そも赤熱させるってのはなんだか単語や言葉がおかしい気がするが、事実真っ赤になってるフライパンが目の前にあるんだから仕方ない。
落ちてきた
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第67話『亡霊は暗黒にハウス』
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さて、俺はユニコーンを構え奴の方を向く。
今まで自分より強い奴には何回か出会ってるし、だいたい戦ってなんだかんだ勝ったりしてるから自信はあるにはある。
しかも今回は相手が俺と同じ顔の同じ声だってんだからまず最初に慢心してしまうのが俺の駄目な所だったんだと思う。
未来から来たあいつらの言葉をすっかり忘れて対峙した時点で既に俺は負けてたんだ。
「るぁぁぁぁ!」
初手から全力でぶちかませば何とかなるだろうと、そう思ってユニコーンを振りかぶっていたら、いつの間にか地面が目の前にあった。
「ぁ?」
地面との熱烈なベーゼ。普段から思ってたが、地面は俺と接吻する時は緊張するみたいだ。証拠にくっそ硬い。
「これが、オレぇ?……冗談はよしてくださいよ。こんな簡単に膝つくとか」
上から煽りが聞こえてくる。
この時になってようやくチーム未来達がギリギリだったってのを思い出す。
これは、逃げて援軍を呼ぶ方が得策なんだろうが、フェイトさんに危害が加わる可能性があるので悪即斬の名の元に即却下。
とりあえず、直ぐ様立ち上がって距離を取り、土手っ腹アッパーで絶賛気絶中のユーノ君の元へ。ユーノ君の頬を五~六回ほどひっぱたいて起こす。
「ユーノ君!とりあえず俺が前線に出ますから後衛からのバフ+援軍の要請を頼めますか?……あ、呼ぶのは未来組をお願いしますね。フェイトさんはどうやらアイツに狙われてるようなんで呼ばないでいただければありがたいです」
「いてて……。それは構わないけど……本当に大丈夫なのかい?」
何に対してかは知らんが、頭は大丈夫だと答えとく。
「まぁ何とかします」
する、じゃない。しなきゃならない。
「とりあえず、五層の防御術式はかけておくけど、無茶はしないでよ?」
「分かってます……よ!」
会話の途中に攻撃するのは卑怯だからやめようね!
ユーノ君との会話の最中に目の前に唐突に現れて、現れた瞬間にはフライパンを振り下ろしてるんだもん。ビビるなって言われても無理だ。
「こそこそと、作戦会議は終わりましたか?」
「たっぷり出来ましたよ。お陰さまでね」
にしても、こいつなんて馬鹿力なんだ。足がコンクリの地面にめり込んでるぜ。
ユーノ君の防御術式が無ければ骨折だった。
「ふん!」
おぉっと!盾街君、蹴られて吹っ飛ばされたぁ!
二転三転でんぐり返しの逆バージョン。くるりと立ち上がれば胸に違和感肋骨骨折。
ユーノ君の術式が脆いって訳じゃあ無いだろうから……純粋火力が高いって事か。ふむ、防御術式の上からこれとは……NO防御なら死んでたな今の。
……なんかこれ、リインさんの時とは違うヤバさを感じる。
マジで殺しに来てるぞこれ……。
「何ですか?その顔。今ようやくこれが一方的な殺戮だって理解したような顔ですが」
向こうからゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる
さて、本当にどうするか。策は一応ある。けれど、
《やるぞ。主》
そうだそういやこのユニコーン考えてること分かるんだっけか。
……本当にいいのか?やっても。
《構わん。ここで死ぬるよりはマシじゃよ》
おし。ならやるぞ。
再び構え、先程と同じようにフライパンを振りかぶって走りだし、奴にあと少しって所で
振りかぶっていたユニコーンを上に放り投げる。
「!?」
やっぱり、唯一といっていい武器(?)を手放すことが予想外なのか、奴さん面食らった顔をしながら俺から目を離した。
そりゃそうだろうよ。だってこのフライパンが無ければどうやってあいつの攻撃から俺の身を守るのかってな。
ユーノ君の防御術式は抜かれるわ俺の回避速度だって間に合わないわ。たった一つの防御手段、フライパンの異常なまでの防御速度、硬度を捨てたんだ。そりゃ目を疑うし俺の脳みそだって疑うさ。
ただなにが悲しいってここまでしないと隙が作れねぇってのがなぁ。俺ってばほんと弱すぎだ。
今度高町の士郎さんにでも頼んで鍛えて貰おうかしら。
――さて
「おらよぉ!」
左拳でもって顔面狙い一方通行!通らば満足避けられりゃ次ぃ!
「ぐっ!」
攻撃に気付かれて真っ黒なフライパンで防御体制を取られる……が、ここまでは予想通り。
左手はそのままにフライパンへ突撃、このままなら防がれる、ので、右足で踏み込んで右拳で腹部へアッパーだおらぁ!
「読めないとでも思ったかよ、
奴はとっさに左腕で俺の拳を受けようとしてる。が、
「それもまた読んでるんですよねぇ!頼むぜユニコォォォン!」
《任せろ!》
空から降ってくるのは赤熱した
「なっ!?」
そのままユニコーンの赤熱した面に向かって拳を突き進ます。拳の面とユニコーンの面がぶつかった瞬間、肉の焼けるような音がした。
痛みがあった。それ以上に熱かった。
だが、その程度だ。関係ないね。
「おらぁぁ!」
拳に赤熱したユニコーンを纏ったまま腹部に突撃する。
「――!!??」
声にならない悲鳴が聞こえた。
俺と同じ声だったからもしかしたら、それは俺のだったのかも知れないが、ただこれだけは言える。
俺は今、赤熱したフライパンを腕に纏って奴の胃袋を括弧物理で掴んでるって。
「何を……してやがる!お前は腕がいらないのか!」
「再起不能になる程度で何をガタガタうるせぇ事を言ってるんですかねぇ!こちとらそんな覚悟はもうできてるんですよ!」
思考の4分1は痛い熱いと考える中、ふといつまで胃袋を掴んでいればいいのかと頭に浮かんだ。ちなみに4分の2はフェイトさん愛してるなのであしからず。
考えてた策はここまでだ。あとはどうしようかと4分の1。
このままコイツと一緒にこの世をさよならばいばいするってのはご遠慮したい。俺はウルトラマンタロウみたく不死身じゃないのであっさりあの世へ逝くことになるだろう。
だからと言ってこのままの状態も良くない。
チラリともう一人の俺の顔をみる。口から吐き出す血も残ってないように見受けられるし、手に握っていたフライパンを落とすほど。これなら、後でくる未来組と囲んで殴れば勝てそうだ。
今、俺の右腕はどうなってるか分からない。焦げて炭になってるのかも知れないし、溶けて無くなってるのかも知れない。
だから、なんだ。
フェイトさんを守るための名誉の負傷だ。受け入れるさ。
そうして俺は最後の力を込めて奴を蹴る。
それと同時に奴の身体は後ろに吹っ飛び、俺は仰向けに倒れた。ユーノ君が身体能力を強化しといてくれたおかげなんんろうか、力は出た。
「あはは……。これ、すごい事になってますね……」
どうなってるかと右腕みれば、そこには肘から先がユニコーンの柄と融合してる姿だった。
《……あの高熱の中じゃ。すまんかった》
どうってこたぁない。生きてるんだし。
《お主は前向きなんじゃな……》
生きてればフェイトさんに会えるんだ。死ななければ安いもんだ。
「あおな!未来組の半分が来れ……って大丈夫かい!?」
「あぁ、来てくれるんですね、よかったです……」
さってと。ユーノ君に肩をかしてもらいつつ、立ち上がる。どうやら応援に来れるのは未来組の半分らしいが、まぁ、来てくれるだけいいや。
そして、奴を見る。
身体に空いた穴から煙を上げながら膝をつく
~その頃のヴィヴィオちゃん~
(まさか……パパの腕ってこの時に……!?)
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よかれと思って右腕を飛ばしました!
…………すいません。
いやその、構想自体はかなり前からありまして……。
多分、強化にはなると思いますので……。
あと、要望があれば真っ黒なフライパンを持ってきた方のあおな君の話も書こうかなとは思ってます。
さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。