楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

46 / 57
7人。第55話「ネオキニ」

ある朝。

 

 

ケース①千棘の自室。

「…はぁっ!!…はぁ…はぁ…」

がばっ、と急に起き上がる千棘。

「…はぁ…はぁ…な、何てことすんのよ、あの変態エロバカけだものもやし…」

顔を真っ赤にしながら、ぼそっと呟く千棘。

楽をけなすときの名が妙に長くなっていた。

「…で、でも、あいつとああ言う関係になったら…あ、あんなこと、実際にするのよね…は、はわわわ…!!

…良いかも…。

…ってあたしは何を言ってんのよ!!?あああもうううう…!!!」

一人、布団に包まりながら悶える千棘であった。

 

 

ケース②小野寺の自室。

「…ふあああっ!!…はっ…はっ…」

千棘動揺、がばっと起き上がる小野寺。

「…い、一条君、いくらなんでも6回は…多すぎるよ…」

とんでもないことを口にしている。

「…夢の中の一条君、どんどん激しくなってる…。…えへへ…」

にへらっ、と笑う小野寺。

「…一条君と、付き合えたら、手も繋げるし、キスだって出来るし、…ああ言うことも…。

…本当に、したいな…。」

もじもじと身体をよじらせる。

「…もう一回寝れば、続き見れるかな…?」

二度寝を試みる小野寺であった。

 

 

ケース③鶫の自宅。

「…ん…ふぅっ…ほわああっ!?」

二人同様、がばっと起き上がる鶫。

「あ…いくらなんでも、あんなに突き上げられたら…!!

…もう一度寝たら続きを…いや、そんなことをしては間に合わなくなるか…。

…んっ…ふぅっ…んんんっ…」

布団の中でもぞもぞと動く鶫であった。

 

 

ケース④集の自室。

「うーん…朝か。メガネメガネ…」

ぱっと目覚めた集は、布団から起き上がるとメガネを探す。

「あ、あったあった」

すちゃっ、とメガネをかける。

「そうだ、今日るりちゃんを誘おうとしてたんだ。…もう、起きてるかな?」

そう呟くと、携帯で文字を打ち始める。

「~♪」

その顔は、幸せで綻んでいた。

 

 

 

ケース⑤るりの自室。

「…ん、ううん…朝か…メガネメガネ…」

もぞもぞと布団の中で身体を動かし、メガネを探す。

「あ、あったあった…」

すちゃっ、とメガネをかける。

「携帯は…あ、誰かから来てる。…舞子君、か」

もう名字で呼ぶような関係ではないし、実際、集にも名前で呼んでほしいと言われていたのだが…照れからか、未だに名字でしか呼べないるりであった。

「なになに…『今日の放課後、隣町に新しく出来たスイーツのお店行ってみない?』か…。

…そんなの、行くに決まってるじゃない…」

ぽそぽそと呟きながら、返信を送る。

普通にデートなどと言ってしまうと、どうしてもるりが照れてしまい返事を躊躇してしまう。

しかし、スイーツをネタにすれば、るりもそれを口実にすんなりとオーケーできる。

集はそれが分かっていて、るりも集がそんな自分の心を把握していることは分かっていた。

それがむずがゆく、たまらなく嬉しくもあった。

もちろん、そんなこと、絶対誰かに、まして集本人に言うことはなかったのだが。

しかし、顔は幸せで綻んでいた。

言葉ではいくら素っ気なくしたところで、表情はごまかせない。

朝から、互いの部屋で心を通わせる二人であった。

 

 

ケース⑥楽の自室。

「…んっ…ううん…ん…?」

「ふぁら、ほはようほらいふぁふっ♪(あら、おはようございます♪)」

「…建前上、『起きる前からとかそんな非常識なー!』ってくらいは言いたいんだけど…」

「んむっ、んんっ、んむぅっ…」

「…実際やってもらうと、これ…天国だな…うっ」

…。

「♪いかがでしたか?♪」

「…最高…。」

「♪良かったです♪…お昼もして差し上げますね?♡」

「…」

「…あ、またおっきくなった♡」

「…身体は正直なんです…」

「♡」

朝からバカップル丸出しの二人であった。

 

 

 

そして、学校。

「おはよう、千棘」

教室に入って来た千棘に、楽が声をかける。

「!!おおおおはようこの変態エロバカけだものもやし!!」

「!!?何そのえげつないけなし!?なげえよ!あと何で朝から!?」

寝起きの動揺を引きずっていたのか、勢いで楽のことをぼろかすに言ってしまう千棘。

「ああ、ご、ごめん!そ、そんなつもりじゃ…!」

「ったく、どうしたんだよ…?」

朝から慌ただしいことになっていた。

 

「…鶫?なんでそんな疲れてんだ?」

続いて教室に入って来た鶫の異変に気付き、すぐさま声をかける楽。

「いいい一条楽!?おおおおはよう!!い、いや、これは、そ、その…!!」

「(ううう…結局、あの後3回もしてしまった…。わ、私は何と言うことを…!!)」

真っ赤な顔で恥ずかしがる鶫であった。

 

そこへ、小野寺が駆け込んでくる。

「…はっ…はっ…はっ…は~~~…間に合った…」

「小野寺、おはよう。なんでそんなに急いでたんだ?」

「!あ、いや、ちょっと寝坊しちゃって…あはは…」

「?そうなのか」

少し様子が違う小野寺に、楽は若干の違和感を覚えたが、敢えて言及することはしなかった。

「(…二度寝したら夢の続きを少しだけ見れたからって、3度寝したのは失敗だったな…はぁ)」

だいぶ粘っていたようだ。

 

「まったく…どうしたんだよ3人とも?」

楽は、朝から様子がおかしい3人を見て不思議がっていた。

「さあ…きっと、何か、らっくんといかがわしいことをする夢でも見たんじゃありませんか?♪」

ぶぼばばばばっっっ

万里花のぶっこみに、3人が派手に吹き出す。

「ちょちょちょちょっと、万里花!そんな訳ないじゃん!ねー鶫!」

「(あれ、お嬢もそんな夢を見られたのか…!?)そそそそうですよ!ねー小野寺様!」

「(え、千棘ちゃんと鶫さんも…!?)あ、うん、えっと、その…あの…」

「「(そこは否定して(ください)---…!!)」」

気まずい沈黙が流れる。

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…この」

 

「…この?」

 

「…淫乱どもめ」

万里花からどぎつい言葉が放たれる。

「はあああ!!?ちょっと万里花!あんた言って良いことと悪いことがあんでしょ!?間違っても高校生がクラスメイトに朝から言う言葉じゃないでしょう!?」

「そうだぞ橘万里花!だ、大体、どんな夢を見ようと人の勝手だろうが!」

「つ、鶫さん、そう言うと何か自分の首を絞めてるような感じが…」

「え」

「…し、しない、かな?」

小野寺の指摘で、鶫の動きが停止する。

「…鶫さんは、自ら口をすべらせてでも追い詰められたいんですのね。…流石はあのとき…」

「?あのときって…万里花、何のことだ?」

万里花の意味深な発言に、楽が疑問を持つ。

「わーわーわーわー!!頼む、やめてくれ、そのことはーーー!!」

鶫が涙目で止めにかかる。

「な、なんなんだよ!?」

事情を知らない楽としては、心の底から訳が分からないのであった。

 

「だ、大体あんたはそう言う夢見ないっての!?」

千棘が必死で反論にかかる。

「あーら♪私は今までだってずーっと、毎晩夢でらっくんといちゃいちゃしていましたわ♡

それに今では…現実でも♡」

「!?」

万里花の言葉に、動きがぴたっと止まる千棘。

「朝から十分に…ねー、らっくん♡」

「「「!!!」」」

3人が、あんぐりと口を開けた。

「!ばか…!おまえ、ここでそんな…」

 

ぱきっぱきっ…ごごごごご…

じゃきっじゃきじゃきっ…

指を鳴らしながら背景を派手に炎上させる千棘と、慣れた手つきで重火器を次々と取り出して構える鶫。

 

「…ほら、戦闘員が2人増えた…」

「あらあらまあまあ、妖怪舐め乳首さんと精子郎さんの嫉妬がうっとおしいですわねえ…」

「「ほんぎゃあああ!!!」」

「や、やめなさい、本当にそれは、だめ!!」

「字面が…字面が…!!」

怒りやら恥ずかしさやらで大混乱の2人。

そんな2人に構うこともなく、万里花は小野寺に目をやる。

「あら、歩く性器さんは固まったままですの?」

「!!!やめてーーーー!!!」

火にガソリンを注ぎ続ける万里花。

朝から教室は大騒ぎとなっていた。

 

 

※あだ名については、第35話「アダナデ」をご参照ください。

 

 

一方このとき。

教室の真ん中でぎゃーぎゃーと5人が騒ぐ中、その後ろで集とるりが話していた。

「おはよー、るりちゃん♪」

「おはよう、舞子君」

「もーるりちゃんったら~♪せっかく付き合えたんだからもっと態度で示してくれたってもがっ!?」

集の言葉を遮るように、彼の口をむんずと掴むるり。

行為自体は恐ろしいのだが、顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた。

「ちょっと…まだ周りの人はそんなに知らないんだから、あんまり大っぴらに言わないでよ…!」

そう言うと、集の口を押さえていた手をぱっと放した。

「…ぷはっ、あー、死ぬかと思った…。…照れ屋なんだから♪」

「…」

「いたいいたいいたい、太ももをつねるのはやめて、地味にいたいいたいいたい…」

無言で集の太ももをつねる。

…割と、本気で。

「…まったく…。それで、今日行く店の調べは済んでるんでしょうね?」

話を、この日の放課後のことへと切り替えた。

「ちぎれなくて良かった…。ああ、そのこと?もちろんだよ♪楽しみにしといて!すごい美味しいから!」

「?行ったことあるの?男の人が行くような場所じゃないと思うけど…」

集の発言に、ふと疑問を抱くるり。

「…あ、いっけね、口すべらしちゃった…」

「…誰と行ったの?」

集が気まずそうな顔をしたために、るりは少し、と言うより明らかに、機嫌が悪くなる。

「ああごめんごめん!そう言うんじゃないよ!一人一人!」

「…一人で…?あなた、そんな寂しい交遊関係だったかしら?」

どんどんきつくなるるりの言葉。

「はは…厳しいなあ…。…下見に行ってたんだ」

「え?」

「せっかく、彼女であるるりちゃんとデートに行けるんだし、さ。自分が選ぶんなら、美味しいお店に連れて行ってあげたいんだよ。るりちゃんの笑った顔が見れたらラッキーだなって思ってんだ♪」

「…!」

機嫌が悪くなっていたところから一転、急に顔を赤らめて俯くるり。

「お、るりちゃん、どうしたの~?」

「…う、うるさい…」

「具合が悪いなら保健室連れてくよ~?♪」

「…あんた、分かっていってんでしょ…!?」

「ん~?なんのことやら~♪」

「…この、さりげないドSめ…!」

「あ、ばれた?あっはっはっは~♪」

「…今に見てなさいよ?」

「…俺を驚かせるのは簡単だよ?」

「え?どう言う…」

「俺に見せたこと無いような、笑顔を含めたるりちゃんのかわいい顔を俺に見せてくれれば、俺の顔はあっと言う間に真っ赤になっちゃうよ♪」

楽しそうに話す集。

「…そ、そんなこと…」

「見たいな」

「…え…」

「本気で、もっともっと、るりちゃんのそう言うかわいい顔、見たい」

「…ば、バカ…」

 

朝のHR前の教室のはずなのだが、休日にデートにでも来ているのかと見紛うような会話であった。

 

 

 

放課後。

「千棘ちゃん、鶫さん!ちょっといい?」

もう帰ろうとしていた千棘と鶫を、小野寺が呼び止める。

「んー?なに、小咲ちゃん?」

「あのね…今週、さ。金曜の放課後に鶫さん、土曜日に私、日曜日に千棘ちゃんが一条君と会うじゃない?」

「あ、確かに、そうですね」

以前、休み時間にそれぞれが誘った結果、楽は3日続きで3人と会うことになったのであった。

「それで、そのときどんな風に行動するか、一人一人で考えるよりも…3人で考えてみた方が良いアイディアが浮かぶと思うの。

だから…今から喫茶店辺りに寄って、作戦会議しない?」

小野寺が提案したのは、文殊の知恵を求めての作戦会議だった。

「なるほど…いいわね!行きましょう♪」

「そうですね、素晴らしい案です、小野寺様!」

「ありがとう!じゃ、行こっか!」

「「おー!」」

 

こうして、放課後に小野寺・千棘・鶫の3人で作戦会議をすることになった。

 

 

ちなみに。

喫茶店に向かう途中の会話。

「今思えば、宮本様も呼べば良かったのではないでしょうか?彼女は私たちの事情を知っていますし、頭も切れます。何かと頼りになるかと思うのですが…」

「あ、るりちゃんはね、今日は舞子君とデートなんだって♪」

「へ~、そうなんだ~!…え?」

「え、宮本様、え?」

「…あれ?…あ」

千棘と鶫がぴたっと立ち止まったのに気付き、小野寺は事態を察する。

「「ええええええ!!?!?!?」」

千棘と鶫が悲鳴にも似た驚きの声を上げる。

「ほほほ本当に!?」

「う、うん、そうなんだ。ごめんね、言ってなかったよね…」

「聞いてませんでしたよー!!ああこれは、赤飯を炊かねばならないでしょうか…!」

「そ、そうね、お祝いパーティーを開きましょう!」

「お、落ち着いて二人とも!」

てんやわんやの大騒ぎとなっていた。

 

 

 

続く。

 

 

 




今回は7人登場でわちゃわちゃとしました。あだ名を久しぶりに使った気がします…。
いかがでしたでしょうか!

ご感想、ぜひ書いて頂けると嬉しいです。今回の話の感想でも、最初から読んでの印象でも、リクエストでも、ぜひともよろしくお願いします。すごく力が湧くんです。

エロの方の感想をここに書いて頂いても大丈夫です!メッセージで言って頂いても嬉しいので、ぜひともよろしくお願いします(^^)


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。