第30話『クリスマスにはまだ早い』
キング・クリムゾン!時は消し飛びお昼頃。
……なんて、出来る訳が無く、俺はぐでぇっと授業を受けていた。本当に時飛ばしが出来たなら、俺は今頃『オレのそばに近寄るなー!』って無限ループに入ってる状態な訳だし。
「……じゃあ、この270ページを……盾街君。読んでください」
だがやっぱり学校の授業は授業な訳で、問答無用に指名してくる。
……面倒臭いが、幸いこの教科書のこの部分は暗記してたからなんとか行ける。
「『なにもオレは最初から……徐倫と結婚できるなんて思っちゃあいない…オレの殺人罪は事実だし徐倫がオレの事を好きになってくれるわけがない事も知っている…』」
ふぅん。ジョジョという人生の参考書の暗記は基本。
「盾街君。それ、269ページですよ~」
マジかよ承太郎。
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第30話『クリスマスにはまだ早い』
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まさかのおおポカをしでかしてしまったその授業後、休憩時間中に隣のクラスのフェイトさんを見に行こうとすると、徳三四姉妹の三女(学級委員長)が突然立ち上がり、教卓の前に立ち一言。
「クリスマスパーティーしましょ!」
……本当に突然だから困る。それこそなにも脈絡は無かった筈なんだけどなぁ……。
「……突然どうしたんだい?」
やはり姉妹間でも唐突の事だったんだろう。徳三四姉妹の二女も疑問に思う+αで硬直時間があったのか少しの間をいれて聞いてた。
周りも何事か、と野次馬精神フルドライブイグニッションで耳を傾け始めてる。
つい俺も気になってしまい、出るに出られなくなる。
「私、気付いちゃったのよ。12月と言えばクリスマス。クリスマスと言えば楽しい事。楽しい事と言えばパーティー……。つまり、クリスマスと言えばパーティー!だから皆でクリスマスパーティーしましょう!」
……クリスマスパーティー……咲かない桜……和菓子……ウッ頭が……。ってなる人はきっと俺と仲良くなれるかも知れない。
それはさておき、クリスマスパーティーか……。クリスマスには出来れば……で・き・れ・ばフェイトさんと一緒に過ごしたい。だが、クラスでクリスマスパーティーとくれば、フェイトさんと過ごす事が出来なくなる。どうすれば……いったい、どうすればいいってんだ……。
別に、断ったっていい。だが断るにも、クラスの雰囲気は既にクリスマスパーティーしようぜ!の空気が蔓延していてこれで断れば『なんだコイツ』って目で見られてしまう事になる。それだけは避けたい。
……本当に、どうしたらいいんだ。
そんな時である。俺のいた教室の出入り口である扉が思い切り開かれたのは。
「その話、乗らせてもらいマース」
……校長先生ぇ……。
いきなり入って来ないでくださいますか?俺の心臓がヘソから出てきそうになっちまったじゃないか。
しかも周りも石化してるみたく硬直してるし。
「……え?あ、校長先生、どういう事なのです?」
いち早く硬直から解けた徳三四姉妹の四女が先生に質問した。いかん。俺も早く硬直を解かねば。
「面白そうだからデース。クリスマスパーティー……まさにワンダフー。……ここは学年を、いや、学校をあげてやるべきだと思いマース。それに、子供達の楽しむ姿は私の一番の喜び……。ですから、乗らせて貰うと言ったのデース……」
……最後だけを聞けば、ショタロリコンだと思う人もいると思うが、この人は本当に俺達子供の事を大切に思っている人だったりする。
例えば、ここら辺で不審者が出てきたとしよう。不審者の種類はなんだっていい。すると、この校長先生は自らその不審者を探しだし、どんな手段を使ってるのかは分からないけど見付け出し、粛正する。なんと言うか、もうここまで来ると鉄の強さと鋼の意思を感じる。
ちなみに、その不審者の姿はその後、誰も見ることは無くなったとかなんとか。
いつの間にか、授業を使ってクリスマスパーティーの事を話していたらお昼時までなってしまった。教室の面々はつやつやしている徳三四姉妹と校長先生を除けば、俺を含めて死屍累々。黒板にはなんともカオスな事が書かれていたりするが、それを読んだら読んだでSAN値が吹き飛びそうな予感がしたからあえて読まない。
結局、フェイトさんを見に行く事は出来ず、俺のテンションは悪いもん食べた時のお腹の調子みたいに下っていった。
さて、そんな事はさておくとして、ようやくお昼時でさぁ。これで……これでやっと……本当にフェイトさんに会うことが出来る。
弁当持って……くるのは忘れた。あっちゃぁ……作るの忘れてた。己……フランスパンめぇ……。
仕方がないので購買でパンを買い(狩り)、屋上へ。
扉開けたとたん(※扉です)、見知らぬ世界へと(※よく知ってます)。
屋上には、ちらほらと他の生徒もいたような気がするが、俺にとってはフェイトさんしか目に入らない。あとオマケのバニングスと月村と高町。
「ふぁ、あおなだ。お~い!」
フェイトさんがお握りを頬張りながら手を振ってる。可愛い。
よくよく見れば、ほっぺにお米が付いてる。……よぉしパパ頑張ってフェイトさんのほっぺのお米取っちゃうぞぉ!
「フェイトちゃん。ほっぺにお米が付いてるよ?とってあげる」
「え?ほんと?ありがとうなのは」
「気にしないでいいよ♪」
……高町……やはり奴は俺にとっての天敵。いや、宿敵だ。くそぅ……折角フェイトさんとラーブラーブな事が出来ると……思っていたのにぃ!
ちなみに天敵はリインさんになりました。だって強いもん。
「……あれ?あおな、お弁当は?」
ふと、フェイトさんが俺の両手に掴まれている今日の狩りの成果を目にする。結局、パンは二つしか捕れなかった。
うぉぉ……。フェイトさんの少し心配するような目線……やばい、癖になりそう。
「今日の朝、少しバタバタしてまして、作るのを忘れちゃったんです」
しかしこんな事で癖になったりしたら色んな意味でoutになりそうなので必死に鎮める。静まれ沈まれ、俺の変態的な部分。※NGワード:手遅れ
「そうなんだ……。じゃあはい、これ」
そんな時に手渡されるは小さな……と言っても成人から見たらだけど、お弁当。
「……これは?」
「えっとね?作って、みたんだ。……あおなと、なのはに美味しい料理を食べて欲しくって……」
……そう言えば、かすかにだけど、覚えてる。
「リニスに聞いたんだけど、料理が上手くなるコツって経験を詰む事と、ひたすらにレシピ通りにするって言ってた。だから練習で作ってたんだけど……」
そう言ってフェイトさんは鞄を探り、更に弁当箱を四つ取り出す。……おいおい、これは俺に対するご褒美なのか?嬉しいじゃないの。
「作り過ぎちゃったんだ……」
……俺は、自然とフェイトさんに対して頭を下げていた。そう、それはまさに無意識の行動だった。頭が、身体が、心から動いた。
「ありがとう………ございます。フェイトさん……。本当に、ありがとうございます……」
目頭が熱くなる。涙が、溢れてくる。
「ちょ!盾街、あんたなに泣いてんのよ!」
「ふふふ……。バニングスさん、貴女には分からないでしょう。俺の、この気持ちが」
「……一気に分かりたく無くなったわ……」
バニングスの冷ややかな視線に負けじと俺はフェイトさんにお礼を言った後、お弁当を開く。
そこには、なんと綺麗な彩りのお弁当がそこにあった。
俺と、高町は同時にお弁当を口にした。
なんというか、心が満たされた気分だ。
…………味?……あぁ、まだ発展途上なんだよきっと。
その後、俺はフェイトさんにはしっかりと、それ以外にはちゃっかりと『もしかしたら学校をあげてクリスマスパーティーをやるかもワカンネ』とだけいい、フェイトさんには別れを告げてその場を去った。
……謎の腹痛に苦しみながらも受ける午後の授業はこれがフェイトさんの愛の重さなんだと勝手に解釈し、なんとか耐えた、と言うことだけ最後に記しておく。
~その後のなのはさん~
(う~ん……。フェイトちゃんの料理、前よりはましになったの……かな?…………ベロが痺れたけど)
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はてさて、校長先生は誰なんでしょうかねぇ~(紅茶を飲みながらデュエルしつつ)。
ちなみに、前回の徳三さんのヒントですが、徳→特、三→Ⅲ、ですかね。
さて、感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。