……その人物人物の心の中として考えて貰えればありがたいです。
……あぁ、やっちゃったな……。まさか、管理局員に保護されるなんて思ってなかったから……。
……あおなさんの所から逃げた後、私はただ見てる事しか出来なかった。……無力、だったから。私じゃ、なにをしたって無意味、だったから……。でも、なにか出来るかもとか考えて、結局行くか行かないかを考えていたらいつのまにか保護されていた……。本当に、ダメだな……私は。プレシアの時だって止めれなかった……。
……あおなさん……無事だといいんだけど……。
考える事に霧中になっていた私は、近付く足跡と匂いに気付けなかった。鼻が詰まってたって言うのもある。
「もしかして…………リニス?」
「……え?」
ふと、懐かしい声がして、そちらに目を向けると、私と別れた時と見違える程大きくなったフェイトとアルフが、そこにいた。
……フェイトがなんでフライパンを持ってるのかは、分からないけど。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第28『また会えて』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……フェイト……アルフ……。……久し振り、ですね」
「うん。……リニス……」
「……リニス?……本当に?本当にリニス、なのかい?」
「……はい。そうですよ……アルフ……」
もしかしてリニスかな?って思っていたら本当にリニスだった。ちょっと、ちっちゃくなってるけど。
……ある日突然いなくなったリニス。その理由が知りたくて、アルフと一緒に母さんに詰め寄ったのは今でも記憶に新しい……。でも、母さんは全然教えてくれなかった。……だけど、少しして……なのはと出会って、お姉ちゃんの事を知って、気付いた。
そう言えば、リニスは使い魔だったって。……使い魔は、主人の目的のためだけに作り出された命……。維持するのが主人の負担になるから目的を終えたら消される命……。
私とアルフの関係は家族としての関係で違うけど、あの頃の母さんはリニスを……言いたく無いけど……目的のためだけの道具として、生み出したんだと思う。
リニスは、私の魔法の先生であり、身の回りの世話をしてくれる母さんの作った使い魔だった。優しくて、だけどたまに厳しくて……暖かくて。
今でもよく夢に見る。
あの日々は絶対に忘れる事は出来ない、私の大切な思い出。
……でも、私は知った。リニスは、私を『一流の魔導師に育て上げる』為に母さんが作ったんだって。……私が、頑張り過ぎたから…………リニスは、いなくなった。
……だから、こうして出会えた事が、とっても嬉しくって。
「フェイト……その……ちゃんと復習、してますか?」
「うん。してるよ……ちゃんと、リニスに教わった事、何回も何回も復習してるよ……」
たくさんたくさん話したい事があって。……でも、何から話していいのかが分からなくって。
「アルフも……。ふふ……なに泣いてるんですか?」
「そ、そう言うリニスだって……目にいっぱい、涙……溜めてるじゃん……」
昔とはちょっと違うけど、昔のような光景を見て胸の奥が苦しくなってくる。なんて言うんだろう。ギュッて握られたような熱くて苦しくて……でも、心地よくて。
不意に、目の前が突然歪んでくる。目を擦ると、湿ってて、擦った手が濡れてた。
……駄目だ。やっぱり涙が止まらないや。
「リニ…
こうやって……名前を呼ぶだけでも、嗚咽で声がうまく出せないや……。
「はい。……なんですか?フェイト……」
名前を呼べば、返事が返ってくる。ちゃんと、そこにリニスはいてくれている。
「あらあら……どうしたんですか?昔みたいに泣き虫さんはあやした方がいいんですか?」
「……う、うぅ……リニスぅぅ!」
そのあとはひたすら泣いたって事しか覚えてない。リニスの胸の中でアルフと一緒になって泣いてた。
昔よりもちっちゃかったけどリニスはやっぱりリニスで……昔と変わらず優しく頭を撫でてくれて……。
また会えて、良かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……おや?あそこにいるのはもしかしてフェイトさん?良かった……。これで俺はようやくフェイトさんと話すことが出来っ…………はっ!?」
私は主を探して、盾街はフェイト・テスタロッサという少女を探して一緒にこの艦内を歩き回っていた。……すると目の前に抱き締め合っている三人の女性を発見。それと同時に盾街が声を出し、目的の少女の名前を出した為、どうやら無事見付けられたようだ……と思ったらいきなり回れ右をしてそこから遠ざかり始める。
「……どうしたんだ?盾街」
理解が出来ず、盾街の肩を掴み話を聞こうとすると、盾街は無言で肩に掴んだ私の腕を掴み、引っ張ってその場から離れる。しかも全力疾走で。
「痛い、痛いぞ、盾街……いったい、どうしたと言うんだ?」
しばらく走っていると、突然立ち止まる。……突然立ち止まった訳だからブレーキなんてそう簡単にかかる訳がなく、私と盾街は見事に床に転けた。
「……本当に、どうしたんだ?お前」
意識はしていなくとも、自然と盾街を見る目に恨みがこもってしまうのは仕方のない事だ。
少しの間があった後、盾街は口を開いた。さっさと開けば良かったのに。
「………………フェイトさん、泣いてたのに、笑ってたんですよ」
……何故、それだけの理由であの場を離れたのか、それが私の心に引っ掛かる。
「……それが……どうかしたのか?」
「…………ああやって、泣いているのに笑っているって時は嬉しくて、感極まってるんだって俺は思ってます。……恐らくは久し振りに会えた家族とか、なんでしょうね。……リニスちゃんがフェイトさんの名前を出した時には驚きましたけど……」
「……それで、盾街はなんであの場を離れた?」
「…………邪魔をしたくなかったから、です」
「…………」
「…………俺は、フェイトさんの事が好きです。愛していると言っても過言じゃありません。……ですが、俺はまだフェイトさんの家庭の事情を少し知った程度の部外者です。……俺にはあの場所に入る権利も覚悟も無い……。……俺には、恐らく、久し振りに会えたであろう家族との再開を邪魔するような無粋なマネをする事が出来ません。…………好きだから。フェイトさんの事が大好きだからこそ、その人の大切な時間を穢すようなマネは俺には出来ない!だから!……だから……」
……私には、盾街の言っている言葉の意味が分からない。誰かの為に何かをする……それは分かる。だか、盾街は好きな人の為に、その人を想うが為にあの場を離れたと言った。
……私が見た限り、あの少女達は泣いていた。ボロボロとボロボロと。涙とは、悲しい時に流すものじゃないのか?悲しい時には、人は寄り添うモノでは、ないのか?……嬉しい時に流す涙とは、いったい、なんなんだ……?
分からない。
「……自分でも、なにを言ってるのかは分からなくなってきましたが…………まぁ、例え部外者じゃなくなったとしても、俺は絶対にあの場には加わる事は出来ませんけどね」
虚しさを漂わせて喋る盾街の言葉が、嫌に耳に残った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
……つい、感情的になってしまった。これじゃ、ただの八つ当たりじゃないか。
……つくづくこんな自分が嫌になる。
……あぁ、ナハトに悪いことしちゃったかも知れない。後で謝っておこう。
……だけど……いや、別に自分を正当化しようだとか、そんな事を考える訳じゃないけど……俺はあの時どうすれば良かったのかが分からなかった。
……フェイトさんは大切な人だ。だからこそ、悲しませる事はしたくないし、そんな目に合わせたくない。
だから俺は分からない。こうやって離れた事が最善の手だったのか、それとも、普通の事だったのか、が。
~その頃のクロノ~
(まさか、管理局の上層部があおなを欲しがるとは、な……)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
……一応、一応はこれでA'sは終わり……です、かね?
……すいません。こんな文章になったのは全部私の脳ミソが悪いんです……。
本当に申し訳ございません……。
感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。