『愛』はすべてに打ち克つ!   作:とかとか

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寝起きのテンションで書きました。


第49話『魔王城』

 

 

 強く、強く絞める。

 

 

 今までの関係を無かった事にするために。

 

 

 しかし、『やめろぉ!』と声がした瞬間にオレ(・ ・)の体に何かしらの衝撃がぶち当たり、吹き飛ばされた。

 

 

 そこには、ボロボロになっていたアイツ(・ ・ ・)がゆっくりと立ち上がろうとしていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第49話『魔王城』

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 学校に着く直前には、俺の精神面は既に疲弊しきっていた。

 ……何故かって?高町がね?うるさいの。更にそれに月村とバニングスが加わって、絶望的だった。バニングスも月村も、そういや高町も学校来るの早いねって言葉も飲み込むくらいには。

 やれ『男は(ケダモノ)』だのやれ『フェイトちゃんは羊だから狼は危険』だのやれ『ヲヤスミ、ケダモノ』だの……酷い事を言いやがる。

 その所為でいらない精神まですり減らし、最後は涙が滲み始めた。十歳だもの、俺、強くないもの……。いじめいくない。

 だがしかし、俺の精神は学校に着いた途端に完全に持ち直す事が出来たのである。理由は安心と信頼と完全にフェイトさんだ。フェイトさんは一言『あおなはそんなことしない』とぴしゃり。

 それだけ俺を信頼してくれているんだって事で俺の涙はひゅっと引っ込んだよ。流石フェイトさん。

 それと同時に高町もバニングスも月村も何も言えなくなっていた。完全勝利だ。右手をあげてもいい。

 

「まぁ、フェイトがそれでいいんなら別にアタシは何も言わないけど……だけど……」

 

 全力で顔芸(悔しいでしょうねぇ)をしてやるとバニングスの拳が震え始める。局地的大地震かな(すっとぼけ)?としていると顔面崩壊(手動)を食らいそうなのでこの辺で止めておく。引き際はしっかりとしとかないと酷い目に合う事は今までの経験上理解している。

 だが、しかし――止まれない。

 俺は、俺自身を抑える事が出来ない。

 

 ――キガツクト オレハ バニングスヲ チョウハツシテイタ

 

「ふん!」

 

 しかし顔芸をした瞬間、バニングスの右拳がうねりをあげつつ、ムチで空気を打ったら鳴るような音を鳴らしながら俺の顔面の一部になろうとめり込んできた。

 俺はその誘いを丁重に断り、そのままの勢いを殺さぬよう、切りもみ回転をしながら校門を突破。その際俺の抜けそうだった左上乳犬歯が抜けた。流石にここでペって吐くのはフェイトさんへの好感度の精神衛生上よろしく無いのでしばらく口に含み、元の位置に戻しておくことにする。

 

「あ、アリサ?……幾らなんでもやり過ぎなんじゃ……」

 

「アイツはあの程度じゃ死にはしないから安心しても大丈夫よ。ねぇ、すずか」

 

「う、うん。それは、そうなんだけど……」

 

 ……まさか月村もバニングスに同意するとは思わなんだ。多分高町がリインさんとの戦闘を話したのかなにかしたんだろう。だが今はそんな事より顔面の痛みにのたうち回らなくちゃいけなくなっている。何も得たものは無いと思っていたのだが、バニングスがジャイロストレートを所有しているという事は分かった。これで球技大会の時に要注意対象を月村+αのαの部分にバニングスを突っ込む事が出来る。そうほくそ笑もうとするも顔面が痛い所為でなんも言えねぇ出来ねぇ。

 殴られた左ほほを撫でながら右ほほはフェイトさんに差し出そうと考えていると唐突に襟首を掴まれた。

 何者かと顔を後ろに振り向こうとするとその前に俺の耳にその人物の声が聞こえた。

 

「やぁ盾街君おはよう。今日は来るのが早かったんだね。……それじゃあ、パーティーの準備をするために教室まで行こうか」

 

 なんとそれは徳三四姉妹の二女だった。二女はその声にあまり感情を乗せずに俺を引き摺る。

 

「それではフェイトさん、またお昼に」

 

 俺に出来たのはフェイトさんにそう伝える事だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 引き摺られ、教室に着くその入口付近にて、そこで謎の威圧感が俺を襲う。……なんと言うか、殺気に近いなにかを感じる。

 扉が開かれると同時にそこから徳三四姉妹三女が飛び出して来た。

 

「もうそろそろ盾街君が来るとは思ってた!」

 

 なんだコイツレーダーでも乗っけてんのか?

 

「……で、シュークリームはどうだった?」

 

「…………えっと、昨日は用事がありまして、今日聞きに行こうかなって思ってまして」

 

「……そうなの?それならそれでいいわ。じゃあ、よろしくね?」

 

 ……なんだろう。こう、何て言うか、良心につけこんで悪いことをしてる感じがある。うん。罪悪感で心が痛い。

 

「……はい」

 

 だから俺はこんな悄気たような返事しか出来なかった。……まさか、こんな所で徳三四姉妹三女が学級委員長に選ばれた人徳が分かるとは思わなかった。そう、なんて言うのかな『お母さんを悲しませる訳には、いかないんだよぉぉ』とでも言うような、そんな感覚があった。

 ……あぁ、そう言う事か。三女が一部から『お母さん』とか『母上』とか『カーチャン』って呼ばれてる理由がようやく分かったよ……。俺の母さんよりも母さんらしい母さんだったからこんな慕われてるのな。

 

「じゃあ、今日は盾街君には視察に行って貰おうかしら」

 

「視察ですか?」

 

「うん。簡単に言えば、スパイかしら?」

 

 簡単に言い過ぎてあっさりと理解出来た上で覚悟を決めさせる高等なテクニックを今ここで垣間見た気がしなくもない。

 

「分かりました、やりましょう。……それで、主にどこを見に行けばいいですか?」

 

「そうねぇ……。ウチのクラスみたいに料理系の模擬店をするクラスを主に、次点でお化け屋敷みたいなアトラクション系のクラスを視察して来てくれる?」

 

「任されました」

 

「ただ、今の時間から行くのは多分速すぎるから昼前頃にお願いできるかしら……?」

 

「それなら、俺は先にシュークリームの件を終わらせ、また登校し『学校を見回(パトロー)る』という名目でそれぞれ見て回った後に、また昼前に目星を付けたクラスを視察しに行く、と言う案を出します」

 

 この方法ならシュークリームも終わらせられる上に視察も出来るから一石二鳥だと思い、提案してみたまでだが…………判定や如何に。

 

「その案、採用だわ!」

 

 見事採用された方の中から抽選でなにか貰えるなら俺は『暇』が欲しかったが、とにかく今は採用された事に満足して、『行ってきます』と教室からダッシュして『翠屋』へ直行するという返事しか俺には出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、気付けばただ今『翠屋(魔窟)』の目の前まで来ました。……ちらちらと覗いてみたが、まだ朝早いからかお客さんの気配は感じられない。これなら、突入してもいいんじゃないか。……ステンバーイステンバーイゴーゴーゴー。

 

「おはようございます!」

 

「……ん?あら、おはようあおな君。……どうしたの?こんな朝早くに……しかもそんなに汗だくで」

 

 ダッシュで来た。

 店内に入ると、高町の士朗さんはおらず、高町の母親である桃子さんがいた。

 

「汗に関しては何も気にしなくて大丈夫です。……えっと、実は桃子さんに折り入って頼みがあるんですけど……」

 

「あらあら……なにかしら?あおな君の頼みなら私、出来るだけ頑張っちゃうけど……」

 

「えっと……『翠屋』特製シュークリーム、あるじゃないですか。……実はクリスマスパーティーの模擬店で出そうかなって考えておりまして、教えていただければありがたいな、と頼みに来たまでにございます」

 

「……そっか。う~ん……。私としてはいいんだけど、一応シュークリームはウチの看板メニューだったりするからなぁ……」

 

 とりあえずガッカリした、という素振りだけを見せておく。

 ……まぁ、なんとなくこうなる事は読めてた。でもワンチャンありそうだからって理由でやってみたが、無理だった。……さて、結果を報告するか、とお礼を言い、踵返し学校に戻ろうとした時、桃子さんが俺を止める。

 

「あ、シュークリームは無理だけど、エクレアなら教える事が出来るわ」

 

 ……希望はまだ消えてなかった、という事ですね分かります。




~その頃のバニングスさん~

(盾街の奴ってなんであんなにアホなんだろ……)


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最近、眠っても眠っても眠いです。
……気付いたらスヤァってなってる気がします。

さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。

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