『愛』はすべてに打ち克つ!   作:とかとか

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デメリットある系の技とか大好きです。


第56話『彼方の者の拳』

  さて、やることは決まったから、この丘から降りるとしようか。

 ……ふと、下の方から視線を感じる。

 そちらに目を向けると、そこには丁度オレ(・ ・)と同じ年齢っぽい少年と少女そして、……あれは……竜か?

 誰かは分からない、だが、魔力量はオレ(・ ・)よりも多く感じる。

 もしかしたら、オレ(・ ・)のやることの邪魔をしてくる輩なのかも知れないし、そうじゃないかもしれないが、不確定要素はここで(排除)しておいた方がオレ(・ ・)の為にも、なによりフェイトさんの為にもいいかも知れない。いや、その方がいい。

 

 

 

 

 

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第56話『彼方の者の拳』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 今、私の心は不謹慎にも高揚している。

 それがワクワクなのか、"死"がすぐ目の前にあるからって言うドキドキでアドレナリンがぶっぱなのかは分からないけど、私の心は高揚しています。

 ……何故なら少し小耳に挟む程度で話は聞いていたけど、一度だって戦った事がないあの名前も知らない(聞こうとする度に邪魔が入って聞きそびれてた)あの人の本気で全力で殺意マシマシ200%の状態と()り合えるなんて……こんなの普通じゃ考えられない。

 

「アインハルトさん!少しの間、時間稼げます?」

 

「ヴィヴィオさんのおb……プレシアさんが張ってくれた障壁もありますし、暫くはなんとか!私も、この人相手にどれだけやれるか試してみたいですし!やってみます!」

 

 しかもありがたい事にアインハルトさんも乗り気のようで、これはますます手が抜けないし、勿論抜くわけにも行かない。

 

「それじゃあいっちょ、私の未来のパパとママとママを守るために全力を出させてもらいます!」

 

 私は自分に気合いを入れる為、後ろの傷付いたパパ(お兄さん)ママ(フェイトママ)ママ(なのはママ)に目を向け、ここで守らなくちゃ会えなくなるんだって事実をしっかりと頭に叩き込み、目の前のあの人に目を向ける。

 アインハルトさんもアインハルトさんで、その目はしっかりとあの人を捉えており、既に臨戦態勢(バトルジャンキーモード)で目が血走ってるようにしか見えないけど、意気込んでる。

 

「ヴィヴィオさん」

 

「ん?どうしたんです?アインハルトさん」

 

 

 

 

 

 

「――今から私達の正念場です。……とりあえず、この戦いが終わったらヴィヴィオさんのお母様(フェイトさん)に美味しいサラダでも作って貰いましょう。……約束ですよ?」

 

 

 

 

 

 

「ちょっ!?アインハルトさんその約束はッ――」

 

 二人とも死ぬフラグ……!!

 

「答えは聞いてませんッ!」

 

「アインハルトさん!?」

 

 アインハルトさんは飛び出し、金髪のあの人の懐へと潜り込み、初手から『覇王断空拳』を打ち込む。あの人は少しだけ驚いた表情を見せた後、すぐに親の仇を見るような目でアインハルトさんを睨みその『覇王断空拳』を枯れ枝のような細い腕で、それも片手で受け止めた。

 そのまま翼のような爪でアインハルトさんを縦に裂こうとしたけど、プレシアさんの張った障壁に阻められアインハルトさんには届かない。その隙を逃すまいとアインハルトさんはあの人のアインハルトさんの拳を受け止めている腕に絡み付き、折った。

 

「折れたァ!?」

 

 あの人は辛そうな表情を浮かべアインハルトさんを振り落とし、少し距離をとる。分かりやすく言うなら窓際、つまり縁側の所まで下がった。

 ……っと、こうやって見てる暇は私には無いや。

 とりあえず、あの人に(die)ダメージを与えないとこの場では安心なんて出来ない……。

 

 だから、アレ(・ ・)を使う。

 

 使ったら精神分析とか色々してもらう必要があるけど、この場合じゃ、背に腹は帰られない。……大きさ的に見たら私の胸はペッタンこだけど……って今はそんな事はどうでもいい!

 

「……『我が声に応えよ』」

 

 私から虹色の魔力が溢れだし、私の周りを覆う。

 

「『全にして一、一にして全なる者よ』」

 

 その虹色の光は少しずつ玉虫色へと変わりゆく。

 それに異常を感じたのか、あの人はこちらに爪を向けてくるが、残念ながらその攻撃はまだまだ耐久力のあるプレシアさんの障壁に遮られ、更にアインハルトさんの攻撃により折られた。……あの人のプランプランしてる腕が気になるけど今はこっち(詠唱)に集中だ。

 

「『原初の言葉の外的表れよ!汝の戒め、今この時より解かれん!』」

 

 虹色の魔力光は玉虫色にどんどん侵食されている。さながら貪り食われるかのように。

 

「『我が魔の力を糧に、その力を我に!窮極の門より、その身を表わせ!』」

 

 ついには虹色は完全に玉虫色へとその色を変えた。

 ……多分、この時に鏡でもあれば私の目の色も玉虫色に変わってるって分かるんだろうけど、今この状況じゃあ確かめる手段ないからなぁ……。

 

 

 

 

「『その拳を、眼前の敵に!』………力を貸して!ヨグ=ソトース!」

 

 

 

 ……詠唱は終了した。周りの人は今ごろSAN値チェックでもしてるんだろうけど、今は気にしない。気にする暇すらない。

 ……パパとママ達を守る為とはいえ、またあの玉虫色のシャボン玉祭りみたいなのが見えて、私の頭もクラックラしてるけど……分かる。

 身体全体の総魔力量が増幅して、更にその魔力が全て私の右拳に集中するのが。

 拳を見ると、玉虫色の魔力がコールタールに突っ込んだ後みたいにへばりついているのが分かる。気持ち悪い筈なのに全然気持ち悪くないってのがまた気持ち悪い。

 

 まぁいいや。

 

 今はやるべきことをやるだけだ。

 

「とりあえず………アインハルトさん!準備、完了しましたよぉ!!!」

 

「了解しました!ヴィヴィオさん!」

 

 アインハルトさんは最後にあの人の顎を少しかすらせるように拳を振るい、私よりも後ろに下がる。

 

「くぅ……!待ちな……さ……なっ……!?」

 

 あの人は魔力構築生命体だって聞いたからてっきり脳の概念は無いのかと思ってたけど、あるっぽいね。ちゃんと脳震盪は起こってるみたいだし。

 にしても流石アインハルトさん。最後の最後にとっても嬉しい置き土産を置いてってくれたよ。

 さて、今度は私の番だ。恨みは無いけど……………いや、ある、沢山、たっぷり、これでもかって言うぐらいある。それこそどうしてパパを傷付けたのかとかママ達のデバイス(レイハさんとバルにぃ)を壊してくれたなとかある。……だけどCOOLになれ私。そうだ。怒りに飲み込まれちゃいけない。オチケツ、私。

 …………ふぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱ許せねぇわ。

 

 

 踏み込みを入れ、あの人の顔面――特に頬らへん――目掛けて、右拳を打ち出す。

 

 

「私のパパとママ達の為に、いっちょお空の旅でもしてきてくださいッッッ!!」

 

 

 真っ直ぐと、顔面を捉え、右拳で抉るように振り抜ける。

 まるで3部のDIOが逃走経路に行くためみたいに吹っ飛ぶが、顔をよく見てみると、気を失ってるように見える。

 ……とりあえず……これで、ひとまず決着……かな?

 だけど、まだまだ殴り足りないと思うけど、肉体的にはちょっと我慢の限界みたいだ。身体から力が抜け、床と、ボロボロになってもう原形を留めてない布団の間に顔から倒れた。

 身体中に充満していた魔力が霧散していくような感覚と、人間としてナニカ大切なモノが抜け落ちたような感覚が身体に残っているけど、なんとか、吹き飛ばせてよかった……。えへへ……後でパパとママ達になでなでしてもらおっと……。

 そんな浸りたくない余韻とご褒美(なでなで)が貰えるかもって期待に浸っていると、あの人を吹き飛ばした方向からなにか……そう、まるで肉塊に手を突っ込んだような音が聞こえた。




~その頃のフェイトさん~

(なんか知らない間にサラダを頼まれたのはいいとして……。なに……あの光は……)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



まず先に、ヨグ拳の詠唱を考えてくれた友人に感謝を。
そして全然ネタが出てこない私の脳みそに恨みを。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。

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