モンスターハンター ~恋姫狩人物語~   作:黒鉄大和

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第91話 シグマVSアリア 前途多難な初狩場

 第一回の狩猟学から数日後、昼休みという事で校内の芝生が敷かれた一角にクリュウ、ルフィール、シャルルの三人が集まっていた。

 三人は芝生に直接座り込んでぽかぽかと心地良い日差しの下でゆっくりと昼食を食べていた。

「兄者の弁当は本当にうまいっすよ」

「そうですね。珍しくあなたと意見が合いますね」

「そう言ってもらえるといつも作っている甲斐があるよ」

 三人が食べているのはどれもクリュウの手作り弁当だ。昼食も各自生徒が自炊する事となっているので、食堂で済ましたり、こうして弁当で済ます者。時間がある場合は部屋で本格的に料理を作る者もいるが、大部分が弁当組だ。

 クリュウはルフィールとシャルルの弁当を毎朝作って渡していた。最初の頃は各自それぞれで食べていたのだが、ルフィールが弁当を食べる場所に困っていると相談して来たので、いつも自分が利用しているここを教え、一緒に食べる事になった。すると、今度はいつも女子達の中心でキャーキャー騒ぎながら昼飯を食べていたシャルルまでもがこちらへ来てしまい、現在はこの三人で昼食を食べるのが通例になっている。

 ちなみに、クードは弁当なしで今頃は女子に囲まれながら昼食を取っているだろう。彼は女子に人気があるので部屋以外ではなかなかチーム全員が揃う事はないのだ。ただ、なぜ彼に対して弁当がないかというと、以前5年生の頃に作ってあげたら女子に見せるという暴挙を決行。その後の二人はできている疑惑に拍車を掛けてしまった為に、以降彼に対してだけは絶対に作らないと決めていた。

 ここは別にクリュウ達が独占している訳ではないが、あまり人がいない場所だ。少し離れた場所では女子が楽しげに会話を楽しみながら昼食を食べている。まぁ、ここなら自由に自分達の陣地を決められるので、例えルフィールを不快に思っていても距離を取れるので絡まれる心配もほとんどない。おかげでルフィールも安心して食事ができている。

「シャルは兄者の弁当があれば午後も全力でやれるっすッ!」

「全力で爆睡するの?」

「え? あ、いや、そのぉ……」

「授業は睡眠時間じゃないんだからね。ちゃんと勉強しないと。別段君は格別に頭がいいって訳じゃないんだから」

「う、うっす……」

「むしろその対極に位置すると言っても過言ではありません」

「うぅ、言い返せないっす……」

「――それと、野菜はちゃんと食べるように」

「うぅ……」

 クリュウの言葉に明らかに嫌そうな顔をするシャルル。その手に握られている弁当はメインである手作りハンバーグやご飯はきれいに消えているのに付け合せのサラダは一切減っていなかった。

「しゃ、シャルは野菜が嫌いなんすよ」

「それはわかってるけど、バランス良く食べないと体壊しちゃうよ」

「嫌いなものは嫌いなんっすッ!」

 徹底抗戦して断固野菜を食べないと宣言するシャルル。相変わらず彼女の野菜嫌いは治ってはおらず、クリュウは疲れたようにため息を吐いた。

 まぁ、彼女が野菜を全く食べていないかと訊かれれば、答えはノーだ。なぜなら彼女がすでに食べ終えたハンバーグには細かく砕いた様々な野菜を混ぜてあったのだ。彼女の野菜嫌いは今に始まった事じゃない。クリュウだって対抗策はちゃんと用意していたのだ。

 だが、根本的にやはり野菜は食べないといけない。なので、こうしてサラダを付けて彼女の野菜嫌いを克服させようとしているのだが、なかなかうまくいかないものだ。

 すると、そんな彼の努力をいつも傍で見ていたルフィールのイビルアイが鋭くなった。そして、いまだに徹底抗戦する構えのシャルルに向かって、一切の躊躇なく伝家の宝刀を抜いた。

「シャルル先輩。野菜を食べないと――死にますよ」

「「……」」

 直後、シャルルが泣きながらサラダを頬張ったのは言うまでもない。

 

 その日の夕方、授業を終えたクリュウ達はとある一室にいた。そこには見慣れたメンバーが集まっていた。それもそのはず。彼らは皆クリュウ達と同じフリードを担任としたFクラスのクラスメイトだ。

 突然呼び出された生徒達は皆困惑しているようだ。クリュウもルフィールやシャルルと顔を合わせるも、すぐに首を傾げる始末。ただクードだけはニコニコといつもの笑みを浮かべいていた。何か知っているのか、それとも何も知らないのか。本当に真意を探れない奴だ。

 すると、そんな困惑する生徒達の前に一人の人物が立った。美しい紫色の髪をポニーテールに纏めた絶世の美少女。その強気を通り越して刃物のように鋭い紫色の瞳は見る者全てを威圧する。その威圧感と美貌が、彼女の美しさをより引き立てている。

 圧倒的な存在感を纏う彼女は手に持っていたメガホンを口元に構えた。その瞬間、彼女の腕に付けられた腕章が姿を現した。

 ――《委員長》

「野郎ども、よく集まってくれた。まずはそれに感謝するぜ。サンキューな。だが、こっからの話は別問題だ。耳の穴かっぽじってよぉく聞いておけッ! 聞いてなかったり反抗する者は即刻死刑だぁッ!」

 いきなり死刑だと無茶苦茶な事をぶっ放した少女。というか、外見の美しさに明らかに反した口調。彼女こそ先日Fクラス委員長になった生徒、シグマ・デアフリンガー。見ての通り、外見は絶世の美少女なのだが性格は荒々しく豪快な男顔負けなほどに男勝りな少女。口調や性格に多少の問題はあるが、男女問わず統括力を発揮するFクラスの頼れるリーダーだ。

「明日の狩猟学、絶対にBクラスにだけは負けんじゃねぇぞッ!」

 ハンドマイクなしでも十分大きな声でシグマが怒鳴ると、生徒達は一斉に耳を塞いだ。この教室は一般的な広さなので別に怒鳴る必要は全然ないのだが、彼女の話し方はいつも怒鳴りっぱなしだ。

「いいかテメェらッ! Bクラスだけには絶対負けんなッ! もし負けたりでもしたら、全員死刑だぁッ!」

 こめかみに青筋を立てながら怒鳴るシグマに生徒達の一部はバレないようにため息を吐いた。皆、一様にまたかという感じの表情を浮かべている。一方で困惑したような表情を浮かべている生徒もいる。

 クリュウ達もクリュウはため息し、クードも困ったような笑みを浮かべるのに対し、ルフィールとシャルルは首を傾げていた。

「兄者、何でBクラスだけには負けちゃダメなんすか?」

「そ、それは……」

 

「オーホッホッホッホッホッ!」

 

 突如響き渡った優雅な高笑い。その瞬間、シグマが鋭い眼光で部屋のドアを睨みつけた。同時に、クリュウ達は一斉に疲れたようにため息を吐いた。

「オーホッホッホッホッホッ! ここがあなた方の拠点ですの? ずいぶんと品がない事ですの」

 そう言いながら現れたのはクリーム色の長い髪に紫色のバラの花を飾り付けた青色のカチューシャを付けた碧眼の美少女。顔立ちは高貴なもので、纏う雰囲気も他の生徒とは明らかに違う。

 そんな高笑いし続ける少女の声にイライラを募らせるシグマ。

「テメェ、何しに来やがったアリアッ!」

「オーッホッホッホッホッホッ! あなたの貧弱なクラスの面子を確認しに来ただけですわ」

「んだとゴラァッ!」

 ブチギレるシグマとそんな彼女の怒りを涼しくスルーする少女。見守る生徒達も戸惑う者と呆れる者と二極化している。

 クリュウ達は、呆れる側の生徒であった。

 睨み合う二人の少女を見詰め、生徒達は再びため息を吐いた。

 高貴な雰囲気を纏う少女の名はアリア・ヴィクトリア。この前Bクラスの委員長になった、シグマとは犬猿の仲と言われている生徒だ。

 シグマ・デアフリンガーとアリア・ヴィクトリア。この二人の対立関係はこの学校ではかなり有名なもので、接点の少ない低学年の生徒を除いてほとんどがこの対立関係を知っている。なぜなら、この二人は事あるごとに対立し、クラスを巻き込んで対立するのだ。

 二人とも性格に多少の問題はありつつも、リーダーシップは高いのでこれまでも何度も委員長になり、クラスを巻き込んで対立する事もしばしば。二つのクラスが狩場で激突した事もあり、フリードにすさまじく怒鳴られた事もある。

「いやはや、これはおもしろくなってきましたね」

「……今更だけどさ、君の《おもしろい》って厄介事や面倒事の事を示すよね?」

「うぅ、まさかシャルがそんな対立クラスの一方になるなんて……」

「運が悪かった。そう諦めるしかなさそうですね」

 クリュウ達がそんな感じでため息を吐いている間も、シグマとアリアの対立は続いている。どちらも負けるつもりは全くないようで、牽制し合っていた。

「まぁ、前回は決着がつきませんでしたが、今回こそはこの私が勝たせていただきますわ」

「んだとッ! 勝つのは俺達に決まってんだろうがッ!」

「フンッ。せいぜい今のうちに夢でも見ていなさいな。では、私はこれで――って、あら?」

 宣戦布告を終えて帰ろうとしたアリアは、生徒達の中に見知った顔を発見した。すると、先程までの余裕の笑みは一変し、真剣なものに変わった。そして、その生徒に向かって足早に走り寄ると、

「な、何であなたがこちら側にいるんですのッ!?」

「いや、まぁ、僕が決めた訳じゃないんだけど……」

 そう言ってアリアに詰め寄られながら困ったような笑みを浮かべたのはクリュウ。一瞬にして周りの視線を一身に集める形となった。ルフィールとシャルルも驚いたような表情を浮かべている。

「私のクラスにいないと思ったら、まさかシグマのクラスになっていたなんて……ッ」

「ま、まぁそういう事で。今回は君の手助けはできないよ」

「ふ、フンッ。思い上がりも甚(はなは)だしいですわ。あなた程度の人材など、簡単に補充ができますもの」

「そりゃまた手厳しいね」

「……で、でも。もしもあなたがどうしても私の下で働きたいと仰るのであれば、おじい様に頼んで私のクラスに編入してさしあげてもよろしくてよ? あなたが有用な人材だという事は事実ですもの」

 アリアの祖父は政界において絶大な権力を有する政治家である。同時に、経営で成功した経営者でもある。権力と資金の両方を兼ね備えた彼女の祖父は、周りからは《総統》と呼ばれ、王政府に対しても絶大な影響力を有する大物政治家。そして同時に、孫娘のアリアをものすごくかわいがっている祖父バカでもある。

「もう一度、私の下で働きません?」

「断る」

 そう言って二人の間に入って来てクリュウの前に立ち塞がったシグマ。アリアはクリュウとの会話中に無断で侵入して来た無礼なシグマを睨みつける。

「あなたに用はありませんの」

「元テメェの腹心だとしても、今は俺のクラスメイトだ。勝手な行動すんじゃねぇ」

「あなたのクラスにいては彼が不幸になってしまいますわ。私のクラスでしたら、有意義な生活ができますもの」

「フン。ここはお嬢様のお遊び場じゃねぇんだぞ」

「何ですってッ!?」

 先程までどんなにシグマに暴言を言われてもクールにスルーしていたアリア。だが今回は突然感情を荒らげると、シグマをギロリと睨みつけた。だがそんなアリアの本気の態度にシグマも対抗して睨み返す。二人の間に電撃が迸っているように見えるのは気のせいではないのかもしれない。

「お、落ち着いて二人ともッ!」

 慌ててクリュウが二人の間に仲裁に入る。だがそんな彼を二人が一斉に攻撃する。

「あなたは黙っていなさいッ!」

「黙ってろボケッ!」

「……前から思ってたけど、君達って実は気が合うんじゃないの?」

 そう言いながら、クリュウはまだ睨み合う二人の間に壁になるように立ちながら、アリアに背を向けてシグマと対峙した。突然こちらを向いて来たクリュウに、シグマは怪訝そうな顔になる。

「何だ?」

「今のはシグマが悪いよ」

「な、何だとゴラッ!?」

「アリアは確かにお嬢様だしわがままだしハンターとはかけ離れた存在かもしれない」

「……あなたは、どっちの味方ですの?」

「――でも、お遊びなんかでハンターを目指している訳じゃないよ。彼女だって、真剣なんだから」

 そう言っていつになく真剣な表情でシグマと対峙するクリュウ。元彼女のクラスメイトだからこそわかる、彼女の本気。確かに遠巻きに見ていれば無茶苦茶でお遊びでハンターを目指しているように見えるかもしれない。でも、近くで彼女の本気を見れば、誰だって彼女が本気でハンターを目指している事はわかる。

 クリュウの他にも元アリアのクラスメイトが数人Fクラスには存在し、彼らもまたクリュウと同じようにアリアの味方になった。アリアはそんなクリュウ達を見て、少し涙ぐんでいるようにも見える。

 そんなクリュウ達の思わぬ反撃に、シグマはバツの悪そうな顔をして頭を掻くと、小さくため息を吐いた。

「バカにすんじゃねぇ。テメェら以上に俺はこいつとは同郷で付き合いは長いんだよ。こいつがそういう奴だって事は嫌ってくらいわかってるよ――悪かったな」

 そう言って、恥ずかしそうに赤らんだ頬を掻きながらシグマは素直に謝った。口調や態度がいくら乱暴だとしても、彼女は誰よりも真っ直ぐな志を持った生徒。自分が間違っているとわかると態度こそは素直ではないが、素直に謝る純粋な性格をしている。

 そんな彼女だからこそ、周りの生徒達も彼女について行くのだ。

 不貞腐れたような表情を浮かべながら謝るシグマに、アリアは小さく笑みを浮かべた。しかし、すぐにその笑顔はいつもの自信に満ちた笑みに変わり――

「シグマの謝る姿、これはなかなかの絶景ですわね」

「あぁんッ!?」

「……アリア、僕がせっかく穏便にしたのをいきなり壊すの?」

「あなたに恩を売られては、私のプライドが許しませんもの」

「いや、恩とかそういう問題じゃないんだけど……」

「そんな事より、私はあなたの気持ちが知りたいのですの――もう一度、私の下で働いてくれません?」

 アリアのそんな申し出に対し、クリュウは小さく苦笑を浮かべた。そんな彼の反応に、アリアも彼の答えを悟った。

「……君の気持ちは嬉しいけど、先生が決めたチーム分けをそう簡単に崩す訳にはいかないよ。それに、僕はもうこのFクラスにチームメイトもできたし」

 そう言って、クリュウはルフィール達に振り返った。そんな彼の視線に対して、ルフィールは小さく微笑み、シャルルは嬉しそうに微笑んだ。クードは相変わらずいつもと変わらぬ笑みを浮かべているが、心なしかその笑顔はいつもより柔和に見える。

 アリアはそんな彼の仲間達を見詰め、小さくため息を吐いた。クリュウが向き直ると、アリアはどこかすっきりしたような笑みを浮かべていた。

「……あなたにはあなたの道がある。そういう事ですわね」

「アリア様ぁッ!」

 再びドアが開いて現れたのは二人の少女。どうやらBクラスの生徒らしい。少女達の姿を見たアリアは「見つかってしまいましたか」と小さく苦笑した。

「アリア様ッ! 勝手に出て行かれては困りますッ!」

「早く戻って来てくださいッ! アリア様がいないとホームルームも纏まりませんッ!」

「……まったく、本当にあなた達は私がいないとダメダメですのね」

 そう呆れながらも、どこか嬉しそうな笑みを浮かべているアリア。そんな彼女を見て、クリュウもまた小さく笑みを浮かべた。

 アリアは二人の少女を率い、ドアに向かった。その途中、カッと踵(かかと)を揃えて振り返った。その視線の先には、小さく手を振って見送るクリュウがいる。そんな彼に向かって、アリアは不敵な笑みを浮かべた。

「例え元クラスメイトだとしても、容赦しませんわよッ! 覚悟しておきなさいッ!」

「了解」

「そしてシグマッ! 今度こそあなたを私に跪(ひざまず)かせて差し上げますわッ!」

「ケッ、やれるもんならやってみらがれ。返り討ちにしてやるッ」

 シグマの答えにアリアはフッと口元を綻ばせ、部屋を出て行った。それを見送るFクラスの一同。そんな彼らに向かって、シグマは堂々とその場に立ちながら口を開く。

「いいかテメェら。あれが俺達Fクラスが倒すべきBクラスの大将、アリア・ヴィクトリアだ。あいつのクラスには、あいつには絶対負けんじゃねぇぞッ! わかったなッ!」

 シグマの掛け声に対し、Fクラスの生徒達は一斉に声を上げた。アリアの登場は、彼女の口の悪さも災いして逆にFクラスを統一させる結果となった。もしかしたら、アリアの狙いはそこにあったのかもしれない。正々堂々、万全のシグマ達を全力で潰す。それが彼女のプライドなのかもしれない。

 アリアらしいと思いながら、クリュウが小さく笑っていると、シグマと目が合った。すると、シグマは小さく口元に笑みを浮かべた。

「安心しろ。俺は元アリアのクラスの奴だからってクラスから省いたりするような小せぇ女じゃねぇ。だが、一度俺のクラスになったからには、容赦せずにこき使うからな。覚悟しておけ」

「了解」

 クリュウの返事に納得したようにうなずくと、シグマは拳を天に突き上げた。

「打倒Bクラスッ! そして校内成績首席クラスッ! 俺達Fクラスがこの学校の頂点に立つッ! テメェらッ! これから半年間俺について来いゴラァッ!」

 刹那、爆音のような生徒達の大声が響き渡った――Fクラスが一つになった瞬間だ。

 

「ヴィクトリア先輩とは、どういうご関係なのですか?」

 Fクラスの会議が終わって教室から出たクリュウに対して、ルフィールは早速質問してみた。後ろにいるシャルルも同じ質問がしかったのか、ルフィールの問いに対し彼女と同じくクリュウを見詰めている。そんな二人に、クリュウは特に隠す様子もなく返した。

「アリアとはただの元クラスメイトってだけだよ。前回のクラスでもアリアは委員長で、僕はそのアリアの下で前回のシグマのクラスと戦った。まぁ、言い方をかっこ良くすれば戦友みたいなもんさ」

「もちろん、その時は私も一緒でしたが」

「別にランカスター先輩には訊いてないっすよ」

「おや、これは失礼」

 ニコニコと笑うクードを一瞥し、ルフィールはクリュウを見詰めた。彼の横顔には、一切の迷いは感じられなかった。

「迷いはないのですか?」

「迷い?」

「元クラスメイトと争う事に、先輩は何の迷いも感じていないのですか?」

 ルフィールの問いに対し、クリュウはしっかりとうなずいて答えた。

「向こうが全力で来るって言うなら、こっちも全力で迎え撃つだけさ。真剣に挑んでくる相手に対して、それが最大の礼儀だと僕は思う」

 クリュウの真っ直ぐな返答に対し、ルフィールは小さく笑みを浮かべると「そうですか。先輩らしいですね」と小さく口元に笑みを浮かべた。そんな彼女の隣ではシャルルも「さっすが兄者っすッ! かっこ良すぎっすよッ!」とキラキラした瞳で彼を見詰めている。

「ほら、さっさと帰るぞ。明日は狩猟学があるんだからね。いい点を取って少しでもクラスの点を上げないと」

「無論、ボクは負ける気は全くありませんから」

「シャルも絶対に負けないっすッ! 売られたケンカは買い占めて全勝っすよッ!」

「これはまた、おもしろくなってきましたね」

 それぞれの想いが交差しながら、四人は部屋に戻った。

 

 翌日、ドンドルマから少し離れた森の中の小さな広場に、クリュウ達は集まっていた。

 ここはギルドが指定した狩場とは違った、非公式な狩場である。世の中には決してギルドが範囲を決めた中だけにモンスターが住む訳ではない。特にギルドのやり方を良しとしない村や集落も存在する為、ギルドが狩場を決めるにも範囲全てを指定できる訳ではない。

 ギルドが狩場と認定しているのは、世界の一部でしかない。例を挙げれば、イージス村から最も近いセレス密林もつい数年前まではギルドの指定狩場に認定されていなかった非公式な狩場だった場所だ。それはイージス村がまだ発展途上の村であった事や辺境の地だったというのがその理由だ。

 クリュウの父は、ギルド指定の狩場ではない為にギルドの支援も受ける事はできず、村のわずかな報酬や支給物資だけでセレス密林の危機を救っていたのだ。ギルド認定の狩場とは、それだけ危険度が高いという事もあり、村からの報酬の他にギルドからの支援や追加報酬などがある。救護アイルーや拠点(ベースキャンプ)の設置など、村単独では難しいがギルドからの支援があれば設置も可能となり、本格的な狩場となる。

 逆に、村からはギルドにモンスターや古龍の情報などを伝え、有事の際はギルドナイトの派遣を安易にさせるなどの利点も多い。他にもイージス村のように地域の拠点になっている村や街は特にギルドからすれば配下に入れておきたいものだ。

 古龍討伐など、大規模な作戦を行う場合の中継地点、補給基地、司令部創設など。何もギルドが一方的に村を擁護しているのではなく、村もまたギルドを支える。これがギルドとその系列に入る村や街の関係だ。

 そして、クリュウ達が今いるこの場所も昔はギルドに反発する街が独自にハンターを雇っては狩りを行うという非公式な狩場であった。

 しかしギルドが決めている生体均衡論、つまりギルドの役目はモンスターの絶滅ではなく、モンスターと人間の共存という大儀に反してモンスターの乱獲を行ったその街はその後市長が事故で亡くなり、市議会の与野党が逆転して親ギルド派の議員が街の権力を握った。その陰ではギルドナイトが市長を暗殺したとも噂されているが、真相は不明だ。

 その後、この狩場はギルドからの認定は受けてはいないが、暗黙の了解でギルドも手出しをしない非公式な狩場となった。そして今ではハンター養成学校が訓練狩場としてこの狩場を買収したのだ。街としてもこの狩場には大型モンスターはほとんど出没しない為に運営しても赤字で問題となっていた。無駄な依頼料を払わなくても生徒が狩りをしてくれるので街の安全は保たれる上に逆にお金が入るという事で、街も快く明け渡してくれた。

 とまぁ、そんな経緯がある狩場ではあるが、クリュウ達生徒にとっては貴重な実戦ができる場所。そんな歴史などは必要ないし興味もない。彼らが考えるのは、この狩場でもっともっと強くなる。その一点に尽きる。

 広場に集まった生徒は約一〇〇人程度。基本的に狩猟学は一クラスずつ行うのだが、クラス同士で対決させる場合はこのように二クラス以上の合同授業を行う場合がある。

 今回、合同授業を行う事になったクラスは、シグマ率いるFクラスとアリア率いるBクラス――絶望的なまでに犬猿の仲ともいえるクラス同士が初戦でいきなり激突する事となったのだ。

 昨日のアリアの宣戦布告、もしかしたら彼女は今日自分達がFクラスと戦う事を知っていたのかもしれない。だからこその宣戦布告。正々堂々主義の彼女らしい。

 FクラスとBクラス。二つのクラスの間にはきちんと国境が引かれていた。お互いに二メートルほど離れて牽制し合っている。すでにシグマとアリアの個人同士の対立は、FクラスとBクラスのクラス同士の対立になっているらしい。

「オーホッホッホッホッホッ! 初戦の相手が、まさかあなた達Fクラスだったなんて。意外でしたわ」

「フン。何をカマトトぶってんだ。昨日宣戦布告して来たって事は、テメェは知ってたんだろうが」

「推測の域で勝手に解釈して結論を出すなんて、愚かな事です事ッ!」

「あぁんッ!? いつまでもカマトトぶってんじゃねぇぞゴラァッ! BクラスのBはバカのBだってか?」

「それを言うのでしたら、FクラスのFとは成績発表での失格扱いという意味ではなくて?」

 すでに激しく睨み合う両クラスの総大将、Fクラス委員長のシグマとBクラス委員長のアリア。二人が激しく対立すればするほど、両クラスの睨み合うも激しさを増す。

 そんな中、騒がしい群集から少し離れた場所から状況を見守っていたクリュウは小さくため息を吐いた。

「まったく、いつの間にか本当にクラス同士で対立してるし……」

「良くも悪くも、さすがは委員長といった所でしょうか」

「感心する所じゃないんだけど」

「これは失敬」

 ニコニコと笑いながら言うクードは、どうやらこの状況を大いに楽しんでいるらしい。彼の大好物はおもしろい事。今の状況は彼にとってはまさに至福の時と言っても過言ではないのかもしれない。去年もクラス同士が対立しているのを楽しそうに見ていたので、クリュウは確信していた。

「こんな調子で大丈夫なんすか? せっかく今期の狩場デビューっすのに、ドタバタで終わるの嫌っすよ?」

「互いをライバルと思い、切磋琢磨する事は良い事とボクは考えます。しかし、これではただのいがみ合いでしかないかと」

 シャルルとルフィールもまた珍しく意見を合わせて今日の授業を心配していた。せっかくの今期初の狩場だというのに、本当にこれで大丈夫なのか、正直不安になってきた。

「まぁ、新しく2年生とかも入ってるから。いきなりランポスとかを狩るような授業じゃないはずだけど、一応狩場って事には変わりないからね。周りがちゃんと見えてればいいんだけど……」

 ルフィールという皆からあまり良い目で見られていない対象を抱えるクリュウ達第77小隊はこうしていつもクラスの輪からは外れている。ルフィールを辛い目に遭わせない為の配慮だったのだが、どうやら今回はそれがうまくシグマ達の異常な場の流れに流されずに済んでいるらしい。特に、このチームには恐ろしく単純で場の流れにものすごく流されやすいバカがいるのだから気をつけないといけない。

「……何か、今ものすごくムカつく事を言われた気がするっす」

「え? 僕には何にも聞こえなかったけど」

 頭が単純な分、運動神経や勘などは獣並みのシャルル。しかしハンターの世界ではこういうタイプの方が成長しやすい。自然というのは、計算や予測だけで成り立っているような柔(やわ)なものではない。そういう状況ではシャルルのような野生の勘が優れているタイプの方が有利なのだ。

 だが、いくら勘が鋭くても知識なくしてはどうにもならない時もある。野生の勘も大事だが、状況を冷静に見極めて膨大な知識や情報と照合して現在の最も効率的な方法を導き出す、ルフィールのような頭脳型もまた幾分か晩成タイプではあるが成長するものだ。

 逆に言えばクリュウのように冷静に見えて意外と実は熱血系だったり、仲間を優先するあまり自分を犠牲にするような考えを持つタイプは短命型だ。以前彼自身もフリードにそう指摘されて苦笑いしていた。

 そして、クードは……これは分類不能だ。

 同じハンターというカテゴリの中にも、これだけ様々なタイプのハンターが存在する。チームというのはそれらの長所をより高め、短所を補う事により強大な力を持つ。

 狩猟学はただ単にハンターとしての能力や技能を高めるだけではなく、こうしたチームでの信頼関係の構築や社交性を強化する事もまた目的の一つだ。

 そんな友情を強化するとも言っていい狩猟学の場において、二クラスの大多数はそれを真っ向からぶっ壊すような対立を続けているのだ。ため息のひとつも零れる。

 FクラスVSBクラスの睨み合いが勃発している最中、生徒群から少し離れた場所にある小屋からフリード、クロード、シャニィともう一人の教官が出て来た。あの小屋はこの狩場での一時的な教官室という訳だ。

 教官達が現れた事で一応両クラスの睨み合いは終了した。クリュウ達もFクラスの最後尾について整列する。

 とりあえず整列している生徒達の前にフリード達が並ぶ。

「ヴィレール先生、お願いします」

 フリードにそう言われて前に出たのはFクラスは初対面となるBクラス担任のヴィレール・レパルス。見た目は健康そうな小麦色の肌と茶髪の、生徒達と同じくらいの年齢に見える青年。しかしその鼻と耳は大きく尖り、普通の人間のそれとは違う。それもそのはず、彼は竜人族なのだ。身に付けているのは真っ赤に燃える炎のような印象のレウスシリーズ。背負っているのは同じくリオレウスの素材を使って作られたランス、プロミレンスランス。

 竜人族の中にもハンターになる者はもちろんいる。ヴィレールはその一人だ。

 人間と違い竜人族は桁外れに長寿であり、成長及び老化も遅い。その為見た目は青年だが、これでもフリードよりも年上らしく、あのフリードが敬語を使う所を見ると相当な実力者らしい。

 ヴィレールはコホンと小さく咳払いすると、Fクラスの生徒達に向かってあいさつした。

「初めましてFクラスの生徒諸君。私がBクラス担任のヴィレール・レパルスだ。さて、今回の狩猟学は時間制限ありの採取クエストとする。納品する物はこんがり肉三個、バクレツアロワナ五匹、ロイヤルカブト三匹、黄金石のかけら一個、特産キノコ五個だ。量は多いしエリアを多く移動しなければならないが、これからの授業を考えてまずは狩場というものに慣れてもらう。特にこれは2年生の為というのが大きい。上級生は新入生のフォローを忘れずに。それと、少数ではあるがランポスも出現する可能性がある。戦うか逃げるかは個人の判断に任せるが、無理はしないように。そして、これは毎回言う事で上級生は聞き飽きているかもしれないが聞いてくれ」

 そこでヴィレールは一回話を切ると、自分を見詰める生徒達を見回し、釘を刺すように言った。

「狩場での争いはご法度。見つけ次第理由関係なく争っていた者全員を強制失格。クラス点数の減点対象及び反省書を書いてもらう。まぁ、ケンカしなければ何の問題もない。いいか? クラスの足を引っ張るようなマネさえしなければ、自由にやって構わない。以上だ」

 そう忠告してヴィレールは下がり、今度はフリードが前に出た。ヴィレールと違ってフリードは周りを威圧するように生徒達を見回す。その背中には多くのモンスターを葬ってきた金火竜と銀火竜の素材を使った壮烈無比な威力を誇るタツジンブレイドが背負われている。その剣からもまた、威圧感が吹き荒れていた。

「俺とヴィレール先生、クロード、そしてシャニィの四人がそれぞれ個別に狩場を歩き回って貴様らを監視しているからな。変なマネしたら容赦なく首根っこを捕まえてこの拠点(ベースキャンプ)まで連れ帰って説教するからな。覚悟しておけ」

 そんな覚悟したくはないのだが、しなければ確実に連行されて地獄を見る事になるだろう。フリードは冗談でこんな事を言う男ではない。本気だからこそ厄介なのだ。

「各小隊の採取率を点数に換算し、クラス点数に加算する。知っているとは思うが、期末試験が終了した段階で最も点数の高いクラス、つまりは優勝したクラスには生徒全員にボーナス単位が与えられる。今後の進級や卒業にも関わる問題だ。心して掛かるように。各小隊長はこの後チーム全員分の支給品を我々まで取りに来るように。今回は日帰りとするので各小隊ごとのテントは張らないものとする。以上だ」

 

 フリードから支給品を受け取ったクリュウはすぐにルフィール達の所へ戻った。

「これみんなの支給品。分配しようか」

 そう言ってクリュウは草の上に腰掛けて手に持った袋を地面に置き、中身を取り出し始めた。ルフィール達もそれを囲むようにしゃがんで袋から取り出される支給品を確認する。

 袋の中に入っていたのは地図四枚、携帯砥石四個、応急薬十二個、携帯食料八個。その他袋に入らなかったピッケル、虫あみ、釣竿がそれぞれ二本。携帯肉焼きセット一個と必要最低限なものだけが入っていた。

「釣りミミズはなしですか。実際に自分で採取しろという事ですね」

「そうみたいだね。釣りミミズなら虫あみなしでも採取はできるだろうし」

「では釣りミミズ採集は女子に任せるという事で。防具の中にミミズが入ったりすればおもしろいのですが」

 ニコニコと笑いながら言うクードの発言に、ルフィールとシャルルは頬を赤らめて無言で身を守った。クリュウはクードを見詰めながら小さくため息を吐く。

「……今更だけどさ、クードって結構Sだよね?」

「その方がおもしろいですからね」

「……はぁ――とりあえず役目を決めよう。力仕事のピッケルは僕とクード。虫あみと釣りはルフィールとシャルルに任せてもいいかな?」

「わかったっすッ!」

 シャルルはそう言って了承してくれた。どうやら気合が入ったらしく腕をブンブンと振り回してやる気満々だ。しかし、ルフィールは表情を曇らせていた。

「ルフィール? この組み合わせに問題でもあるの?」

「いえ、的確な配置だと思います。通常の場合でしたら、これで何の問題もありません」

「通常の場合って……、今の状況に問題があるって事?」

「はい。致命的な問題が」

「それは一体……」

 皆が見詰める中、ルフィールは何やら言いづらそうに口を開けたり開いたりを繰り返す。心なしか、その頬は薄っすらとではあるが赤みを帯びていた。そして、覚悟を決めたようにうなずき口を開く。

「――お恥ずかしながら、ボクは虫が大の苦手なのです」

『……』

 ルフィールの爆弾発言の後、数秒間の沈黙が発生した。その沈黙の間、ルフィールは恥ずかしそうに頬を赤め、気まずそうに視線をそらした。

 そんな不気味なくらいに気まずい沈黙は、突如として起きたのどを鳴らすような笑い声によって打破された。

「いやはや、なかなかおもしろい話を聞きました」

「……やっぱりあなたは最低です」

 軽く涙目になりながらルフィールはキッと誰もが恐れるイビルアイでクードを睨みつけた。しかしクードは気にした様子もなくおかしそうに笑っている。こんな無茶苦茶な性格をしているのに、女子からは人気があるのだから美形というのは恐ろしい。

「じゃ、じゃあ役割を変えようか。本当はこの役割で男子チームと女子チームに分けるつもりだったんだけど。そういう事じゃ仕方ないからね」

 完璧超人のようなルフィールの意外な弱点に苦笑しながら、クリュウはそう切り出した。

「クードとシャルルは釣り及び虫担当。僕とルフィールはピッケルとこんがり肉を担当する。この分け方でいいかな?」

「ボクは構いません」

「力仕事は苦手なので、助かります」

「……僕の方が小柄なんだけど」

「シャルは反対っすッ!」

 そう叫んだのはさっきまで気合十分であったシャルルであった。何となく彼女の反対を予想はしていたものの、クリュウは困ったように頬を掻いた。

「反対って……。これが今できるベストな組み合わせだと思うんだけど」

「シャルは兄者と組みたいっすッ! こんな新参者に兄者の隣は渡さないっすよッ!」

 そう怒鳴り、シャルルはキッとルフィールを睨みつけた。しかしルフィールはそんな彼女の視線などそよ風程度にしか感じていないのか、クールな表情で無視した。そのすました態度がよりシャルルの怒りを激増させる。

「べ、別に僕と組むのはシャルルだけって訳じゃないし。虫を平気で触れるシャルルが一番の適役だと思うけど」

「……兄者、シャルも一応はか弱い女の子っすよ?」

「か弱い、ですか。しかしシャルルはずいぶんとその対極にいるような女の子だと思いますが?」

「先輩は黙っててほしいっすッ! 話がややこしくなるっすッ!」

 シャルルに怒鳴られるも、クードは楽しそうな笑みを崩さない。どうやらこの状況を大いに楽しんでいるらしい。彼らしいには彼らしいのだが、今は厄介極まりない。

「でもさ、虫が触れないルフィールはロイヤルカブトなんて無理だろうし」

「シャルル先輩。ロイヤルカブトに触れますか?」

「ガキの頃はよく近所の男友達と一緒に山に入って取りまくってたから平気っす」

「虫がダメなら釣りミミズもダメだろうし」

「シャルル先輩。釣りミミズは触れますか?」

「ガキの頃はよく近所の男友達と一緒に川に行って魚を釣りまくってたから平気っす」

「――シャルル。今君ものすごい勢いでルフィールに追い詰められてるって事自覚している?」

 クリュウがツッコミを入れるとようやくシャルルも状況を理解したらしく顔を真っ赤にしてルフィールに怒る。しかしルフィールは平然とその怒りの炎を回避している。

「……そういえば、そもそもこの二人をコンビにさせようとしていた時点で作戦失敗だったね」

 いい組み合わせかと思ったが、この二人の犬猿の仲という部分をすっかり忘れていた。

 しかし、ルフィールを取ればシャルルが怒り、おそらくシャルルを取ればルフィールは拗ねるだろう。というか、そもそも――

「ランカスター先輩と二人っきりなんて、絶対に嫌っすッ!」

 自分以外でクードと組ませたら、この面子だと仲違いしかねない。ますます致命的な人選ミスをしてしまったと後悔しまくるクリュウであった。

「全員集合しろッ!」

 フリードの声に、クリュウ達も話を切り上げて集まった。すでに他の生徒達の大部分は出発の準備を整えている。クリュウ達はまだ準備段階なので、急がなければならない。

 生徒達を見回し、フリードは高らかに声を張った。

「これより狩猟学を開始するッ! 健闘を祈ってるぞ!」

 こうして、クリュウ達の前途多難すぎて軽く頭痛がしてくるような最初の狩猟学が始まったのであった。


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