『愛』はすべてに打ち克つ!   作:とかとか

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明けましておめでとうございます。

とりあえず、年が明けてもこれからも相も変わらずこのノリでやって行きたいと思います。


第8話『危険が危ない危機を呼ぶ』

 あのガキ(見た目はアタシの方がガキだけど)を逃がした原因の一端を、多分だけど、アタシは担いでいる。

 アタシがあの管理局の魔導士の言葉を伝えたばっかりに、アイツが隠し持っていただろう魔力を解放したかなにかして、逃げちまった。

 幸い、アイツが行った方向と場所は分かってるから、すぐにでも急行できる。

 ━━━首を洗って、待っていやがれ!

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第8話『危険が危ない危機を呼ぶ』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、フェイトさんの治療を無事終えた俺とアルフさんは、どうやってこの場所(アルフさん曰く結界って言うらしい)から抜け出すかを話し合っていた。

 まぁ、それはアルフさんの他に来ているユーノっていうどっかで聞いたことがあるような無いような名前の人と力を合わせればなんとかなるとの事なので、時間もある(かも知れない)からフェイトさんと姉妹関係であるアルフさんに、俺はフェイトさんに失礼かな、と思いながらも好奇心には勝てず、つい興味本意でフェイトさんの家庭事情を聞いてしまう。

 もしこれでフェイトさんに嫌われたら俺、舌を噛みきろうかと思うんだが……どうかな?

 

「フェイトの……家庭事情?」

 

「……あー……やっぱり、駄目、ですよね……」

 

「………それは……」

 

 やはり、駄目か。と、言うよりこんな事を考えてしまい、更には口に出すなんて、俺は完全にストーカーそのモノじゃないか。やはり俺は死ぬしか無いじゃない!

 

 

「……………だぃ、じょうぶ、だよ……」

 

 

 そんな時だ。側に寝かしておいた(ちゃんと枕を敷いておいた。えっ?どこから取ってきたって?気にするな)フェイトさんが薄く、だけど目を開け、こちらを見ている。その姿は今にも消え入りそうな、そんな表情だったけれど、

 

「……でも、フェイト……」

 

「いい。あおなには、知ってて貰いたいから………」

 

 その顔に浮かんでいる微笑みは確実に誰かを安心させる為に無理している笑顔だった。

 

「………フェイトさん。すいません」

 

「……え?」

 

「言い出して置いて、何ですが……。本当に辛いなら……」

 

「ううん。大丈夫。……私は、大丈夫だから」

 

 フェイトさん………。うわぁ……俺って本当に最低な奴だ……。

 軽々しくただの興味本意で人様の、それもフェイトさんの恐らく触れてはならない禁断の場所に土足で足を踏み入れるなんて……。

 

「……あおな」

 

「………はい」

 

 そんな俺にフェイトさんが優しく語りかける。

 

「あおなってさ………えっと…その……私の事、好き……なんだよね?」

 

「はい」

 

 それだけは、例えこの世の摂理がどうなったとしても不変の事実。

 ……不覚にも少し言い淀んでいたフェイトさんに萌えてしまった不謹慎な俺はもう死んだ方がいいんじゃないのか?

 

「なら、さ……。えっと、あおなは私と初めて会った時に、『結婚とその後を前提として、付き合って下さい!』って、言ったよね?」

 

「はい。言いました」

 

 フェイトさんとの会話は全て俺の中では永久保存してある。

 フェイトさんと交わした一言一言が俺にとってはまばゆい思い出。

 

「……あの後、あおなと別れた後、色々とその事について、調べてみたんだけど……その……結婚ってずっと一緒にいるって事……なんだよね?」

 

 ……まぁ、多少意味は違……いや。意味はこれであってるんだ。そうだよ。結婚はずっと一緒にいるって事じゃないか。うん。そうだ。そうだった筈だ(無理矢理な納得)。

 

「はい……。そうですけど……」

 

「じゃあ、お互いの事をちゃんと知っとかないといけない……だよね?」

 

「いや、あの……言いたく無いことがあるなら言わなくていいんですが…………って、え?」

 

 あれ?ちょっと待て。少し冷静に考えてみろ俺。

 

「…………もしかして、俺の告白を……」

 

「えっ………あ。あわわ……」

 

 フェイトさんの顔が一気に真っ赤になる。目に見えて焦ってると分かる。可愛い。

 

「え、えっと………その、わ、わたひのこひゃえは」

 

「ちょっ!か、噛みまくりだよ!フェイト!」

 

 あぁ……焦りすぎて呂律が回ってないフェイトさんも可愛い。何て言うか、守ってあげたくなる。保護欲が物凄く掻き立てられる。

 

「こ、ゴホン。………えっと、私の答えはその、まだ心の準備が出来てないから……待ってて、くれる?」

 

 上目遣い、赤面、少し潤んだ瞳、フェイトさん、今にも泣きそうな顔、プルプル震えている唇。あかん。鼻から赤い液体が出そう。ぶほっ。あ、ちょっと出た。

 

「わ、分かりました」

 

「…………(ニコッ)」

 

 うお……。凄い嬉しそうな笑顔だ。……いかん。吐血しそう。

 

「そ、それで……その……」

 

「あ、うん。それで、話は元に戻すけど……本当にずっと一緒にいようって事なら、私の事をもっと知っておいてくれた方がいいんじゃないのかな?って思って、ね」

 

 恐らく、ここから先はフェイトさんにとっても本当に辛いんだろう。だけど、フェイトさんの瞳にはある種の覚悟があった。自分の過去ともう一度向き合うという、そんな覚悟が……。

 

「私ね?実は、クローン人間なんだ……」

 

「クローン……ですか?」

 

「うん。…………母さんの、目的の為だけに生み出された、姉さんの……アリシア・テスタロッサのクローン」

 

 フェイトさんにお姉さんがいたのか……。

 どんな人、だったんだろう。

 ━━━だが、

 

「……………(チッ)

 

「ん?あおな、いきなりどうしたの?」

 

「いえ、少しフェイトさんの母親の事が気になりまして」

 

「……あおな?本当にどうしたの?顔が怖いよ?」

 

 フェイトさんは、何も思って無い、のか。

 

「あぁ、話の腰を折ってしまい申し訳ございません」

 

 つい、フェイトさんの母親に本格的にイラッと来たが、なんとか抑え込む。

 

「えっとね?母さんは、元々研究者で、ある実験をしていたの。………だけど上層部が母さんの忠告もなにも聞き入れず、無理矢理実験を進めて……暴走して……」

 

 フェイトさんの顔が憎しみの方面で歪む。やはり、それだけの恨みを込めるのは当たり前、か。……だけど、俺にはどうすることも出来ない。

 

「アリシアが死んで…………母さんが狂って…………私が生まれて…………アリシアを生き返らせる為に…………ジュエルシードを集めて…………でも、母さんは数が足りない内に発動させて、暴走させて…………」

 

「フェイト、さん……」

 

「私と、なのは達で止めに行ったんだけど間に合わなくて…………目の前で……母さんが…………母さんがぁ…あ、あぅ………」

 

 フェイトさんの顔がみるみる今度は悲しみに歪んでいく。瞳には先程の赤面なんか比じゃないくらいに。

 

「もう……いいです!フェイトさん!」

 

 フェイトさんの涙が溢れた瞬間、俺は強く優しく抱き締める。後でどれだけボロクソ言われようと構いやしない。ただ、今はフェイトさんを支えていたい。

 

「あお、な……。う、うあ、あぁ……う、うぅ……うわあああああぁぁぁぁぁ…………母さん……かあ、さん!」

 

 そうか……フェイトさんの母親はある意味、被害者でもある訳だ。…………そして、どれだけ酷かったとしても、フェイトさんにとっては、母親はその人だけ。

 どれだけ辛い思いをしたとしても、嫌いになる訳が無い……。

 それに、フェイトさんは一見大人びて見えるけど、実際にはまだまだ小学3年生の女の子。……そんな女の子が救えた筈の母親に手が届かず……死別。

 ………そんなの、普通じゃ耐えられる訳が無い。

 

「あおなぁ………あおなぁ……」

 

「俺は、ここにいますよ」

 

「うっく………ひぐぅ……」

 

 優しく、頭を撫でる。……柔らかい髪の毛の感触とフェイトさんが確かにそこにいる。

 

「大丈夫です。………それと、すいませんでした。俺が無責任なばかりに、フェイトさんの辛い思い出を思い出させてしまい」

 

「ううん……私こそ、ごめん。……あはは。自分でも、心の整理が出来ていたって、思ってたんだけどね……」

 

「ゆっくりで、いいんですよ。……俺もどこまで出来るかは分かりませんが、手伝いますから」

 

「ありがとう……あおな」

 

 本当に悪い事、したな……。

 だけど、フェイトさんには悪いかも知れないけど、お陰でもっとフェイトさんを支えようって気持ちが強くなった。

 ---そんな時だ。

 

「見付けたぞ!テメェ!」

 

 上から、赤い少女の声が聞こえた。

 

「フェイトさん。少し待っててください」

 

「あおな?」

 

 武器は…………あ、なんか向こう側から飛んで来てる。まぁいいや。

 で、身体の調子は……万全っと。

 

「大丈夫ですよ、フェイトさん」

 

 俺は立ち上がり、フェイトさんの方を向く。

 絶対に守るって決めたから。

 

「すぐに、終わらせます」

 

 そして、飛んで来たフライパン(玉子焼き専用)を右手でしっかりと掴む。

 

「さて、料理を開始しましょう」




~その頃のザフィーラ~

(フライパンが……自らの意思で飛んでいった……だと!?)


◆◇◆◇◆◇


今回、フェイトさんの感情の揺れ幅がペンデュラムだったのは、トラウマを刺激されたからです

感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。

次回もよろしくお願いいたします。

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