってくれて。ようやくダメージが引いて来たよ」

「いえ、私に感謝しなくても…って言うか犯人は200%私だし…」

200%ってなんだろう、他の事件にも関与してるのかな。

どうでも良いツッコミは、集の心の中で生まれてすぐ消えた。

「ここから歩いてすぐの所に公園あるでしょ?そこに行こう♪」

話を切り替えて、本題を出した。

「わかったわ」

るりがそう答えると、集は自転車を手で押しながら、るりは手ぶらで公園に向かった。

 

 

3分後。

公園に着いた二人。

「ふう。・・・そう言えばるりちゃん、ラフな格好も良いね♪」

ふと集が言った言葉に、るりは顔を赤らめる。

「!…ごめんなさい、他の支度に手間取っちゃって…」

「あ、言い方悪かったね!ごめんごめん、そんなつもり無かったんだよ。…そう言う気の抜けたるりちゃんの姿、これからもっと見ていきたいな。」

「…!」

集の言葉に、頬を赤らめるるり。

「あ、そう言えば、他の支度って何をしてたの?」

「え…あ、その…は、歯磨き…」

るりは集から目を逸らしながら、歯切れ悪く答える。

そんなるりを見て、集はにや~っと笑みを浮かべる。

「…期待、してたんだ?」

「!!ううううるさいっ!!」

図星だったようで、思わず大声を上げる。

「はは、ごめんごめん♪…なんかね、屋上でのことが頭から離れなくてさ。」

「…私もよ」

「そうなんだ…なんか嬉しいな。あそこで終わっちゃったのが、なんか口惜しくて。…もう少し、良い?」

そう言うと、集はるりにすっと顔を近付ける。

「…あ、歯磨き粉の匂い…」

集から、歯磨き粉のミントの匂いがした。

「ああ、ばれた?正直言っちゃうと、るりちゃんが電話して来なかったら俺から掛けるつもりだったんだよ。何かもう気が急いちゃってさ、会えるかどうかも分かんないのに先に猛烈な勢いで歯磨きしちゃってたんだよ」

たはは、と集は笑い、頬をぽりぽりと書く。

「…なによ、仲間じゃないの」

集の言葉を聞いて、るりはふっと笑みをこぼした。

「だね♪…じゃあ、早速…」

「ん…」

二人はそっと唇を重ねた。

 

唇を重ねてから数分。

「…んっ、んむっ、ふむぅっ、んぐ、んぐ…」

集は口の位置を徐々にるりの上に持って行き、るりに自らの唾液を流し込む。

るりは抵抗することなく、集から流し込まれる唾液を受け入れる。

手は、初めからどちらから言うでもなく繋いでいた。

「はむっ、ふむっ、んっ、んっ…」

今度は、るりから集の唇を貪るように責め始めた。

「(…やっば、るりちゃんかわいすぎるだろ…それに、今日はなんか半端なくエロい…)」

集はそんなことを考えていた。

気付くと、集のズボンは膨れ上がり、るりのスカートに押し付けられていた。

「(あ、これ、集君…の…!?やっ、固い…!)」

その存在に気付いたるりは、顔を一層赤らめる。

るりの反応に気付いた集は、自分のモノを更に押し付けるように強く抱き締めた。

「んーっ!?んむっ、ふむっ、んあっ、あぅぅっ、んむぅぅ…」

るりの声が、どんどん艶かしく変化して行く。

 

そして。

「(な、なにこれ…こんなの、私知らな…何かが昇ってきて…)んあぅぅっ!!?」

るりが突然、弾けるように唇を離し、集に抱きついたまま背筋を反り返らせ、びくびくと痙攣した。

空を仰いで虚ろな表情になるるりを見て、集は唖然とする。

「え…るりちゃん、もしかして、今の、イって…?」

集の言葉を聞いて、耳まで真っ赤になるるり。目には涙が浮かんでいる。

「わ、分からないわよ…自分でしててもこんな感覚になったことなかったんだから…あ、いや、その…」

るりは言葉の途中で、「やってしまった」と感じた。

集は嬉しそうに、それはそれは嬉しそうに笑っていたのである。

「…本当に?じゃあ、俺が初めてるりちゃんをイカせたの?」

「…うう…。…そ、そうなるわね…」

俯きがちになりながら、なんとか言葉にした。

「…ああ、もう…!!かわいすぎるよ、るり…!!」

「!!?」

不意の、そして初めての、呼び捨て。

それに動揺したのも束の間、集はるりに覆いかぶさるようにして再び唇を奪う。

なるべく一方的になるように、彼女の脳髄まで犯すように。

「~~~!!!~~~!!!」

もはや、声を上げることさえ叶わなかった。

るりの両腕は、集の左手一本で脇にがっちり固められ、気をつけの姿勢のようになっている。

快感の逃がし場所が全く無いまま、彼に口の中を、そして頭の中を好き放題掻き回される。

「ん~…!!!んんん~~~!!!」

一度絶頂に達して敏感になった身体は、口を塞がれたまま、瞬く間に次の絶頂へと導かれた。

 

「…ぷはっ、ぅあっ、んっ、ふっ、ふっ、ふっ…」

腕と唇が解放されたるりの顔はだらしなくとろけてしまい、身体をぶるぶると震わせ、舌は犬のように出たままであった。

「るり…」

るりが垂れ下げた舌を、集が咥え込み舐り回す。

「んじゅるっ、んぐっ、ふぐっ…」

集の首に腕を絡めるように回し、いつ終わるとも知れないこの時を楽しんだ。

 

二人が唇を重ねてから30分も経った頃。

ようやく、二人は行為をやめた。

「…はっ…はっ…。…!る、るりちゃん…」

「…?なに…?」

惚けた表情のまま、るりが首を傾げる。

集は、頬を赤く染め、るりから目を思い切り背けている。

「あの…いくら慎ましいからって、着けないで来るのもどうかと思われますが…」

「…?…!!」

るりが視線を自分の胸元に移すと、ブラを付けていないためにTシャツが透けてしまい、胸の両突起がはっきりと見えてしまっていた。

「…ぅぅぅ…!!!」

ぎゅぅぅぅぅ…

「ぐええええ…!」

恥ずかしいなんてもんじゃない。

るりは顔を真っ赤にしたまま、小さな唸り声を上げながら、集の首に回していた腕で彼を強烈に締め付けた。

「うぅっ、ご、ごめんって…げほげほっ」

そして、思い切りむせながら謝っている集の耳元に寄り、ぽそりと囁く。

「あ、あなたのせいで…こんな身体になっちゃったのよ…。はしたない…。…せ、責任、とりなさいよ…?」

「!!(うぉああああああああああ!!!!!!)」

これ以上無い程の歓喜とぞくぞくとした興奮とで、集の脳内はお祭り騒ぎになる。

テンションを落ち着けることが出来ないまま、るりの肩を掴んで大声で答えた。

 

「ぜひ!!!責任を取らせて頂きます!!!」

 

「!!そ、そう…。」

集の言葉と表情と語気に、一瞬肩を上げて、顔を真っ赤にして俯くるり。

「~♪」

その後の数分、集はるりに嬉しそうに抱きついていた。

るりはこっそりと、集の腰に手を回して抱きしめ返していた。

 

一段落した後、二人は帰ることにした。

「ほとんど歩けないでしょ?おんぶするよ♪」

「え、でも集君の自転車は…」

「(おお、普通に名前で呼んでくれた…)ああ、気にしないで。明日学校行く前に取りに来るから♪」

「そう…ありがとう。」

そう言ってにこっと微笑むと、るりは集の背中に乗った。

「あ~…るりちゃん軽いなあ。胸に当たる柔らかい感触は…そんなに無いけげぶぅっ!?」

「…背中越しにあなたのこと、抹殺するわよ…」

「ぐふぅっ…ご、ごめんなさい…」

首に強烈な手刀を食らわされる集と、

「まったく…」

呆れつつも、集から見えないのを良い事に顔を綻ばせるるりであった。

 

 

「よし、到着~♪」

「ありがとう」

るりの家の前に着いた。

集はるりを背中からゆっくり下ろす。

 

「それじゃ…また明日」

「待って」

「?」

集が呼び止める。

「あのさ、るりちゃん。今度、俺の部屋に来ない?」

「え」

集の言葉に、るりは一瞬止まった。

その言葉が意味する男女の意思は、そんなに種類は多くない。

と、言うよりも、大抵は一つしかない。

るりの戸惑いを見て、集はまずいことを言ったかなと急に焦り出す。

「あ、いや、大丈夫だよ!?変なことはしないから!その…正直、さっきのでもし足りないんだ。だから、今度の休み、丸一日使って、るりちゃんとキスしたい。」

下手をすれば尚更恥ずかしくなるようなことを言ってしまった。

セリフ選びを間違えたなと後悔している集を見て、るりは微笑んだ。

「…ふふ。それ、十分変なことでしょう…?」

「あはは、たしかにね。…それで、どう…?」

「…断る理由なんて、どこにもないわよ。…と言うかむしろ、その先だって…」

「え」

るりが歯切れ悪く口にした後半部分に、今度は集が止まった。

そのリアクションを見て、今度はるりが慌て出す。

「あ、いや、その・・・」

「え、るりちゃん、本当に・・・?」

集の目が輝く。

「あ、ああもう!次に土日はまだキスだけよ!?わ、私、まだ、その…勇気が持てないから…もう少しだけ待ってもらえる?勇気を出せたら、あなたと…その…」

髪をかき上げながら、たどたどしく想いを伝えるるり。

その表情にいつものクールさは無く、「恋する乙女」一直線の顔であった。

「…ああもう、るりちゃんかわいすぎ!」

「ふあっ!?」

思わず、るりを抱きしめる集であった。

 

 

その後るりは集を見送って家に入り、部屋のドアをばたんと締めた。

「…ふう。…もう一回、シャワー浴びなきゃ…」

鏡を見て、少し頬を赤らめて、誰に言うでもなく呟いた。

 

 

翌朝。

「るーりちゃん、おっはよー♪」

「!お、おはよう・・・」

集の挨拶に対するるりの反応が、明らかに変わっていた。

「…おやおや~?」

「な、なによ…?」

「なんでもないよ~?♪あ、そうだ」

「?」

「放課後は必須でしょ?夜はそのときの二人の気持ち次第かな。昼休みも出来ればしたい。授業の合間もやろうと思えばやれるけど、どう?♪」

「!!?な、何の話をしてるのよ…!」

「またまた~、わかってるくせに~♪…キス、いっぱいしたくない?」

「!…し、したいわよ。でも、そんな四六時中、獣みたいに求め合うとその…抑えが利かなくなりそうで…」

「!」

るりが絞り出した言葉は、集が予想していたものの上を行っていた。

集はにこっと、そしてにやっと笑った。

「…その言い方だと、一回抑えが利かなくなったら、もういつでもキスし放題にしちゃっても良いように聞こえるよ?♪」

「!!ううう、うるさい!!ほら、学校に行くわよ!!」

「余裕で間に合うでしょー待ってよーるりちゃーん!」

恥ずかしさの余り学校へ駆け出するりを、笑いながら追いかける集であった。

 

 

「るりちゃん、昨日はどうだった?」

「…!!…ま、まあ、解決したわ…。やっぱり勇気を出して聞いてみるものね。ありがとう。」

小野寺から目を逸らしながら話するり。

「良かったー!ん、解決したってことは…」

小野寺の表情がぱぁっと明るくなる。

「…ふんっ」

どすっっっ

「ぐふぅっ!!」

無言で小野寺の腹部にエルボーをかまするり。

「る、るりちゃん、一応私も女の子だよ…」

お腹を押さえながら、涙目で悶絶する小野寺。

「…今のは、あんたが悪い」

顔を真っ赤にしながら、るりは言った。

 

 

 

「…その先…か。キスだけでもあんなことになったのに…その先になんて行ったら、私…どうなるんだろう?」

窓辺から外を眺めながら考えるるり。

その頬は、ほんのりと赤らんでいた。

 

 

 

続く。




キスしかしてない。キスしかしてないから、きっとこっちに載せて大丈夫なはず…大丈夫なのか…!?

何気に一番書きたかったのは、るりが顎でシャーペンをかちかちと押す所だったりします←

僕はどうも書けば書くほど甘ったるくなって行くようです。気に入って読んで下さる方がいるのでこのテイストは変えないで行こうと思います。

次は本編に戻りまして、エロの方で鶫との『ほんぎゃーーー』をお送りします。展開としては結構へんてこなことになりそうなので、その辺をお楽しみくださればと思います。明日には上げられるかと。


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!

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