…………鎌の特殊攻撃のモーションが格好いい。
でも私はショートソード派。
ふと、目を覚ます。知らない……と言うよりどちらかと言えば病院の天井に近いものがそこにあった。つまりここは病室って事だ。……それにしては、どこかメカメカしいけど。
……確か、フェイトさんと高町による鰹と昆布の合わせ出汁のような見事なコンビネーションでリインフォースさんとナハト共々吹き飛ばされたんだったっけ……。全く……あれぐらいで気を失うなんて、俺ってばだらしねぇな。
……ふぅ。さってと。
フェイトさんを探そう。
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第27話『素振りは基本』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
探そうと意気揚々にベッドを降りた。そして扉の前に立ち、開けようとする。だが、どうやらこの扉は反抗期らしく、開きやしない。
ならどうするか。
①ぶち破る
②蹴破る
③最後のガラスをぶち破る
④くらってくたばれ『
答えは……。
「①ぃっ!」
早くフェイトさんに会いたい!ただそれだけなんだ。
俺のこの気持ちを邪魔する奴は扉だろうがなんだろうが容赦しない。
……べ、別にフェイトさんに労って欲しいとか、そんなんじゃないんだからねっ!
……思ったより自分のツンデレが気持ち悪い。今後はやめよう。
扉は拳でぶち破る。俺の貧弱な拳に耐え切れなかったひ弱な扉は回転しながら向かい側の壁にめり込む。
……なんだ、壁も老朽化が進んでんのか。危ないなぁ……。
「さて、フェイトさんはどこにいるんでしょうか……」
そこで取り出したるは携帯!いやぁ、便利だよね。今の世の中ってさ。
確か、ズボンの後ろポケットに入れてた筈……。あれ?なんだろう、この配線みたいなさわり心地。
……………………ガラパゴスよりひでぇや。くそ……フェイトさんの……メアドが……電話番号が……写真が……。
リインフォースさん……ナハト……。
「許しません……絶対に、絶対にです!」
……おっと、おちけつ、俺。これでフェイトさんを探す手段は無くなった訳だけど、見つからないって訳じゃあない。まだまだ方法はある、と思う。
ここが病院なら本格的に終わっていた。だが、ここは少し見覚えがある。確か……宇宙戦艦アーカムとかそんなのだった筈。
だから、適当に歩いていたらきっとどこかに辿り着くだろ(希望的観測)。
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やはり、主の隣はいいものだ。心の底から安らげると言うのは本当に……ありがたい。
「あの、えっと……なのはさっ……なのはちゃんって何が好きなん?」
「食べ物?」
「うん!」
……例え主が誰の事を好いていたとしても、だ。悔しくないと言えば嘘になるかも知れない。だが、隣にいるというだけでも私にとってはとても意味のあるものだから……。
「……あ、そう言えばリインフォース」
「はい!どうかいたしましたか?主はやて」
……私は、沢山の人達に迷惑を掛けてきた。それこそ、両手両足の指の本数を合わせたくらいでは足りない程の人達を……。それと同じくらい、多くの私の主となってくれた人々を文字通り喰らってきた。
……だからこそ、こうして手に入れる事が出来た幸せを手放したくない。
「あの防衛プログラムって致命的なバグがあったんやろ?」
「……なぜそれをご存じで?」
「そりゃ私はあの『闇の……もとい『夜天の書』のマスターや!分からん事があるとでも、思っとるん?」
「流石です……」
そんな、幸せを願う人達を喰らってきた私が今更ながら幸せを願うと言うのも、ちゃんちゃらおかしな話になる。……本来ならば私は幸せを願ってはいけない。一人で自滅自壊をしなくてはならない存在だ。小さな目ではなく大きな眼で見れば私はこの世を滅ぼしかねない存在だったのだから。
「……で、今さっきリインフォースを調べたんやけど……そのバグが全く見付からへん。……どこにやったん?」
「はい!バグなんてものは、主はやてを守りたいと強く願った私の守護プログラムが免疫プログラムを活性化させ、熱く燃え盛る『勇気』が私の中に溢れるバグを焼き尽くしたのです!」
「え、あ、そ、そうなんか……」
しかし、今の私には、そんな危険なモノは無くなっている。もうこの世を滅ぼすモノは私の身体のどこを探してもリンカーコアぐらいしか見付からない。……確かに、被害者達への償いはしなくてはならないかも知れない。
理由はどうであれ、私が殺してしまった事は確かなのだから。……その人物に本来あった幸せ、生活、日々……。それを消し去ってしまったのは、他でもない私、なのだから。
「なら、もう危険は無いっちゅう事で、ええの?」
「……はい!」
……だから私は、フェイト・テスタロッサが言ってくれた言葉を……
『リインフォースさんは罪の十字架を背負ってる。だから、毎日その幸せに心を痛ませながら楽しく生活する。それが貴女に贈る最も辛い償いだよ。……どう?我ながらかなり酷い刑罰を与えてみた♪』
……全く。私には辛すぎる刑罰だよ。
あの少女の変貌には少し驚いたが……まぁ、この世界では普通なんだろう。
「どしたん?リインフォース。そないにやにやして……」
「あ、いえ、守護騎士達ももうそろそろこちらに来るかと思いまして……少しわくわくしているだけです!」
「あぁ、そっか。リインフォースは……」
「はい。……酷い事もしましたし」
なら、私は--
「ま、あの子達なら許してくれるから、安心しい、な?」
「はい!」
--苦しみながら、この世界を楽しもう。
「そう言えば……ナハトは?」
「……あれ?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
……完全に迷ったぞ。どこだろう、ここ。
どうしよう。フェイトさんに会う前にこんな場所で餓死とか本気で嫌だぞ俺。
「お?」
「む?」
…………なんでここにナハトが?もしかして、コイツも迷った、とかか?
「なぁ盾街ここは、どこだ?」
なんでコイツこんなに馴れ馴れしいんだ?しかも地味に顔が似てるってのもイラッてくるし。……いや、よく考えろ、俺。コイツが俺に似てるって事は……身代わりに使えるって事か。まぁ今はそれはいいや。
そんな事よりも重大な事がある。右拳を握りーの。振りかぶりーの。放ちーの。顔面に当たりーの。
「痛っ……いきなりなにをする!」
「悪いのは……そっちですよ!よくも俺の携帯を壊してくれやがりましたよねぇ!」
「いや全くもって身に覚えが無いんだが……」
「とぼけるんじゃないですよ!……貴女は確かあの触手付きパイルバンカーなんですよね?だったら地面に叩き付けたのも貴女って事です!」
野郎・of・クラッシャー……と行きたい所だが。
恨み辛みは溜まりに溜まりまくっているが、ここはこの拳一発で溜飲を下げる。
「……ま、でも
「なに?……それだと、私の殴られ損にならないか?」
「……腕1本折ったあげく携帯壊された恨みを拳一発でチャラにしてあげると言う俺の寛大な心を理解しないんですか?」
「……すまないが、
「嫌です」
……本来ならマウントからの顔面にオラオララッシュだったんだが、まぁ、生きてるし別にいいやとかそんな感じだ。
なんだかんだ言って、今回は俺の携帯以外皆生きてる訳だし。……もうちょい、強く殴っとけば良かったかな?
「……所で、話は戻るが主はやてはどこだろう」
なんだ?コイツもリインフォースさん……やっぱ長いな。リインさんでいいか。リインさんと同じような考えを持ってんのか?
「……八神さんの魔力とか感じれないんですか?」
「……あ、その手があった」
…………この子、アホの子なん?
まぁいい。俺はフェイトさんを探すだけだ。
……そう言えば、家で飯食ってた最中だったからか、腹減って来た。
~その頃のフェイトさん~
(……あおな、大丈夫かな……。……あれ?あそこに見えるのって…………ちっちゃいけど、リニス?)
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おかしいなぁ……まだA'sが終わらない……。
次回こそは終わらせて、日常に行きたいです。
感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。