「フライパン、呼んでも来ませんよ?今は機嫌が悪いそうなんで」
先程から何度か呼び掛けても反応がない。どうやら死兆星に導かれたか、御機嫌の角度が傾いてるかのどちらかだろう。
「そのフライパンは本当にロストロギアじゃないんだよね?」
だからロストロギアってなんだよ。
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第64話『もう一人の僕!』
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「ロストロギアって言うのは……そうだな、君達で言うところのオーパーツみたいな物なんだけど、多くは現存技術じゃ絶対に無理ってほどの高度な技術で造られた物で、使い方次第で全次元を吹っ飛ばすかも知れない程の危険な物から、果ては無害な虹とか出たりする宝玉みたいな物の総称、かな」
あのユニコーンがロストロギア……。ありえねぇな。ここ最近喋るデバイスとかよく見るし、それと同じ感じだろうさ。フェイトさんの『バルディッシュ』だって喋るし高町の『レイジング・ハート』だって喋る。
ほら、何も問題ない(ワープ&付喪神であることから目をそらしながら)。
「そうだな……。君の近くのロストロギアって言うと、『闇の書』とか、そうだね。あれ、ここ最近までSS級だったし」
「そうなんですか。そりゃ魔力を文字に出来るんですから、それはそうですよね」
「ねぇ君変なところで納得してない?」
そうかなぁ……。
「いやぁ、あんまりピンと来ないんですよね」
「あー……そりゃ、あんな
さりげなく実家の本屋をバカにされた気がするが、ここはスルーしといてやる。今日の俺が紳士的で良かったな。
さて、ゴスラビア君もといスクライア君が見せてくれたのは直方体の青い結晶。
「素直な名前だけど転移結晶って言うんだ。効果は自分が拠点としている所へのテレポートだね。遺跡で見つかった時は巨大な結晶体でね、それを切り出したものなんだ。何がすごいってこれ、何度使っても無くならないんだ!」
「ふーん……」
「ふーんって、そんな興味ないの!?君は曖昧な物よりも実用的な物に目が向くって思ったんだけどなぁ……」
正直、そんな話をされてもふーんだけでしかすませられない。フェイトさんの為になるようなロストロギアがあるなら話はまた180度ぐるりと変わるんだが、そんなモノは無さそうだ。
だが、転移か……。そういや、俺の家、大丈夫かなぁ。本屋の方は八売さんに任せたが……。家はボロボロのままなんじゃ……?家がボロボロ=フェイトさんとの思い出の品が……。
「ちょいとその結晶使ってもいいですか?家の事が気になるんです」
「え?あぁ、うん。………なんて言うわけ無いからね?これは僕にとっても大切な物なんだk「家のフライパンもしかしたら壊れてるかもだから見に行かないと」……それは大変だ。今すぐに行かなくちゃ」
そうと決まれば話は早い。スクライア君……ええぃ長い!ユーノ君から結晶を引ったくるように受け取り………
「あの、これどうやって発動するんですか?」
「君がその結晶を持って魔力を込めればそれだけで発動するよ」
魔力を込めろとな?
ふむ。
「僕は君の肩に手を置いとく。そうすれば君と一緒に君の家に転移出来るから。……ところで、なんで君はさっきから力んでいるんだい?」
「いやぁ、力を込めれば魔力が出るかなぁって」
「そんな事は無いと思……あ、そう言えば君、リンカーコアが無いんだったね。じゃあこうしよう」
ユーノ君が行ったのは、まるでグラサン金髪の目を潰す呪文を唱えるかのような体勢。……フェイトさんとやりたかったんですがねぇ……。
「そんなジト目で見ないでくれるかな。仕方ないんだよ。……とりあえず、僕が魔力を込めるから君は君の拠点を思ってくれればいい」
なんだ、それでいいのか。というか早く行って確認しないと。いつまでもユーノ君と手を握った状態だといつ勘違いされてもおかしくない。
「それじゃ、行くy「バルス!」
転移結晶が輝くと、周りのメカメカしかった景色が一変しだいたい三日ぶりくらいの我が家が目の前に姿を表した。約72時間ぶりの我が家には傷ひとつなく、
……というか、この転移結晶まじですごいな。フェイトさんにプレゼントすれば、喜んでくれるかも。あれならうちの本屋の本をいくらかユーノ君に譲ればこの結晶が貰えるかもしれん。とりあえず頭の片隅にでも置いておこう。
さぁ家に入ろうと一歩を踏み出すとユーノ君が唐突に手を出して俺の動きを制する。それが運悪く俺の喉辺りにダイレクトヒット。……喉仏が出ていれば即死だった。
「……あおな。少し下がってくれるかい?」
おうなんだとコラ。ここは俺の実家だぞオラ。
唐突にユーノ君にケンカを売られるとは思わなんだ。これはあれか?『ころしてでもうばいとる!』って奴かい?
「そんなに額に青筋を浮かべないでくれ。……一つ尋ねるけど、今君の家には誰もいない筈なんだよね?」
……そうさねぇ。フライパンを除けば、確かに誰もいねぇや。
「そうですが……。それがなにか?」
「……それなら、良かった」
疑問符を出すと同時に詳しく聞こうと肩を掴むと、我が家の扉がこちら目掛けて吹っ飛んできた。
不意というか、意表というか、あるわけがない、あるいは有り得ないと思ってたからか、反応が間に合わない。
だけど
「ふんっ!」
ユーノ君は違ったみたいだ。俺よりも半歩前に身を乗り出し緑色で円形の魔法陣を前面に展開した。
我が家の扉はユーノ君の魔法陣にぶつかり木屑と化す。
一言二言言ってやりたいが守って貰った手前何も言えない。
「大丈夫かい?あおな」
「ええ、おかげさまで怪我はありません。ありがとうございます」
にしても、扉が内側から蹴破られるなんて穏やかじゃないな。
「さっきまで実家にいた筈なんですが……気付けば見知らぬ家にいた……。つまり、あんたらの仕業と考えてもいいんですよね?なぁ」
扉の無くなった我が家から出てきたのは毎朝鏡の前でよく見る顔だった。
「……って、よく見りゃオレが目の前にいますね。何がなんだか」
「それはこちらの質問ですよ。というか、本当に俺ですか?ほら、同じ顔は二つ三つあるといいますし」
だがしかし、見れば見るほど鏡見てる感覚だコレ!って感想しか出ない。……大丈夫かなぁ、ドッペルゲンガーの類いだったら泣くぞおい。
「……まぁいいや。例え相手が
そして彼が取り出したるはフライパン(黒&普通)。
やっぱり俺じゃ無いじゃないか!
「まさか……転移に巻き込まれた?……そんな事があるなんて……」
ユーノ君はぶつぶつ何か言ってるが、これは突き飛ばしたりしてこの場所から撤退させて応援を読んできて貰うべきだろうか。
幸い、あいつのターゲットは俺に向いてるっぽいし。
「……けっ」
先に動いたのはもう一人の俺だった。
端から見たらすごい気持ち悪い顔の角度だが、そんな感想出してたらユーノ君が危ない。
「『ストラグルバインド』!」
ユーノ君をアヴドゥルよろしく殴り飛ばそうとするもその前に俺のような何かが縄で拘束された。
周りから見れば勘違いされるような光景けど今は気にしないでおこう。……どうかフェイトさんが今ここに来ませんように。
とりあえず、速度は殺せなかったので拳がそのままユーノ君に当たってしまったが、ちゃんと謝ってはおいた。だってそんな魔法があるなんて知らなかったんだもん。
~その頃のクロノ君~
(また盾街が転移しただとぉ!?)
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無理矢理感が多々ありますが、ようやく物語が進みました。
さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。