「……おかしい……。いくら調べても君からはリンカーコアの反応が検出されない。確かに闇の書に蒐集されていた筈なのに……」
「……もういいですか?あの、そろそろ本気で怒りますよ?命に関わる右ストレートをぶっぱしちゃいそうになってますよ?」
「も、もう少し待ってくれ」
何回目だよそれ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第12話『恋と不整脈の違いはあまりないらしい』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
もう我慢の限界だ!俺はフェイトさんの所に行ってやる!
「ぐぅっ……」
俺は無言でクロノに腹パンし、部屋を出ようとした。ちなみに腹パンは完全にストレス発s……もといそこにクロノがいたからだ。山的なノリ。
クロノがうずくまっている間に扉の前に立つと扉が自動で開いた。
よっしゃこれでフェイトさんの所にいけるでぇ!とか思ってたんだよ……。
だけど、目の前にいつぞやの緑の髪のお姉さんがいた。しかも謎の不適な笑みを浮かべている。くっ……ここは、どうすれば……。だが、迷っている時間なんて、ある訳が無い。だから俺は、そのお姉さんを華麗に、まるでそこに邪魔なモノがあったから避けるかのようにスルーし、部屋を出る。これが……これがきっと最善の策に違いない。
ちなみにそのお姉さん、少しどや顔をして俺に向かって『ふっ駄目よ』とか言ってたが俺が無視した所為か、顔が真っ赤になってる。
少し、可哀想になってきた。
……だが、ここはあえて心を鬼にして無視をする。
そう……ここであえて俺が無視するということであのお姉さんはきっと精神的に成長する。そんな気がする。あのお姉さんは今回で知る事が出来ただろう。自分の痛々しさを……だから、きっと次に会うときは今よりももっと精神的に成長して、ちゃんとしたおしとやかな女性になっている事だろう。ふふふ………また会った時が楽しみだ。どれだけ成長しているのか、それを期待しておこう。
そして、俺はそっとその場を後にし、フェイトさんのいるであろう病室へと足を向けた。
--良いことをしたなぁって、そう考えながら。
「いやだから逃がさないと何度言えば」
ちくせう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ふと、ベッドの上で考える。
……あおなは、どうしてあんなに私の事を気にかけてくれるんだろう。
今、私はアースラの医務室で横になっている。傷はアルフとあおなが治してくれたからなんとかなってるけど、リンカーコアから魔力を抜かれたから身体に力が入らない状態だ。ちなみに、隣には気絶して『う~ん……う~ん……』って唸ってるなのはがいる。
さて、話は元に戻るんだけど……。あおなは本当にどうしてあんなに私の事を守ろうとしてるんだろう。いや、確かにあおなは私に『好きだ』とか、『愛してる』とか言ってた。
だけど、それは母さんも………母さんも言ってた言葉。
……母さんが最後に私に言ってくれた、『フェイト……今まで、ごめんなさいね。ふふふ……こう言っても、もう遅いかもしれない……薬に頭をやられてた、なんて言葉も言い訳に聞こえるのかも知れない。だけど、でも、これだけは言いたいの。私は、貴女の事が大好きで、私にとっては愛しい愛娘よ』って言葉に少し似てるって思った。
つまり、あおなの『好き』や、『愛してる』って私の事を家族として好きって意味なのかなって思った。でも、私とあおなは家族じゃない。ならなんなのかって辿り着いた先は親友。
それならなんとなく理解は出来たし、私もあおなの事は友達以上だって思ってる。
……でも、あの時あおなが私に向かってはっきりと『愛してる』って言った時は胸がドキッてした。……あれって、なんだったんだろう。まるで胸を思いっきり貫かれたような感覚だった。
その時はそんなに運動もしてなかったから、胸が苦しくなるほどの感覚は無かった筈だし……。
それに、最近あおなが私以外と一緒にいる時とかはなぜか胸がモヤモヤしたりするし……。なんなんだろう、この気持ち。
あおなを思う度に胸の鼓動が早くなる事もあれば……頭がボーッとする時もある。唐突に息切れになったりするし、目眩も起きる。
もしかして、あおなが原因の病気?でも、あおなと初めて会った時とかはそんな事はなかったし……。
……う~ん。最近検査を受けた時には何も異常は無かった筈なんだけどなぁ……。
………もしかして……これって新種の病気、なのかなぁ………。
でも、私はこれに似てる病気の症状を1つだけだけど、知ってる。流石にこれは無いって思ってるんだけど……。もう、これしかない。
--そう。これは
「不整脈……なのかな……」
「ん?どうしたんだい?フェイト」
本当にそうだとしたら……どうしよう。
だって、動悸の不安定、頭がボーッとする、息切れ、目眩……。これ、完全に当てはまってるよ……。
うぅ……。死にたくない。死にたくないよぅ……。
「……アルフ……私、どうしたらいいのかな……」
「いやだから、一体どうしたってんだい?フェイト……。って、な、なんでそんなに涙を目に溜めてるんだよ!も、もしかして傷が痛むのかい?」
うぅ……知らず知らずの内だけど……涙が……。
「あるふ……あるふぅ……わたし、ふせいみゃくかも知れない……」
「えっ」
こんなんじゃ……こんなんじゃ私、あおなやなのはと一緒にいられないよぅ……。
「(…………あおなって、可哀想だな……)」
あぁ!なんかアルフに可哀想な子を見る目で見られた!
◇◆◇◆◇◆◇◆
毎度お馴染みクロノと緑の髪のお姉さんに捕まり強制的に座らされた。しかも今度は背凭れを巻き込んで光ってる縄で拘束もされてる。
………ははぁん?もしかしたら、クロノ君ってばSM両方イケる口だったり?だが残念ながら俺はフェイトさん以外に興味は無い。元々SMにはさほど興味は無かったし。
で、しかもそんな粗末な状態で話を聞けって?こんなの、妄想の世界に逃げ込まざるをえない。
「……と、言うわけで僕達が使ってる魔法と言うのは許可がないと違う世界では使っちゃいけないんだよ。……さて、これで一通りの説明は終わったけど……君からなにか質問はあるかい?」
……あぁ、やっぱりフェイトさんは可愛い……。あ、話聞いてなかった。
ここは適当に誤魔化さなくては。
「……知ってますか?セピア色のセピアって、イカ墨って意味なんですって」
「えっ?そ、そうだったのか……………って今はそんな事はどうでもいいんだよ!」
チッ、やはり駄目だったか。
「(いや、実を言えば全然聞いてなかったんですけど)……つまり、魔法は機密事項って事ですか?」
「あぁそうだ」
やっぱり相手の言った結論を返すだけってのは楽でいい。
「で、それが俺になにか関係あるんですか?」
「あぁ。君に1つだけ聞きたい事があってね。……君は闇の書の守護騎士に拘束され、魔力を蒐集された筈だ。だと言うのにその際に爆発的な魔力を発してた。……あれは、なんだ」
……見てたんなら助けろやゴルァおっと危ない。
ふむ。あの身体に込み上げる力は魔力だったのか。……俺も30歳を待たずに魔法使いか。
とりあえずこの質問にははっきりと答えられるから答えておこう。1つだけって言ってたからこれが終わればフェイトさんの所に行けるって事だし。
「あれですか?あれは--"愛"……です」
「「……」」
ふふふ、怖いか。だろうな。
「あれは俺がフェイトさんに対する足りないものを考えた時に気付いたもの。それが形になった結果です。それが愛。魔力なんてちゃちなモンでは断じてない。正真正銘の愛の力の結晶です」
「………君、頭は大丈夫か?」
「少なくともいきなり魔法の事を説明する貴殿方よりはマシだと思いますが?」
「…………とりあえずまだ検査は続けよう。君にはまだ色々と聞きたい」
まだ解放されないんかい。あぁフェイトさん……。すいません……。
~その後のクロノの心境~
(愛で力が沸くわけないだろ……。馬鹿馬鹿しい)
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遅れてしまい、すいませんでした。
少し用事が忙しくなりまして。
感想、質問、批評、誤字脱字報告待ってます。
次回もよろしくお願いいたします。