モンスターハンター ~恋姫狩人物語~   作:黒鉄大和

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第107話 燃ゆる都と交差する二つの物語

 それはまさに青天の霹靂(へきれき)であった。

 まだ夜は明け切っていない空は朝焼けと星空が入れ替わる直前のわずかな時を刻んでいる。日が上がれば朝が来て一日が始まる。この世界が生まれて以来何万回、何千万、何億。数える事でもできないだけの回数繰り返してきた《いつもの事》だ。

 いつもと変わらない日常の始まりであり、これからもずっとそれが続く。誰もがそんな当然の事を疑いもせずに受け入れ、日々を過ごしている。

 だが、人々は知らない。その当然というのが、何万分の一、何億分の一の割合が複雑に組み合わさって誕生している奇跡だという事に。そしてその奇跡は、ほんの少し歯車が狂っただけでも非日常へと変わり果てる。

 それが、世界の運命であった……

 

 中継都市ヴィルマ。大都市と大都市を結ぶ交易ルートの中間地点にある中規模都市。様々な物がここを経由し、大陸を縦横断して東西南北様々な街や村へと物資が送られる。ここは交通の要所であり、大陸の物流の一角を担う重要拠点だ。

 朝になればいつもと変わらぬ様々な人や物が行き交う賑やかな街の一日が始まる。誰もがそう信じ、疑う事なく朝を待っていた。

 ――だが、彼らに降り注いだの恵みの光ではなく、災厄の業火だった。

 わずか数分で街は一面炎に包まれた。街の各地で爆発が起き、火柱がようやく明るくなり始めた空へ立ち上り、黒煙が空を黒く染め上げていく。

 街は一瞬で地獄絵図と化した。

 建物が崩れ、道は砕け、それらは無機質な瓦礫(がれき)へと変貌していく。悲鳴や怒号が飛び交い、そして爆音の中に消える。

 親からはぐれた子供の声が響く。だが、誰もその子に手を差し伸べない。人々は狂ったように逃げまどい、子供などには見向きもしない。

 逃げる人々の上に建物が崩れ、下敷きになる。炎が荒れ狂って逃げまどう人々に襲いかかる。

 一面の炎の中、逃げ惑う民衆を見下ろす《王》の姿があった。王は無様に逃げ惑う人々を鬱陶しげに見つめ、その巨大な翼を羽ばたかせる。風に乗り、翼から放たれたのは無数の炎鱗。一面を覆う炎色の煌めきはまるで炎の雪を思わせる。一見すると、それはとても美しく幻想的な光景だ。だが次の瞬間、それは再び地獄となる。

 王はその立派な牙を打ち鳴らした。その瞬間に炸裂した火花が炎の雪に触れた途端、激しい爆発が吹き荒れた。それらは無数に辺り一帯に散らばっている炎鱗に次々に誘爆し、一瞬にして辺り一面を吹き飛ばす大爆発となる。

 激しい爆音と爆風、爆炎が吹き荒れ、原型を留めていた建物を粉砕し、瓦礫を粉々にし、焼き尽くし、そこにいた人々を巻き込む。

 それは一瞬の事であった。視界が晴れた時には王を中心に全てがなくなっていた。もはやそこに街の一部があったとは思えないほど、一面の焼け野原。その中心に佇む王は、その圧倒的な力を見せつけるかのように静かに君臨していた。

 そして、自分こそこの世界の頂点だと言いたげに己が声を轟かせる。

「グオオオオオォォォォォッ!」

 

 中継都市ヴィルマに炎王龍テオ・テスカトルが現れ街が壊滅的打撃を受けたという知らせがドンドルマに伝わったのは、それからしばらく経った頃の事であった。

 

 大都市ドンドルマ。ここはハンターの都であり、この大陸の中枢とも言っていい独立都市である。シュレイド王国が分裂する以前からハンターズギルドは王国と敵対しながらこのドンドルマを拠点に様々な街や村に支部を建設してその勢力を拡大していた。シュレイド王国が東西に分裂してからは、ハンターズギルドに対抗できる勢力はごくわずかになった。

 そんな世界中に散っているハンターを統括するのが、ドンドルマにあるハンターズギルド中央本部である。ここでは支部や古龍観測所など様々な場所から情報を集め、その時その時で様々な決断をする場所。そして今、その会議室では今まさにある決定の為に会議が紛糾していた。

 

「今すぐにでも支援隊を出すべきですッ!」

 テーブルを叩きながら力説するのは、この幹部会会議で唯一幹部ではないのに参加を許されているギルド嬢を束ねるギルド嬢長、ライザ・フリーシアであった。

 ライザは苛立ちながら今まで何度言ったかわからない言葉を再び繰り返す。だが、自分を見詰める他の幹部達の視線は冷たい。頭に血が軽く上っているライザを、隣にいた初老の幹部がなだめる。

「落ち着きなさいライザちゃん。ワシらは何も支援隊を出さんと言っている訳ではない。ただ早急な出撃は少し待ってくれと言っているんじゃ」

 いつもは比較的味方でいてくれるのに、今日に限ってこの幹部はライザの意見には反対していた。いつもは味方なのに、という事実がさらにライザを苛立たせる。

「何をぐずぐずしている必要があるのですかッ! 今この間にもヴィルマの民衆は苦しんでいるッ! ヴィルマは我がドンドルマにおいても物流の大拠点ッ! 手を差し伸べるのに何の不満もないでしょうッ!?」

「やかましい小娘じゃ」

 そう言ったのはライザの対面に座る白髪一色の老人。この幹部会で実質大長老に続くナンバー2の男だ。そして、ことごとくライザの意見に反対を唱える彼女が最も嫌う存在だ。

「良いか小娘。我がドンドルマは一ヶ月前に火竜の番に襲われて被害を受けたカティールに支援隊を送っておる。その時、貯蓄していた支援物資のほぼ全てを使い切ってしまったのじゃ。今現在、支援物資は足りない。それを今から集めて送るから時間が掛かると言っておるんじゃ。そんな事もわからんのか?」

 ライザを常識を知らない小娘だと思っている彼らしい言い方だ。だが、言い方こそひどいがその内容は納得できるものだ。支援物資が足りないから支援隊を送るのを少し遅らせる。それは間違いではない。だが、ライザは納得しない。

「わずか量でもすぐに送るべきですッ! 水と携帯食料と医療品、最低限これだけでも今すぐに送るべきですッ! 災害において水と食料、そして怪我人に必要な医療品は迅速な対応を迫られますッ!」

「じゃから、何度も言っておるだろう? その物資が足りないと言っているんじゃ」

「だから少なくてもいいから早急に送れって言ってるんでしょッ!?」

 いつもの柔らかな笑顔が消え、憤怒で怒鳴り散らすライザの言葉を幹部達はまるで聞き分けのない子供を見るような目で見詰めて取り合おうとしない。結局、幹部ではないライザの意見など参考にもしないという事だ。例え幹部だったとしても、彼女が危険人物だと思われている以上味方は少ないだろう。

 ライザは聞き分けのない棺桶に片足を突っ込んだ老いぼれどもを睨みつけながら、憎々しげに言葉を吐き出す。

「そんなに、ヴィルマが滅びる事をお望みですか?」

 ドンドルマがヴィルマの存在を多少なりとも快くは思ってはいない事はわかっていた。ヴィルマは物流の大拠点である為、ドンドルマに入る物資にもヴィルマ経由は少なくない。だがヴィルマはそこで少ないながらも物資に対して関税を義務づけている。これが厄介なのだ。

 ドンドルマはヴィルマ経由の物資を大量に購入している。わずかな関税も積み重ねれば大金の流出になる。ギルド幹部はこの関税に対して再三、再四ヴィルマに撤廃を要求したが、ヴィルマは交易都市の為にこれを拒否。表向きには良好な関係の両者だが、その裏では対立も激しかった。

 今回の災害でヴィルマが崩壊すれば物流の流れは変化する。そうなればドンドルマに入る物資に関税が掛かる事もなく、ギルドとしては面倒なヴィルマが消えた上に関税まで撤廃される。まさに万々歳な状態だ。

「ライザちゃん、ワシらは別にそんな事を思ってはおらんよ」

 隣の優しいおじいちゃんという感じの幹部の言葉に、ライザは少しだけ冷静を取り戻す。例えここにいる幹部連中全員がそう思っていたとしても、この男だけは違う。それだけはわかっていた。伊達に何年も一緒に連携して幹部達と戦って来た訳ではない。

「だったらどうして早急な支援隊の出撃を反対するのですか?」

 ライザの問いに対し、初老の男性は小さく首を振った。

「ワシだって送れるものなら送りたいのじゃ。しかし、相手はあの炎王龍テオ・テスカトル。情報によると上位クラスに位置づけられるとはいえ、並みのハンターじゃ返り討ちにされる。そんな危険な場所に裸の支援隊を送りつけるのは自殺行為に等しい。ワシらは支援隊の命も預かっている。軽率な判断はできんのじゃ」

 初老の男の諭すような言い方に対し、ライザはさらに冷静になった。確かに、テオ・テスカトル相手に支援隊を送っても犠牲が増えるだけだ。まずはテオ・テスカトルを倒す、もしくは撃退する事が優先される。

「あの街には《灰狼》がいる。それにハンターの数も他の街に比べればいるだろう? 少しの間なら堪えられる。もしかしたら撃退するかもしれん。今は時が来るのを待つだけだ」

 当然な事を言わせるなと言いたげな対面の男の言葉に、ライザは再び怒りの炎を燃え上がらせる。

 彼の言う《灰狼》とは一人のハンターを指し示している。実力があり、以前から何度もギルドハンターに入隊する事を勧めてきた男だ。だが、例え彼がいたとしてもテオ・テスカトル相手は厳しい。それだけ古龍とは恐ろしい存在なのだ。

 ライザはやってられないと言いたげにテーブルをバンッと叩いた。その激しい音に幹部達が驚きどよめく。そんな使えないクソジジィ達を睨みつけ、ライザは「失礼しますッ」と踵を返す。

「ら、ライザちゃんッ! どこへ行くのじゃッ!?」

「ギルドが動かないなら私一人で動かします。精鋭のハンターを収集し、同時に支援隊も送ります。私の独断で」

「き、貴様ッ! ワシらの決定を無視するのかッ! それはギルドに対する反逆と取っても問題ないなッ!?」

「お好きにどうぞ。ただ、私はギルドの花であり看板であるギルド嬢を束ねるギルド嬢長だけではなく、数千人のギルド労働者を統括する労働組合の組員だという事もお忘れなく」

 ライザの言葉に男は憎々しげにライザを睨み付ける。その目には明確なる敵意が宿っていた。

「ワシらを脅すつもりか?」

「私にそんな大それた力はありませんよ。ただ私の知っている幹部の皆様の秘密を大々的に暴露し、労働組合を動かして幹部会の不信任案を強行採決。幹部会を解散させ、選挙し、ここにいる方々の半数ほどをただの老いぼれにするだけです」

 ライザと男との間で激しい睨み合いが起きる。そのままライザが部屋を飛び出していくような雰囲気の中、「ほっほっほ」と場の空気にあまりにも似つかない笑い声が響いた。皆の視線は、一斉に笑い声を上げた方へ向く。そこにいたのはキセルを吹かせた小さな老人であった。

「ギルドマスター……」

 誰かが言った。

 そう、彼こそのこのギルドの内政を統括するギルドの副長、ギルドマスターであった。

 ギルドマスターはしばし笑うと、うむうむと何度かうなずいた。

「……確かに、事は一刻を争うな。良し決めたッ。ライザ、すぐに精鋭のハンターを集めてヴィルマに派遣。同時に馬を使った迅速支援隊を編成して派遣。さらに竜車隊でドンドルマにある残存支援物資を全てヴィルマへと持っていけ」

 ギルドマスターの決断に、幹部達はどよめく。そんな中、ライザはパァッと笑顔を華やかせると「ありがとうございますッ!」と深々と頭を下げて部屋を飛び出した。

 まだどよめきが止まらない部屋の中、ギルドマスターの笑い声は良く響いた。

 

 ギルド内部の通路を、ライザは全速力で翔けていた。その隣を会議室の前で控えていた彼女の腹心のギルド嬢がヒィヒィ言いながら走っている。

「ら、ライザさんッ! それで精鋭のハンターは誰を収集するんですかッ!? 剣聖ソードラント? 黒き稲妻? 堕天使? もしかして雷帝覇王?」

 女性が上げたのはどれも称号持ちや準称号持ちと言ったハンターズギルドが誇る最強のハンター達ばかり。だがライザはそれら全てに首を横に振った。

「違うわ。第一、剣聖ソードラントに任せれば街が本当に崩壊しかねないし、残る面子はみんな別依頼で大陸中に散っている」

「じゃあ、一体誰を?」

「――そろそろ帰ってくる頃だから、あの子達に任せるわ」

「あの子達って……まさか――へぷぅッ!?」

 走っている事を忘れていたのか、ギルド嬢はバランスを崩してその場に転倒した。そんな腹心を置いて、ライザは大衆酒場に向かって走り続ける。そんな彼女の中では、精鋭と呼ばれる二人の人物の顔が浮かんでいた。

 後でまたあの老いぼれが文句を言うかもしれないが、知ったこっちゃない。いずれあいつらはこの手で引きずり下ろす。

 大衆酒場に翔け戻ったまさにその時、酒場の中に二人の人物が入って来た。それを見て、ライザはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 そして、いつもの営業スマイルを顔に貼り付け、二人を向かえる。

「お帰りなさい。帰ってきて早々悪いけど古龍狩って来てくれないかしら?」

 

 ギルドの裏手にある依頼を受けたハンターに貸し出される竜車が集結するターミナルに、一台の竜車が到着した。運転席に座って手綱を引いて竜車を引くアプトノスを停止させたのはリオソウルシリーズを纏った純白に近い銀色の長い髪をポニーテールに結った大人びた少女――シルフィード・エア。

「着いたぞ」

 後ろに向かってシルフィードが言うと、ドアが開いて三人の少年少女が降りて来た。

「ふぅ、やっぱり火山は遠いねぇ」

 うーんと体を伸ばしながらそう言ったのはレウスシリーズを纏った若葉色の髪の少年――クリュウ・ルナリーフ。

「そうですねぇ。ずっと座ってたので腰が痛いですよ」

 苦笑しながら腰をとんとんと叩くのはリオハートシリーズを纏った長い金髪の少女――フィーリア・レヴェリ。

「……私はクリュウと一緒ならどんな苦も耐えられる」

 恥ずかしげもなく堂々と言い張るのは凛シリーズを纏った長く艶やかな黒髪を流した少女――サクラ・ハルカゼ。

 ドンドルマから北に離れた辺境の小さな村、イージス村に所属するハンター達である。それも四人中三人(女子陣のみ)が世間に差はあれど浸透した二つ名を持つ実力者達。桜花姫(フィーリア)、隻眼の人形姫(サクラ)、蒼銀の烈風(シルフィード)と言えばドンドルマでは実力はもちろんその美貌もあってそれなりに有名人だったりする。

 一方、そんな凄腕の美少女達に囲まれるという羨ましい事この上ない状況にいるクリュウはというと、特に二つ名がある訳でもないし実力だって三人には劣る。この年でレウスシリーズを纏っているというのはすごい事なのだが、周りの面子が面子だけに霞んでしまう。ぶっちゃけ、かなり凡に位置する実力のハンターだ。

 なぜこんなパッと見女の子にも見えなくもない感じの頼りなさげな少年にこれほどの猛者(おとめ)達が集まっているかと言うと――

「あぁッ! どさくさに紛れて何クリュウ様の腕に抱きついてるんですかッ! 抜け駆けは禁止ですよサクラ様ッ!」

「……先に抜け駆けしたのは貴様。昨日の夜、寝ているクリュウの手を握って寝てたのは知っている。これで相子」

「ッ!? き、気づいてたんですかッ!?」

「……ちなみにそれに気づいて貴様の手を踏みつけたのは私」

「どうりで朝から右手がヒリヒリすると思ったらサクラ様の仕業だったんですかッ!?」

「えっと、僕の知らない間に何があったの?」

「……」(←クリュウの手を恋しげに見詰めるシルフィード)

 ――言わなくても、バレバレなくらいわかりやすい。ちなみにクリュウ本人はそんな三人の想いなど微塵も気づいていない史上最強の鈍感少年である。

 そんないつも桃色の空気を放ちまくる一行は竜車を降り、依頼達成の報告をしに大衆酒場へと向かう。すると、前から別のハンターが二人こちらに向かって来た。酒場の裏手でありハンターがドンドルマを出立する際は必ず使う場所なので他のハンターとすれ違う事は別に珍しい事ではないのだが、クリュウは何となくその二人が気になった。銀色の鎧を着た青年と金色の鎧を着た少女。詳しい事はわからないが、どちらもリオレウス及びリオレイアの希少種から剥ぎ取れる素材を使った防具だという事はわかった。どちらも強力な飛竜であり、それの素材を使った防具を纏う二人はそれに見合っただけの実力を持つのだろう。それこそ、今自分の前を歩くシルフィードよりもずっと上の実力者だ。

 強力であり色合い的にも目立つ防具だけではない。クリュウが気になったのはその纏う雰囲気であった。よくはわからないが、何となく纏う雰囲気が普通の人とは違う、そんな感じがしたのだ。

 

「アホか、さっさと買いに行け!」

「はぃぃぃぃ!」

 

 何やら話していた二人だったが、突然青年の方が怒鳴った。その怒気に少女は情けない声を上げて全速力で元来た道を駆けて行く。ケンカでもしたのだろうか? 一人残された青年の方は深いため息を漏らす。

 ――何だろう。どこか自分と同じ苦労を感じさせる背中であった。

「クリュウ?」

 クリュウはシルフィードを追い抜いて小走りでその青年の方へ近づいた。ただ何となく、頭を抱えた青年が気になったのだ。もしかしたら気分でも悪いのかもしれない。そんな事を思いながらクリュウはそっと青年に近づく。

「あ、あの……」

「……早くしろあのボケがぁッ!」

「ひぃッ!?」

 小さく声を掛けようとした途端、青年は突然烈火の如き怒号を放った。至近距離でそれを受ける形となったクリュウは驚いて尻餅を着いてしまった。その瞬間、クリュウの単独行動を見守っていた少女三人の群れの中から一人の夜叉が飛び出した。姿勢を低くして空気抵抗を減らしつつ、必要最低限な歩幅と歩数で一気に彼我の距離を音もなく詰め、背負っている鬼神斬破刀を引き抜き――

「……ハンターが人に武器使うのは御法度だぞ、気を付けろ」

「……ッ!?」

 気配を消しつつ完全に死角を狙って回り込んでの奇襲だったはず。なのに、サクラが武器を引き抜く寸前で青年は振り向きざまに腰に下げた剥ぎ取りナイフを素早く引き抜いてサクラの喉元に突きつけた。

 サクラは予想だにしていなかった反撃に眼帯に隠れていない右目を丸くする。だがしかしすぐにその瞳を刃物のように鋭くし、ナイフを突きつけてくる青年を睨み付ける。

「……御法度も何も関係無い。貴様はクリュウを驚かせた」

「クリュウ?」

 サクラの言葉に青年は疑問符を浮かべながら少し前に立ち上がってサクラと青年の互いに人間離れしたやり取りを目を丸くして見詰めていたクリュウの方を見る。

 クリュウはその視線に対し緊張したように縮こまると、すぐさま無礼極まりない突然の奇襲攻撃を敢行したサクラの方に慌てて駆け寄る。

「さ、サクラッ!? いきなり何してるんだよッ!?」

「……クリュウを驚かせた。これはどんな罪よりも重い重罪、万死に値する」

「その程度でッ!?」

「……十分な理由」

「いやいやいや、絶対におかしいからねッ!? 今のは冗談抜きで下手したら本当にこの人死んでたからねッ!?」

「……むしろ今生きている事に感謝してほしいくらい」

 サクラはあまりにも常識知らずだとは前々から思ってはいたが、これでは完全に常識知らずではなく常識外れである。仲間が驚かされたら驚かした相手を斬り殺す。何という思考回路を持っているのだろうか。

 クリュウは呆れつつもそんな無茶苦茶で迷惑極まりない行動を取ったサクラを叱りつける。すると、さすがのサクラも怒るクリュウ相手には反撃する気も力もないのか、むしろクリュウに怒られた事がものすごいダメージになったのか、しゅんとなって抜き掛けていた太刀から手を離す。それを見て、青年の方もゆっくりとナイフを下ろした。

 サクラに納刀させてほっと一息ついたクリュウはすぐに青年の方に向き直って慌てて深々と頭を下げる。

「ほんっっっとうにすいませんッ!」

「……いや、なんか俺も君を驚かせたみたいで悪かった」

「……そうだ、貴様が悪い」

「さ、サクラァ!」

 どうやらサクラ、クリュウを驚かせたという理由だけで怒っている訳ではないようだ。おそらく、今現在一番怒っているのはきっと彼のせいでクリュウに怒られたという理不尽な逆恨み。その証拠に、先程よりも瞳が鋭くなっている。

 クリュウはそんなサクラを見て疲れたようにため息を漏らす。その時、今まで傍観の構えでいたフィーリアとシルフィードが歩み寄って来た。

「……クリュウ様、一体どうなされたのですか?」

「公共の往来で何をやってるのだお前達は……」

 フィーリアは純粋にクリュウと、ついでにサクラの心配をしている様子。一方のシルフィードはだいたいの流れをわかっているのか、呆れつつも相変わらずな二人を見て苦笑していた。すると、ふと青年の方を向いたシルフィードと青年の目が合った。その瞬間、青年の目が少しばかり大きく見開かれた。

「おっ、君は確か……剣聖ソードラントのシルフィードさん、だな?」

 どうやら、青年はシルフィードの事を知っているらしい。そのやり取りを見て驚くクリュウであったが、すぐに苦笑を浮かべた。

 自分と違い、シルフィードは実力もあり、容姿端麗、しかも色々と嫌な噂しか聞かないが最強と名高い狩猟集団である剣聖ソードラントに所属していた経歴もある彼女はそれなりに有名人だ。知っている人がいる事は別段驚く事でもないのだ。

 一方、自分を知っている青年を見てシルフィードは頭に疑問符を浮かべていた。

「確かに私はシルフィードだが、どこかで貴方にお会いしたかな?」

「あぁいや、覚えてないなら構わない。それよりも何故この子達といる? ソードラント見習いか?」

 青年は純粋な疑問を訊いただけなのだろう。その言葉や瞳には皮肉を言うような悪意などは感じられなかった。しかし、見習いという扱いを受けて苦笑するクリュウに対し、サクラはひどくご機嫌な斜めになった様子。再び青年を鋭く睨みつけた。

 一方のシルフィードもまたクリュウ達を見習い扱いされた事が気に入らなかったらしく、若干不機嫌そうな表情を浮かべて小さく首を横に振った。

「……私はあれから抜けたのだ。今は彼らがチームメイトさ」

「抜けた、ソードラントから? へぇ、面白い事する子もいたもんだ」

 それもまた純粋な感嘆の声であった。剣聖ソードラントはどれも性格破綻者という烙印を押された一般常識からかけ離れた存在だが、実力こそ大陸最強クラスの猛者達だ。その強さに憧れる者は今でも少なくはない。シルフィードはそんな者達が憧れている立場を自ら放棄した――彼らとは、根本的に理念や思想が合わなかったのだ。

 そこで初めて今まで黙っていたクリュウが青年に声を掛けた。

「えっと……シルフィと知り合いなんですか?」

「シルフィ? あぁシルフィードさんとか。まぁ一応顔見知りって事になるんだが、彼女は覚えていないらしい。まぁあの時と今とじゃ装備してる防具も武器も違うからな、しゃあねぇさ」

 青年はそう言うと苦笑を浮かべた。クリュウはそんな彼の言葉の端々から彼がいい人だという事を感じ取る。一応、というフォローを入れておけば、顔を覚えていないシルフィードが負う罪悪感が軽減される。彼がそれを狙って言ったかどうかはわからないが、意識でも無意識でもそういう配慮ができる人は悪い人ではない。そう判断するとクリュウも少しだけ緊張を緩め、改めて青年の防具を見る。間近で見ると改めて彼の防具の質の高さに驚かされる。鍛冶職人ではない為具体的な性能はわからないが、ハンターだからこそ使われている素材のすごさは誰よりもわかる。

「へぇ〜。という事はやっぱり凄いハンターなんですよね? 防具を見たら分かります」

 はにかみながら言うと、青年は「んな大層なもんでもないさ」と笑い飛ばす。自分の実力や武具を自慢するでもないその潔い姿は、改めてクリュウに好印象を与えた。一方の青年もシルフィードの方を一瞥し、クリュウの方に向き直る。

「ところで君達、名前は? 蒼銀の烈風がソードラントを捨ててチームに選んだんだ、興味深い」

 青年は純粋な好奇心でそう訊いて来た。クリュウは照れたように頬を掻きながら、小さくはにかむ。

「クリュウ、クリュウ・ルナリーフです。ほら、皆も!」

 そう名乗り、クリュウはすぐに振り返って皆にも促す。だから、クリュウが名乗った直後「ルナリーフ……ッ!?」と青年が彼の苗字の部分で驚いた事に気づかなかった。

 クリュウの言葉に対し、サクラは相変わらず敵意剥き出しで「……人に名乗らせるには先ず自分から名乗るべき」と冷たい言い方で返す。そんな無礼極まりないサクラにクリュウは「サクラァ……!」と叫びながら泣きそうになる。本当に、彼女の将来が心配で仕方がない。

 一方、青年の方はサクラの言葉に対しそれはそうだとばかりに小さく笑った。

「そうだ、確かに正論だ。俺はジン、ジン・フォルクス。見た通りしがないハンターだ。さて、俺は名乗った、君達の名を改めて訊こう」

 青年――ジンは自らを名乗り終え、再度クリュウ達に向き直る。そんな彼の律儀な態度に対し、フィーリアは礼儀には礼儀で返すべく恭しく一礼する。

「私はフィーリア・レヴェリと言います。よろしくお願いします」

 そう名乗り、フィーリアは屈託のない天使のような微笑を浮かべる。

 人当たりのいいフィーリアが名乗ると、クリュウがサクラにも促す。サクラはものすごく不服そうではあったが、クリュウが言った事を無視する事もできず、渋々という感じで名乗る。

「……サクラ・ハルカゼ」

「成程な、《桜花姫》に《隻眼の人形姫》、シルフィードさんが選ぶだけの事はあるな」

 シルフィードと同じく、フィーリアとサクラもこのドンドルマでは多少なりとも名が知られているだけあってジンも納得した様子。そんなやり取りを見て、自分だけが無名だなぁなんてちょっぴり傷つくクリュウ。

「つかぬことを訊くが、クリュウ君、君はどこ出身だ?」

「え?」

 完全に自分は話題から外れていると思っていたクリュウは突然自分に話題が振られて驚いた。少し間を空けてから「えっと……」とどう説明したもんか考える。

「イージス村、って言っても分からないですよね。辺境の田舎です」

 イージス村は本当に辺境にある小さな村だ。村長には悪いが、知名度はゼロに等しいしこれと言った特産物もない。どこにでもある、普通の片田舎の村だ。

「そうか? 旨い飯屋があると聞くが」

 どうやら、辺境の小さな村でも誇れる有名なものがあったらしい。エレナの酒場は通の間では有名とは聞いていたが、こうして実際に知っている人を都会で発見すると驚きと共に嬉しさがこみ上げて来る。別段、酒場に貢献した事はないが。

「……フィーリアちゃん、名字はレヴェリと言ったね? 今俺がイメージしてるハンターは、君の姉でいいのかな?」

「はい……多分そうです」

 今度はフィーリアに話が振られたのだが、どうやら彼女の姉の話らしい。以前、彼女には姉が二人いると聞いてはいたが、そのうちの一人の事らしい。しかしなぜジンは苦笑し、それに答えるフィーリアもまた何とも言えない苦笑を浮かべているのだろうか。

「……あの人の妹がこんなに礼儀正しい子とは、世界の神秘だな」

「あははは……」

フィーリアは何とも言えないような表情を浮かべながら乾いた笑い声を上げる。フィーリアの姉については存在自体は知ってはいるが詳しくは知らないが、話を聞く限りどうやら豪快な性格をしているらしい。そりゃ確かに豪快とは程遠い位置にいるフィーリアとの関連性に驚くのは当然だ。

「姉から常々話は聞いています、フォルクス様。貴方が――」

「ストップ。それは言わなくて結構だ、目立つのは嫌いでね」

 すっごいハンターに出会えて嬉しそうに話すフィーリアの言葉を、ジンはそう制した。止められたフィーリアはきょとんとしているが、本人が言う通り目立つのが嫌いなのだろう。という事は、武具の性能から見ても本当にすごい有名人なのだろうか。残念ながら片田舎のイージス村にはそんな情報はなかなか入らないからわからないが。

「へぇ、フィーリアってジンさんと知り合いなんだ!」

「いえ、姉の知り合いですよ」

 苦笑しながらフィーリアはそう言った。確かに、最初に互いに名を明かしていたのだから知り合いという事はないだろう。ただ、フィーリアの姉が知り合いという事で話だけは聞いていたという所か。世の中って、結構狭いのだと改めて思うクリュウであった。

 その時、今までずっと黙っていたサクラが輪の中に入って来た。相変わらずジンに対して敵意むき出しだが、その瞳が若干、若干だが、本当に若干だが尊敬の念が浮かんでいた。

「……それよりも、貴様よく私の攻撃を躱(かわ)したな」

 サクラは本当に音もなく忍び寄った。だが、ジンはそれを最初から気づいていて反撃して来た。サクラとしてはそれがどうにも腑に落ちないのだろう――何か、負けた気がするから。

 すると、ジンは呆れたように「あれだけ殺気が込められた攻撃なら誰でも気付くぞ」と苦言を呈す。

 サクラはムッとしたように再び鬼神斬破刀の柄を握った。すると、ジンははぁと疲れたようなため息を零した。

 ――刹那、ジンの姿が消えた。違う、目では追えないような速度で加速して飛び出したのだ。サクラは突然のジンの動きに一瞬反応が遅れて慌てて鬼神斬破刀を抜こうとするが、刀身が五センチ程顔を出した頃にはすでにジンはサクラの背後に立っていた。

「……何お前も武器構えてんだ阿呆」

 あまりの速さに目が追いつけず、四人が慌てて振り返った時にはジンはサクラの背後で弓を構える金色の防具を纏った少女の頭を思いっきりぶっ叩いていた。

「うみゃ!? だってだって、凄いこの子ジン睨んでたし!」

「そんな理由で気配を殺して弓構えて近付いてきたのか?」

 呆れるジンに対し、少女の方は涙目になりながらむぅと不満そうな表情を浮かべながら叩かれた頭を弓を持っていない方の手でさする。今、結構すごい音がしたが、これが二人のスキンシップだとしたらかなり荒々しい。

 一方、そんな二人のやりとり以前にジンの常人を逸脱した身体能力を目の前で見た四人は目を丸くしていた。特にクリュウなんてシルフィードやサクラが相当な実力者だと思っていたから、それ以上の動きをする者を見た事がなかったのだ。逆に実力はあるが世の中には自分より強い者など大勢いると思っている女子陣も、さすがにジンの動きには驚きを隠せなかった。

 振り返ったジンはそんな四人の反応を見て苦笑を浮かべる。

「いやすまない、こいつは一応俺の相棒(パートナー)のシィ・シャネルだ。ほら、ちゃんと挨拶する!」

 ジンは少女――シィをそう紹介した。するとシィはプンスカと怒り始める。

「一応じゃないもん! 生まれてからずっと一緒だもん!」

「いいから挨拶、シルフィードさんは覚えているか?」

「……う~ん、誰? 痛ぁッ!? 挨拶? うぅ……こんにちは」

 調子に乗るシィにジンは容赦なく頭を何度もぶっ叩く。ヘルムを被っているからとはいえ、その光景は激しいとしか言いようがない。若干涙目になっているが、優秀な防具を被っていてもそこまで痛いのだろうか。

 ジンに怒られる形でペコリと頭を垂れるシィ。するとクリュウは慌てて「あ、こちらこそ」と頭を下げる。そんなクリュウと自分の相棒を見比べてジンは小さくため息を漏らす。

「……で、買ってきたのか?」

 ジンが問うと、シィはオフコースとばかりに元気満々にビシッと親指を立てる。

「勿論! はいこれジンの分。元気ドリンコ少なくなってきてたでしょ?」

「……何故俺の持っている物はそんなに詳しい?」

 呆れ半分、感心半分と言う感じでジンはつぶやく。どうやらシィという少女は自分の事は恐ろしくうっかりしているが、相棒のジンの事になると抜け目がないらしい。そういう点では若干であるがフィーリアに似ている。それ以外では年齢や髪の色、防具の系統も二人は良く似ていた――まぁ、性格はまるで逆だが。

「さてと、クリュウ君達もクエストか?」

 いつもの事なのか、ジンは大して気にも留めずにふと思い出したように尋ねる。クリュウはそんなジンの問い掛けに対し苦笑しながら答える。

「いえ、僕達は村に帰るところですよ――帰ったらまた飛び蹴りが待ってますが」

 ジンは彼の言う言葉の意味がわからずに首を傾げる――まぁ文字通りの意味なのだが。ここ最近はセレス密林も安定しており、こうして遠出して稼がないと生計が立てられないという状況にある。その為に村を空ける時間も多く、一人(最近はツバメやリリアと一緒だが)で留守番している身の彼女に寂しい思いをさせているという後ろめたさもある。本人に言えば有無を言わせぬ跳び蹴りで粉砕されるが、だからこそなるべく早く帰るようクリュウとしても努力はしているのだ。

 ある意味で、蹴られるだけで済むなら仕方がない事だという諦めもある。

 あはははと乾いた笑いをするクリュウに、ススッとサクラが忍び寄って彼の腕にしがみ付く。

「……大丈夫、私がクリュウの側にいる」

 サクラVSエレナ。ある意味一番危険な頂上決戦の構図が浮かんだのか、クリュウは苦笑を浮かべる。すると、そんなサクラの暴挙にフィーリアが怒り出す。

「私だって!」

 そう叫ぶと、フィーリアはクリュウのもう一方の手にギュッと抱き、クリュウを挟んでサクラとフィーリアの睨み合いが開戦される。そんな美少女二人にしがみ付かれているクリュウは恥ずかしさに頬を赤らめながらも状況が状況なだけに苦笑を浮かべるしかない――そして、さりげなくシルフィードは少しだけクリュウとの距離を詰めてみたり。

 そんなクリュウ達を見てこのチームの根本的な問題であり、そして絶対に崩れる事のない強固な絆の正体に気づいたのだろう、ジンは苦笑しながらそんな彼らを見詰めている。

「それじゃあお別れだ、俺達はクエストなんでな」

 そう言ってジンはゲートと呼ばれるターミナルの入口の方を指差した。クリュウは二人を何とか引き剥がし、「そうですか……」と別れを惜しむように言う。

「……また会えるといいですね」

「……そのままくたばればいい」

「さ、サクラァッ!」

 どうやらサクラは完全にジンの事を敵視しているらしい。最初から最後までその言動は一切の容赦がない。ジンもそんなサクラの容赦のない言葉に苦笑する。

「悪いが俺はしぶといぞ、また暇があったらイージス村に行ってみるよ」

「そうですか、歓迎しますよ!」

「……村の前の階段から転げ落ちて死ねばいい」

 結局、クリュウは最初から最後までジンに頭を下げっぱなしであった。ジンは気にした様子もなくそんなクリュウに労いの言葉を掛けつつ、「じゃあな」と踵を返した。

 クリュウは離れていくジンとシィの姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けた。二人の姿が見えなくなると、クリュウは振り上げていた手を下ろし、フィーリア達の方に振り返る。

「それじゃ、僕達もそろそろ行こうか」

「はいです」

「……(コクリ)」

「そうだな。久しぶりのドンドルマだ。どうだ? 報酬を受け取ったら久しぶりに一杯やるか?」

 シルフィードはニヤリと笑いながらジョッキを持つようなジェスチャーをして三人に向ける。それを見てパァッとフィーリアが笑顔を華やかせる。

「そうですね。たまにはパァーッとやりましょうッ。ねぇクリュウ様」

 フィーリアはバッと笑顔のままクリュウに振り返る。そんな彼女の笑顔を見ながら、クリュウは内心迷っていた。何せさっきまでなるべく早く村に帰ろうと思っていたばかりだ。リリアだって自分が帰って来るのを待っているだろうし、ツバメ一人にいつまでも負担を掛けさせる訳にもいかない。

 だが、だからと言ってここ最近ずっと依頼をこなし続けていたので確かに息抜きらしい息抜きもしていなかった。ハンターという激しい生活の中では、オンオフをしっかり切り替えた方がいいというのはわかっている。それに、フィーリアは無邪気に楽しそうにしているし、シルフィードも言い出しっぺなので顔では平静を装っているが、その実は結構楽しみにしているのだろう。シルフィード以上に表情が変わらないサクラも先程からじっとこちらを無言で見詰めている。あの目は何かを訴えている時の目であり、彼女が考えている事など、お見通しであった。

 三人の少女達の視線に対し、クリュウは決心したようにうなずくと、フッと笑みを浮かべた。

「それじゃ、ちょっとだけだよ?」

 ――刹那、三人の少女の歓喜の声が響いたのは言うまでもない。




今回のヴィルマ編は神威先生の《Mons†er Hun†er 2G Hun†er's requiem》とのコラボ作品となっています。その為、そちらの作品でのキャラクターが多数登場しています。

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