モンスターハンター ~恋姫狩人物語~   作:黒鉄大和

43 / 251
第42話 クリュウ激怒 ヒビの入った関係

 三人が逃げ込んだのは先程クリュウとフィーリアが鉱石を採掘していたエリア8だった。外に位置している分熱が溜まる洞窟内よりは幾分か涼しい。しかしそれでも火口付近という事もあって暑いのには変わりないが。

 サクラはクリュウを横にすると、道具袋(ポーチ)の中から小さな布と腰に下げた水筒を取り出した。そして布を水筒の水で湿らせてクリュウの額にそっと置く。水筒には水と共に氷結晶が入っているのでこんな灼熱地獄である火山でも冷たいままだ。

 クリュウは思ったよりは軽い怪我であった。その事に二人は安堵する。

 だが、そんな緊張が緩んだ空気はすぐに壊れ、サクラはキッとその隻眼でフィーリアを睨んだ。

「……どういう事?」

 サクラの声には怒りの感情が込められていた。

 自分がいない間に、クリュウは怪我をした。それも、フィーリアがいながら。

 悔しいが、フィーリアはかなりの実力や技術、知識を持っている。そして何よりクリュウからの信頼も厚い。だが、そんな彼女がいながらクリュウは怪我した。これは許されるべき事ではなかった。

 サクラに睨まれたフィーリアは「すみません……」と小さく謝ってしゅんとする。それ以外できなかった。

 クリュウが怪我をしたのは自分の失態だ。火山で爆弾岩があるのは慣れたハンターなら当然気づく事だ。しかしクリュウは初めて。だからこそ自分がしっかりしなきゃいけなかったのに、注意を怠った為にこんな事に……

 落ち込むフィーリアだが、サクラは睨み付けたままだ。

「……謝るならクリュウに言って。私が訊いてるのは、どうしてこんな事になったか、その経緯を聞きたいだけ」

 冷静な声に聞こえるが、フィーリアにはわかっていた――その言葉の奥にすさまじい怒りがある事を。だから、声が詰まる。 

 沈黙を続けるフィーリアを、サクラも無言で睨む。

 しばしの沈黙の後、フィーリアはゆっくりと口を開いた。

「バサルモスと戦闘に入り、クリュウ様が落とし穴を仕掛ける事になったんですが、私の不注意で彼は爆弾岩のすぐ傍に設置してしまい、そのままバサルモスを引き付けてしまったんです。そして、バサルモスの突進を受けて起爆した爆弾岩の爆発に吹き飛ばされて、こんな事に……」

 その説明に、サクラから噴き出る怒りのオーラがさらに強まったのをフィーリアは感じて体を震わせる。

「……爆弾岩の存在は、慣れたハンターなら当然気づく事。あなたは火山には何度も来ている。その証拠に、エリア8に採掘に行った。なのに、どうしてクリュウにこんな大事な事を伝えなかったの?」

「わ、忘れてて……」

「……忘れた? そんな事でクリュウにこんな怪我をさせたのッ!?」

 激怒するサクラに、フィーリアは「す、すみません……ッ!」と泣きそうになりながら必死に謝る。だが、サクラの怒りは収まらない。

「……一歩間違えれば、クリュウは死んでたかもしれないのよッ!?」

 狩場では一瞬の判断の遅さが命を落とす事に繋がる。そんな事、ハンターなら当然知っている事のはず。なのに、熟練のハンターであるフィーリアがそんな初歩的なミスをし、クリュウを危険に晒した。それが許せなかった。

「……あなたの実力はかなりのもの。それはさっきのイーオス戦でわかった。だからこそ、あなたにクリュウを任せても大丈夫と思ったから、私は別行動した。あなたを信頼した。なのに、あなたはそれを裏切った。そしてクリュウを危険に晒した!」

 サクラは怒鳴る。こんなにも怒りの感情を表すサクラは珍しい。それほどまでに怒っているのだ。大切な仲間であるクリュウを傷つけられ、その怒りはすさまじい。そんな彼女の怒りに、フィーリアはずっと黙ったままだ。

「……あなたにクリュウは任せられない。クリュウが起きたら、クリュウは私と連携してバサルモスは倒す。あなたは後ろから勝手に撃ってればいい。もう邪魔しないで」

 そう言うとサクラは本当はまだ言いたい事が山ほどあったが、これ以上怒っても仕方がないと理性が働き、口を閉じた。

 だが、そんなサクラの自分勝手な言い分の数々に、ずっと黙っていたフィーリアもついにキレた。逆ギレではない。こっちも言いたい事は山ほどあった。

「さっきから聞いていれば自分勝手な事ばかり言わないでくださいッ!」

 突如激怒したフィーリアにサクラは驚き隻眼を大きく見開く。だが、すぐに先程までの刃のように鋭い瞳に変わる。

「……文句があるの?」

「あなただって、クリュウ様と別行動をしたじゃないですか! 一度チームを組んだら、そうした単独行動は控えるのはハンターの鉄則です! それをあなたは破った!」

「……違う! 単独行動をしたのはあなたよ!」

「違います! 今回の依頼を受けた受注者はクリュウ様です! 必然的に、チームのリーダーはクリュウ様になります! そしてクリュウ様は私と行動をしていました! 単独行動をしたのはあなたの方ですッ!」

「……黙れ」

「確かに私のミスでクリュウ様は怪我しました! ですが、それは元々あなたが別行動をした結果です! 自分の事を棚に上げて、人の事をとやかく言う権利はあなたにはありませんッ!」

「……黙れッ!」

 サクラは怒りで顔を真っ赤にしながら怒鳴るとフィーリアに掴みかかって来た。そんな彼女の行動にフィーリアは驚きつつも迎え撃つ。

 火山の頂上で、二人の少女が怒りに身を任せてお互いを殴り合う。どちらも大切な人が傷ついて、互いの失敗を言い合い続ける。加速した怒りは二人から冷静さを失わせていた。

「……私は認めない! クリュウの事を一番わかっているのは私!」

「私だって認めません! クリュウ様に狩りの事を教えたのは私です! あの戦い方だって、私が教えた事です!」

 殴り合う少女二人の顔は両者共に拳を受けて幾分かはれ上がっている。だが、それでも怒りは収まらない。二人は全力を込めた拳を一斉に構えて、放つ。

「何してんのッ!?」

 その声に互いの拳が止まった。振り向くと、そこには上半身を起こしたクリュウがいた。だが、その表情はいつもの優しさはなく、瞳は鋭く二人を睨み付け激怒していた。

 二人はクリュウが気がついた事に安堵するも、すぐにその表情を見て背筋が凍りつく。

 クリュウは本気で怒っている。そう感じたからだ。

 二人はお互いから離れると、そっとクリュウに近寄る。

「クリュウ様、痛い所はありませんか?」

「……クリュウ、平気?」

 二人は声を平常心を装いながらも声を震わせながら問う。しかし、クリュウは二人の問いを無視する。

「何してたの?」

 クリュウの声は震えていた。しかしそれは二人が出した震えとは違う、怒りからくる震えであった。

「何してたかって訊いてるの」

 再び問うが、二人は黙ったままだ。

 言える訳がない。二人して冷静さを失って罵(ののし)り合い、殴り合いのケンカにまで発展してしまったなんて。言えば、彼が傷つく。

 二人は何も返さない。そんな二人をクリュウはしばし睨んでいたが、それは終わった。小さくため息を吐いたクリュウはそのまま起き上がる。少々足取りはまだフラつくが、問題はない。

 そしてそのまま一人で行こうとする。そんな彼に二人は慌てる。

「く、クリュウ様! どこへ行くんですか!?」

「……クリュウはまだ寝てなきゃダメ!」

 二人の必死な声に、クリュウは振り返った。その表情を見て、二人は絶句する。

 ――クリュウは無表情であった。あの喜怒哀楽が多い豊かな感情を持った彼が、無表情をしている。それは、二人には信じられなかった。

 何ら感情を窺えさせないクリュウは冷めた瞳で二人を見る。

「もういい。僕一人でやる」

「な、何を言ってるんですか! クリュウ様お一人でなんて無茶ですッ!」

「……私と連携を組もう。そうすれば――」

「どうせまたケンカするんでしょ?」

 クリュウのその諦めたような言葉に二人は言葉を失う。

 光を失った瞳が、二人を見詰める。

 そして、二人は気づいた。

 ――クリュウから、自分達への信頼が一切失われている事を。

「く、クリュウ様?」

「……クリュウ?」

 震える声で彼の名前を呼ぶが、クリュウは依然無表情を続ける。

「もういい。二人にはもう何も頼まない。自分だけでやる」

 そう言うと、クリュウは腰のオデッセイを抜き、歩き出し、エリアを抜けた。

 慌てて二人は後を追おうとした。だが、どちらも体が動かなかった。

 クリュウから信頼を失った。

 その絶望にも近い恐怖に、二人は何もできなかった。

 彼の背中を追う事はできない。

 二人はどちらからとなく涙を流した。

 そして、痛感した。

 人の絆というのは、こうも簡単に壊れ、失われるという事を……

 

 エリア6に戻ったクリュウだったが、すでにそこにはバサルモスはいなかった。奴が擬態したような怪しげな岩もない。

 仕方なく、クリュウは端に置いてある荷車に向かい、その取っ手を掴んで引っ張った。

 何もない空間を、クリュウは一人で歩く。

 その表情は無表情――ではなかった。

 悲しげにゆがみ、唇を強く噛んだ。

 自分のせいで、二人はあんなケンカをしたのだろう。

 二人が決別したのは自分のせい。自分が怪我をしたから二人はケンカしたのだ。

 全て、自分のせいだった。

 もう、二人にはこれ以上ケンカをしてほしくない。

 だったら、自分一人でやればいい。そんな単純な事にどうして気づかなかったのだろう。

 さっきのバサルモス戦で、奴は気をつけさえすればイャンクックよりも楽な相手とわかった。

 突進は見ていれば何とか避けられるし、先程のブレスもイャンクックの火炎液の強化型と思えばいい。問題はガス系だが、それはフィーリアの忠告どおり予備動作を見たらすぐ動けばいい。

 きっと大丈夫。

 まずは落とし穴と爆弾で奴の腹を吹き飛ばせばいい。まだ落とし穴はあと一個ある。

 クリュウはエリア7に向かった。サクラによればここはバサルモスの出現率がかなり高いらしい。

 細い道を抜けて到達すると、そこは中央に溶岩の河が流れている場所だった。ここがエリア7だ。すると、目の前の広場に横に長い白い岩が不自然にポツンとあった。不思議に思ってよく見ると、そこにはフィーリアが貫通弾LV2で空けた穴があった。間違いない――バサルモスだ。

 クリュウは急いで広場の端に荷車を置くと、落とし穴を掴む。そしてそのままバサルモスから少し離れた場所に円盤状の落とし穴を置き、ピンを抜く。すると、瞬く間に地面が融解して柔らかくなり、次にネットが開いて準備完了。

 次にクリュウはペイントボールを道具袋(ポーチ)から取り出すと、岩に擬態しているバサルモスに向かって投げ付けた。ペイントボールは見事に命中して鮮やかなピンク色が付着。すぐにあの独特の匂いが当たり一面に広がる。すると、地面が揺れだし、前方の岩が起き上がった――やはりバサルモスだ。

 バサルモスは辺りを見回す。すると、横に先程自分を変な穴に落とした小さな生き物がいた。瞳に殺意が込められる。

「グワオオオオオォォォォォッ!」

 バサルモスは大声を上げるとクリュウに向き直り、突進体勢に入った。だがそれはクリュウの思うツボであった。

 走り出したバサルモスはすぐに落とし穴を踏み抜き、下半身が地面に沈んだ。クリュウはすぐに荷車から大タル爆弾G二つを両手に持ち、小タル爆弾を右側の大タル爆弾Gの上に置いて走る。かなり重いが、踏ん張るしかない。

 そして、クリュウはバサルモスに近づくと慎重に奴の腹付近に二個の大タル爆弾Gと小タル爆弾を設置。小タル爆弾のピンを抜いて走った。耳を塞いで前方に倒れ込んだ刹那、すさまじい爆発が轟いた。爆風がクリュウの体を襲うが、伏せていたので飛ばされなかった。

 クリュウは起き上がると今度はシビレ罠を取り出してもがくバサルモスの少し横に設置する。これもピンを抜けばすぐさま電撃が迸る。そして先程と同じようにシビレ罠の後ろに身を置く。

 バサルモスはやっとの思いで落とし穴から脱出した。その瞬間、下にあった落とし穴はまるで最初からなかったかのように消えてしまった。環境に配慮した有機素材だからだ。

 バサルモスは怒りに体を震わせる。

「ゴアアアアアァァァァァッ!」

 そして再び突進体勢に入る。まだ幼竜だからか、その攻撃は単純過ぎるものだった。

 駆け出したバサルモスだが、それはすぐに止まる。

「ガアアアァァァッ!?」

 突如走った体中に痺れにバサルモスは悲鳴を上げる。そして、自らの体が動かない事に激怒する。だが、いくら怒っても動かないものは動かない。

 クリュウはその間に大タル爆弾と小タル爆弾を持って走る。シビレ罠は落とし穴よりも持続時間が短い。時間との勝負だ。

 すぐに再び腹の付近に大タル爆弾と小タル爆弾を設置して小タル爆弾のピンを抜いて走り出す。すぐに後ろから爆音が響いた。クリュウはそこで向き直ると剣を構える。そこにはシビレ罠から脱したバサルモスがいた。そしてその腹を見ると、先程まであった灰色の甲殻が壊れ、赤い柔らかそうな身が露になっていた――成功だ。

「グワアアアアアァァァァァッ!」

 バサルモスは口から黒い煙を吐きながら咆哮した。その声にクリュウは思わず耳を塞いでしまった。これはフルフルの時と同じ――バインドボイスッ!

(しまった……ッ!)

 バサルモスを声をしぼませながら突撃体勢に入った。刹那、クリュウを戒めていた恐怖が解かれた。だが、すでにバサルモスは地響きと共に突進して来ていた。罠や爆弾を使っていたせいで距離が短過ぎた。ガードする事もできず、クリュウは吹き飛ばされる。

 宙を飛んだクリュウはそのまま重力に捕らわれて落下。地面に叩き付けられた。すさまじい痛みがクリュウの体を襲う。

 痛みを堪えてゆっくりと起き上がると、真上にはバサルモスの腹が見えた。どうやら飛ばされて落ちた場所に奴が止まったらしい。踏まれなくて良かった。

 もしさっきフィーリアの撃った硬化弾がなければ、きっと今頃自分は死んでいたか激痛で動けなかっただろう。彼女には感謝しないといけない。しかし、今の状況は最悪だ。真上にバサルモスがいるのでは危険以外なにものでもない。クリュウは痛む体を必死に起こして逃げ出そうとする。が、

「グオオオォォォッ!」

 突如バサルモスは体を仰け反らせた。その動作に、クリュウは頭の中でフィーリアの忠告を思い出す。

「しまった……ッ!」

 次の瞬間、バサルモスの体から紫色の煙が噴き出した。反射的に息を止めるが、頭の中ではそれは無駄であるとわかっていた。そして、クリュウの体は紫色の煙に消えた……

 

 すさまじい爆音の連続を聞いたフィーリアとサクラは慌てて走り出していた。必死に走る二人からは先程までの悲しみなどは一切ない――今や二人はハンターであった。

 どんな状況でも突破してみせるという強い想いを持った、歴戦のハンターだ。

「サクラ様! 今はクリュウ様の援護にだけ全力を注ぎましょう!」

「……わかってる!」

 二人を突き動かす想いは同じ――クリュウを助けに行く事。

 今の二人は先程までケンカしていたケンカ相手ではない。同じ想いを持った同士――仲間であった。

 二人はエリア8から細い洞窟を抜けてエリア7に出た。するとそこは先程サクラが二人を待っていた岩壁の上であった。そして右を見ると、そこにはバサルモスが突進していた。その向かう先には――

「クリュウ様!」

「……クリュウ!」

 必死に逃げるクリュウの姿があった。

 クリュウはなんとかバサルモスの突進を避ける事ができた。しかし、様子がおかしい。クリュウの動きが明らかに鈍い。フィーリアは援護の為に背中のヴァルキリーブレイズを構えてスコープを覗く。すると、クリュウの顔色が明らかに真っ青だという事に気づいた。

「た、大変です! クリュウ様はきっと毒状態なんです!」

「……ッ!? わかった。私がバサルモスを引き付ける。その間にクリュウの救出をお願い!」

「わかりました!」

 サクラは構わずその高い岩壁を飛び降りた。フィーリアはその間に弾を装填する。そしてバサルモスに突貫するサクラを一瞥して膝を着いて苦しそうにしているクリュウに照準を合わせて引き金を引いた。

 

「……クリュウッ!」

 その声に顔を上げると、サクラがバサルモスに向かって突進して来ていた。

「……サクラ……?」

 意識がもうろうとして来た。

 苦しい。まるで体中から力が抜けるように力が入らなくなっている。そして、体中に鈍い痛みが。これが毒なのだ。

 すでにバサルモスの突進の直撃を受け、さらに回復する暇もなく毒ガスを受けたクリュウの体力は底を尽き掛けていた。

 もう、足が動かない。

(もう、ダメだ……)

 そう思った刹那、体に連続して小さな衝撃が襲った。続いて力が戻って来る。それはあっという間にクリュウの体力を十分過ぎるまでに戻った。

 慌てて起き上がると、サクラがバサルモスの腹に向かって鋭い一撃を叩き込んでいた。

 クリュウが命懸けで壊した腹の内側の柔らかい肉に刺さった剣。さらに剣の付加属性でその肉を焼く。その痛みにバサルモスは悲鳴を上げる。そしてそのまま横へ斬り裂く。

「グオワアアアァァァッ!」

 バサルモスの肉が真横に裂け、大量の真っ赤な血が溢れ出る。

 サクラはバサルモスの下から脱出し、そのまま走った。それはクリュウとは反対方向。バサルモスも彼女を追い掛けて反対方向に向かって突進した。

 クリュウはそんなサクラが作ってくれた隙に慌ててポーチの中から解毒薬を取り出して飲み干した。すると、今まで体を戒めていた痛みが消える。

「クリュウ様!」

 そこへ駆け寄って来たのはフィーリアだ。今にも泣きそうな顔をした彼女は無事なクリュウの姿を見て嬉しそうに笑みを浮かべた。

「良かったぁ。本当に良かったぁ」

「フィーリア……何で……」

 驚くクリュウにフィーリアは怒ったような顔をする。だが、それは結構まじめに怒っているのだが、どうしてかかわいく見えてしまう。

「私達はチームです! 仲間を助けるのに理由なんてありません!」

 その言葉だけで、クリュウは十分だった。刹那、すさまじい閃光が横から放たれた。きっとサクラが閃光玉を投げたのだろう。振り向くと、バサルモスがめちゃくちゃに尻尾を振り回していた。サクラはその下を潜り抜けてこちらに向かって走って来る。

「……今のうちに!」

 サクラの声にうなずき、二人はエリア6に向かって走った。その後ろからサクラが荷車を引っ張って追いかけて来た。

 細い洞窟へ逃げ込むと後ろからバサルモスの怒号が聞こえ、クリュウは助かったという実感に安堵の息を漏らした。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。