防衛プログラム--通称、ナハトヴァールは焦っていた。
夜天の主が目覚めたから自分は必要なくなる。
つまり、急がなくては、自分が消される。そう誤解し、その結果、理性のタガを外す狂行にでる。
だが、待っていたのはどう考えても人間では無い二人による容赦の無い攻撃。
焦ったナハトヴァールは、海にて白い少女と相対した時に『闇の書』を広げてしまう。
ナハトヴァールとしては、白い少女を取り込み、少年と一対一であるなら勝てると踏み、この行動に出たのだが、結果は『闇の書』を奪われてしまうという、情けないモノになってしまった。
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第22話『プランB』
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フライパンがまるでお玉のように曲がり銀髪さんの手から『闇の書』を奪って戻ってきた。何を言ってるか以下略。今はこんな事をしている暇じゃない。
…………で、これをどうすればフェイトさんを助けれるんだろう。
先程、フライパンが伸びてこの『闇の書』を奪ったのはいいんだが……。一応、一応だけど、立ててたプランの①と②は消化した。後はフェイトさんを助けるだけ……。その助ける手段ェ……。
……あ、もしかしたら。
《……おい。お主はなんで儂を開いた『闇の書』に押し付ける》
「あぁ、いや、気にしないで、入って、どうぞ」
《入る訳がっ……!?》
入るじゃないか。そうそう。そのまま、ゆっくりと入っていってね!
……見える……俺にもフライパンを通して見えるっ!
なんだろう。すっげぇ泥々してんな、この本の中。こんなふざけたぐらい胸糞悪くなりそうな所に長い間フェイトさんを……。絶対に許さねぇ。
あ、フェイトさんがいた。よし……このフライパンで……そっとフェイトさんを
よし。行ける。このまま邪魔がこなければ……。
フェイトさんがその麗しい姿を表す。あぁ、やっぱりフェイトさんは可愛い。
「ふぅ……。これで、フェイトさんの救出は終了っと……」
俺は、フライパンに乗っているフェイトさんを左手と、折れている右手(※強引に動かしています)でゆっくりとフライパンからお姫様抱っこからの地面にそっと寝かせる。
そんで、外に出るときに寒いかもって着てきた今はもうボロ雑巾にしか見えないジャンパーをそっと掛けておく。……すいませんフェイトさん。こんな粗末なモノで……。
「ギャルぁぁぁぁぁぁッッッッ!」
……さってと……。
地面で開いたままになってる『闇の書』を拾ってっと。……この際に右手が再起不能になったのは秘密。
『闇の書』をちゃんと閉じてってと……。
フライパンに乗っけてっと……。
「投げますか」
射出!
おら、返してやるぞその『闇の書』。大事なモンなんだろう?顔面で受け取りやがれ。
「らぶぇっ!?」
流石俺のフライパン。ちゃんと当ててくれやがった。
とにもかくにもまずは空を飛ばなくちゃ、あの銀髪さんに対処出来ないのが辛い。
ただでさえ地上戦でも不利だってのに相手はそらをとぶを覚えてる、とくりゃあ、本格的に不利でしかない。……いや、まぁ、フェイトさんをこんな所に一人にしておくってのも心情的に辛いモノがある。だけど、もし仮に、まだフェイトさんが寝ている間に俺がここで待ちガイルよろしく待っててあの銀髪さんが突撃でもしてみろ……。恐ろしい事になりかねない。
……あ、そうだ。
「あの……」
《……なんじゃ?今度は何をさせるつもりじゃ?》
そんな疑わなくても………。ただ、重大な任務を与えるだけだっての。
「一応、貴女は神様なんですよね?(疑わしいけど)」
《おおぅ?ようやっと認めたか》
「なら、擬人化とか、普通に出来るんですよね?」
《出来るに決まっておろう》
「じゃあやってみてくださいよ」
《何故じゃ?何故儂がそんな事を今せねばならん》
ふむ。ここまでは予想通りっと……。
「へぇ~……」
《……なんじゃその目は》
「いえ別に~?」
《で、出来る!出来るぞ!じゃからそんな目で儂を見るな!………見ておれよ!これが儂の人間体じゃ!》
そう言うが早いか、フライパンが突然輝き出す。
そこには、俺と同じくらいの大きさの白い球体があった。お前はウルトラマンにでもなりたいのかって突っ込みをなんとか飲み干して事の成り行きを見ていると、その白い球体から一人の少女が表れた。
身長は俺とおんなじくらい。瞳は鋼色。髪の毛は灰色で長い(小並感)。ちゃっかり顔立ちが整ってるのがイラつく。なんとなく高飛車っぽい匂いがする。
「どうじゃ!これが儂の人間体じゃ!」
「…………あ、はい」
「なんじゃその適当感溢れる返事は!ほら、もっと誉めるとかあるじゃろう?ほれほれ」
「本当に凄いなら……人の一人や二人、簡単に守れますよね~」
「当たり前であろう?その程度が出来ず、何が神か。……ほれ、ここは儂に任せて、お主はあやつをしばいてこい」
……やはりこのフライパンはちょろい。
…………ん?なんで擬人化させたかって?いや、だってフェイトさんが目を覚ました時にフライパンが浮いてたらびっくりするでしょ?それでフェイトさんにもしもの事があったら俺は高層ビルで頭から落下しなくちゃいけなくなる。だからやってみた。……まぁ、出来なかったら出来なかったで違う案も用意してあったんだが……とりあえず、あのフライパンなら確実にフェイトさんを守ってくれる。そう信じて俺はフライパンをフェイトさんの近くに置いておく。
--さて、どうやって空を飛ぼう。
問題はそこなんだよなぁ……。もうこのままフェイトさんの近くにいていい気がしてきた。……んだが、高町が割りと危ない。これ、放っといたらこっちにも来そう……。
……あの時は、どうやって飛んだっけ……確か、走ってて……あぁ、そうだ。重力から逃げるように走るんだ。
そうと決まればモノはとにかく試しだ。何事も試さなくちゃ。……少し後ろに下がってっと。助走はこれくらいで、いいか。
後は……恨みを込めて走る!
「うぉぉぉぉあぁぁぁぁッッッッ!」
あいきゃんふらぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!
「……………………そんな、バカな」
マジで飛べるとは思ってなかった。まぁ、なんて言うか今の状態は人間魚雷だが。
「ぐげっ」
あ、なんか蛙の潰れたような音が聞こえたと思ったら銀髪さんにヘッドバッドしてしまった。その際に俺の首からもゴキュッて嫌な音がしたが、きっと気のせいだろう。
ちなみに、銀髪さんは再び吹っ飛ぶ。
「あ、あおな君!?」
「どーも、高町さん。一応、加勢に来ました」
「あおな君………
「ん?なにか言いましたか?」
「な、何も言ってないよ!大丈夫だから!」
どう見ても大丈夫じゃないんだよなぁ……。顔を耳まで真っ赤に染めて……。怒ってるのかな?
「まぁ、とりあえずさっさと終わらせて帰りましょう。……まだ、ご飯食べ終わってませんし」
「ぐるるるぁ………」
全く……。なんなんだよこの銀髪さん。本当に獣なんじゃないかってくらい唸ってる。おこなこ?もしかして激おこなの?……いや、そりゃまぁ、色んな事をしたよ?
……フライパン飛ばして当てたり、兜割りしたし、腹パンしたし、『闇の書』ぶんどったし…………。いったいどこに怒る要素があるってんだ!ふざけんな!
「俺は……貴女みたいな愛を知らない奴に負ける訳にはいかないんですよ………愛の重みを知らない愚かな銀髪さんは、愛の深さに溺れて沈んでいってください!」
だから俺は高町の静止聞かず、と言うより聞くわけがなく、左拳を握って突撃。効かないとかもうどうだっていい。とにかく八つ当たりじゃないけど、殴らなくちゃ気がすまない。
そんな俺の降り下ろした拳は--
「『愛』を知らない…………か」
--何故か理性を取り戻している銀髪さんの手によって防がれていた。
…………え?なんで?
~その頃の高町さん~
(あ、あおな君が私を、助けてくれた!?こ、これはもう私、私ィ……。ひゃっほぉぉぉ!)
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……なんか、急ぎ過ぎた感が出てしまいました。すいません。
あと、銀髪さん、もといリインさんがちゃんと目覚めた理由、次回にちゃんと説明出来れば、と考えています。
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次回もよろしくお願いいたします。