出来てたら、いいなぁ……。
「テメェ……ナニモンだぁ?」
目の前の赤い少女が、杵の先が尖っていて杵の柄が短い武器をこちらに向けながら聞いてきた。
……その質問は、半年前の私だったら答えられていなかった。……だけど、今なら自信を持って答えられる!
「この子の………なのはの友達だ!」
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第5話『理由?あぁ、好きだから』
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携帯のGPSを信じて走って来てみたらビルに穴があいていたうえに煙がもっくもく。
……なにが起きているのかがさっぱり分からない。だが、とにかく俺のすることは決まっている。
とりあえずはあの穴があいているビルに突っ込もう。話はそっからだ。
あそこにフェイトさんがいる(確信)。
さぁいざゆかんって思っていたその矢先に、そのビルの穴から二人の少女が飛び出した。
その姿は俺が間違える筈の無い姿。
ゆらりと揺れる二つの黄金に輝くツインテール。儚げに揺れる二つの赤い双眸。見ているだけで俺の心がペンデュラムになる物憂げなその表情。まるで触れれば壊れてしまいそうな程の身体。
その姿は紛うことなきフェイトさん。
……すごいなぁ。フェイトさん、空飛んでるよ。やっぱりフェイトさんは天使だったんだ。
黒ずくめにマントをはためかせるその姿は正に戦うヒロインそのもの。
で、格好いい戦うヒロインのフェイトさんと戦っている手に物騒な短い柄付き杵を持っている赤い少女は一体何者だ?
それにしても、麗しきフェイトさんの姿と赤い少女の姿がこんなにも綺麗に見えるとは思わなかった。
…………もしかして目がよくなったのかな?ヤムチャしてた頃の俺じゃきっと、美しきフェイトさんと赤い少女の戦いは流星のような金色のラインと赤い線にしか見えなかっただろうし。
……って、フェイトさんの後ろにものごっつ
俺は地面を思いっきり蹴り、ビルの壁に足を付け、より詳しく言うならビルの窓枠に足を引っ掛け、ビルの壁を走る。重力から逃げるように走ったら屋上に着いたから、そこからフェイトさんの方に向かってジャンプ。
「ハァァァァッ!!!」
青っぽいチャイナ服を来た頭に犬耳が生えている男が拳を振るう。そしてその拳がフェイトさんに当たるかどうかの所をすんでの所でフライパンで受け止める。
「なにっ!?」
「フェイトさんは……やらせません!」
「って、なんであおながここに!?」
おっと……フェイトさんを驚かしてしまうとは、悪い事をしてしまった。
だけど驚いた顔も可愛い。
くそう。驚かしてしまった罪悪感とフェイトさんの驚いた顔が可愛いと思う気持ちで俺の心は板挟みで辛い。
結局この板挟みは俺が悪いって事でケッチャコ。
ちなみに、この時俺は空を飛んでいますが、全く頭に入っておりません。フェイトさんの事で頭がいっぱいだっからね。
「驚かしてしまい、申し訳ありません。……ですが、俺はフェイトさんが危機に晒された場合や、危険に晒されそうになった時はすぐに現れますんで」
ちょいとキザに言ってみた。
「……でも、あおなって戦えるの?」
てっきり引かれるんじゃないかと思ってたら心配された。うわ、マジでフェイトさんは天使だ。
「そこら辺はご心配ありません。俺、フェイトさんを守るためならどこまでだって強く(なれる気に)なれますから」
「あおな………」
「フェイトさん………」
「なんでそんなに私の為にしてくれるのかは分からないけど……」
それでも伝わらないこの気持ちの向く先は八つ当たり。
近くにいた犬耳チャイナ服(モドキ)男にフライパンをぶつける事で発散。
その際犬耳チャイナ服(モドキ)男は吹っ飛び、それを赤い少女が『ザフィーラっ!』とか叫びながら追い掛けていった。
これで少しは安心出来る。
「ありがとう」
とりあえず、フェイトさんのこの笑顔だけで後6年は戦える。
「テメェら!そこで……しかも戦闘中なのにイチャイチャすんじゃねぇ!」
遠くから……より詳しく言えば下の方のビルから少女の声が聞こえた。
そんな……イチャイチャだなんて……照れるじゃないか。
「そんな事はしてないよ!」
フェイトさんに真顔で否定されたのが悲しい。
「とりあえずあおな…………今ここはあおなにとってすごく危険な所だから……その、助けてくれたのは嬉しかったけど……たけど、あおなを危険に巻き込みたくない。だから、ここから逃げて」
うはぁ……フェイトさんに心配されるって凄い嬉しい気持ちになる。
それと同時にホイホイと従いそうになってしまう。フェイトさんは素敵だもんね、仕方ないね。
「確かに……俺はこんな状況に巻き込まれるのは嫌です。……元々、俺は平々凡々で平和に暮らしたかったですからね……」
「なら……「ですが………」……あおな?」
この時のフェイトさんの上げて落とされた感じの顔を見て俺の良心がまるで市中引き回しの上斬首の刑になったかのように痛む。……だけどここは男として、いや
「その話、断らせていただきます」
「…………なん、で……」
「理由ですか?……フェイトさんが好きだから、ですよ」
その際フェイトさんが複雑な顔をしていた。
…………フェイトさんにこんな顔をさせるなんて、俺は男失格なのかも知れない。でも、ここは心を鬼にでもしないといけない。
「フェイトさんは、大切な人が危険に巻き込まれたらどうします?見捨てます?」
「そんな訳が無いよ!」
「それと同じです。フェイトさんは俺にとって大切な人なんですよ。だからそばにいて、助けたくって、守りたくって、支えていたい人なんです。……確かに、フェイトさんは俺よりも何倍も強いかも知れない。ですが、だからと言ってフェイトさんをこんな所で見捨てる訳にはいかないんですよ」
「あおな………」
ここで深呼吸。
「俺はフェイトさんを愛しています」
「………っ!?」
あぁ、赤面してるフェイトさん可愛い。
「だから、じゃあ、駄目ですか?」
先程言った台詞が色々と台無しになっているかも知れないけど、
「………うん。分かったよ。あおな」
その言葉はフェイトさんに届いたみたいで良かった。
「でも、危なくなったら逃げるんだよ?」
「それは、フェイトさんもですよ。俺はフェイトさんが危険になりそうな時は全力で守りますんで」
「……うん。じゃあ、私もあおなが危なくなったら守るから」
これじゃあ、逃げるって選択肢が無くなったじゃないか。だがまぁ、いいか。
ちょうど、先程叩き落とした犬耳改め恐らくザフィーラとやらと赤い少女が上がって……もとい浮いてきた。
「じゃあフェイトさん。俺はあっちの青い方を担当します」
「じゃあ、私はこっちを」
これが初めての共同作業って奴か。……燃えるじゃねぇか。
「君は私と」
「上等じゃねぇか!」
フェイトさんと赤い少女が向き合って遠くに飛んでいった。
………さて
「こちらも始めましょうか」
「そうだな。……先程は不覚を取られたが、今度はそうはいかん」
ザフィーラ(予定)が構えを取る……前に、とりあえず初動が大事と思い、全力で突っ込む。
ここら辺で自分が空を飛んでいることに気付いたが、『(操作が出来るから)構わん。行け』の状態だったから特にキニシナーイキニシナーイ。
そんでもって後ろを取ることに全霊を掛ける。
「な!?速い、だと!?」
何やら驚いているが、ガン無視。で、後ろに回る際に発生した遠心力をフライパンに込め、まるでバットで素振りをするかのように振り抜く。
これでザフィーラ(予定)は再び吹っ飛ぶかと思われていた。
――なのに、俺のフライパンは受け止められていた。どこかで見たことがある、剣によって。
「………また、会ったな少年。こんなにも早く会えるとは、思ってもみなかったぞ」
それは、ピンクポニテの厨ニ病女性剣士だった。
よりにもよって、こんなタイミングで。
~その頃のなのはさん~
(おかしいな……あおな君の声が聞こえる。私、幻聴を聞いちゃうほどあおな君の事が……?)
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次回フライパン無双が出来たらいいなと思う、今日この頃。
感想、質問、批評、誤字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。