遊戯王GX お隣さんに縁がある   作:深山 雅

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リアルはバテそうなほど暑いのに、作中は冬……夏なんて嫌いだ……。

というわけで、今回の途中から冬休みに入ります。冬休み編に突入です。


第12話 バイトと冬休み

 

 自室でのんべんだらりと過ごすこと、およそ半日。

 食堂で買ってきたゼリーやフルーツやジュースを摘みながらベッドでダラダラするという自堕落をしていた俺だったのだが、そんな平穏は長く続かなかった。

 

 「え~っと、だな……風邪って言っても、そんな大したもんじゃないから……そう興奮するな」

 

 ゴロゴログダグダとしていた所を友人たちに突撃され、かなり怯んでしまいました。

 

 「でも優、海に落ちたって!」

 

 「落ちたんじゃなくて、飛び込んだんだよ」

 

 まぁ、結果的には似たようなものだが。

 

 デュエルが終わったら見舞いに来ると言っていた4人は、本当に来てくれた。それはありがたいのだが……その勢いが凄まじかった。

 落ち着いて話を聞いてみると、どうやら昨夜の一部始終を明日香とカイザーに聞いたらしい。

 

 尤も、あの2人も最初から三沢達に話すつもりだったわけじゃ無かったみたいだけれど。

 一部始終を見聞きしていた2人は初め、俺の『大事なデュエル前に三沢を動揺させたくない』という意思を汲もうとしてくれていたんだとか。

 でも今朝になって明日香が、うっかり持ち帰ってしまっていたデッキを俺を通じて返そうとイエロー寮までやって来たのに、俺には会えなかった。どうやら親切なイエロー生に俺が風邪で休んでいると聞いたらしい。

 いやあのさ、それが誰かは知らないけど、気を遣って面会を断ってくれたのは解るよ。解るけど……それならそれで俺にも一言くれてもよかったんじゃないか? それだったらPDAで連絡取って口止めできたのに。

 そして明日香は三沢がレッド寮にいると知ってそちらに向かい、けれどそこで今度は親切なレッド生に三沢が既にリングに向かってしまったと聞いた。なので次はリングへと。そしてその道中で偶然カイザーにも会ったとのこと。

 リングに着いてみると役者は既に揃っていて、万丈目は懲りもせずに三沢を挑発していたらしい。デッキはあるのか、と。あぁ、そういえばアイツ、デッキが俺ごと海に落ちた所までしか見てなかったんだっけ。

 そこに2人が登場、デッキを渡した。そして何やかんやあって、昨夜の事の次第を詳らかにしてしまったのだとか。

 当然三沢は怒り(十代たち3人も怒ったらしい)、万丈目は追い詰められ、話の勢いで何故か寮の入れ替えどころか退学を賭けることになり、至極ピリピリしたムードの中でデュエルが始まった。

 おい、どうしてそうなった。何で退学なんて言葉が出て来るんだ、まるで意味が解らんぞ。

 

 万丈目が使ったのは【VWXYZ】のデッキでは無く、新学期の頃の地獄デッキだったらしい。ちなみにそれは炎属性がメインのデッキで、万丈目自身の失言によってそれを知ったらしい三沢は持っていた水属性デッキを使って危なげなく勝利。

 それによって三沢は昇格を許可された。しかし快進撃を続ける十代や、月一テストで敗北した俺に勝つまでは昇格する気は無いと突っ撥ねたのだとか……え、俺も?

 

 そして今に至る、と。どうやらデュエル終了後飛んできてくれたらしい。俺としてはありがたいのだがそれってつまり、万丈目はスルーされているってことか。自業自得とはいえ、惨めだろうなぁ。

 

 

 俺の風邪は本当に大したものでは無く、1日安静にしていただけで簡単に治ってしまった。それが偶々土日のことであったから、大事を取ってその翌日も大人しくはしていたけれど。

 

 

 そして月曜日のことである。

 

 「何でこうなってんの……?」

 

 「ウッキーーーー!!」

 

 「待てー! 優を離せ!!」

 

 こんにちは。ちょっと森の中を歩いていただけなのに何故かお猿さんに担がれている優君です。

 

 ちょっと待て落ち着こう何があった。最初からしっかり思い出してみようか。

 

 完全に復調して日常に戻ったが、今日の俺の時間割だと1時間目は空き授業だった。なのでのんびりと散歩をすることにしたのだ。

 そう、それだけのはずだったのに……。

 

 散歩の途中で俺は十代・翔・明日香・ジュンコ・ももえの5人組みと出くわした。

 俺と違ってこの5人は授業が入っていたはずである。十代と翔だけならばサボりかと考えただろうが、明日香たち女子3人も一緒となると只事では無い。

 なので一体どうしたのか聞いてみると、彼らは授業をサボったことは間違いないものの、その理由は万丈目を探すことという真面目なものらしい。

 どうやら万丈目は行方不明になって、しかも噂じゃ荷物を纏めて出て行ったらしい。

 もしや身投げでもしているのでは、と気になって探しに来て、森で俺と遭遇した。

 

 すると茂みからいきなり猿が現れて、俺は攫われた。

 

 うん、話が一気に可笑しくなったな。でもこれがありのままに起こった出来事なんだからどうしようもない。

 俺を担いで森の中を疾走する猿と、それを追い掛ける十代たち。どうしてこうなった。

 

 正直に言えば、俺は逃げようと思えば逃げられるし、この猿をブチのめそうと思えばブチのめせる。

 でも俺はコイツに見覚えがあった。妙なギプスやメットをしたコイツはあれだ、SAL研究所で虐待としか言えないような実験をされてた猿だ。ひょっとして、たまりかねて逃亡したのか? そう思ったら、心情的に反撃できなかった。

 

 森の木々を枝から枝に飛び移る猿に揺られ、どうするべきかと思案する。

 俺が先日送った映像から、SAL研究所が動物虐待を行っていることは確定された。なので近々メスが入る予定らしいのだが……こうして騒動が起こって事が露呈するなら、俺がわざわざスパイする必要って無かったんじゃね? 現実って空しい。

 

 そんなことを考えて嘆息している間に、猿は断崖絶壁へと辿り着いた。行き止まりだ。そこには1本だけ海に向かって伸びて生えている細い木があり、俺はそこに座らされる。そしてその前に仁王立ちをする猿。

 追って来た十代たちと黒服3人。いつの間にいたんだ、あの3人。けどアイツらは多分、研究所の人間なんだろう。ご丁寧に麻酔銃まで持っている。

 向かい合う猿と8人の人間。口を開いたのは黒服たちだった。

 

 「もう逃げられないぞ!」

 

 「麻酔銃で撃たれたくなければ、大人しく戻って来い!」

 

 「ウッキキィ!!」

 

 だが、それに歯を剥いて威嚇する猿。

 

 「チィッ! 生意気に人質なんて取りやがって!」

 

 ……あ、やっぱり俺って人質なんだ。うん、気付いてた。気付きたくなかったけど。

 だって何で俺をチョイスするんだこの猿は! あの時、あの場には明日香たちだっていたのに! 女子が3人もいて、何で俺? 

 いや、別に明日香たちの内の誰かを攫えって言ってるわけじゃないぞ? か弱い……か弱い? と、とにかく、乙女が3人もいて何で俺なのかが納得出来ん! 

 何だよ、俺の人質オーラは彼女たちのヒロインオーラすら上回るってのか!? 

 けっ。いーんだ、いーんだ。どーせ俺は人質要員ですよーだ。

 

 俺が内心でやさぐれている間に、黒服たちは十代たちに軽く状況説明を行っていた。俺は既に大体の事情を知っているから聞き流す。

 

 「おい、そこの猿! 俺とデュエルしろ!」

 

 ちょっと待て十代、それは何かが可笑しい。

 

 「アニキ!?」

 

 「猿とデュエルするつもり!?」

 

 いいぞ、翔、明日香。もっと言ってやれ。

 

 「デュエルをすれば互いに解り合える! 例えそれが猿でもな!」

 

 「いや、それって人類(と精霊)限定だと思う」

 

 人質という立場にも拘わらず、ついついツッコんでしまった。だってさ、何でみんなそれで納得するんだよ。猿にあるのかよ、そのかっとビング精神が。

 ああもう、十代はエビと同類だったのか……あ、十代の好物ってエビフライだ。そう思い至ると何故か納得できる。

 

 「行くぞ! デュエル!」

 

 『デュエル!』

 

 かくして、十代と猿のデュエルが始まった。十代が勝てば俺を解放する、猿が勝てば猿は自由の身という条件の下で始まったそれは、十代が危なげない勝利を収めた。

 猿も猿で獣族デッキを使って抗戦したのだがやはり、十代には力及ばず敗れ去る。猿だけに。

 

 「やれやれだ。サンキューな、十代」

 

 「お前なぁ。あんなにあっさり人質になんてなるなよ」

 

 解放された俺に、十代は呆れたような顔をした。いやだって、あの猿に手荒なことってしたくねぇもん。

 ちなみにあの猿だが、デュエルの途中にこの場に現れた仲間の猿たちと共に野生に帰って行った。ついでに言うと、十代とはデュエルを通じて解り合っていた。

 どうやら俺はまだまだ未熟だったらしい。猿にかっとビング精神が無いだなんて決めつけてしまっていた……でも違ったのだ、人類や精霊以外ともかっとビングは出来る。新発見だ。

 

 一方で黒服たちは何かゴネていたけれど、唐突に現れた大徳寺先生に『動物愛護の観点で訴えられますにゃ』と脅されてすごすごと撤退。先生GJ。

 

 「でも優君、余裕だったッスね」

 

 翔は感心したような顔をしていた。

 言われた俺は、はてと考える。さっきまでの状況を客観的に見詰め直してみよう。

 麻酔銃を手に持ち殺気立つ黒服。

 人質を取って構える猿。

 人質を取り戻そうと戦う友人。

 そんな面々を見ながら、不安定な木の上に腰かけてポケットに入っていた鈴カステラの小袋を取り出して摘みつつ、ツッコミを入れたり解説をしたりする人質。

 ……あれ、何だこれ? テラシュール。人質だけ危機感足りないぞ。そしてその人質は俺だ。

 でも仕方が無い。だって。

 

 「慣れてるからね」

 

 人質に。

 ちびっ子の頃に散々、ペガサスだのグールズ(未遂)だのドーマだので鍛えられてきたからね……よくよく考えれば、パラドックスの時もヤバかったんじゃね? もしも遊戯さんたちが負けていたら、俺は全力で殺されてただろう。

 うん、やっぱりさ。

 

 「今更、猿だの脱獄囚だのぐらいじゃ動じないって」

 

 「何で脱獄囚!?」

 

 おぉ、翔。ナイスツッコミ。

 そんな俺たちの漫才もどきを制したのは明日香だった。

 

 「翔君、優の冗談を真に受けないでちょうだい。話が前に進まないわ」

 

 バッサリと切り捨てるその発言に、翔はちょっと泣きそうになっている。

 でも酷いぞ明日香、俺は冗談なんて言ってない。

 

 あれは王国から帰ってすぐのことだった。

 幼かった俺は、バーガーワールドというハンバーガーショップに行った。当然1人でではない。

 当時その店では杏子さんがバイトしており、奢ってくれると言うので遊戯さんに連れて行ってもらったのだ。

 そしてその時を狙い澄ましたかのように……実際は偶然だろうが……店へとやって来た男。それはその頃ニュースになっていた脱獄囚だったのだ。

 そして当然の如く人質にされた俺。

 脱獄囚は泣きも喚きもしない所か『やれやれ』と言わんばかりに肩を竦めるちびっ子に面食らったようだったが、それでも構わず店に立て籠もろうとする。そんな彼に、俺は心の中だけで冥福を祈っておく。人質にされてしまった申し訳なさよりも、彼への同情が勝っていた。

 結末? んなもん何やかんやで遊戯さん……いや、アテムさんがヤツに火達磨になる幻覚を見せて終わったよ。俺は俺でエンディミオンが追撃(トドメとも言う)を掛けようとするのを止めていたので、詳しくは解らなかったけれど……これって下手したら、ショック死してたんじゃね?

 ただ遊戯さんがストッパーになってくれたようで、命に別状は無い程度だったらしい。それでもアテムさんはその後、遊戯さんに『やりすぎだ』と相当叱られたようだったけど。本人もちょっと反省していたし。

 

 助け出された俺を遊戯さんや杏子さんは心配してくれたけれど、俺は大丈夫だと言って笑ってみせた。事実、本当に心身ともに大丈夫だった。

 だってペガサスのミレニアム・アイなんてものに晒されて色んな意味で危機を味わったばかりだった俺は、脱獄囚に拳銃を突きつけられてもそれほど動じなかったのだ。非ィ科学的じゃないもんね。

 完全に脱獄囚+拳銃<ペガサス+ミレニアム・アイだった。むしろその時俺は、傍らのエンディミオンの殺気の方が面倒だった。

 ただそんな気持ちを吐露している時、一瞬だけ何かが可笑しい気がしないでも無かった。だがしかし。

 

 『それもそうだぜ』

 

 『優君、逞しくなったね』

 

 と、アテムさんや遊戯さんは納得していたので、多分、何も可笑しくなんて無いんだろう。

 

 『違う……何かが違うわ……』

 

 杏子さんは疲れたようにそう呟いていたけれど、一体何が違っていたのだろうか。

 

 さて、過去の話はこれぐらいにして。

 

 「万丈目君なら、今朝この島を去りましたのにゃ」

 

 事情を説明した俺たちに、大徳寺先生はそう告げた。

 そうか……あいつ、もう行ったのか。

 

 「でも先生、三沢との賭けのことは聞きましたけど、それで本当に退学になるんですか?」

 

 何しろ、万丈目が教師の承諾も得ずに一方的に切り出した賭けだ。果たしてそれを学校側が認めるのかどうか。

 事の顛末を聞いた時から考えていた疑問をぶつけると、大徳寺先生は食えない笑みを浮かべていた。

 

 「もしも万丈目君が退学届を出していたら、勿論そうなってましたのにゃ。けれど彼は、そうはしませんでしたにゃ」

 

 「つまり?」

 

 「学園側としては、退学では無く休学扱いすることになりますにゃ」

 

 なるほど。つまりは、正式な手続きを踏んではいないため、退学とはなっていない、と。

 それはそうだろうな、と納得した。一生徒が『負けた方が退学』とか言っても、学校側はそんなのに一々対応していられないだろうし。

 万丈目のヤツ、負けたのを認めて黙って出て行ったという点にはデュエリストとしての最低限の心構えが残っていたと言えなくも無いけど、自分が言ったことはそのまま通るとでも思っていたのだろうか? だから手続きもせずに身一つで出て行ったとか? 俺様というか、相変わらずというか。

 俺は内心で少し呆れていたけれど、大徳寺先生のその言葉を聞いて1番喜んだのは十代だった。またデュエルしたいらしい。

 

 俺だって出来ることならばそうしたい。だってあの一戦は、甚だ不本意なデュエルだった。

 まぁ、アイツのことだ。多分その内戻って来るだろう。

 折角マイクラもしたことだし、今度会った時には、心のピースがちゃんと組み直されていることを願う。

 

 

 

 その後俺は、今回の猿騒動をアカデミア内でさり気なく吹聴して回った。それによってSAL研究所の動物虐待その他諸々の問題はあっと言う間に公然の秘密状態となり、上層部にも知れ渡ることとなる。

 これで堂々と調査が出来るようになった、と満足げな笑みを浮かべていた人間もいたようだ。誰とは言わないが。

 そしてその結果、SAL研究所は閉鎖されることと相成る。猿騒動が起きてから僅か1ヶ月足らず、冬休み目前には事態が収束させられるというスピード解決だった。

 

 

 そして、アカデミアは冬休みを迎える。アカデミアでは夏休みは島を離れなければならないが、冬休みには滞在が許される……まるでどこぞの魔法学校のようなシステムだな、おい。

 十代たちがアカデミアに残るため、俺もどうだと誘われたが断った。帰って父さんや母さんに顔を見せたいし、その後も予定があると伝えると、友人たちは残念そうにしていたけれどすぐに引き下がってくれた。

 

 デュエルアカデミアは日本の学校としては珍しく、秋に新年度が始まる。

 その為か大型連休は冬と夏の2回だけであり、春休みに当たるものが存在しなかったりする。ただしその分、冬休みも夏休みも長めだが。

 今回の冬休みも、クリスマス前から始まった。

 

 

 そして俺は自宅へと戻ったわけだが……いきなりだけど、俺の家族を紹介したい。

 俺の家族は、父と母の2人。兄弟はおらず1人っ子だ。

 両親は真面目に働いているものの、暮らし向きは至って質素であり、はっきり言って貧乏である。

 

 ちなみに2人とも、精霊だの闇のゲームだののような特異性は無い。何故かバカ強い魔力を持って生まれてしまった俺の方が異端なのだ。

 だからエンディミオンやフェーダーもそういった点には気を遣ってくれていて、家族で過ごしている時に俺に干渉してくることは滅多に無い。俺が両親に不審がられたりしないようにね。

 

 祖父母だの伯父伯母だののような近しい親戚には、僅かな例外を除いて会ったことが無い。

 というのも、俺の両親がそもそも、駆け落ちカップルだからだ。そしてそれが現在まで尾を引き、親類とはほぼ絶縁状態なのだとか。

 当時まだ若かった2人……なので今でも同年代の父母と比較するとかなり若い部類に入る……は周囲に結婚を反対され、それでも愛を貫いて一緒になったらしい……言ってて恥ずかしくなってきた。何で自分の親の恋愛話を語ってるんだろう、俺は。

 そんな耳を塞ぎたくなるようなこっぱずかしい馴れ初めを教えてくれたのは、唯一2人の仲を応援していたという母の年の離れた妹……つまりは俺の叔母。彼女こそが、先ほど述べた『僅かな例外』である。ただし遠方に暮らしているため、早々簡単には会えない。

 

 そんな両親は未だにとても仲が良い。そりゃもう、『子供の存在忘れてるんじゃね?』と思ってしまうこともあるほどだ。はっきり言えばラブラブなのだ。正直、見るに堪えないことも多々ある。

 けれどきっと、不仲な家庭の中で育つよりはずっといいんだろう。

 互いに熱烈に愛し合っているからか、そんな両者の子である俺の事をとても大事にしてくれているという自覚もある。貧乏でも忙しくても、彼らなりに。

 

 なので俺は自分の家庭環境に不満は無い。貧乏を不便に思ったことがあるのは否定しないけれど、だからといって不満は無い。だって、生活が成り立たないほど困窮してるわけでも無いし。

 

 ただしそれも、デュエルアカデミアのような学費のバカ高い学校に進学するとなると、話が変わってくる。

 父さんも母さんも、『気にするな』と言ってくれた。子供は何も気にせずに勉強してればいいのだと。

 けれどその言葉を臆面通り受け取れるほど、俺は能天気にはなれなかった。いや、彼らは本心で言ってくれているのだろう。そして俺には何も言わず、仕事量を増やしたり自分たちの生活を更に切り詰めたりして学費を捻出してくれたのだろう。

 だが、それは嫌だったのだ。

 アカデミアに行きたいというのは、俺の我が儘である。近隣にある普通の高校に進学しても問題は無かったのに、わざわざアカデミアを選んだ。ならば、俺が出来ることはするべきだ。

 

 そしてその結果が、持ち帰った通信簿に如実に反映されていた。

 

 「凄いじゃない、優。頑張ったわね」

 

 帰宅した直後には無人だった自宅だが、夕刻には両親も戻ってきた。そして夕食後に通信簿を渡した後、母さんの第一声はそれだった。

 特待生待遇を維持するために勉強を頑張り続けた結果、自分で言うのもなんだけど、俺の成績はスバラシイものに仕上がっている。

 

 「しかし、体育が少し悪いな」

 

 同じようにソレを見る父さんに言われ、俺としては苦笑いするしかなかった。

 

 「体育、球技にまともに出られなかったからさ……」

 

 少し遠い目になってのその答えに、両親も同じように遠い目になっていた。俺のノーコンは周知の事実である。しかし、母がハッと正気に戻った。

 

 「優、あなたまさか、また十代君を殺しかけたんじゃないでしょうね?」

 

 「今までだって殺しかけたわけじゃないよ……運が悪かっただけで……うん、今回は大丈夫。十代に被害は出なかった」

 

 ただし他のレッド生が3人斃れたが、わざわざそんなことを言って話をややこしくする必要は無い。見るからにホッとした様子の母さんにこれ以上心労もかけたくないし。

 

 「でもさ、俺も結構頑張ったと思うぜ? 名前負けはしないで済んだよ」

 

 深くツッコまれたくなくて話の流れを変えるために冗談めかしてそう言ったが、父さんも母さんもキョトンとした顔になると次いでプッと吹き出す。

 

 「いやぁね、優。確かにあなたは頑張ってくれたけれど、『優』は『優秀』の『優』じゃないわよ?」

 

 「え、そうなの?」

 

 初耳だよ。いやそういえば、名前の由来なんて聞いたことが無かったっけ。

 今度は俺がキョトンとしたがそれに父さんがくつくつと笑った。

 

 「ああ……懐かしいな。そういえば話してなかったか。優、お前の名前は初めは優(ゆう)ではなく、優(すぐる)だったんだぞ」

 

 「え!?」

 

 初耳だよパート2。

 

 「お前が生まれて、命名して、けれどまだ出生届けを提出する前だった。武藤さんたちが来たんだ」

 

 「武藤さんって……」

 

 「奥さんと双六さん、それに遊戯君だ」

 

 あ、当時のお隣さんのほぼ全員ですね。

 でも、退院直後の訪問はあまり良くないんじゃ……あ、でもそういえば、子育てに関して色々と相談してたって聞いたことがあるような……父さんも母さんも初めての子育てなのに、相談できるような身内がいなかったみたいだし。

 

 「そう、それでね」

 

 思い出しているのか、こちらもクスクスと笑う母さん。

 

 「命名表を見た遊戯君がね、優(ゆう)って読んだのよ」

 

 「…………は?」

 

 「まぁ、ふりがなを振っていなかったし、あの子もあの頃はまだ小学生だったからな。見たままに読んだんだろう」

 

 母さんの言葉を引き継いだ父さんだけれど、俺はポカンとするしかなかった。

 

 「でも……それって、その場で訂正すれば良かっただけなんじゃ……」

 

 優(ゆう)という名に不満があるわけじゃない。そうではないが釈然としないのも事実で、思わず挙手をして指摘した。

 

 「普通ならそうなんだろうが」

 

 俺のそんな様子が面白いのか、父さんは相変わらず笑いながら話を続ける。

 

 「よくよく考えてみると、そっちの方が父さんたちの願いに近かったからな。採用させてもらった」

 

 えぇー。何それ。

 

 「願いって、どんな?」

 

 1番大事な所を聞いてみると、今度は母さんが教えてくれた。

 

 「そのままよ。優しい子になってくれますようにってね……もっと言うと、遊戯君のような優しい子になってくれますように、かしら」

 

 えと……えーと、それは……。

 

 「……完璧に名前負けしてるじゃん」

 

 無理だろ、遊戯さんのようなって。はっきり言ってあの人、菩薩だぞ。優しさを強さにまで昇格させちまったような人だぞ。無理だよ。

 

 「あら、この子ったら。照れちゃって」

 

 くすくす笑いが止まらない母さんから、プイッと顔を背ける。多分、今の俺の顔は赤くなっているはずだ。

 

 「あなた、昔っから遊戯君に良く懐いてたものね。私たちが迎えに行っても、『まだお兄ちゃんと遊ぶー!』とか言ってしがみ付いて……」

 

 「何年前の話だよ! からかわないでくれ!」

 

 それでも止まらない母さんの発言に羞恥で耐えられなくなり、思わず叫んでしまった。

 だってそれ、俺がデュエルを始める前の話じゃん! つまりはまだ前世の記憶を取り戻す前で、心身ともに正真正銘ちびっ子だった頃の話! 止めてくれよ恥ずかしい、顔から火が出る穴があったら入りたい! だから出来るだけ思い出さないようにしてたのに!

 

 それでも、俺の威嚇など猫が毛を逆立てている程度にしか見えていない両親は、『はいはい』と軽くいなしてくるだけだった。

 

 「でも、懐いてるのは本当でしょ? 明日から武藤さんちにお邪魔するって言うんだし」

 

 「……バイトに行くだけだい」

 

 そう、それがこの後の用事。残りの冬休み、俺は童実野町に滞在して亀のバイトをすることになっている。そのように話が纏まった事情については、また追々語らせてもらう。

 

 「折角帰って来たのに、家にいるのは1日だけだもの。薄情なんだから」

 

 「ニヤニヤ笑いながら言われたって、気にならないね。俺がいなかったらいなかったで、どうせ2人でベタベタするんだろうし」

 

 「親をからかうもんじゃない」

 

 ピシャリと言う父さんだけれど、『ベタベタ』という表現は否定しない辺りに本音が透けて見える。母さんも、『あらいやだ』と言って頬を染めるし……この万年新婚夫婦め。

 2人ともまだ若いし、次の夏休みに帰って来た時に弟か妹が生まれてても驚かないぞ、俺は。

 

 しかし笑い合っていた2人はふと、真面目な顔になった。

 

 「ねぇ、優。あなた……」

 

 いきなり投げ掛けられた問いに、俺は咄嗟に答えることが出来なかった。そんな俺に2人は、考えて欲しい、言う。

 よく考えて、いつでもいいから答えを聞かせて欲しい、と。俺はそれに、神妙に頷く。

 

 その夜、久々に出した布団に包まりながら両親の『問い』について考える。数ヶ月ぶりに使ったはずの俺の布団はしかし、埃は少しも被っておらず黴臭さも無かった。いつでも使えるように手入れされていたらしいことが窺える。

 昔からそうなのだ、と襖を見ながら思う。正確には、その襖1枚を隔てた先の部屋で寝ている両親について考えている。

 両親共働きで忙しく、幼少期はしょっちゅうお隣に預けられていた。双六じいちゃんが閑古鳥が少し鳴いているゲーム屋の店番をしつつ相手をしてくれ、その後には学校から帰って来た遊戯さんに遊んでもらう。そんな1日を過ごすことが多かった。

 けれどそんな中でも、時間が許す限りは俺の相手をしてくれた……互いの相手もしてはいたが。

 

 不便や苦労の多い生活ではあった。けれども、家族仲は至って良好であったと自信を持って言える。

 故に実際の所、先ほどの両親の『問い』にどう答えるかについては、既に結論が出ていた。

 来年の夏休みには、色々と話し合おう。そうしよう。

 

 翌日、笑顔で手を振りながら見送る2人を背に、俺は童実野町へと向かった。

 

 

 

 

 後に俺はこの時のことを思い返して、やりきれない気持ちを抱くこととなる。

 もしも、なんて言ってもキリが無いことだ。

 けれどそれでも、もしも。もしも俺に予知の力があったのならば。

 そうしたらきっと、先延ばしにしたりはしなかったのに、と。

 

 

 

 

 入試の時も童実野町には来たが、あの時は海馬ランドにしか行かなかったため、この場所に来るのは本当に久しぶりだった。

 ゲーム屋『亀』は昔と変わらず……とはいかないな、これは。少しばかりボロ……いやいや、年季が入ってきている。だがしかし。

 

 「ほほう。優君、久しぶりじゃのぅ!」

 

 目の前で笑うこのご老人は、昔とあまり変わっていない。

 

 「久し振り、双六じいちゃん」

 

 実の祖父母を知らない俺は、いつも優しく面倒を見てくれるこの人をいつの間にか『じいちゃん』と呼ぶようになっていた。前世の記憶を取り戻す前のことなのでガキだった俺には遠慮というものが無く、また、そういった存在への憧れもあった。相手の方も笑って許容してくれたためにそのままそう呼び続け、それですっかり定着してしまっていたためにその後訂正するのも難しく、今でもそのまま呼び続けている。

 

 「ごめんな、図々しく押しかけちゃって」

 

 「何、誘ったのはわしの方じゃ。よろしく頼むぞい」

 

 そう、この冬休みに俺がこの店でバイト……それも住み込みのバイトをすることになったのは、元々双六じいちゃんの提案だった。俺はそれに乗っかり、年末年始の数日を除いて店を手伝いつつ、この家に滞在することとなった。

 それというのも。

 

 「あらあら優君、久しぶり! すっかり大きくなって!」

 

 店から住宅部分へと移動した所で出くわしたおばさんは、既に旅支度を終えていた。

 彼女は流石に双六じいちゃんのように、昔と変わらない、とはいかなかったらしい。具体的に言えば、皺や白髪が増えている。けれど女性に、しかも昔散々世話になった人に対して面と向かってそんな失言をかませるはずも無く、俺はその感想を心の奥底に封印した。

 

 「久しぶりです、おばさん。もう行くんですか?」

 

 「えぇ、助かったわ。まったくあの子ったら、全然帰って来ないんだもの」

 

 あの子、というのは遊戯さんのことだろう。おばさんは深々と溜息を吐いた。

 

 遊戯さんが学生生活を終えてから後、おばさんは毎年この時期には単身赴任中のおじさんの元に滞在しているらしい。らしいというのは、それは俺が引っ越してからのため、電話で聞いて知っていたのみだったからだ。

 にしても、おじさんは一体何年単身赴任してるんだろう。もうかなり長いのに。

 まぁ、そんな疑問はどうでもいい。

 けれど今年は年末が近付いているのに遊戯さんが旅から戻らず、やきもきしていたようだ。双六じいちゃんは出来る限り店を開けたいと望んでいるため、本人は大丈夫と言っていても既に老齢の彼を1人残して行く気にもなれず、今年は諦めようかと思っていたんだとか。

 そこで双六じいちゃんが提案したのが俺の滞在だった。おばさんとしても昔から知っていて(しかも母さんとは現在進行形でメル友らしい)、今年高校生になった俺なら安心できるだろうと考えたようだ。信頼が胸に刺さるぜ。

 俺としても、ここにいれば万が一遊戯さんが戻ってきた時にすぐ解る。何せここは彼の実家だ。

 そうして様々な考えが重なった結果、今のこの状況は生み出された。

 

 「確かに、相当長いですね」

 

 遊戯さんを庇いたい気持ちが無いわけじゃないが、今回の旅が妙に長引いているのも事実だ。俺が遊戯さんが旅に出ていることを知ったのは制裁デュエルの直後。実際に旅立って行ったのはそれよりもさらに前だろう。そして今は12月末。うん、長い。

 なのでおばさんの発言を否定することは出来ず、俺は苦笑しながら追随した。おばさんは我が意を得たりと大きく頷く。

 

 「そうなのよ! まったくもう、年末までには戻ると思ってたのに!」

 

 確かに、日本人なら大抵は年末年始に故郷に戻る気が起こるだろうし、おばさんが苛立つのも無理は無い。だがそれを宥めたのは双六じいちゃんだった。

 

 「まぁまぁ。もしかすると、年の瀬が迫っていることにも気付いておらんのかもしれんぞ」

 

 ついでにクリスマスにもね。

 

 「気付いていないって、お義父さん。まさかあの子がそんな秘境に行っているとでも仰るんですか?」

 

 「…………秘境ならまだいいけど」

 

 「? どうしたの、優君?」

 

 「あ、いえ、何でもありません」

 

 下手したら異世界とかにいるかもしれないと思い、ポロッと呟いてしまっていた。けれどそれは彼女の耳には正確に捕えられてはおらず、俺は凄くホッとした。

 

 

 

 

 「優君、お昼はもう食べたかの?」

 

 おばさんを見送った後、双六じいちゃんはそう切り出した。まだだったので正直にそう答えると、1枚のチラシを差し出される。

 

 「なら、これを使うかの?」

 

 「これは?」

 

 「今朝の新聞に入っていたチラシじゃ。ほれ、下の方にクーポン券がついておるじゃろ?」

 

 なるほど、と納得してそのチラシを受け取る。元々バイト自体は明日の朝から始めることになっているため、今日は懐かしの童実野町を少し見て回ろうかと思っていたのだ。

 ありがたく受け取り、散歩も兼ねて行ってみようかと思い店名を確認したのだが。

 

 「…………バーガーワールド」

 

 「駅前のハンバーガーショップじゃ。昔、杏子ちゃんがバイトしておった店でもある」

 

 はい、よく知ってます。まだあったのか、あの店。

 

 「あの、良ければ俺が何か作ります」

 

 出来ればあまり行きたくない店である。なので1つ提案をしてみた。

 

 「料理が出来るのかの?」

 

 「はい。この町から引っ越して行った後も両親は相変わらず忙しかったので、俺がよく作ってました」

 

 「ほ~、感心じゃの~」

 

 目を丸くして見られ、俺は少し照れる。

 でも実際、料理の腕にはそこそこ自信があるのだ。

 何しろ引っ越し先では、俺が料理が出来る事を知った食いしん坊(お隣に在住)が約1名、『あれが食いたい』『これが食いたい』と言って自宅に引っ張り込み、あれこれと作らせるのだから。その分こっちもこっちで対価はブン捕っていたので、それはそれで別にいいのだが。

 まぁ、お隣さんも我が家と同じく両親共働きで留守がちだったからなぁ。

 それに、そのおかげでレパートリーが増えて腕も上がったのだから、結果的にはイーブンだろう。

 

 ちなみに、掃除や洗濯なんかも担当することが多かったため、得意とまでは言わないが一応は出来る。

 

 結局この日の昼食は、武藤家の冷蔵庫に残っていた食材で炒飯を作って食べた。

 これから暫くの間はこの家の家事も俺のバイトに含まれていたりするので、丁度いい経験となった。

 

 俺が滞在することになったのは客間の一室だった。

 双六じいちゃんは、昔のようにゆっくりくつろいでくれ、と言ってくれた。だがしかし、流石にちびっ子の頃のような振る舞いは出来ないので、それなりに遠慮は出てしまう。けれどそれでも、さほど肩を張らずに過ごすことは出来ていた。多分、双六じいちゃんの親しみやすい人柄のおかげでもあるんだろう。

 

 この町に来てすぐ、クリスマスとなった。ゲーム屋にとっては繁忙期と言っても過言では無い。おそらくだが、だからこそ俺が呼ばれたんだろう。流石に双六じいちゃん1人では手が回らないと判断して。いつもなら遊戯さんがいたんだろうけど、今年はね。

 

 これでもコンビニでバイトしていたことがあるので、接客の経験は有る。え? いつコンビニでバイトしたのかって? 前世でだよ。

 

 「ありがとうございましたー!」

 

 子どもへのプレゼントなのだろう、レアカード(かつて遊戯さんがどこからか持ち帰った物)を買ってプレゼント用にラッピングしてもらった中年のおっさんが帰って行くのを、営業スマイルで見送る。

 俺の仕事は主に、店内の掃除・接客だ。それに家事。

 あぁ、働くって素晴らしい。そうだ、給料が出たら両親に何か送ろう。で、残りは貯金。うん、そうしよう。

 

 クリスマス商戦とは言うけれど、だからといってひっきりなしに客が来るわけではない。忙しいことは間違いないのだが、一息つける時間というものは存在するのだ。

 俺はそんな時間を利用して、双六じいちゃんとデュエルモンスターズ以外のゲーム(チェス・オセロ・囲碁・将棋など)に興じたりもした。なまじデュエルアカデミアのような学校に通っていると、それ以外のゲームをする機会が無い。なので存外に楽しめた。

 

 そうこうしている内に時が過ぎ、店を閉める時間がやって来る。

 クリスマスも過ぎたのなら店は落ち着くかなぁ。あ、それなら。

 

 「お節でも作り始めようかな……少しずつ進めておけば後が楽だし」

 

 ポツリと呟くと、それを聞きとがめた双六じいちゃんは目を丸くした。

 

 「優君はお節が作れるのかね?」

 

 「うん。一通りは」

 

 コクリと頷き続ける。

 

 「だって日本人だし。多めに作って冷凍しとけば、正月過ぎてもおかずに困らないし」

 

 お節は元々保存食だもんな。

 しかしそんな俺に、双六じいちゃんは優しーく微笑むだけだった。何だろう、どことなく視線が生暖かいような気がする。

 

 「…………優君はいつでも嫁に行けそうじゃのう」

 

 え?

 

 「何それ笑えない」

 

 「学校を卒業したら本格的にここで働く気は無いかね?」

 

 「恐れ多いので遠慮させて頂きます」

 

 

 

 しかし、こうして平和に過ごせたのもこの日までだった。

 

 

 

 「もーいーくつ寝-るーとー♪ おーしょーぉーがーつー♪」

 

 「悪いが、その調子の外れた歌を止めて欲しい」

 

 「現実逃避ぐらいさせてよ、磯野さん」

 

 説明しよう。

 今俺は、早朝から拉致られてリムジンに乗せられ、KCへと向かわされている……まるで意味が解らんぞ!?

 落ち着け、状況を整理するんだ。ビークール、ビークール、デュエリストは狼狽えない。

 

 俺は今朝目を覚ましてから、朝食の用意をし、洗濯をし、開店前に店の前を掃き掃除していた。OK、ここまでは普通だ。何も可笑しくない。

 しかし掃き掃除をしている最中、突如目の前に黒塗りのリムジンがヌッと現れた。いきなりのことに目を丸くしていると、その車からは見知った黒服サングラスの男こと磯野さんが出て来た。そしてこうのたまったのだ。

 

 「海馬様の命により捕獲に来た」

 

 うん、何かが可笑しい。だから当然、俺は質問したね。

 

 「捕獲って?」

 

 「普通に呼びつけただけでは逃亡の恐れがあるから、と」

 

 流石社長、よく解ってる。

 そりゃそうだろ、こちとらバイト中なんだよ。

 そこで俺は、エプロンの前ポケットに入っていた携帯を取り出して連絡を入れた。恐らくは事情を知っているだろうモクバに。

 

 「おい、磯野さんが来たけどどういうことだよ」

 

 『あー、行っちまったか』

 

 電話の向こうの彼は、やれやれとでも言いたげだった。

 話を纏めるとこうである。

 俺がこの冬休みに童実野町に滞在すると知った社長は、本当ならすぐにでも俺を呼び付ける気だったのだとか。おい、何でだよ。

 しかしモクバが一言添えてくれたため、クリスマス商戦が終わるまでは待つと譲歩してくれていたらしい。だからって、クリスマス明けの早朝に来るなよ。

 

 『けど、お前にとっても来て損は無いと思うぜぃ。ちょっと頼みたいことがあるんだ』

 

 「いや、でも、俺だってバイトの途中で……」

 

 『お前が吹っ飛ばしたタイタン、保護するのに結構苦労したぜぃ』

 

 「行かせて頂きます」

 

 くっそぅ、ここでそれを持ち出すか。

 

 こうして、俺はKCへとドナドナされることになったのだった。ちなみに双六じいちゃんには、道中リムジンに揺られながら電話でその旨を伝えた。モクバとの電話を終えたらそのまま後部座席に押し込まれたため、直接伝える暇が無かったのだ。持ち物も、ポケットに入れていた携帯電話と、腕に付けていたデュエルディスク+デッキのみ。

 ちなみに双六じいちゃんは少しも怒ることなく、『海馬君じゃから仕方があるまい』で納得してくれた。ありがとう、双六じいちゃん。今夜は何か好物を作るからね……帰れたら、だけど。

 

 そしてここで話は現在へと帰還する。

 

 KCに行くということで話は纏まったものの、あまりに急な話であったために思わず現実逃避をしてしまい、歌いだしてしまったのだ。お節、ちゃんと作る時間取れるのかな……。

 

 辿り着いたKCには、まだ人も疎らだった。単純に時間が早いからだろう。

 しかしそんな中でも、俺はかなり浮いていたと言っていい。

 超前衛的な内装の会社で、その会社の社長の側近がジャージにエプロン姿の少年を先導して歩いているのだ。浮かないはずが無い。おかげで俺は少ない社員にジロジロと見られる羽目となった。ちくしょう。

 人の目を避けるようにそそくさとエレベーターに乗り込み、そのまま最上階へ。そこにあるのは社長室だ。

 

 「社長、上野優を引っ立てて参りました」

 

 磯野さんが重厚なドアをノックしつつ声を掛けると、室内から『入れ』という声が聞こえた。にしても『引っ立てて』って……そう思うなら逃がしてくれよ。

 別に社長が嫌いなわけじゃない。城之内さんのようにディスられているのではないため、苦手というわけでもない。

 ただ、いきなりあの人に会うのはかなり疲れるのだ。

 

 「失礼します」

 

 磯野さんはドアを開けるとそのまま俺を促してきたため、大人しく従って中へと入る。

 

 「ふぅん。よく来たな」

 

 部屋の中心よりもやや窓際の、眺めが極めて良さそうな位置取りに置かれたデスク。

 そこには久々の社長がいた。社長だけでは無く、デスク前のソファにはモクバもいる。こちらは何も言わずにただ、ヒラヒラと手を振って来た。

 

 「それでは、私はこれで」

 

 「え!?」

 

 もう? と思ったが、磯野さんは宣言通りそのままドアを閉めて行ってしまった。

 そして後に残されたのは、俺たち3人のみ。この広い社長室に、3人だけ。うん、疲れそう。

 溜息を吐きたくなるのを押さえ、俺はモクバの正面のソファに腰かけた。ジュースが置いてあったし……ガキ扱いか。

 

 「あのですね、せめて事前に連絡ぐらい入れてくれても良かったんじゃないですかね?」

 

 これだけはひとまず言いたくて、俺は社長に苦言を呈した。

 

 だって、想像してごらん。

 ここは天下のKCコーポレーションの社長室。広々とした空間は内装も一級品で、待ち構えるは社長と副社長。

 そんな中にジャージとエプロン姿で放り込まれる俺の心情を。想像してごらん。

 いくらその社長と副社長が昔からの顔見知りとはいえ、場違い感が拭えない。俺のメンタルが弱ければ、イジメと感じていたかもしれない。

 

 しかしあの社長が俺の苦言如きを気にかけてくれるはずもなく、フンと鼻で笑うだけだった。クリスマス明けまで待ってくれただけでも温情なんですね、解りません。

 

 さて本題だ。何故俺が呼びつけられたのか。その理由は2つあったらしい。

 

 「優。貴様、遊戯と連絡を取る術を持っているのか?」

 

 まず第一にそれか。俺は肩を竦めた。

 

 「無いから、『亀』で泊まり込みのバイトなんてしてるんですよ」

 

 もしもあれば、遊戯さんが帰って来たのを確認してから突撃している。連絡が取れないから自宅で待ち構えているのだ。

 だが俺のその返答は、社長には不満だったらしい。

 

 「チッ……使えんな」

 

 そう言うんなら呼ぶな。マジで。

 思わず半眼になったのに気付いたのだろう、フォローを入れてくれたのは正面のモクバだった。

 

 「実はな、遊戯に話を通さなきゃなんねぇことがあるんだ」

 

 「話?」

 

 「ああ……あ、これ食えよ。美味いぜぃ」

 

 差し出されたのは、茶請けらしいクッキーだった。明らかに高そうな缶に入っているがしかし、こんな朝早くからドナドナされた俺の脳内に遠慮の文字は出て来なかった。なのでありがたく受け取る。確かに美味い。

 社長はこの件に関してもう自分から話す気は無いのか、モクバが説明を引き継いだ。

 

 「実はな、遊戯のデッキをアカデミアに展示しないかって企画が来てるんだ」

 

 「……それ、今更遊戯さんの許可が必要なのか? これまでだって、至る所で何回も展示されてきたじゃんか」

 

 「でもそれは、あくまでもレプリカデッキだ。知ってんだろ? でも今回は話が違う。遊戯が実際に使っていたデッキを展示しようって話なんだぜぃ」

 

 「ぶっ!?」

 

 思わず噎せたため、ジュースでクッキーを喉の奥に流し込む。くっそー、勿体ない。

 だがしかし、俺が驚くのも仕方が無いことのはずだ。

 

 「おいおい、遊戯さんは最近じゃあんまり表舞台に出ないとはいえ、現役のデュエリストだぞ? それで本物のデッキを展示するってのか?」

 

 デュエリストにとって、デッキは剣だ。それを手放すなんて考えられないことだった。

 しかし俺のその問いに、モクバはいや、と首を横に振った。

 

 「本物は本物でも、今使っているデッキってわけじゃない。かつてデュエルキングの称号を得た時期のデッキのことだ」

 

 あれ? でもそれって……。

 

 「それって、遊戯さんのデッキっていうより……アテムさんのデッキなんじゃ……」

 

 視界の端で、社長の腕がピクリと動くのが見えた。しかしその表情には感情が出ていなかったため、見なかったことにして話を進める。

 

 「そうとも言えるぜぃ。でも、その事実を知っているヤツは少ないからな。世間一般から見りゃ、間違いなく遊戯のデッキってこった」

 

 まぁ、そのデッキも遊戯さんとアテムさんの2人で組んだものなわけだし、遊戯さんのデッキと言えなくも無いしね。それについてはちょっと置いておこう。

 バトルシティの頃と今とでは、カードプールも違う。故に、デッキも少なからず変化しているだろう。だが。

 

 「それでも、今でもメインで使っているカードだってあるだろ? それこそブラマジとかさ」

 

 「ああ。だから本物のデッキを展示するのはごく僅かな期間限定で、その後は例の如くレプリカデッキにしようってわけだ」

 

 「ああ、うん。話が繋がった。つまりはごく短期間だけカードを貸して下さい、という話がしたいわけだ」

 

 可能性が無いわけじゃない。

 今使っているデッキを丸ごと貸してくれと言われればそりゃあ断るだろうが、後進の育成のために持っているカードを貸してくれというのなら、頷くかもしれない。

 

 もしもその企画が通れば、アカデミア生たちは熱狂するだろう。デュエルキングが実際に使い、頂点を取ったデッキ。垂涎ものの宝と言っていい。

 レプリカデッキの展示だって長蛇の列が出来るのに、それが本物だなんて。

 ……こう言ってはなんだが、俺はあまり興味が無いけど。だって遊戯さんのことは尊敬してるけど、その当時のデッキはある意味では慣れ親しんだデッキだ。幼い頃、何回も何十回もデュエルしたデッキ。もしもアカデミアでガラスケースに入っているのを見たとしても、恐らくはただただ懐かしさを感じるだけで、ミーハー的な感情は沸き起こらないだろう。

 だからこそ、この2人もこうして普通に俺に話してるんだろうな。

 

 「どこの誰が考えたのか知らないけど、思い切ったことを言い出したな」

 

 「言い出したのはアカデミアの理事長だぜぃ」

 

 …………は?

 

 「理事長?」

 

 それってヤバくないだろうか。

 

 「ああ。影丸ってんだけどな。アカデミア生たちにやる気を出させたいんだとよ。飴と鞭ってトコじゃねーのか?」

 

 何だろう、何かの裏があるようにしか思えない。

 

 「他の誰がダメでも、兄サマなら遊戯の許可が得られるんじゃないかってな」

 

 「煽てられたのか」

 

 ボソッと呟いた俺の言葉はとても小さく、目の前で誇らしげにしているブラコンの耳には届かなかったらしい。

 しかし実際の所は、この社長が煽てられて乗せられたとも思えない。恐らくは真実、アカデミア生に飴と鞭を与える気なんだろう。

 けど、理事長……理事長か……となるとこの企画、通らない方がいいんじゃないか? けど最終的に決めるのは遊戯さんだしな……それに、十代とかは絶対見たがるだろうし……悩む。

 

 「その、理事長ってのは、えーっと……よくそういう案を出して来るのか?」

 

 「いや、滅多に無いぜぃ」

 

 言ってモクバはグラスに口を付けた。どうでもいいが、ヤツもジュースである。

 

 「むしろヤツはどちらかといえば、人目を避ける傾向にあるな。俺も直接会ったことは無いくらいだぜぃ。ただ、時々強硬な主張をしてくる。アカデミアを孤島に建設することを決めたのもヤツだ。ま、食えない爺さんって感じだな」

 

 その真意は……三幻魔なんだろうなぁ。

 

 最終的にこの話は、遊戯さんと連絡が取れたらこの事を伝えるか社長に連絡するように伝えるかしておいてくれと言われて終わった。

 そして次の話に入り、今度は再び社長が口を開く。

 

 「シンクロ召喚のテストプレイ?」

 

 「そうだ」

 

 と、いうことらしい。

 

 シンクロ召喚は、来年の夏に発表され、秋に実装される。これは既に確定事項となっている。以前、ペガサスと電話で話したのだ。

 

 『機はほぼ熟していマース。シンクロ召喚の発表、いつにするか案はありマースカ?』

 

 「え、そっちで勝手に決めて下さいよ」

 

 『バット、中々決まらないのデース』

 

 「うーん、じゃあ来年度の始まりならどうですかね?」

 

 『OK! デワ夏にでも発表しまショウ!」

 

 「……え? 通っちゃった? 適当に言っただけだったのに……ひょっとして俺、丸投げされてた?」

 

 『オー、ソーリー。バット、ユーの提案なら関係者たちも納得してくれマース。何と言っても……フフ。提唱者ですからネ』

 

 ってな感じで。シンクロの概念・システムだけでなく、発表時期の提唱者にまでされてしまったぜ、ちっくしょう。

 

 閑話休題。

 

 で、そのシンクロ召喚のテストプレイを手伝えということらしい。

 

 「何しろ、シンクロ召喚の存在を知る適当なデュエリストなど、貴様と遊戯ぐらいのものだからな」

 

 そう言って胸を張る社長。いや、あんたも知ってるじゃないですか……ブルーアイズ以外のデッキを使う気が無いんですね、解りました。

 デュエルディスクによるソリッドビジョンは、KCによるものだ。こればっかりは特許の都合上、I2社は手が出せない。

 

 「プログラムに不備が無いかどうかは、実際にデュエルをしてみんことには判断がつかんからな」

 

 ただモンスターや効果を映像化させるだけならそう難しいことでは無いだろうが、何しろシンクロ召喚は全く新しいシステムである。万一にでも妙なバグが無いようにしたいんだろう。

 そのためにはプログラマーやデザイナーではなく、本職のデュエリストが協力した方がいい。そして都合のいいことにこの冬休み、全ての事情を知る俺が童実野町にやって来た。まさに鴨が葱を背負って来たような感じだったらしい。

 

 だがしかし、今の俺は『亀』のバイトなのである。

 社長が命じている時点で俺に拒否権は無いんだろうが、その時はその時で魔法都市にでも逃げればどうとでもなる。流石の社長も、精霊と交流することが出来ない以上は異空間移動など出来ないだろうし。

 俺は無言で携帯を取り出して双六じいちゃんにかけ、事情を説明する。

 ちなみに双六じいちゃんも、シンクロ召喚のことは知っている。何しろ箝口令が敷かれる前に話してしまっていたので、隠しようが無かったのだ。

 ぶっちゃけて言うと、パラドックスとの一件は遊戯さんと一緒になってペガサスに話すよりも先に話してしまっていた。遊戯さんが元気に生きて動いている双六じいちゃんを見て感極まってしまっていたため、事情を話さざるを得なかった。

 

 『優君は、やりたいんじゃな?』

 

 「え?」

 

 その双六じいちゃんにはあっさり見抜かれてしまい、俺は内心でドキッとする。

 

 ここに来る前の電話でモクバは、俺にとっても悪い話では無いと言っていた。

 そして確かに、悪い話では無い。シンクロ召喚の提唱者、プロジェクトのアドバイザー、そんな御大層な肩書を持ってはいるが、俺が実際にシンクロ召喚を扱ったことは無い。それをこの段階で実践出来るとなれば、デュエリストとしては得難い経験となるだろう。

 なので、その誘いを受けたい、と思っている俺がいる。

 

 『クリスマスも過ぎて、店は暇じゃ。気にする必要は無い』

 

 「双六じいちゃん……」

 

 あれ何だろう、ジンときてしまった。

 

 結局俺は、テストプレイに協力することとなった。ただし、ちゃんと家事は行うために時間配分させてもらえるようには交渉したが。

 

 することは簡単。デュエルマシーンとひたすらデュエルをするだけだ……デュエルマシーン2台でデュエルさせれば良かったんじゃね? と聞いてみたが、マシーンではプログラム外の事は出来ないため不完全らしい。

 

 チューナーモンスターやシンクロモンスター、それにサポートカードに関しては好きに使っていいと言われて保管室に連れて行かれた。どうやらサンプルとして一通り揃えられていたらしい。しかもありがたいことに日本語版。

 

 俺が持っていたデュエルディスクもカスタマイズされることとなった。見た目には変わらないが、中身が新システムにも対応できるように大きくアップデートされるのだとか。

 世界でも最初期型の我が愛機に、世界でも最先端のプログラムが搭載されることとなってしまった。

 ちなみに他のデュエリストは、来年シンクロ召喚について発表した後から実装されるまでの間に、新型のデュエルディスクを買うか最寄りのショップに持ち寄ってアップデートをしてもらうことになるらしい。どちらを選ぶにしてもその期間は格安になるらしい。それを過ぎたら本来の価格に戻ってしまうんだとか。

 良かったー。俺、今の内に無料で準備出来て。

 

 さて、実践である。

 

 当然のことだが、シンクロ召喚はまだ世に出ていないシステムである。

 つまりどういうことか? こういうことだ。

 

 「【ゴヨウ】召喚! 御用じゃ御用じゃ!」

 

 『ピーーー』 (←デュエルマシーンがシステムダウンした音)

 

 「手札を3枚墓地に! 更地にしろ【ブリューナク】!」

 

 『ピーーー』 (←デュエルマシーンがシステムダウンした音)

 

 「ダイレクトアタック! からのメイン2! 墓地から【バルブ】特殊召喚してシンクロ! 【カタパルト・ウォリアー】で【デストロイヤー】射出!」

 

 『ピーーー』 (←デュエルマシーンがシステムダウンした音)

 

 「サモサモキャットベルンベルンDDBDDB! ニレンダァ!」

 

 ボンッ!! (←デュエルマシーンが爆発した音)

 

 シンクロモンスターにもチューナーモンスターにも、禁止カードなんて存在しないのである。

 あぁ、快感! ……と浸っていたら。

 

 ゴンッ!

 

 「ぐあっ!?」

 

 いってぇ! 頭を思いっきり殴られた!?

 見物していた社長がいつの間にか俺の傍まで来ている。今のはどうやらこの人の鉄拳だったらしい。

 

 「この馬鹿者が! 【サモンプリースト】は制限カードだ!」

 

 はい、すみませんでした……。

 

 こうして、俺の冬休みは始まって行くのであった。

 

 

 《おまけ》

 

 「何か言いたいことはあるか」

 

 「取りあえず【DDB】要エラッタ」

 

 




 <今日の最強カード>

優「デュエルはあるけど、デュエル描写は無い。けれど今日の最強カードは、間違いなくコイツ」

【DDB】

優「正式名称は、【誰が・どう見ても・ぶっ壊れ】。OCGにおいてかつて環境を破壊し尽くしたカードです」

王『待て。それはネタだ』

優「うん、解ってるんだけどね。本当は【ダーク・ダイブ・ボンバー】。OCGにおいてかつて環境を破壊し尽くしたカードです」

王『……結局変わらんな』

優「だってそうだもの。実を言えばね、コイツが暴れ回ってた頃は筆者は遊戯王OCGを離れてて、実際に経験したことは無いんだって。でも友人には聞いてて、その悲惨さは知っているらしい」

王『だがしかし、それもかつての話であろう』

優「そう。エラッタして戻ってきたからね。俺が今回使っていたDDBは、エラッタ前の効果だったんだよ。誰があんなカードを作ったのか……早めに気付けて良かったよ。エラッタの要請は、アドバイザーとしてガチでI2社に出しておきました。ゲームバランスを崩壊させかねないようなカードはどうかと思うってね。きっとボマーさんの手にはエラッタ版のDDBが渡るだろう」

王『主よ、カードゲーム界を救ったな』

優「いや~、それほどでも。さて、本編では冬休み。俺は『亀』でバイト……のはずがいつの間にかKCでのお手伝いに」

王『それにしても主よ。お節を作れるのか』
 
優「日本人なら当然でしょ?」

王『主の中の日本人のイメージが解らん……考えるのは止めよう。まぁ、シンクロ召喚が出来て良かったではないか』

優「うん。これだけで終わればね」

王『まだ何かあるのか』

優「今回は冬休み編の始まり。編だよ、編。どうやら後数話は続くらしい。しかもその間、アカデミア勢はほぼ登場しないという事態に陥るそうだ」

王『やれやれ……厄介な臭いしかせんな』

優「まったくだよ」



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