痛い、イタイ、いたい。
両の拳を振るいフェイトさんの顔面に何度も何度も叩き付ける。
しかしフェイトさんは動じず、更に深く、深く、深く痛みから、身体から漏れ出ている血液から分かるように殺傷設定にしてある『バルディッシュ』を
そして、フェイトさんがザンバーを
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第52話『紫天の空』
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「――――ぁ」
ようやく、ようやく私達の悲願が叶いそうな時ですが、このどんよりとした曇り空の中、あおなはいかがお過ごしでしょうか。出来る事ならば私の為に私の好物を作って待っていてくれれば良いのですが……。
……あ、そう言えばあおなに私の好物を教えてませんでした。
「――ユニット、起動。無限連環機構動作確認――完了。――動作開始。システム『
現れたのは長く、足元まであるゆったりとした金髪を携えた、私達よりも少し身長が低いのではないか、と思える少女の姿をしたヒトガタのプログラムでした。
その姿に(あおなほどではありませんが)心を奪われた私を現実に引き戻したのは桃色さんこと、キリエさんでした。
「……ちょっと、王様!システムだのプログラムだのって聞いてたからUSBとまではいかなくとも大容量外付けHDD……は無理だから王様の持ってるその『紫天の書』みたいな形だと思ってたのよ!?でも、全然ちがくて人型じゃない!」
「……なぁ桃色よ。我らがヒトの形をしておるのだ。『砕け得ぬ闇』がヒトガタとて何も驚く事は無かろうが。貴様はそこで黙っておれ。――さて、」
流石は私達の王です。一切の動揺を見せてません。それどころか更に威厳を強めるような言い方で痺れましたよ。…………王の右手の震え?なんですかそれは。
「――貴様と出会える日をどれだけ待ち望んだことやら……。ようやく出会えた喜びか、この瞬間に発する筈であろう祝いの言葉すら浮かばぬわ……。なぁ、『砕け得ぬ闇』よ」
「……あなたは……もしかしてディアーチェですか?」
おぉ、流石は王です。(いくら右腕がぷるぷる震えてたとしても)『砕け得ぬ闇』とのファースト・コンタクトをあんなにもあっさりとしてしまうとは……。こんなにも素晴らしい事が起こっている。……だと言うのに、
「……レヴィ。貴女はいつまで拗ねているのですか?」
「……だってぇ……。折角ボクの宿敵として事足りる相手に出会ったって言うのにすぐに離ればなれだよ?……悔しいよ……」
……まぁその気持ち、分からないでもありません。私も初めてあおなに出会ってから別れるのが辛くないと言えば確実に嘘だと言えるくらいには辛いです。
しかし、『砕け得ぬ闇』が見つかるかも、との話を聞いた瞬間に私の中の
本当にすみません……あおな……。
レヴィも……きっと心に
「だけど、ボク気付いたんだ……へいとに心を奪われたのかも知れないって……!」
思ってたのと何か違う答えが返って来ましたが、レヴィが新しい生き甲斐的な何かを見付けたようなので気にしない事にします。
「でもボクがこんな気持ちになったんだ。……へいともきっとボクに心を奪われたに違いない……」
この考え方は流石に予想外です。
「つまり、ボクとへいとはもう……宿命という間柄に……!」
さて、もうレヴィからは目を逸らすことにします。
「……ディアーチェ、何故ディアーチェがここに……解放されたのですか?それとも自力で封印の解除を?ディアーチェ……」
「ふふ、我は王ぞ?強靭で無敵で最強の、な……。我に出来ぬ事など無いわ」
「本当に……本当にディアーチェなんですね……!」
「……あぁそうだ。……もう何も心配する事は無いのだ。『砕け得ぬ闇』よ。貴様はもう一人で孤独の闇にいることは無くなった。……これからは我らと一緒だ」
「ディアーチェ……」
……王はゆっくりと『砕け得ぬ闇』を抱き締め、そっと頭を撫でる。そう言えば、確か『砕け得ぬ闇』はずっと『闇の書』の奥深くにたった一人で長きにも渡り封印されていたのでしたね……。誰にも、それこそ私達以外には、『闇の書』の管制人格も、
その呪縛は今、我が王とキリエ・フローリアンと言う人物によって解き放たれた……。
「一緒に……いてもいいんですか?」
「あぁ……我らはずっと一緒だ……。シュテルもレヴィもいる。もう決して貴様を、お主を離したりするものか」
「ディアーチェ!」
ひしっと抱き付く『砕け得ぬ闇』を見て、不意になにやら目頭が暑くなってきましたよ……。こう見てみると、私達は長い間離れ離れになっていたんですね……。
元々は『闇の書』を乗っ取る為に作られた筈の
次に会う機会があるとするならば、菓子折りでも持っていくとしましょう。
……ただ一つ疑問があるとすれば、先程から周囲の魔力素が濃くなっていっている事ですかね……。
「……なぁ、『U-D』。嬉しいのは分かるがいい加減手を離してくれぬか?」
「………」
「『U-D』?」
「……私は貴女を決して離しません。また一人になりたくないですから」
「……離れたりはしないぞ?」
「それでも、ヤです」
……魔力素が濃すぎて、少し胸焼けを起こしそうな感覚ですよ。なんなんですか?この状況。もしや『U-D』が起動したから、でしょうか……。
そんな事を考えていると、周囲の魔力素がごっそりと、それこそ私達の魔力すら持っていっているんじゃないかと錯覚……いや、これは錯覚ではありませんね。現に少し身体全体から力が抜けかけましたし……。レヴィもどこかノイズがうっすらと見えましたし。
周囲の魔力素どころか私達の魔力を一点に集中させている点へと目を向かさせていただくと、そこには未だ王を抱き締め続けている『U-D』の姿が。
「私は――」
ゆっくりと、まるでひまわりの花が咲いているような暖かい微笑みの顔をあげた『U-D』の背中からはドス黒いこの世の恨み辛みを固めたモノが炎の形となって蠢いている翼が噴出していました。
「――もう手放さないって――」
その翼が広がったと視認した時には既に遅かったらしく、その時にはもう左足にまず違和感があり、違和感があると感じた瞬間に痛みが走りました。
『U-D』から目を離し、左足を見ると、脛の部分の丁度真ん中に、翼の色をした釣糸と釣り針が私の足に食い込んでいました。ご丁寧に無理に抜く、もしくは抵抗するとウイルスが注入される
……やはり人間では無いので背中に脂汗は流れませんが、逆に流れる事が無いのでそちらに意識を向ける無駄が無く、今だけはこの肉体に感謝、ですね。
すると、不意に左足を、まさに釣糸と釣り針を正しく使いましたとでも言わんばかりに強い引きで引っ張られました。
「……『U-D』。流石にこれは我でも怒るぞ……」
私とレヴィは『U-D』に引っ張られ、逆さまに吊るされている状態です。レヴィは涙目で抗おうとしてますが、ウイルスが怖いのか、下手に動けず更にぐずってます。
……はてさて、何故に『U-D』はこんな事をしたのでしょうか。
「――決めたんですよ。絶対に、もう、二度と、決して、何が起こってもって。だからこうして――」
『U-D』がしたことと言えば簡単です。翼の一部を変化させ、それを私と王とレヴィに突き刺したのです。
「――壊して!吸収して!私と一つになればいいんだって、一人の時に
システム『U-D』は、その顔に満面の、それこそまるで子供が無邪気に自分の発見を親に見せようとするような笑みを浮かばせながら。
~その頃のなのはさん~
(……あれ?今日は天気冬には珍しい晴れだって聞いてたのに……曇ってる?)
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GODやり直してました。
やっぱり『U-D』ちゃん可愛いですよね……。
やり直してて思いましたよ。
……でもやっぱり腕が鈍っててなかなか勝てなかったり(涙)。
さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。