『愛』はすべてに打ち克つ!   作:とかとか

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そう言えば、もう54話なんですね……。


あと、最初のシリアスチックな所は別枠として色んな視点を少しずつ入れながら、もう少し続きます。


第54話『大狂を引く』

 僕達を救ってくれたマヨネーズっぽい頭の人は『弟に似ていたから救ったまでの事』とだけ言い残し、僕達を地面に下ろしたあとまた空に飛んでいっていた。

 ……結局、あの人は誰だったんだろうか。

 感謝はしても仕切れない。

 降ろして貰った所は丘に近い所で、少し遠くに商店街が見える所だった。

 ふと、上の方から知ってる魔力を感じ、そちらに目を向けると、僕達がよく見るあおなさんを小さくしたような人がそこにいた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第54話『大狂を引く』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「……()……ぉな!起きて!あおな!」

 

「うぐぁ……くとぅん……ゆふぅ……ハッ!?」

 

 ……ヤバイ……寝てた。

 確か校長四姉妹のライブ終わってすぐにバスが来て、それに乗って(二人席フェイトさんの隣俺通路側)たら急に、きっとライブではっちゃけたから疲れが出てきて……それでフェイトさんに起こされるまでずっとスヤァしてた訳か。

 

「あおな、もう着いたよ?」

 

 フェイトさんの言葉に従い外を見てみるとそこは俺と高町の家の前だった。

 

「……す、すいませんフェイトさん。ありがとうございます」

 

「……あおな君ってば……どうしたの?何か食べまくる夢でも見てたの?」

 

 そんな事はない。

 ……つか、どうして高町がこの呪文知ってんだ?

 

「とりあえず降りよ?」

 

「あ、はい」

 

 まだ眠いと自己主張する目をフェイトさんとバスの運転手に迷惑だろうがとの意味を込めてこすり、流れるような動作でバスの……バスには珍しい上にある荷物を置く為の棚の部分から俺とフェイトさんの荷物を持ち、バスから降りる。

 

「えっ、ちょっと!あおな、流石に自分の荷物は自分で……え?」

 

 それを直ぐ様家に運び込み、そのままUターンしてバスに戻り膝を付き、手を差し出す。例えるならしゃるうぃだんすって感じだ。

 

「さぁ、フェイトさん……」

 

「……むぅ……大丈夫だよあおな。流石に何回もやってるから私一人でちゃんと降りれるもん!!」

 

 フェイトさんが頬を膨らましてご立腹になってバスを降りてしまった。

 ……どうやら、俺のこの差し出した手を見てフェイトさんは子ども扱いされたと思ってしまったのかもしれない。……悪いこと、しちゃったなぁ……。

 

「あ、あおな君……」

 

 ……そういや、高町は何でさっきから顔を真っ赤っかにしてこちらに手を出して少し振ってるんだろう。……まさか『オラさっさと降りろや後が(つか)えてるんだから!』って怒ってんだろうか。

 それならば顔の赤さにも納得がいくし、手の動きもどことなく野犬を追い払うような『しっしっ』みたいな動きに見えなくもない。まぁ、確かにここで長い間止まってても他の学友達や運転手に悪いし、それに外の天気も先程よりも酷くなってる気がするし……何より高町に攻撃されたくないし、もう降りるとするか。

 

「!?……(あおな君のバカ)

 

 ……何で高町は少しションボリしてるんだろうか。やっぱり俺を殴れなかったから?…………おぉ、くわばらくわばら。

 

 

 

 

 

「…………で、なんで高町さんも家に入ってるんですか?」

 

「い、いや、久し振りに、ね?それにフェイトちゃんがどうなってるのかが気になるし……」

 

 はっきりと嘘だと分かる。何故かって?先程からチラチラと二階へと上がる階段、更にその奥の方にある俺の部屋へとその視線は繋がれている(ような気がする)。

 なので変なフラグを回収しちまわない内に奥の部屋へとご案内する。こんな高町一人奥まで押し出しいっぱい。

 ちなみにフェイトさんはお義母さんの部屋へと向かった。

 さて、高町を押しつつキッチンへと向かう暖簾を潜ると、そこにはどこか見たことのある金髪の姿が。

 

「あ!お兄さん、お帰りなs……ちっちゃいなのはママ!?」

 

 あぁ、そういやヴィヴィオちゃんがいたんだった。

 そのヴィヴィオちゃんだが、何故か黄色い胸当て型のエプロン(母さんの)を纏い、ご丁寧に頭にハンカチの三角巾まで巻いて料理を作っていた。ついでに緑髪さんも同じような格好で同じような事をしている。その前に、おい、名前教えろよ。

 

「……え?なのは……ママ?私が?誰の?貴女の?……(あおな君じゃなくて?)

 

 高町は高町で何故か思考の無限ループっぽいモノに嵌まってるが、俺の部屋から思考を外せたからこれでいいんじゃないかと思ってる。

 そんな事をしていると、唐突に『ピン☆ポーン』とインターホンが鳴る。……父さんと母さんは今は密売人をコロコロしに行ってる訳だし、それにあの二人なら気にせず家に入る筈だ。

 ……まさかこんな天気に宅配便でも来てんのか?すげぇな宅配業者は。

 

『……ぁ……おな……げ…て、………くださ……ぃ……』

 

 ……おかしいなぁ。俺が予想してた声はこんなんじゃないぞ。『チャーッス宅配便デース』って感じなのを期待してたんだが……予想に反して弱々しい声が聞こえたぞ。

 不信感丸出しで扉を開けたら扉の下の方からゴツッって完全にぶつけたよねって音がした。

 音のしたほうを見るとそこには扉が頭に当たっているしゅてるんがいた。

 

「……何してるんです?しゅてるん」

 

 どこか口元がにやけるたような気がしたが、そこは気合いと根性で頑張って抑える。そんでかがんでしゅてるんを起こそうとして、右肩に手をかける。

 …………………………おかしいなぁ。しゅてるんってこんなに肩幅狭かったっけ?

 これは流石におかしいぞ、としゅてるんをよくよく見てみるとしゅてるんの右腕が無かった。

 

 

 

 おっと思考に空白が入っちまった。

 

「どっどどっどうしたんですkか?……こほん。しゅっしゅてるん?」

 

 ダメだこりゃ。(ども)り過ぎて吸血鬼の黄色いカリスマ様に『貴様……動揺しているな』って言われるオチしか見えない。しかしここではしっかりと気を強く持とう。幸いかどうかは知らんが出血の『し』の字もない訳だし。

 

「あ……あお、な……め、です。()、さ……」

 

 とりあえずしゅてるんが何か言ってるが聞き取れないので無視して、仕方ないからしゅてるんの左肩を抱き、両足の膝の下から抱え込むように右手を通し抱き上げる。

 所謂お姫さま抱っこって奴だ。……初めてがしゅてるんになるとは思わなんだがここは仕方あるまいて。

 

「ヴィヴィオちゃぁん!ちょいと手伝って貰えますかぁ!」

 

 この場面で適当に使えそうな人の名前と言えばこの子しかいなかった。フェイトさんを使うなんて事は俺には到底出来ないし、フェイトさん家の皆さま方を使うなんてとんでもないし、緑髪の人は名前すら知らないからだ。高町?誰それ。

 しばらくしてトテトテと音を立てながらヴィヴィオちゃんがやって来る。

 

「はいはーい。なんですかお兄s……ダブルショック!……(シュテルさんってこの時期だったんだ)

 

「……何を驚いてるのかは知りませんが、ちょいとそこの……フェイトさん達がいらっしゃる部屋の隣開けてくれません?」

 

「あ、はーい」

 

 ヴィヴィオちゃんに襖を開けてもらい、畳に布団を敷いてもらい、そこにしゅてるんを寝かす。

 ……正直言ってよく混乱しないで済んだと思ったよ。

 さて、とりあえずまずは――

 

「あおなくん……。この人、だれ?」

 

 ……高町に状況説明すると言う項目が入ったがまずはしゅてるんの治療が先だ。

 

 

 

 

 と、言うわけで選ばれたのは、リニスちゃんでした。

 

「……それで呼ばれたのが私ですか」

 

「はい。リニスちゃんの方がこう言うの(治療とか)に詳しいと前にフェイトさんとアルフさんに聞きましたから」

 

「分かりました。魔力構築生命体は初めてですが、微力ながらも全力を尽くさせて頂きます」

 

 ……しゅてるんの治療はこれでよし、と。高町への説明はフェイトさんがするって言ってくださったから信頼出来るとして……。……あれ、することがなくなったぞ。

 

「あ、おな……て……」

 

 しゅてるんもまだ何か言ってるし。無茶するもんじゃないよ。……全く。近くにいて欲しいってか?

 

「仕方ありませんね。今回だけ、今回だけしゅてるんの近くにいてあげますよ」

 

 そう言って少し照れ臭くなりながらもしゅてるんの側に座る。まぁその、向けてきた好意を無下にするわけにもいかないし、ね。傷らしい傷は見たところ腕が無いくらいだし、リニスちゃんも魔力供給のみと言うことで許してくれた。

 

「ち、が……『結構酷いんですね。君って』」

 

 ファッ!?

 おかしいなぁ……目の錯覚か?それとも幻覚?さっきまでボロボロだったしゅてるんが一瞬で俺の知ってる腕もあるしゅてるんに戻った……?

 リニスちゃんに確認の視線を求めても首を横に降るだけだし、何が起きたんだ。

 ……まさか、あの時(第9話参照)の高町みたいに治っていってる?いや、確かあの時はゆっくりとだった。

 こんな一瞬で、まるで伸ばした輪ゴムが直ぐ様元に戻るって感じじゃなかった。

 これはまさか、フェイトさんみたいに中に誰が違う人がいるのか……?

 

「『まさかこんなの(・ ・ ・ ・)にシュテルが惚れてるとは思いませんでしたよ。こんなシュテルの気持ちも言いたい事も理解してない奴に……』」

 

 しゅてるん(?)はむくりとまるで倒した達磨のように起き上がる。

 

「『君はシュテルには相応しくありません』」

 

 色んな出来事が重なり過ぎて俺の脳みその許容範囲を超えてフェイトさんは美しいという結果にたどり着いた所でそういや色々言われたんだと思い出し腹が立って来た。

 

「そうは言いますけどねぇ、それをアナタが決める事では無いと思いますが?」

 

「『……シュテルは君にずっと"逃げて"と言っていたのですよ?……いやまぁ、確かに私は君を仕留める為、もとい試す為にシュテルを釣り針として利用しましたが……』」

 

「…………」

 

 試す……?もしかしてしゅてるんの中にいるのはあのヤガミモドキなのか?

 

「『残念ですが、君は不合格です。……もし合格ならば一つになってシュテルと一緒に私の中で過ごせたのに……残念でしたね』」

 

 残念も何も俺はフェイトさんと普通の日常の中で一緒に過ごしたいから不合格で有難いと言ってはしゅてるんに失礼になるが……………いや待て。

 今、何て言った?……『シュテルと一緒に私の中で……』……私の中で(・ ・ ・ ・)

 

「あんた……ホントに誰ですか?」

 

「『それは君が知る事はありません。ここで死にますし』」

 

 目の前に写ったのはどす赤黒い禍々しい炎が形つくっているような背中から生えてる2本の腕だった。

 

「……なんです、か?それ……」

 

「『それこそ君が知らなくていい』」

 

 それが2本とも一直線に俺を狙ってやってくる。近くにフライパンも無いし、避けるしかないと考え――

 

「あおなさんッ!」

 

 そんな時にリニスちゃんが謎の杖っぽい奴(少なくとも高町のよりは杖)を召喚ししゅてるん(違)に向けると、いつか見た事のあるようなオレンジ(黄色より)の小さな槍を5本くらい出現させ、射出。

 しかしそれを小蝿をあしらうように片方の腕で払い、リニスちゃんを襲う。すんでの所をリニスちゃんは魔方陣のようなってか、まんま魔方陣で防ぐ。

 ……ん?俺?

 

「『人間ってこんなにも脆いから嫌いです……』」

 

 迫り来る腕を掴んだまでは良かったが、普通に俺の両手を猪突猛進よろしく邪魔な障害物のように関係なしに吹き飛ばしてその5本の爪で俺の身体を縦に貫きやがった。




~その頃のトーマ君~

(あれ?あそこにいるのは……ちっちゃいけどもしかしてエリオ君達……?)


◆◇◆◇◆◇◆◇


……いや、その、長くなった理由は切り所が分からなくなってしまって……その……とりあえずもういいやって思っちゃいまして……その…………すいません。

次回からは元の文章量に戻ると思います。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。

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