『愛』はすべてに打ち克つ!   作:とかとか

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あと、もう少しでお正月ですね(遠い昔のクリスマスから目を背けながら)


第6話『ああ!それってハネク(ry』

「う……」

 

 ゆっくりと、重い瞼を開ける。

 ……周りに瓦礫がある。それが腕を擦って少し痛い。

 あれ?そう言えば私、なんでこんな所に寝てるんだろう……。少しずつ、思い出してくる、今日の事。

 調理実習でフェイトちゃんの料理が以外と酷かった事、あおな君がフェイトちゃんの為に一肌脱いだこと……そして、あの赤い子に……。

 ――そうだ、私、あの子に負けたんだ………。

 起こす身体に力は入らず、瓦礫の上に寝転んだまま。

 ―――痛い。涙が次から次に溢れてくる。

 負けたから。……その所為で、また誰かが傷付き、傷付けられる。その事に、心が痛くて、涙が溢れる。

 

 

 

 

 

 私、何も出来なかった。……ただ、一方的にボコボコにされるだけだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第6話『ああ!それってハネク(ry』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 さて、ただ今絶賛大(die)ピンチな訳だ。だが、この状況をフェイトさんに知らせる訳にはいかない。

 あんな目の前で大見得切った以上、有言実行にしなくちゃフェイトさんに嫌われてしまう。

 逃げる?現実では『しかし まわりこまれてしまった▼』の表示しか出ないから却下。

 ならここは覚悟を決めるしかないのか……?

 …………いや、待て。まだ策はある。そういやあのピンクポニテの厨ニ病全盛期の女性剣士は初めて会った時、俺に露骨な挑発として『まさか、怖いのか?少年。まぁ、当然だ。ベルカの騎士であるこの私に勝てる訳がない』と言った。

 この文章中の『騎士』って単語。これがこの戦いの鍵になる筈。

 ……試してみる価値はある。

 

「あの……もしかして俺一人相手に2体1で来るつもりですか?」

 

「まさか…………我々は騎士だ。そんな卑怯な事をする訳が無い」

 

 なんだ。ただの俺の杞憂だったんじゃないか。

 

「えっと……でしたら俺は最初はどちらからお相手をすればいいんでしょうか……」

 

 ホッと一安心からのポロっと漏れた一言に目の前の二人が反応し、お互いがお互いと向き合った。

 

「ここは私が行く」

 

「何を言うザフィーラ。ここは私が行く」

 

 なにやら険悪な雰囲気になっている。お、口喧嘩を始めた。

 ……それにしても、なんだ?俺は修羅場にでも遭遇したのか?いや、この二人は俺を巡って争ってるんだった。つまりこの原因を作ったのは……俺?

 ………やめて二人供!俺の為に争わな……いや、この場合は争った方がいいのか?

 じゃあ路線を変更して、争え……もっと争え……。

 そう念を送っていたらピタリと止まった。なにこれ怖い。

 

「……ザフィーラよ。ふと気付いたのだが」

 

「……そうだな。シグナム。私も今気付いた」

 

 何に気付いたんだろう………。それとザフィーラ(確定)さんって一人称『私』なんだね。文章的にどっちがどっちか分からないから見辛いぜ。

 あとピンクポニテ(ryさんってシグナムって言う名前なんだ。……外人さんなのかな?

 

「我々は今ここでこんな事に時間を使っている暇は無いんだったな」

 

「あぁそうだ。こうしている間にも主が………」

 

 どうしたんだろ……。シグナムさんもザフィーラ(確定)さんも俯いているが、腹痛にでも襲われたか?それともコンタクトレンズを落としたか?後者だと確実に残念な結果しか残ってないが。

 

「その為には、致し方あるまいか」

 

「………うむ。騎士の信条を曲げてしまうが、これも全て主の為」

 

 あれ?もしかしてこれって俺にとっては最大で最高で最後の不意打ちチャンスじゃね?

 だとしたら、まだ俯いている今がチャンス。

 

「………すまないが、お前は私達二人で討つ」

 

 おういきなり顔を上げるのはやめろよ。心臓に悪いだろうが。………………………って、ん?今、なんて言った?

 

「もう一度、言って貰えます?……最近、耳の感覚が鈍くなっているような気がしているので、よく聞こえない(気がする)んですよ(※ただしフェイトさんの声は除く)」

 

 聞き間違いじゃなかったら……どうしよう。

 

「お前を私達二人で「あぁもういいです分かりました」

 

 騎士の信条はどこに行ったんだ?あれか?もうそろそろ冬休みだからそれを利用して長期休暇にでも出掛けたか、それか実家にでも帰ったのか?

 なんにせよ、2体1……か……。こういうのはラノベの主人公とかだったら一辺に相手に出来るんだろうが、残念ながら俺はただの逸般人。どうする事も出来ない。

 ――でもまぁ、

 

「……足掻くだけ、足掻いてみる価値はあります、か」

 

 フライパンを構え直す。……正直、フライパン一枚じゃあ安心出来ないし、そもそもの話でフライパンで戦える訳が無い。……まぁ、ザフィーラ(確定)さんを吹き飛ばしたりはしたが。

 ……つか、このフライパンがザフィーラ(確定)さんを吹き飛ばした時に折れなかったのはビックリした。それに加え、確かシグナムさんの剣がこのフライパンを受け止めた時も傷一つ付かなかった。……なんだこのフライパンは……。空は飛ぶし、人(?)は吹き飛ばす。剣で受け止められても傷付かない!これ本当にフライパンか!?

 お次は2体1だがどこまでいけることやら。

 

「……では行くぞ!」

 

 つか、この人達の目的は何なんだ?なんで襲ってくるんだろう。……そういやシグナムさんは最初、俺に『魔力を寄越せ』とかなんとか言ってた。で、シグナムさんとザフィーラさんは恐らく協力関係かそれに準じるなにか。…………と、そこまで考えてふと気が付いた時には目の前にシグナムさんの剣が。

 

「……ってうぉ!」

 

 急いで弾く。フライパン越しに鈍いものを弾いた時特有の痺れるような感覚が腕を登ってくる。

 ……流石に、こんなんじゃ長期戦は無理っぽい。シグナムさんの方を向き直すと、そこにはザフィーラさんがいない。そこで周りを目だけ動かしてキョロキョロするタイムラグが発生。それにより後ろからの重圧を感じる事が遅れた。

 振り向いた時には、既に拳を放っているザフィーラさんがいた。

 

「先程の仕返し、と言った所だ!」

 

 中途半端に振り向いた所為で、ザフィーラさんの拳がまるで漫画みたいに渦を巻き、俺の横っ腹にダイレクトで突き刺さる。

 

「…ぶぁほっ……」

 

 しかも威力がでかすぎて内臓がどっか潰れたんじゃないかって感覚すら覚えた。

 これ、確実に人間の出せる力じゃ無い。少なくとも、昔一度だけ車に轢かれた事があるが、こらはその比じゃない。確実にトラックが小さくなってぶち当たったレベルだ。

 だと言うのに。

 

「ゲホっ……ケホっ……」

 

 咳、もとい呼吸が多少苦しくなっただけですんだ。

 ……それにしても、おかしい。俺はここまで頑丈じゃ無かった筈だ。

 

「……お前どうしてバリアジャケットも付けずそんなにも頑丈なんだ?」

 

 バリアジャケット?なにそれ美味しいの?少なくとも名前からして食べる気にはなれないが。

 

「……それに、魔力量も上がって来ている。最初出会った時にはそれなりだった筈なのだが、いつの間にかあの少女達とあまり遜色ないように見受けられる」

 

 覚醒?普通の人間が超人的な力を得るとか……そんなバカな話があるか……。

 いや、待て。ここで少し厨二病と言う条件を加えて考える。……確か覚醒の条件って言うのは、伝説の武器を手に入れたり、何か得体の知れないモノを投与されたり……とかだろ?

 ……流石に伝説の武器を手に入れたりってのはあり得ないし、仮にフライパン(卵焼き専用)が伝説の武器とかだったりしたら全国の勇者に憧れてる人やアーサー王が涙を流す。

 何か得体の知れないモノを投与されたりってのは………………………あれ?おかしいぞ?……心では全否定してるってのに頭の方から猛烈に無理矢理フェイトさんの手作りカレーが押し付けられる。

 流石にあり得ないと信じたい。

 もっと深く考えたかったが、そんな暇を相手が与えてくれるわけもなく(ちなみにここまでのシンキングタイムコンマ1秒。流石厨二病の俺)――

 

「だが、人間だろうとそうでなかろうと関係ない!」

 

 再びシグナムさんが剣を降り下ろす。しかも後ろからはザフィーラさんがまたまた拳を前に突きだそうとしている。

 アカン……詰んだ……。前門のシグナムさんに後門のザフィーラさん。……これがオセロだったら俺、あの人達の味方になってんだろうな…………ん?オセロ?あ、いいこと思い付いた。

 

「行くぞ!」

 

「うぉぉぉぉ!」

 

 俺を挟んだ二人が叫びながら突撃。それなら俺のとる行動はただ一つ。

 下にー下にーだっぴゃ。ただ下に少しスィーっと降りる。

 

「んなっ!?」

 

「ぉお!?」

 

 どうやらお二人さんは焦ってた所為で目の前がお先真っ暗見えてなかったみたいだ。

 拳で肉を叩いたかのような鈍い音が聞こえた時には、二人が真正面からおでことおでこで全力のお見合いをしていた時だった。…うわ、痛そう。

 まぁ、直前に気付いてブレーキを全力で掛けたっぽいけど間に合わずって所かな?

 

「………くっ……貴様……」

 

 片や額を押さえているシグナムさん。

 

「……ぐ、ぬぬぅ……」

 

 片やこちらは……あ、前言を撤回する。おでことおでこ、じゃなくておでこと鼻だった。

 赤くなって更に赤い液体を出している鼻を押さえているザフィーラさん。

 この光景を見ていて謎の罪悪感を感じそうになったが、悪いのは俺じゃないから。だが謝っておく。

 

「…………えっと、その……」

 

 この際、疑問系にして地味に相手を挑発するのも忘れずに。

 だけど、これは失敗だったと気付く。……いやぁ、俺ってなんで一段落ついた瞬間に油断しちゃうんだろ。もう癖の領域だよこれ。

 ――だから、気付けなかった。

 

「なんかすいま……う"っ!?」

 

 ――俺の背後の()()人物に。

 

 

 

 

 

「えっと、なんかごめんね?」

 

 

 

 

 

 ――もう一人の伏兵(影の薄い緑の騎士)の存在に。




~その頃のフェイトさん~

(確かにこの子は強い……。だけど、あおなの目の前であんな事を言ったんだ……。だから、あの子なんかに絶対に負けない!)

 ※負けました


◆◇◆◇◆◇

 好きな人の手料理って凄いですよね(小並感)。

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