楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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前回の第32話「オヘヤデ」はエロの方でご覧頂ければと思います(^^)!


第33話「バンサン」

万里花の家のインターホンが鳴った。

 

「み、み、み、みなさん、我が家へようこそいらっしゃいましたー…♪」

「…なんであたまからテンパってんのよ?」

万里花の落ち着かない態度に、しょっぱなからツッコむ千棘。

 

話はさかのぼること10分前。

なんとか、信じられない速度で料理の準備を終え、後はテーブルに並べるだけとなった。

「ふう、後は並べればばっちりですわね…あ…ら…?」

疲れからか、目まいがしてふらっ、と倒れそうになる万里花。

「おっと!大丈夫か…?」

楽が優しく抱き留める。

「あ、ありがとうございます…で、でも平気ですよこれくらい!♪」

「なーにを言ってんだ」

「あうっ!?」

楽は少し呆れた顔をすると、万里花のおでこをぺしっと叩いた。

「無理すんなよ…俺が誘ったんだし、…俺が色々やりすぎちまったんだし」

全くである。

しかし万里花は頑固なのか、何とか最後まで仕事をしようとする。

「で、でもせっかくここまで…」

ちゅっ

「!!!」

「…今無理したら、この後みんなと楽しめないだろ?だから…な?」

楽は万里花のおでこに優しく口付けをして、にこっ、と笑った。

「ほ、ほわ、ほわわわわ…うーん、子どもは3人がいいです~…」

「万里花ー!?」

嬉しすぎて、色々と段階をすっ飛ばしたことを口走って眠りにつく万里花。眠りにつく、と言うよりは、気を失ったようなものだった。

「えへへ…らっくん…」

気を失っている間も、にへらっと微笑みながらずっと楽の名前を読んでいた。

「…ったく…かわいいやつめ…」

「う~ん…らっくん…お尻の穴は一日2回まで…♪」

「!!!??!?夢の中の俺何をしてんの!!?…そっちも…いやいや何を考えてんだ俺は…いや、でも…」

こんなくだりを挟みながら。

 

時間を戻す。

「…ま、いいか。お邪魔しまーす!♪」

千棘がそう言ったのを皮切りに、鶫・小野寺・るり・集が続く。

 

部屋に招かれる5人。

「さあさ、私もう少しだけ準備の方をしますので、皆さんはおくつろぎになっていてくださいまし♪」

「わ~!橘さんの部屋、すごく綺麗だね!」

小野寺が目を輝かせている。

「う~んここが万里花ちゃんの部屋…さてクローゼットはどこかなおべぶっっ」

るりが集に対し、無言で脇腹に手刀を叩き込む。

「お、おふう…るりちゃん、今のは効いたぜえ…」

「しょっぱなから何やってんのこのエロメガネ…。…(ぼそっ)私にあんなことしといて…」

「?るりちゃん、今何か言った?」

「…なんでもないわよ、小咲…」

ぽそり、と呟くるり。

 

「…それよりも、ちょっと一条君、いいかしら?」

「え、俺?…なに?」

るりの言葉に、内心どきっとする楽。

「…あなた、なんで先に中に居たのかしら…?なるべく自然に手伝っている風だったけど…おかしいわよね?」

「(ぎくっ)や、あの、ほら、ちょっと用事が早めに終わっちまってさ、一回家に帰る程の時間も無いからって、少し早目に来てたんだよ!あははは!」

「…そうなの。じゃあ、ほんの20~30分前くらいに来た、ってことね?」

「(ぎくぎくっ)あ、ああ、そそ、そうだよ!」

目が全力で泳いでいる楽。

「…本当、に?」

「あ、ああ!(助けて~!!)」

「…」

るりは無言で、隣にいる小野寺のことを見る。

「…」

ごすぅっっ

「おふぅ!!」

突如小野寺の脇腹に右エルボーをかまするり。

「…ちっ、これは相当先を行かれて…というかこれはもう…うーん、どうしたものかしら…」

「…痛いよ、るりちゃん…」

小野寺はぷるぷると震えながら訴えかける。が、聞いてもらえない。

 

「まったく…ん?…ちょっと一条君、もう一つ、質問いい?」

「…な、なんでしょう…」

るりの糾弾に、楽の心拍数が上がる、上がる、上がる。

「この部屋…さ、すごく綺麗なんだけど…」

「…だけど?」

「…なんか、少しだけ、匂いがするんだよね。なーんか、こう…エッチな匂い?」

「んが!?」

「ええ!?」

「なんだって!?」

楽に続き、小野寺と鶫が反応する。千棘はぴんと来ておらず、集はにやにやしている。

「…あら、むっつり組もわかったの?それとも、エッチって単語に反応しただけ?」

「んなーーー!!?ちょ、ちょっと宮本様なんと言うことを…!!」

「そそそうだよるりちゃん、何言ってるのー!?」

「あら、ちがうの?つぐむっつりとむっつり寺さん」

「ほわーーーー!!!??だだだ誰がつぐむっつりですかーーー!!!」

「るりちゃん私をなんだと思ってるのー!!?」

二人を弄ぶるり。

「よ、よかった…話が逸れそうだ…」

楽が安心しかける。

しかし。

「さて、まあむっつりエロコンビの話は置いておいて…一条君」

「んえ!?」

るりが再び話を戻す。るりの横では二人がむっつりエロコンビと呼ばれたことに対して色々と騒ぎ立てているが、るりは気にせず続ける。

「この匂い…何か心当たりはない…?」

「…な、な、何言ってんだよ宮本!?ついさっき来たとこなのに、そんなこと分かる訳ねえだろう!?あはは!」

尋常でない程動揺する楽。

「ふーん… ほ ん と う に ? ? ? 」

ずいっ、と楽に迫るるり。迫力が半端ではない。

「ほほほ本当だって…」

がちゃっ

「皆さん、準備が整いましたよ♪」

るりが糾弾している途中で、万里花が入って来た。

「あら、橘さん、ちょうど良いところに。準備して頂いたところで申し訳ないのだけど、一つ質問をさせてもらっていいかしら?」

「?はい、どうぞ♪」

微笑んで応答する。

「…この部屋、なんていうか、少しだけ、エッチな匂いがするの。気のせいかしら…?」

「…なんのことでしょうか?」

万里花は直前の微笑みを一切崩さずに言う。

「…例えば、ここで一条君と何かを…なんてことは、ない?」

「「「!!!ええええ!!!?」」」

千棘・小野寺・鶫が激しく反応する。

「…さあ、どうでしょう?♪さあ皆さん、こちらへどうぞ♪」

万里花は、少しだけ顔を赤らめて、明るくかわした。

「「「「えええええ!!?!?」」」」

楽も加わった。

万里花が先に言った瞬間、詰問タイムが始まる。

「ちょっと楽!!今のどういうこと!?万里花と、そ、その、エッチなこと、し、し、したの!?」

「いいい一条君、ほ、ほんとなの!?え、え、エッチなこと…したの!?」

「一条楽、貴様!!お嬢と言うものがありながら、橘万里花とエッチなことをするとは何事だー!!大体どういうことをしたのだ教えろ…あ」

「…え、鶫さん、なんで確定したみたいに…?」

「…鶫、どうしたの…?」

「…ほわあああ私は何をーーーー!!!!」

ばごっっ

「ぐふっ!?なんでー!?」

鶫は自分の失言に気付き、混乱して楽を殴り飛ばした。

「い、いや、でもこれはチャンスだ…今のうちに…」

その混乱に乗じて、さりげなく逃げ出す楽。

 

その後ろ姿をるりと集が見ている。

「…怪しい」

「…んー、これはもしかして、行くところまで行ってんじゃ…」

「…小咲に、今からでも逆転する手を打たせないと…むむむ」

 

 

リビングに着いた6人。

テーブルの上には豪華な料理が数多く並んでいる。

「さあさ、丹精込めて作りましたの♪いっぱい召し上がれ♪」

「わあ…橘さんすごーい!」

「こ、これは美味しそうね…頂きまーす!」

「むぐむぐ…む、このスイーツ、美味しい…!」

「るりちゃん、デザートに手を付けるの早くなーい?」

わいわいし始めるご一行。

 

「そう言えば、お嬢、あのことは…」

鶫がふと切り出す。

「あ、そうだ、万里花!実はね、今回私たちもちょっとずつ持って来たんだ、料理!」

「あら、そうなんですの?スペースは空いてますから構いませんよ?♪」

「ふふふ、ではまず、私から!」

千棘が自慢げに取り出す。

出て来たのは、ヘドロの沼の底を掬い上げたような、人が食べるどころか近付くことさえ躊躇われるような液体が入った鍋。

「…えーと、千棘…これは…何…かな?」

「え?カレーだよ?」

「…はあ!!?カレー!?これが!!?」

「うん。えーっと…グリーン、カレー?」

「なんで途切れ途切れで疑問形で言うんだよ!!?これ絶対緑色になる予定無かったやつだろ!!?」

「…ご、ごちゃごちゃうるさいのよ!!良いから食べてみなさいよ!!」

千棘はそう言うと、ヘドロにスプーンを入れて掬い、それを楽の口に押し込んだ。

「むぐー!!?」

「…げふあっ!!!」

ずどんっっどんっっ

「楽ー!?」

どういう原理か、一口食べた後、急に天井まで吹っ飛び、反射して床に叩き付けられた。

「り、料理を食べて吹っ飛ぶってどういうことだ…」

ぴくぴくと痙攣しながら、楽は呟いた。

 

「あ、あの、一条君、私のなんだけど…」

「あ、ああ、小野寺…さん」

「なんで敬語なの!?…これ、なんだけど…」

差し出されたのは、見た目が輝く大学イモ。見た目はとてつもなく美味しそうである。

…見た目は。

「(絶対やばい見た目に騙されちゃだめだ絶対やばい)」

楽の頭の中で最大音量の警告音が鳴る。

「…や、やっぱり、だめ、かな…」

「食べる!!」

「ええ!?」

ばくばくばくっっ

小野寺の悲しげな顔をするのに耐えきれず、楽は小野寺の料理を口にする。

「…」

「ど、どうかな…?」

「…」

「い、一条君…?」

「…がふっ」

ぱたぱたっ

どさっ

「一条くーん!!!??!?」

何も言わず、床に吐血して倒れ込む楽。漢(おとこ)である。

 

「わ、私のはこれだ…ほら!」

鶫はそう言うと、だし巻き卵を取り出した。

「おお~…これは美味そう…」

楽は初めて安心した顔を見せる。

「じゃあ早速頂きます!…うお、うめえ!!」

「!本当か!…よかった」

鶫は嬉しそうに微笑む。

「ああ、本当にうめえよ!いや~すげえな鶫!♪…あれ?」

 

楽はあることに気付く。

万里花が頬を膨らませて、明らかに拗ねている。

思えば直前の小野寺のときも、小野寺の表情に反応して食べ始めたとき、何とも言えない顔をしているのが一瞬見えたのを思い出した。

「…ま、橘…どうした…?」

「…むう…やっ!」

だきっ

「うおっ!?た、橘!?」

拗ねた顔から一転、楽に抱き付いた。

そして鶫の方をじっと見る。

「…らっくんは、渡さんとよ…?」

「んえ!?」

「…は、はあ!?な、何を言っているのだ貴様は…!!」

楽と鶫は思わず赤面する。

 

そんなやりとりを少し離れて見ているるりと集。

「ところで、るりちゃんは何か作って来たの?食べたいなー♪」

「…はい、これ」

「おほー!♪…デパ地下ってやつ?」

「…作るのは自信無いのよ…橘さんや鶫さんに比べちゃうと、ね」

「なーんだよもうそんなこと気にしなくていいのにー♪今度作ってくれない?」

「…なんで私があなたになんて」

「…だめ?」

「…っ」

集の表情に戸惑うるりと集。完全に別グループと化していた。

 

 

「はーーー美味しかった!ごちそうさまでしたー!」

そんなこんなで夕食会が終了した。

「はーい、お粗末様です♪それではみなさん、お片付けが終わったら…ゲームをしませんか!♪」

そう言って、万里花はクジを出してきた。

「…?ゲームするのは賛成だけど…何をするの、万里花?」

「王様ゲームですわ♪」

ぶぼばっっっ

「は、はあ!?」

「あーらいいじゃありませんか♪楽しいですよ?」

「あ、あんたねえ…」

「は、恥ずかしいよ、そんなの…」

「あら、恥ずかしいことをしたいのですか、週六さん?♪」

「だからその呼び名やめてよおーーーー!!!ううう…」

「こらー!!!橘万里花!!!貴様また…」

「んもう、Gさんこそ恥ずかしいことをしたいのでしょう?楽様と♪」

「んなーーー!!!??と言うか貴様、またその呼び名を…ぬがーーー!!!」

「ま、やらないと言うのであれば…」

「…あれば?」

千棘が訝しげに聞く。

「今日は解散にして、楽様といちゃいちゃ致しますわ♡ねー、ら・く・さ・ま・?♡」

「んなーー!!?ばばばばか…」

「!!…いいわよ、やってやろうじゃないの」

「…やるぞ」

「…や、や、やるよ!」

万里花の煽りにいとも簡単に乗る千棘・鶫・小野寺の3人。

「(この方たち…わかりやすぎますわね…)オーケーです、ではやりましょうか♪あ、言い忘れてましたけど…王様の命令をパスする権利を付けましょう。しかし、その場合絶対に誰かになすりつけてください。そしてなすりつける度にポイントが1たまるとします。

5ポインたまったら…」

「…たまったら?」

「…後日、私が死ぬほど恥ずかしい命令をします♡」

「え、えええ!!?そ、そんなの無理だよ橘さん!!」

「そ、そうだぞ橘万里花!!大体そ、そんな、裸エプロンだなんて!!…あ」

「…え、鶫…さん?」

「鶫…?」

「…」

「…」

「…私、今から修行の旅に出ます…」

「わー!!ちょ、ちょっと鶫!!いいから!大丈夫だから!ね!?」

始めから終りまで自分の手で自爆した鶫を、千棘が必死でフォローする。

「まったく、Gさんはむっつりにも程がありますわね♪もちろん私が5ポイントたまる場合もありますので、その場合は楽様、存分に恥ずかしい命令をしてくださいまし♡」

「は、はあ!!?ちょっとあんたいい加減に…!!」

「ねー?楽様♪」

 

「…いいんだな?」

万里花のセリフで、突如として目が冷たくなり、微笑む楽。

「…あ…は、はい…」

突然の楽の冷たい眼差しに、思わず息を呑む。

「…本当に?」

「は、はい…従います…絶対に従います…」

突然二人の空間が出来上がる。

楽は右手で万里花の頬をさすり、万里花はうっとりとした顔で楽を見つめる。

 

「…あの~、お二人さん?」

「…あ」

「…はわわわ…!!」

集の呼びかけで正気に戻る二人。

万里花は楽の顔を見たまま、真っ赤になる。

「…ああああんたたち、何なのよ今のはーーー!!!」

どぼっぼぐっどすどすっっ

「おぶほおっっ!!?」

顔を真っ赤にした千棘にぼこぼこにされる楽。

「(ななななんだあの二人の今の雰囲気はー!!?し、知らない…私はあんな空気知らないぞ…も、もし一条楽にあんな風に言われたら私はどうるんだーーーうわあああ!!?!?)」

一人妄想で悶える鶫。

「い、一条く…そ、それって、ち、調きょ」

「小咲、それ以上はだめよ」

「あう、る、るりちゃん、で、でもそれって…調きょ」

「だからだめだって言ってんでしょ、このむっつり週六!」

「うう…るりちゃんまでその呼び名使わないでよう…」

 

そんなこんなで、王様ゲームが始まる。

 

みんな、ただでは済みそうにないと分かっていながら、誰もそのことは口にせずに、始まる。

 

 

 




なんでしょう、こう、気付いたら、楽がどんどんドSに…止める気はありません←

次回の王様ゲームは良い具合にわちゃわちゃ出来そうです。ふふふ。


今回もお読み頂きありがとうございました(^^)!!

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