楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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今回は前半と後半で登場人物がはっきり分かれます。


7人。第37話「スクラム」

ある日のこと。ふと、万里花は考えていた。

 

「最近、らっくんがつれなくて寂しいですわ…。放課後にお誘いしても週2回くらいしかつれないし…」

※毎日誘っており、残りの平日のうち1日はみんなで遊んでるので、なんやかんや結構会ってます。

「休日に至ってはもうぜーんぜん!お誘いする度に『ごめん、忙しくてな。デート、楽しみにしててくれよ』って言ってくださるけれど…あの分かりやすい言い方からして恐らくデートに備えて私へのプレゼントの軍資金を貯めていらっしゃるのでしょうけど…分かっていても寂しいですわーーー!」

楽のサプライズの夢を冒頭で打ち壊す。

「でも断るとき、毎回頭を優しく撫でてくださるのは…天国ですわ♡」

一人、ベッドの上で悶える万里花。

「学校に居る間も疲れてるのか、最近居眠りしがちですし…」

※万里花も結構寝てるので、実際の楽は万里花が認識してるよりも更に寝てます。

「…は、ここは、将来の伴侶たる私が全力でサポートすべきですわ!!早起きしなくては…おやすみなさい!…あ、でも、最近らっくんにしてもらってないし…んっ…」

この後、少しだけ、一人遊びに耽るのであった。

 

一方その頃、楽も考えていた。

「サプライズ上手く行くかな…へへっ♪」

ばれてる、ばれてるよ。

「そろそろ寝るか〜…っと、その前に、最近万里花とあんまり触れ合えてねえしな…。…あ、でも、やっぱり、昼休みにちょっとしてもらおうっと…」

おまえまだ付き合ってないやろがこらと言う声が何処からか飛んできそうである。

 

 

次の日の昼休み。

楽と万里花の二人は屋上に居た。

「らっくん♪今日のお弁当はですね…じゃーん!」

どどんっっ

含まれている食材:うなぎ、にら、にんにく、山芋…

「うおえ!?なんでこんなに…!?」

楽はこの露骨な意図しか見えないラインナップに驚きを隠せない。

「(まるで子作りに励む新婚夫婦みてえだな…)」

「まるで子作りに励む新婚みてえだな…って顔してますわね♪」

「!?なんで一言一句違えずに当たってんの!?すごい通り越して怖いわ!!」

「うふふ♪」

万里花が自分の考えを見透かしている状況に驚きを隠せない楽。

「な、なんでまた…?」

「らっくん、なんだか最近お疲れのようですから…元気になってもらえたらと思いまして♪あ、もちろん歯ブラシ・歯磨き粉・噛むブレスケア・ファブリーズ等々完備してますから、臭いの方はご心配なく!♪」

「ほ、ホテル並みの気遣いだな…。…でも、ありがとな。嬉しいよ」

そう言って、万里花の頭をぽんぽんと撫でる。

 

「…」

 

「?どうした?」

万里花を見ると、少し俯いたまま、なんだかむずむずしているような顔をしている。

「…こうやってらっくんに頭を撫でてもらうのが、ちょっと、あんまりにもしあわせなもので…顔がとろけちゃいそうになったので抑えてました♪心配させちゃってごめんなさい…」

そう言うと、少しだけ上目遣いで楽を見つめた。

「…」

「きゃっ…」

楽はたまらず、強く抱きしめた。

「…おまえは本当に、かわいいな、万里花」

万里花の目の前で、真剣に言う。

「…ほわああ!!」

ぼしゅっ、と音を立てて、顔から湯気が吹き出した。

「うう…恥ずかしか…は、早くお食べになってくださいまし!」

照れながらもなんとか切り返す。

「…ふふ♪さて、じゃあいただきます!」

そう言って万里花のお手製弁当を食べ始めた。

「…むぐ、うおお、超美味いよ万里花!」

「本当ですか!良かったです♪」

がつがつと食べ進む。

 

そんなことを言いながら、約15分後。

 

「…いや、これは流石に、その…露骨すぎるんじゃないでしょうか…」

 

楽が切なげに話す。何故か敬語で。誰に言っているのであろうか。

気付くと、楽のズボンは完璧にテントを張っていた。

「確かに、すげえ元気になったけど…ここも、なのか?しかもこんなに?」

冷静に分析している。

「…あらあら。これは…しょうがないですわ…ね♪」

ぽふっ

「うおっ!?ま、万里花!?」

万里花は素早く上半身の服を脱ぎ捨てると、楽のモノをズボンと下着から取り出し、自らの胸で挟んだ。

「えへへ…いつでもやってあげるって言いましたでしょう?ほ~らほら…♪」

「…お…うあ…ま、万里花…」

 

結局この後、万里花に2発程抜いてもらってから教室に戻ったのであった。

 

しかし、慌てて戻ったせいか、楽はある重要なミスを犯していた。

「…あれ、どっかに手帳落としたかな…参ったな。ま、後で探せばいいか…」

 

「…あれ、この手帳、落し物よね…誰のかしら?」

拾ったのは、るりであった。持ち主を特定するため、手帳をぱらぱらとめくる。

「…ああ、この字は、一条君…?

 

『土曜日 万里花とデート!!!』

 

…!!!」

 

「…これは、みんなに伝えなきゃ。」

素早く動き出す。

 

 

この日の放課後。

るりは小野寺・千棘・鶫を集めた。集はどこで嗅ぎ付けたのか、いつの間にか、居た。

「…なんで舞子君がいるのか追及するのは後にするとして…えーと、皆さんにご報告したいことがあります。」

「え!!るりちゃん…まさか…」

小野寺が集の方をちらりと見る。

「とうとう!?」

ごすぅっっ

「おふぅ!!」

「そう言う冗談は今は要らないわよ、小咲」

「い、痛いし、二度目だよるりちゃん…」

小野寺は純粋に厚意で言ったのだが、るりから容赦の無いツッコミが入る。

「えーと、改めまして、皆さんにご報告したいことがあります。まずこちらをご覧ください。」

るりはそう言うと、楽の手帳を手に取った。

「?あれ、これもしかして、一条君の…?」

「そう。ご名答。さすが小咲ね。あ、今は淫寺(いんでら)だっけ?」

「なんで知ってるの!?あと、ちがうよ!?」

予想していないタイミングで悪夢を掘り返され、パニックになる小野寺。

「まあそこは置いておいて…そう、これは一条君の手帳。さっき拾ったの。本来であればさっさと返すのが筋なんだけど、最初誰のだろうと思ってぱらぱらめくってたら…これが書いてあったの。」

「え?なにな…に…な~~に~~!!?」

千棘は楽の予定を見るなり、少し懐かしいフレーズを口走った。

「ちょ、千棘ちゃん、どうしたの!?そんな変なこと…が…え」

小野寺が固まる。

「お、お二人とも、どうしたのですか!?一体どのよう…な…え」

鶫も固まる。

「どれどれ~?…お~、お熱いね~♪」

集は冷やかすばかりである。

 

「と、まあ、こういうことよ。以前ダブルデートをやってみたときは、正直あの二人の距離感は…前よりは縮まっただろうけれど、まだまだかなって感じだったのよね。でも、最近あの二人…よく一緒にお昼食べてるし、橘さんの家に行ったときも何か怪しかったし、王様ゲームの罰ゲームのこともうやむやにされたけど怪しかったし…もう、なんて言うか、100%に近いレベルで、クロよ。」

「え、るりちゃん…クロって、どう言うこと…?」

「二人は付き合う直前、もしくはもう付き合ってるかもと言うことよ。手帳にこんなでかでかと書いてあると言うことは、まだ付き合ってないけど勝負をかけようとしてるのか、もしくは付き合いたてで嬉しくてたまらないと言う状況なのか。前の月の予定表を見た限りあまり目立つことは書いてないから、恐らく前者の可能性が高いと思う…って、あれ?」

るりが気付くと、千棘・小野寺・鶫の3人は完全に風化していた。さらっさらと。

どうやら、せっかくのるりの分析も最初の1文しか聞こえていなかったようである。

 

「…はあ…はあ…危ない危ない、死ぬところだったわ…」

5分程経つと、ようやく3人は落ち着いてきた。

「…あ、あの、一つ疑問なのですが…」

「?何かしら、鶫さん?」

鶫が質問をしてきた。

「橘万里花はともかくとして、一条楽は…その、お嬢と恋人関係な訳ですよね?なのに、…本当に橘万里花と恋仲になろうとしている、のでしょうか?それとも、ま、まさか、あ、愛」

「愛人ではないでしょうけど」

「!は、はいっ…」

るりが鶫の妄想をぴしゃりと遮る。

そして、千棘の方をちらりと見た。

「…あー、これは、もう、言った方が良さそう、と言うか、絶対に、言うべきよね。あのね、鶫…」

「?お、お嬢、どうしました…?」

千棘の、覚悟を決めたような表情を見て、鶫の心の中に緊張が走る。

 

「今まで隠してて本当にごめん。私と楽の恋人関係はね、集英組とビーハイブとの抗争を防ぐためのカモフラージュなんだ。つまり、偽の恋人関係って言うことなの。」

 

「え」

 

鶫の表情が固まった。

 

「このこと、この場に居る人には話してたんだけど、鶫は立場上いつ言ったら良いか中々わからなくて…って、鶫!?」

「ふえ…?」

 

鶫の頬には、本人も気付かぬままに涙が伝っていた。

 

「…あ、すみませ、あれ、でも、なんで…?…なん…で…」

言葉が途切れ途切れになり、やがて鶫の目から大粒の涙がこぼれ出してきた。

「あ…うあ…ふぐ…うぐう…うああああ…」

何の涙なのか、彼女自身もよく分からなかった。

自分だけ除け者にされていたということに対してなのか、ずっと千棘と楽との関係に気を遣い続けていたからなのか。

「あ、ああ、鶫、ごめんね、ずっと嘘付いててごめんね、う、うえ、うええええ…」

千棘もつられて泣き出してしまった。

「あ、あう、お嬢、ちが、ちがうんです…う…うう…」

鶫は実際、千棘に対して何か恨みを抱いた訳では全くなかった。

自分がクロードの直属の部下という立場である以上、迂闊に漏らせないと考えるのは至極当然のことだ。

そこは、割り切れる。

 

だから、涙の本当の理由は、もっと割り切れないものだった。

 

「(私は…私は…どうすればいいのだ…!?)」

ずっと慕って来た千棘の恋人だからと、楽に対する恋慕の情は抱いても、それをひた隠しにして来た。自身の心で思うことさえも禁じて来た。

だが、もうその制約は無い。

でも、今、自分の想い人である楽は万里花と急激に近付いている。

 

気持ちのやり場が、無かった。

 

気付けば、鶫と千棘は二人でおいおいと泣き、小野寺はただただ慌てふためいていた。

 

 

しかし。

 

ぱーーーーーーんっっっ

 

「「「!!?」」」

何かとても大きい音がして、3人はびくっ、と動きを止めた。

見ると、るりが手を叩いていた。

「…このために、わざわざ3人を集めたのよ、私は。」

「…え?ど、どういうこと、るりちゃん?」

「隠してるつもりかもしれないけど、桐崎さん、鶫さん、あなたたち、一条君のことが好きでしょう?」

ぶぼばばばっっっ

「「「え、ええ!!?」」」

綺麗に見透かされていたことに驚きを隠せず、思わず吹き出す二人。

小野寺も驚いている。

「それで、小咲も中学のときから一条君のことが好きなの」

ぶばばっっっ

「!?ちょ、ちょっとるりちゃん!?」

親友のまさかのカミングアウト(と言うよりは、情報のリーク)に驚く小野寺。千棘・鶫と同様に吹き出した。

「まあまあ、聞きなさい。」

るりは続ける。

「このままじゃ、あなたたちは自分の思いを告げることもなく、自分から何かをするでもなく、一条君が橘さんとくっつくのを指を咥えて見ているだけになるわ。まあ、小咲は今まで色々してきてたけど…」

「ちょ、ちょっとるりちゃん!?それは今はいいでしょ!?」

「ああ、ごめんごめん。別に私は、『あなたたち3人とも、一条君に告白しちゃえー!』とは言わないわ。『一条君と橘さんの逢瀬の邪魔をしよう』とも言わない。でも、もう時間が無い、と思うの。だから、何かしてほしいの。…あなたたちを見てると、なんかもうもどかしくて、『さっさと告れや!』って気持ちにならない訳でもないし…」

「るりちゃん…」

「いい?絶対にデートの邪魔しようなんて考えちゃだめよ?絶対よ?絶対だからね?」

「なんでここで急にダチョウ倶楽部!!?」

真面目モードの突如ぶっこまれたネタに、驚きながらもしっかりツッコむ千棘。

 

「じゃ、細かいことは3人で話しなさいね。それじゃ~ね~。」

「あ、る、るりちゃん!?」

るりはありったけ喋ると、風の如く去った。…集の首根っこを引っ掴んで。

 

しかし、去り際に、ぴたっと、足を止め、振り向き様に一言。

「好きなら、何でもいいから、もがいてみなさい。」

そう言って、立ち去った。

 

ちなみにこの後、集が『ひゅ~♪るりちゃん、かっこい~♪』等と冷やかし、その度にぼこぼこにされていたのはまた別のお話。

 

 

そして帰り道。

るりが言うように、千棘・小野寺・鶫が3人で帰っていた。

「まさか、小咲ちゃんも、鶫も…その…楽のこと…」

「わ、私も、知りませんでした…」

「千棘ちゃん、本当に一条君のこと好きだったんだね…それに鶫さんが前言ってた、好きな人の話も…あれ、一条君だったんだね…」

鈍感メンバー同士なので、本当に、お互い何も気付いていない状況だった。

 

「千棘ちゃん、鶫さん、あ、あの、ね?」

「?なに、小咲ちゃん?」

「い、今からやれることって言ったら、その…で、デートのときに…一条君にアプローチをかけちゃえば、一石二鳥だよね…!?本当はいけないことだと思うけど、橘さんはもう一条君とものすごくお近付きになってるから、もう、これくらいしないと…!…私は…一条君のことが、好き。だから、今からでも、やれることをやってみる。」

「小咲ちゃん…」

小野寺は、覚悟を決めた顔つきをしていた。

「そうだよね、せっかく宮本さんから伝統芸能とも言えるフリがあったもんね!」

「いや、そこは関係ないよ千棘ちゃん!?」

シリアスな会話に若干のノイズが入る。

「あ、あはは、ごめんね…。そうだよ…ね。私も頑張ってみるかな。…私も、楽のこと、好きだから。」

「お、お嬢…!」

千棘の顔もまた、穏やかながら、覚悟を決めた表情になっていた。

「わ、私も…あ、あいつが…い、一条楽のことが…す、すすす、す、す、すす、す…」

尋常でないくらい『す』を連呼する鶫。よっぽど躊躇しているのだろう。

「い、一条楽が、好きです!!」

顔を真っ赤にして、そう告げた。

「今までは何もやれませんでした。だから、今からでも、少しでもあいつに振り向いてもらえるように、何かしてみます!」

「鶫…!」

「つ、鶫さん…!」

鶫が初めて告げる楽への思いに、千棘と小野寺は二人とも感動していた。

 

「それでは、どうやってデートに割り込みましょうか?手っ取り早いのは麻酔銃で橘万里花を…」

「わーー!!ちょ、ちょっと鶫、いきなり物騒な話をするのはやめなさい!!」

「あ、そ、そうです…よね、ご、ごめんなさい!」

テンションが相俟ってか、とんでもない提案をする鶫。

「さ、流石にそう言うのは憚られるから…さ、こういうのはどうかな、3人とも、めいっぱいのオシャレをして、一条君の前でたっくさんかわいい表情をしてみよう?今まで、そういうのをあまりやってこなかったし、さ?」

小野寺が、自分で考え得る精一杯の提案をする。

「それ、良いね!よし、鶫はオシャレについてはまだ慣れてないだろうから、私が手伝うよ!♪」

「お、お嬢、ありがとうございます!小野寺様も、素晴らしい提案です。ありがとうございます!」

「いえいえ…なんか、照れるね、こういうの♪」

そう言って、小野寺は少しだけ頬を赤く染めた。

 

「そうして準備を終えたら、後は一人一人のタイミングで行ってみよう!いいかな、千棘ちゃん、鶫さん?」

「うん、良いと思う!」

「はい、良いと思います!」

「ありがとう♪」

 

「よーし、じゃあ、3人でがっちりスクラム組んで、がんばろー!!!」

「「おーーー!!!」」

こうして、3人の間に固い絆が結ばれた。

 

 

その日の晩。

小野寺は考えていた。

「…私、今日はなんであんなに色々言えたんだろう…?」

「…ああ、そっか、ずっと好きだった一条君のために何かやる、って、いざ決めてみたら、何て言うかすごく…すっきりしたからだ。後はもうやるだけ、って。今までは何か一つやるのもおっかなびっくりだったからなあ…。」

「…がんばろ。がんばれ、千棘ちゃん、鶫さん、私!」

そう言い聞かせて、寝床に就いた。

 

 

 

続く。




今後の展開のため、3人の心情や行動をはっきりさせておきたいと考え、デートが始まる前にこういったくだりを入れました。

これだけは先に言っちゃっておきます。みんな、幸せになるようにします。それを自由に出来ちゃうのが自分で書く小説の良いところですしね!

この後の細かいところはぶっちゃけまだ考えていないので()、今から頑張って考えます。土日の更新をお待ちください!

まめにエロの方も書いてますので()、そちらもよろしくお願いします!
あ、エロの方は本編よりも3週間以上後にスタートさせたにも関わらず、今日UAが抜かされました。なんですと。どちらも嬉しいです!!ありがとうございます!!


それでは、今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!

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