※この物語にジャバウォックは関係ありません
さってと……。
「行きますか」
俺は、フライパンをそっと構える。
見る人が見ればきっとピッチャーミタイダナァくらいには思えるかも知れない。
《……お主、何をする気じゃ?》
気にすんな。
ただ、向こうから銀髪さんが歩いて来てるからその対処をしようとしているだけだ。
「少年……お前は、どうやってあの中から」
ピッチャー第一球……振りかぶって--
「何をするかって?……勿論、投げるんですよ」
--投げたぁぁ!
《己ぇぇぇぇ!》
あわれフライパンは光になった。ちなみに銀髪さんは無言でフライパンを避けた。……いやまぁ、確かにあのフライパンが無いとあの銀髪さんから闇の書を取り上げる事は出来ないかも知れない。
……だけど、投げて少しでもダメージを与えたかった。どうせ、あのフライパン帰って来るし。
--さて、こっからが本番だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第19話『力が欲しいか?』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
--久しぶり、だね。フェイト
姉さん……。
……って、あれ?声が出ない。
--あぁ、それなら別に気にしなくてもいいよ。思った事が声に出るし
あ、そうなんだ。……なんか、念話を習った最初みたいだな……。
--うん。大体そんな感じ
それで、姉さんはなんでこんな所に?
--いやぁ……。さっきまでちょっと彼岸の方にいてね、男の子がそこに来たからちょっとこっちくんなって手を振ってたんだけど……。まぁ、次いででフェイトを見守っておこうかなって思ってね
ひがんって、なんだろう。まぁいいや。そんなに重要な事でも無さそうだし。
…………あれ?そういえば気になってたけど、姉さんってもう死んでる筈……なんだよね。だったら母さんはどこに……。
--ママ?ママなら生きてるよ?
……………………えっ?
--いやあの時さぁ、私と一緒に虚数空間に落ちたじゃん?その時にアルハザードに行くって願って、たまたまジュエル・シードが発動してね
でも、ジュエル・シードって願いを曲がった方向に叶えるんじゃ無かったっけ?
--うん。それが面白い所でね。ジュエル・シードによって願いが曲がる→それが違うジュエル・シードによってまた曲がる……そんなのを繰り返してたらちゃんとした願いになったの。つまり、母さんは今はアルハザードにいるよ
……なぁにそれぇ。
え?って事は……つまり集めるのって二つで良かったんじゃ……。
--まぁ、そうなるね
なんだろう。このやりきれない感覚。
--……気にしなくてもいいと思うよ。私もママの所に行ってみたらママが『どうしてこうなったし……』って言いながら頭抱えてたし
……母さん……。
--それで、本題に入るんだけどさ
姉さんは、そこで一度区切り、私を見る。まるで私を品定めするみたいに。
--フェイトって、皆の力に成る為に強くなりたいの?それとも、強くなる為に皆を守りたいの?
……姉さんの言っている言葉の意味が分からない。
--そう……。まぁ、言うなれば鶏と卵な訳なんだけど、その辺は置いておこう。つまり、簡単に言うならフェイトは誰かと肩を並べる為に強くなりたいの?……それとも、人って誰かを守るためならどこまでだって強くなれる。だからその効果を利用して自分が強くなる事を
………そんな……。私はそんな事を、考えてなんか……。
でも、一概に否定は出来ない……。
--……なんて、冗談だよ、冗談。そんなに考え込む事は無いって
……もしかして、私を試したの?姉さん。
--あー……。ごめんね?フェイト……
別に、大丈夫だよ。……私がやらなくちゃいけない事を再確認出来たし。
--……うん。それなら良かった。……それで、さ。フェイトって力が欲しかったりする?
…………うん。欲しい。
--……それって、どんな力が?
皆を、守れる力が……詳しく言うなら、優しい力が欲しい。
--もしかして、見返りとか狙ってる?
……逆に聞くけど、なんで誰かを守るのに見返りとかいるの?
--フェイトのそれは、偽善じゃないの?
…………力があって、守れて、助けれて良かった、とは思える。確かに、これは私の自己満足かも知れない。…………でも、力があるのに誰も助けれず、見てみぬ振りなんて……そんなんじゃ、私、満足出来ない……。
--フェイトが満足するため、か……。たはは……何、その理由。……でも、嫌いじゃないよ。少なくとも、私は
だから、私は誰かを守るのに力が欲しい。
--……かつて、誰かが言ったんだけど、優しさは心の強さらしいよ。……だけど、行き過ぎた優しさはただの偽善になる。それを覚えておいてね。フェイト
……うん。
--まぁ、そんだけ心が強く保てればこの世界からは出られるよ。……あの管制人格に勝てる、とは言わないけど
あぅ……どうしよう。
--と、言うわけでお姉ちゃん、良いことを考えましたー!
……なんだろう。嫌な予感が背筋を走る。……これ、なんて言うんだっけ。日本の諺で……確か、虫の報せだっけ?
--先ずはこの世に魂なんてオカルトチックなモノがあると仮定するよ?
あ、はい。
--それで、一人の人間には一つの魂。これは当たり前。……たまに憑依されたりする人がいるけど。……話は戻るけど、私、昔『銀魂』の23巻を読んだんだ。そこで気付いたんだよ。……スタンドって強くね?じゃなくて、"
……えっと、え?どういう事?
--そう言った事例は色々とあるよ。例えばさっき言った『銀魂』だってそうだし、『遊戯王』の遊戯と王様とか、その続編の『遊戯王GX』の十代がユベルと魂の超融合した事例だってある
でも、それってアニメの話でしょ?
流石にそれは私も信じられないよ……。確かに今、姉さんが出てきている事ははっきりと感じれるけどさぁ……。
--う~ん……。フェイトが何を勘違いしてるかは分からないけど、アニメや漫画や小説の世界って基本私達のいる世界の平行世界だよ?フェイトがこの前使ってた『千ノ落涙』だって本来ならこの世界には存在しないし
……あれれ?私がおかしい、のかな?
--この世界だって、実際は違う歴史を辿っていた可能性も高いんだよ?本来ならフェイトがおらずに変わりに狐っ子がなのはちゃんの親友だったり、フェイトがここで見るのは本当は幸せな夢だったり、更にはあおな君とは違う人がいて、フェイトがその人にホの字になってたのかも知れない。……つまり、こんな歴史を送ってるのはかなりの低い確率って訳だよ
……うーん……。よく分かんない。
--まぁ、とりあえずやってみるだけ価値はあると思うんだけど………どうかな?
…………うん。分かった。何が起きるか分かんないけど、やるだけやってみるよ。
--うん。その返事を待ってた。……じゃあ、今からフェイトの魂と私の魂をシンクロさせるよ?
うん!
--ちょっと時間掛かるけど……我慢、できる?
…………私、そんなに幼くないもん。
◆◇◆◇◆◇◆◇
目を開ける。周りを見る。なんだろう。宝石っぽい。
「ここ、どこやねん」
えっと……確か、あおなが帰って……『闇の書』を完成させて……取り込まれたんやった……。つまり、ここは『闇の書』の中って事かいな?
……あの触手の?うわぁ……そう考えたら一気に気持ち悪ぅなったわ……。
「初めまして、我が主…………って、どうしたんです?顔が真っ青ですが……」
「ばべばべん(訳:誰やねん)」
……あかん。一気に胃から食べたモンが逆流しようとがんばっとる。
「申し遅れました。……私は、この『闇の書』の管制人格です」
……っておい!普通に返すんかい!
~その頃のプレシアさん~
(会いたい……。私の愛娘達に……会いたいぃぃぃ!)
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アニメや漫画や小説の世界は平行世界。そう考えたい今日この頃です。と、言うよりそうであって欲しい(切実)
さて、次回は皆大好き八神はやてさんのターンです。
……ちょっとアニメと映画をまた見直して来ます。
感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。