『愛』はすべてに打ち克つ!   作:とかとか

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ここに来てようやくやりたかったネタを出来たような感覚があります。
……まぁ、少し無理矢理ですが。


第59話『僕と契約して転生してみないかい?』

 瞳を開けると、そこは真っ白な空間だった。

 おかしいなぁ、えっと……あれ?考えてもなにも思い出せない。俺は……どこで、何してたんだっけ……。

 

「やぁ、いらっしゃい。ここは君のような定められた天寿を全う出来なかった人達に再度違う世界でチャンスを与えるための空間だよ」

 

 背後から声がした。

 その声に背筋が鳥肌立てたので仕返しに遠心力を入れて――なにか(・ ・ ・)を握るように――拳を硬めソイツの顔面を狙い、打ち込む。

 ……はて、いったい何を握ろうとしたんだ?

 

 

 

 

 

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第59話『僕と契約して転生してみないかい?』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「酷いじゃないか。いきなりそんな事をするなんて」

 

 俺の拳はソイツの顔面に軽くめり込んだ。うわ鼻血ついてら、きたねぇ。……にしても、目の前の奴は漂白剤で髪でも洗ってんのか?白すぎんだろ。そのわりに目は赤いって、アルビノか?つか髪長すぎだろ。

 

「そりゃ後ろから声を掛けられれば誰だってそんな反応しますよ」

 

「それもそうだね。今度からは正面から歩いて出てくる事にするよ」

 

 なんと言うか聞き分けが良すぎる気がする。その、今までこんな事をしたらこれだけじゃすまない事が返って来た事が多々あったような、そんな頭じゃなくて身体で覚えた感覚が違和感を発している。

 

「さて、本題に入ろうか」

 

 鼻血を垂らしながら口を開くアルビノ(男か女か分かんない。ワンピース来てるから多分女の子)さんのその姿には間抜け感満載だった。

 

「さっきも言ったけど、ここは天寿を予定どおり全う出来なかった愚かな人達が来る場所なんだ。……実際自殺しようが他殺されようがそれが天寿で運命なんだけど、君みたいに僕達の決めた運命(スケジュール)を、ガン無視してこちらに来てしまう人達(お馬鹿さん)がいる。そんな人達は大抵輪廻の輪に入れなくてたださ迷うだけになって、その後無となりその存在は抹消されちゃう」

 

 間接的に馬鹿にされた事については何も言及しないであげよう。さっき殴った訳だし。

 次言ったら今度は足で脛を蹴るだけに留めておく。

 

「流石にそれは可哀想だ、と慈悲深い僕達は考えたわけだ。だから僕達はそんな人達にもう一度違う世界で人生を送って貰い、ちゃんと天寿を全うし輪廻の輪にしっかりと乗って次の人生を謳歌してもらおうって事でこんな事をしている」

 

 つまり、俺は死んだ。だけどそれがハヤスギだボケって事で別の世界にgo……簡単に要約したらそういう事か。……でも、なんで死んだんだ?……しかも、思い出せる事も少ないし。

 

「それと、記憶なんかにはちゃんと鍵をかけてある。記憶の消去、なんて脳みそに負担がかかる事をしちゃったらちゃんと生まれ直せないし、その所為でまたここに来ちゃったら本末転倒だからね」

 

 なるほど。混乱してあびゃぁぁぁってしながら死ぬことを防ぐ為か。それなら……いや、だとしても生前の自分がどんなのか分からないってのはなんとも言えない気持ち悪さがある。つか、鍵かけるだけなんだな。途中思い出したらどうすんだ……?

 

「じゃあ、もうそろそろ行ってもらおうか、新しい世界に。願わくば、君の運命のままに死ぬことをここから想ってるよ」

 

 ……運命と言う言葉に胸がずきりとした瞬間、ふっと俺の足下から床が消え、下に引っ張られた。

 って、うぉあっ!?まさかの落下システムだとぉ!?

 くそが!当事者そっちのけで話を勝手に進めて急に転生だってのはどうかと思うんだ。

 ……つぅか……こんなとっかかりのある状態で転生だぁ?そんなの――

 

「満足……できますかってんだ!」

 

 考えろ考えろ……なにか、なにか無いか?……そうだ、運命!運命って聞いたら胸がズキリと痛んだ……。運命って言葉に俺の生前の鍵があったり?……まさかそんな中二病な展開があるわけねぇ。……だけど今はその線を信じて考えるしかねぇ。下の方にちらりと見えた赤ん坊の事は今は捨て置く。

 さぁ、運命。……運命関係にちなんで曲名運命ジャジャジャジャーン!残念無念だ俺ライダーじゃない。

 英語にしたらディスティニー。……パルマフィオキーナ?あんたはいったいなんで出てきたんすか。俺の腕からビームは出ねぇ。……むむむ、なんで俺にはこんな知識がいっぱいあんだか。まぁ今はそれ考えてる場合じゃねぇ、えっと運命がディスティニーじゃないとすると、他の訳し方だとフェイトだっけ、これが何の意味に――って

 

「ぐぉ!?頭痛ぁっ…………!?」

 

 頭に浮かぶは金髪、赤目の美しい女の子。その子は笑ってて、泣いてて、怒ってて、困ってて、照れてて、はにかんでて色んな表情を俺に向けてくれる。名前は、確か…………ふぇいと、さん……?

 俺は、なんで忘れて……。

 更に心に浮かんでくるのは俺の心を光すら嫉妬する早さで撃ち抜いた、フェイトさんとの思い出の数々。

 

「……Holy shit!(くそったれが!)……俺は、なんて事をしようと……。こんな事(転生なんざ)、やっていられますかってんだ!」

 

 必死に空を掴む。しかし空を切る。当たり前だ。何もないから。すると目の端に白く光る束がある。まるで掃除機の吸引力を確かめる為のビラビラ(名前知らない)みたいなのが……。

 これは掴む1択しかない。

 

「いだだだだだだだ!?……んな!わっ私の髪の毛が!?」

 

 あたふたと焦っているアルビノさんの声が聞こえる。おぉ、落下が止まった。

 

「あぁ、すいません。俺、急用思い出したんで帰りたいんですが出口どこですか?」

 

「か、帰る?そんな事させる訳ないし出来る訳ないじゃないか!」

 

 出来る訳が無いと四回までなら言っていい。今の状態じゃあ言った所でどうにもならんが。

 

「いやぁ、愛してる人がいるんですよ。その人の為に戻らないとなぁって」

 

 にしても、俺はなんで今までフェイトさんの事を忘れていたんだ。確かに鍵はかけられたさ。しかしその程度だ。それを乗り越えられなかった自分がふがいなさ過ぎて泣きそうだ。

 

「まさか……思い出したのか!?記憶を!」

 

「さぁ、なんの事でしょうか」

 

 正直な所、思い出したのはフェイトさんの事だけだ。だが、俺が戻るだけの理由はそれだけで充分だ。

 ちなみに他に思い出したのは般若とかだったが、あれはいったいどういう意味なんだろう……。

 

「あっじゃあ、変わりに貴女が転生してくださいよ。俺は勝手に元の世界に帰りますか……ら!」

 

 アルビノさんの髪を伝わって登る。カンダタもこんな気分だったんだろうなぁ……。

 

「それじゃあ意味が無いじゃないか!」

 

 正直、ここでアルビノさんが踏ん張ってくれてよかった。もしもここでアルビノさんが飛び下りてたら俺が先に赤ん坊の所に落ちてたし。

 

「意味って?」

 

君ら(・ ・)は物語の破壊者なんだ!救われない筈の者を救い、降りかかる筈の火の粉を払う!それの皺寄せが来るとも知らずのうのうと暮らしている……」

 

 なんだ、のうのうと暮らしたら駄目なのか。

 

「管理する身にも、なってよ!崩れたバランスを取るためにどれだけ苦労したと思ってるんだ!君達みたいな馬鹿野郎gあ痛!」

 

 次馬鹿にしたら脛を蹴ると思った筈だ。今は脛は蹴れないから二~三本抜きながらスピードアップだ。

 

「……いたったい………なにを……すr「皺寄せが、なんだと言うんですか?」……なんだって?」

 

「救われない人を救う?そりゃ目の前で人が死なれたりすれば寝覚めが悪いんで助けるに決まってるじゃないですか。降りかかる火の粉を払う?そりゃ当たり前ですよ。誰しも度を越した熱さは嫌でしょうが」

 

 もちろん。その根底にはフェイトさんへの何かしらはある。

 

「……火の粉の意味が違「ともかく。その程度で皺寄せが来たとしても、逆に笑うくらいですよ。『なんて心の狭い世界なんだ』って、笑いながら吹き飛ばしてやりますよ」

 

 そのくらいの壁、フェイトさんと幸せになれるんならいくらだってぶち壊してやるさ。

 おっ、ようやく穴の入り口についた。

 

「人の恋路を邪魔したら、馬に蹴られて死にますよ?」

 

 そう言い残し、掌に残ったアルビノさんの髪の毛を払い落とし、出口を探す。

 ……驚きの白さ過ぎて出口も白いってのは流石に無いよね?

 

「…………分かった。なら、君の好きにしたらいい。もう止めないし、もう何も言わない。さっさとここから出ていって精々楽しんで苦しめばいい」

 

 アルビノさんが指を鳴らすと下に出来た穴とは違う、まるで非常口の標識みたいな出口が表れた。

 

「ただし。もう二度と寿命以外でこっち(あの世)に来るな。君の顔は見たくない」

 

「こっちからも願い下げですよ。それじゃ、さよならです」

 

 フェイトさんに心配をかけてしまったんだ。それを、謝らなくちゃとの気持ちを胸に、迷いなく駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ぉな!あおな!起きてよ!ねぇ、あおな!死んだらやだよ!」

 

 一番に聞こえたのは、フェイトさんの嗚咽の混じった声だった。

 

「パパ……起きてよ……起きて、私を撫でててよその手で……お願い……起きて……」

 

「あおな君!死んだら絶対に許さないんだから!今なら眠ってるだけって事で許してあげるから、目を開けてよ!」

 

 その次が高町とヴィヴィオちゃんだった。だからパパってやめろって。

 

「……っぁ、う……」

 

「あおな!」

 

 とにもかくにも、フェイトさんを泣かせている以上、もう寝てられない。早く起き上がって大丈夫だって言わなくちゃ。

 ゆっくりと節々や腹部なんかが痛むが無理矢理……そういや両手が……あれ?治ってる?でも動かせないとはこれいかに……あっ、ザフィーラさんが起き上がるの手伝ってくれた。優しいんだな、見直したよ。

 

「ぉ、れはだいひょう、ふ……」

 

 だがなんてこったい。思った以上に口が休みボケの所為で回りやしねぇ。

 

「あおなぁ!」

 

 なので無理矢理に続けようとしたらフェイトさんが抱きついてきた。

 もう、ね。駄目だよこれは。一瞬脳ミソがパージしたんじゃないかって感じれたくらいには反応出来なかったよ。またあのアルビノさんに会いに行くんじゃないかとすら思った。身体の方は正直者らしく、鼻から愛を垂らそうとしてたけど、血液が足らなかったのか射出出来なかったようで。残念だったな。

 

 しかし俺の記憶はそこで途切れる。どうやら脳ミソではなく意識をパージしたらしい。

 そりゃあフェイトさんにあの愛するフェイトさんに抱きつかれんたんだ。意識をはっきり持てってのが難しい。幸せの中で沈めたよ。

 

 

 

 

 

 最後に一つ。とても柔らかくていい臭いがしました。




~その頃のアインハルトさん~

(この人は……昔からこんなに傷付く人だったんだ……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


いやぁ、温め続けて出す機会が無くなると半分思ってましたが、出せて少し満足してます。

……え?死んで復活は強化フラグ?そんなものありませんよ?

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。

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