楽×マリー『オネガイ』その後   作:高橋徹

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第30話「オサソイ」

とある日の昼休み、屋上にて。

 

「はい、あーん~♪」

「…あーん。…もはや一口一口あーんされるのに応じるようになってしまった…。…万里花は飽きないのか?」

「え?飽きませんよー!やろうと思えば三日三晩続けられます♪」

「いやそんな拷問みたいなことさせないよ!?」

いつものやりとりをする、楽と万里花。

 

「そう言えば、さ」

鼻歌を歌いながら(やたら上手い)、風呂敷で弁当を包んでいる万里花に楽がある話題を切り出した。

「?なんでしょう?たまってらっしゃいますか?」

ぶぼばっっ

「んな!?何いきなりぶっこんでんだおまえは!!」

「うふふ…♪ごめんなさい♪」

「まったく…」

「たまってらっしゃるのは聞くまでもないですわよね♪」

「そこじゃねえよ!?俺で遊ぶな~!」

「うふふ…♪それで、なんでしょう?」

「ったく…。この間、仲良くなろ~!ってことで、茶話会をやったよな?」

「そうですね」

「鶫が持って来たビスケットを食べた後、もう訳わかんないことになってたよな」

「…そうですね」

「…あれ、仲良くなれたのか…?」

「…さあ…」

「あの後、3人との仲は深まったか?」

「…桐崎さんのことをゴリライジりするのが楽しくなって、鶫さんの胸を揉みやすくなって、小野寺さんに下ネタを言えるようになった…辺りでしょうか」

「…まさかの一方的な変化。」

「…それなりに、絡みやすくはなりました、よ?」

「…向こうはそうでもないだろ、それ…」

「むむむ…」

「…万里花、もうちょっとがんばってみないか?せっかく万里花から行動を起こせたんだし…」

「…らっくんがそう言うなら、と思いましたけど」

「?思ったけど?」

「…少し、少しではありますけど、最近…私自身、もっとあの方たちと仲良くなりたいという気持ちが、少しだけ湧いてきました♪」

「…!!」

感動に打ち震える楽。

「…ま、万里花…大きくなって…!」

「んもう♪らっくんたらそんな、お父さんみたいなことを…♪…それに」

「?」

「らっくんが私にそんなことを言うと、違う意味に聞こえてしまいますよ~…?♪」

ぶぼっっ

「!!ば、ばか!!」

「実際、らっくんに揉まれるようになってからどんどんおっきくなってるんですよ?」

ぶぼあっっ

「!!お、おまえ…」

「も・ち・ろ・ん♪」

畳み掛けるように、万里花が楽に顔を近付ける。

「い~っちばん仲良くなりたいのは、らっくんですから…♪」

二人の鼻が触れ合う程の距離で、万里花が囁いて、微笑む。

「…!……。」

「…無言で触ると変態みたいですよ?らっく…んんん♡」

もう一度言うと、ここは昼休みの屋上である。

この二人、気付けばこんなことを繰り返しているようである。

 

<―確認―>

まだ付き合ってないよ!

 

そして、放課後。

「…と、言う訳で♪」

「…あんた、第一声がそれって…色々すっ飛ばしすぎでしょ」

万里花の切り出しの不自然さに対し、千棘が呆れ気味にツッコむ。

この日の放課後は楽・万里花・千棘・小野寺・鶫・るり・集のいつもの7人で話していた。

「まあまあ♪あ~、今日も桐ゴリさんのツッコミは冴え渡りますわね~♪」

「なんでエネゴリみたいになってんのよ!?それ褒めてないでしょ!?」

いつも通りである。

「ま、まあまあ千棘ちゃん…それで、橘さん、何を言おうとしたの?」

「あら、週六さん、助け舟ありがとうございます♪」

「きゃーーーーー!!!?!?!?ちょちょちょちょっと待って―――――!!!」

「こら!!橘万里花!!貴様お嬢と小野寺様に何と言うことを!!!」

「あら、Gさん、どうしました?」

「ほわあああああーーーーー!!!??!?ききき貴様何てことをほわあああああ!!!」

阿鼻叫喚の教室。

これだけの悲鳴が聞こえる教室は、定石で言えばものすごく怖いことになる漫画くらいにしか出てこないのだが。

「…少しだけ久しぶりに見たら、なんかすごいことになってない…?」

「…だねえ。万里花ちゃん、前よりも皆と仲良くなれたのか…な?」

皆の中の進展(?)に、少しだけ戸惑う二人。この組み合わせはお久しぶりです。

「…」

ぽすっ

「あうっ!」

呆れ気味に、万里花の頭を撫でる楽。

「まったく…仲良くなったんだか、悪くなったんだか…。ほら、本題は?」

「あ、そうでしたわ!♪会話が楽しくてすっかり本筋からずれてしまいました♪」

「あんた…絶対わざとでしょ…」

呆れる千棘。

「うふふ♪皆さん、よろしければ今度の土曜日…

私の家に夕食を食べにいらっしゃいませんか?」

「「「「「「え?」」」」」」

思わぬお誘いに驚く6人。

「もう、そんなに驚かなくても!いかがです?♪夕食を食べて一緒に遊んで…楽しいと思いますよ?」

「ふーん、あんたが自分から家に招くなんて…いいわよ?」

意外にも、真っ先に千棘が応じた。

少なからず、万里花との距離が近付いているのだろうか。

「まあ!ローランドゴリ崎さん、ありがとうございます!♪」

「何その語感だけは良い呼び名!?言葉遊びやめてくれる!?」

いつも通りのやりとり、なのだが、万里花はどこか嬉しそうだ。

万里花もまた、千棘との距離感の変化を喜んでいるのかもしれない。

結局6人とも予定も大丈夫で乗り気でオーケーし、土曜日18時に万里花の家集合と言うことになった。

 

 

その日の夜、万里花の自室にて。

「うふふ~♪さーてらっくんに何を作って差し上げようかしら~♪」

万里花は鼻歌を歌いながら(やはりやたら上手い)、猛烈な勢いで料理をしている。

…皆に作る予定なのだが。

そこに、LINEの通話呼び出しがかかった。

「あら?…!!」

携帯を手に取り、目の色を変える万里花。

電話をかけてきたのは、楽だった。

丁寧に、かつ超速で画面をスライドする万里花。

「もしもし、万里花?俺だけ」

「こここここんばんはらっく様っくん!!!」

「誰それ!?色々混ざってる!!」

テンパりすぎて複雑怪奇な呼び名を作り上げる万里花。

「どどどどうしましまし、どうしました!?」

テンパりすぎてぱっと見誤字にしか見えないセリフを口にする万里花。

「な、なんでまたそんなに…?」

動揺を隠せない楽。

「だだだだってらっくんからこんな夜に電話をくださるなんてももももう…私、嬉しくて…」

「…」

顔が真っ赤な万里花の言葉を聞いて、一緒に顔を赤くする楽。

「…俺も、この時間に万里花と話してるっての…なんか不思議だな。むずむずするっていうか…俺も嬉しいよ」

「抱いてください」

「んおえ!!?リアクションが飛んでる飛んでる!!」

「は!!あれ、私今何を!?あううう…!!」

楽からの電話に加えて、思わずにやけるような楽の言葉で一瞬正気を失う万里花。

「そそそそれで、どういったと用なのでしょう!?」

「…かわいいなあ。あ、土曜日なんだけどさ」

「いいい今、かわいいってぼそっと…!!あうう…ずるいばい…!!」

電話越しとは言え、万里花のリアクションが手に取るように分かる状況が面白くなったのか、万里花をからかう楽。

「はは♪本気だよ本気♪…その日の食材の買い出し手伝いたいからさ、俺と買い物行かないか?」

「ううう今本気ってさりげなく2回も~!!…え?」

「(しまった、前半と後半の落差が激しすぎた…)あ、その日に一緒に買い物行きたいんだけど、どうかな?」

「行きますそしてそのまま夜は二人でホテルでシングルベッドですねばっちりだと思います」

「また飛んでる飛んでる!!」

「は!!あうう私ったらまた…!!」

もう、収拾がつかないくらいにテンパる万里花。

昼間に千棘・小野寺・鶫を弄んでいた彼女とは、まるで別人である。

「…ほ、本当に…よろしいのですか?」

「もちろん!まあ、俺が言ったデートまではまだ時間があるし、今回は普通の買い物になるとは思うけどな。今度こそ、どうだ?」

「ももももちろんです!!よろしくお願いします!!はうう~~~♪♪♪」

有頂天になる万里花。

「…やっぱりかわいいな、もう。じゃあ、決定な!」

「あうう…また…はうう…。はい♪集合は朝4時でよろしいですか?」

「はええよ!?築地で競りに参加でもすんのかよ!?」

「は!それもそうですわね…じゃあ、10時にらっくんの家の前集合でどうでしょう?午前に買い物を済ませてしまって、午後は皆さんがお越しになるまで遊んだり、乳繰り合ったり(ぼそっ)、一緒に準備をしたり…色々したいです♪」

「おい今小声で乳繰り合ったりって言っただろ…」

「あら♪したくないのですか?」

「…」

「…」

「否定は、」

「否定は?」

「…」

「…」

「…しない、です」

「よろしい♪」

二人の位置関係はころころ変わる。二人もそれを分かって楽しんでいる風ではある。

「それじゃ、そう言うことで!…楽しみにしてるよ。おやすみ。」

「…はい♪おやすみなさいまし♪」

そう言って、優しく電話を切る。

ごろごろごろごろごろごろっっっ

「ほわああああああ♡♡♡らっくんから誘ってくれたらっくんから誘ってくれたらっくんから誘ってくれた~~~♡♡♡」

デートの誘い自体は3度目だが、一度目はダブルデート、二度目はまだ行っていないデートである。直近の日にちで誘ってもらえたのだから、いくらでも待つと楽に言った万里花でも、やはりとてつもなく嬉しいようだ。

「ううう…我慢できんばい♡」

 

ぶぶぶっぶぶぶっ

「ん?LINE…あれ、万里花から?」

「(投げキッススタンプ×200)」

「多すぎるわ!!トーク履歴消えちゃう!!」

「は!!申し訳ありません!!嬉しくてつい♡おやすみなさいまし♡」

「…そうか、おやすみ。」

万里花が楽への愛情のあまり、ついついスタンプを送り過ぎたところで、二人の夜は終わった。

 

 

続く。


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