二ヶ月ほど忙しく、更にはネタが固まらずなかなか形になりませんでした……。
※11月22日サブタイトルミスってましたので直しました。
僕達の目の前に降りてきたあおなさんからはどこか様子が違う感覚があった。
……いつもの、フェイトさんと一緒にいる時はまるで子供のようにはしゃいでいて、それでいて僕達に接する時も優しさを見せてくれるあのあおなさんとは全然違う雰囲気を感じられた。
……やっぱり目の前にいる奴はあおなさんに似ているけど、あおなさんじゃない。
その答えに辿り着いた瞬間、あおなさんは僕達に向かって襲い掛かってきた。
満面の、笑みで。
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第57話『ナハトの夜天の書講座』
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さて、結局学校についてはグレアムおじさんとやらの人物の答えを聞かねばならないとかなんとかだそうで、今のところは保留とする事になった。
と、言うわけで、外の天気も悪いので洗濯物も早めに取り込み、特にすることもないので家に込もって主のベッドに寝転がりつつあおなの言う『愛』について少し調べる事にした。
……にしても、今の世の中とは素晴らしい。特にこのインターネットとやらは少し文字を打ち込みさえすれば後は勝手に調べてくれる。ただカタカタしているだけで時間を忘れる事が出来る。まさに文明の利器と言った所か?
うっすらと残っている私の記憶の奥底の、私の生まれた時代には、確かこんな便利なモノは無かった。あったとしても辞書のようなものに調べたいものを言って検索する、とかそんな形式というモノで、辞書に載ってないモノは調べられないと言う不便さがあった。
しかし、これは打てば増えますレベルで出てくるわ出てくるわで実に面白い。
…………ただまぁ、主に一日一時間と言われているからそれを守らなくては次の日は使えなくなると言うのが厳しいが、それが無いとのめり込んでしまいそうになるので妥当だと考えてはいる。
さて、あおなの言う『愛』について調べた結果だが……答えとしてはまだ分からない、と言った所だろうか。私としてもある程度は理解できたような気がしないでもないが、やはり知りたいと思った以上全てを理解できないと謎の気持ち悪さが残ってしまう。ただ、『愛』を調べている内に辿り着いた男性同士の絡みという『愛』、女性同士の絡みという『愛』、この二つには軽くだが心が惹かれたよ。
「ナハト~。もうそろそろ時間やで~」
「了解した。我が主」
私はそっとパソコンをシャットダウンし、ふともうそろそろ晴れただろうかとの期待を込め、窓の外の空を見る。
しかし雲はどす黒く渦巻き、雷雨が暗雲を走り回る天気でこれだと洗濯物は干せはしない。最悪シグナムがなんとかしてくれるだろう。
とりあえず、本格的に何もすることがないので主の元に向かうとしよう。主の部屋を出て、階段を降り居間へ向かうと、そこから主の声と……これはフェイト・テスタロッサか?の声がする。どうやら連絡を取っているらしい。フェイト・テスタロッサの方から聞こえてくる環境音から察するに……バスの中っぽいな……。
だが流石の私も主と主の友人の話を盗み聞きするような無粋な真似はここまでだ。主は友人を大切にするお方だ。邪魔をしてはならないだろう。ここは主に気を使って邪魔をしないよう私は花を摘みに行くとしよう。その後にでも今日の晩ごはんの手伝いでもしよう。
うんそれがいいと離れようとした瞬間だ。
『……それでね?はやて。『砕け得ぬ闇』って聞いたこと……ある?』
すごい不穏な単語が耳にへばりついた。
「『砕け得ぬ闇』?……んぅ……聞いたことないけど、どしたん?」
『さっきさ、
…………おいおい。なんの冗談だか……。『砕け得ぬ闇』?……ははは。そんなもの、どうせ『グダ刑事ヤミ金』を聞き間違えたに違いないぞ。……びっくりした所為でチビってしまったじゃないか……。
「…………でも、もしもほんとにその『砕け得ぬ闇』が原因で、それでいてあおなが出会ったっちゅうしゅてるんとやらの話が真実なら私達にも責任あるって事やから……」
これは確定じゃねぇか。
…………うぅむ。ここで本当の事をしっかりと主に教えるべきなのだろうか。確かに主は夜天の主となった。『闇の書』もとい『夜天の書』の事を不透明な部分を含めて知る権利はある。だが主となってまだ日は浅く、ちゃんとした魔法をガンガン使う夜天の主としての姿、所謂巷で言うところの魔法少女としての姿にはなってはいない。
友人思いの主の事だ。伝えてしまえば自身の危険など省みず『友達が危ういではないか……行こう』の一言で主も動くしそれに連なる形で私達を動くだろう。
大切な主を危険に晒したくないならここで黙っておくのが最適なんだろうが……そうなると、
少しの危険も省みず生き残る可能性に賭けるのがきっとここでの頭の良い選択だろう。
どちらにせよ、私一人で動くわけにはいかないので主に話を決めさせるとしよう。これが夜天の主としての最初の仕事だ。
「じゃあ、またね。フェイトちゃん」
『うん。じゃあね、はやて』
丁度終わったみたいなので、ここで話を切り出すか。
「主」
「ん?ナハトやん。どしたん?」
「まずは先程の会話を盗み聞きした事に対する非礼を詫びよう。それでいて、『砕け得ぬ闇』に関する私の知りうる限りの情報を夜天の主となった貴女に伝えようと思うんだが……」
「なんやて!?知っとるんか?ナハト!」
……なんだろうか。魚釣りの入れ食いフィーバーとはこんな気持ちなんだと理解できた。まぁそれは置いておくとして、
「その前に、だ。一つだけ確認しておく。……だがまぁ主の事だ。恐らく知ってしまえば危険を省みないだろう。それ事態は構いはしない。だからこそ、しっかりと確認しておく。別に私としては主が拒否してくれる事を強制するわけでも無いし主が"やっぱやめた"と言えばそれでもいいと感じている。だからこそ問おう。『
先程までの主はどこかふざけているような感覚があった。そんな状態で決められては主が命を落とす未来が確定で見えてしまう。そうなってしまうと折角手に入れた
なので少し強引かも知れないが、主を
「…………分かったで、ナハト。ならその問いに答えるとしたら、『ええで』、や」
主の顔付きが変わった。この顔は一般人である『八神はやて』ではなく、夜天の主としての『八神はやて』の顔だ。……と、言うことは覚悟したのか。
「……了解したぞ。我が主。それでは説明させて頂こう。私ことナハトヴァールの知りうる限りの『砕け得ぬ闇』を」
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さて主。元々『夜天の書』とは『次元世界の各地にそんざいするであろう偉大な魔導師の技術を収集し、研究するために作られた収集蓄積型の巨大ストレージデバイス』だ。そして、そのプログラムを今の主を除く歴代のクソッタレ共が改悪し破壊の能力を持ってしまったモノが『闇の書』だ。
その『闇の書』は主の友人達によって『夜天の書』に戻った訳だが………話は戻るが、『夜天の書』は『闇の書』となった後、元々ある力よりもより強い力という存在……そう、兵器となった。それはそうだろう。元は各地の偉大な魔法を学び、研究する事を目的として造られたデバイスだ。その偉大な魔法の攻撃力、殺傷能力、破壊力を倍増させればそれは立派な殺戮マシーンだ。例えば雨が降らない地に雨を降らす魔法。……砂漠地帯には素晴らしいだろう。だがこの魔法の趣向を少し変えてみればどうだ。大雨を降らせ続け敵の兵糧である作物を育てさせなくしたり、川の近くにある敵拠点を文字通り流したりすることだって出来る。
……ここからが本題だが、いつだったか『闇の書』が奪われた事があってな。まぁ、奪った奴はこの『闇の書』を扱えなかったのだが……その時にソイツは"『闇の書』は使えなくても中から乗っ取ればこちらのモノになるのではないのか"とでも考えたのだろうか、『闇の書』に
そのシステムこそ、『
そう、『砕け得ぬ闇』だ。
『U-D』は誰にも気付かれぬままその触手を伸ばしていき、ついには『闇の書』のデータを全て読み取ってしまった。……守護騎士の力も、リインの力も、私の力も…………。本当であれば私達は既に乗っ取られ今ここで主と出会う事は無いのだろうが、そこで運がいいのか悪いのか、ここでは"いい"の部類に入るのだろうか、『U-D』は意思を持ってしまった。そして『このままここにいればわたしはつよくなる』とでも理解したのだろうか、誰にも感知されぬまま、自身を成長させるため、それを守るための3つの鍵として『闇の書』の内部にて自身を封じ込める『紫天の書』を生み出し、そこで『闇の書』が集めていく魔法をインストールさせつつ深く眠りについたのだろう。
その封印は恐らく、全ての魔法を学び終えたと自覚したときに解除され、私達もその時に乗っ取られていたのだろうが、私達を『闇の書』としての呪縛から解放してくれた時……そう、つい最近の出来事の時、リインが知ってか知らずか私と守護騎士プログラムを別々のモノとして分離した時に射出させられたのだろう。『未完成』のまま、な。
……そして、恐らく今のこの異常気象はシステム『U-D』が絡んでいるモノだと思われる。
理由?理由としてそうだな……。私は『U-D』が生み出した鍵としての存在であるマテリアルの反応は感知出来ない。そもそも、私達から隠れるために産み出されたモノだ。
だが、外に解き放たれ、私達と同じ種類の系統の力を感じさせられれば嫌でも分かるというものさ。
~その頃のリイン~
(向こうから感じるあの嫌な予感はなんだ!)
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次回からこのような事にならないよう気を付けたいと思ってます……。
それと、ナハトの説明した『夜天の書』『闇の書』『紫天の書』に関しては少々捏造した設定などが盛り込まれています。
感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回も、よろしくお願いいたします。