ソードアート・オラトリオ   作:スバルック

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大変お待たせしました。m(_ _)m
テスト、バイト、レポート、アクセル・ワールドのBlu-ray Boxの視聴と多忙でした。
アクセル・ワールド見ると、あの世界観で話書きたくなるんじゃ〜^^


第26話

キリト達一行は13階層に到達後、慎重にダンジョン内を探索している。

リリが先日言った通り、モンスターの数が上層とは違いとても多い。

このパーティーはキリト以外はレベル1であり、基本アタッカーであるキリトは前衛で遊撃がヴェルフ、そしてリリが後方からサポートするといった連携が基本だ。

今はこの連携が崩れるほどの事態には陥ってはいないが、これが崩れた時、おそらくこのパーティーは一気に崩れる可能性がある。

その時は即座に撤退をすることにして中層攻略を始めた。

13階層はどうにも洞窟のような雰囲気があり、湿気も多い。

そのためか、どうにも陰気な気分にさせる。

 

 

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』

 

 

雄叫びの主である『ヘルハウンド』。

13階層から現れるこのモンスターは『放火魔(バスカヴィル)』の異名を持つ犬型のモンスター。

口からの火炎攻撃はまさに中層攻略に先駆けて最初の難関とも言える。

パーティーの前に現れた一体のヘルハウンドの雄叫びに呼応してかヘルハウンドが何体か集まってくるのがわかる。

キリトはヘルハウンドが集まりきる前に背中にある『牛鬼』を抜いて向かっていく。

剣を右肩で構えると、剣が光を帯びていく。

それに合わせて、左足を蹴って一気にヘルハウンドに詰め寄る。

右肩に構えた剣を斜めに振り下ろしヘルハウンドに斬りかかる。

雄叫びをあげ終わった直後で虚を突かれたのか、ろくに動けずにヘルハウンドは灰に変わった。

片手剣剣技突進技《ソニック・リープ》を繰り出し、技の硬直が解け終わる頃に、先ほどの雄叫びに反応したヘルハウンドが3体こちらに向かってくる。

それに反応したヴェルフが大剣を持って、奴らに向けて横に剣を振るう。

三体のうち一体がそれに反応出来ずにヴェルフの攻撃をくらい、もう二体はそれを躱して後方のキリト目掛けて襲いかかる。

 

 

「悪い!二体逃した!」

 

 

「任せてください!」

 

 

これに応じたのはリリ。

手に持つボウガンでヘルハウンドに狙いをつけ、その眼球目掛けて矢を放つ。

 

 

『ぎゃう!』

 

 

短い悲鳴をあげたヘルハウンドはその場で止まって、目に刺さった矢を取ろうとして立ち止まった隙に、キリトはもう一体との対峙をする。

 

 

「せい!」

 

 

ヘルハウンドの首元に剣を刺したまま、跳躍し、首を跳ねた。

魔石を残して灰になると、残りの一体はヴェルフが仕留めてくれたらしい。

 

 

「お疲れ!」

 

 

「おうよ!これなら楽勝じゃねぇか?」

 

 

キリトの労いの言葉にヴェルフは強気な言葉で返す。

 

 

「言っときますけど、中層の恐ろしさはこんなものではありません!なめてかかるとすぐ死にますよ。」

 

 

ヴェルフの言葉に反応して、リリは脅すように忠告する。

「はいはい」と返すヴェルフにホントにわかっているのかとリリが怒鳴るというやりとりがここに来て何回目になるかわからないくらい行っている。

すると、

 

 

「ん?なんだ?こいつ?」

 

 

目の前にいるもの。

どうみても兎にしかみえないこのモンスター。

『アルミラージ』と呼ばれるモンスターで、長い耳に白と黄色の毛並みとふさふさの尻尾。

頭には鋭い一角が生えていて後ろ足で地面に立っていた。

はたして、倒しても構わないのか?

 

 

「なんだこいつ?」

 

 

「なんだか、愛嬌があってかわいいです!」

 

 

二人もこのモンスター大してどう対処したら、いいのか困っている。

すると突然角を向けて襲ってきた。

 

 

「うわっ!」

 

 

「見た目に騙されてはいけません!モンスターはモンスターです!」

 

 

ヴェルフは間一髪のところで躱した。

それをリリが気を引き締めるように促す。

 

 

「にゃろう!」

 

 

ヴェルフが大剣で応戦するが、身軽な動きになかなか捉えられない。

 

 

「なにやってるんですか!しっかり狙ってください!」

 

 

「っていわれても、こいつなかなかすばしっこいぜ。」

 

 

「キリトさんはもう片付いていますよ。」

 

 

「ん?なんだ?手を貸そうか?」

 

 

ヴェルフが少しだけ目をキリトの方に向けると、何食わぬ顔をして周りには大量の魔石がドロップしていた。

 

 

「ははは…流石だぜ。」

 

 

こうしてキリトと協力してヴェルフはアルミラージを討伐した。

そのあと、奥に行きすぎないように気をつけながら攻略を進める。

 

 

「それにしても、この辺にいくつか空いている穴ってなんだ?」

 

 

キリトが何気なく質問したものだったが、二人ともなんとも言えない顔しながらキリトの方をみる。

それに気づいたキリトはバツが悪そうに、

 

 

「な、なんだよ?」

 

 

「いえ、なにも。この穴は下の階層に繋がっている縦穴です。しかし、この縦穴がどこに繋がっているかは複雑で緊急時かレベルが高い冒険者以外はあまり落ちないことおすすめします。」

 

 

「へぇ〜。」と感心するキリトにリリは小さくため息をつく。

ヴェルフもこれには苦笑いするしかなかった。

どうにもこの人は少し緊張感が少ないように思える。

すると、突然目の前から一つのパーティーが走ってきた。

ひどく慌てている様子で、よく見ると男が女の子を抱えている。

どうやら怪我をしたらしい。

 

 

「まずいですよ…。」

 

 

「あぁ、あれはひどい怪我だな。はやく手当しないと。」

 

 

「そうでは、ありません!」

 

 

「へ?」

 

 

キリトが何か検討違いなことを言ったのかと思ったが、やはり怪我をしていることに間違いない。

だとすると、別なことを言っているのかと再度先ほどのパーティーを見ようとした。

しかし、その前にパーティーが現れたところから音がする。

 

 

「まだわからないんですか!モンスターを押し付けられたんです!」

 

 

その瞬間先ほどとは比べようもない数のモンスターが現れた。

気がつくのが遅かったキリト達はもう逃げるという選択肢を失ってしまった。

 

 

「やべぇ!どうする?!」

 

 

ヴェルフが応戦しながら打開案がないか聞いてくるが、キリトもリリもこの状況をすぐさま打破する作戦は未だに見いだせていない。

その間にモンスターは連れられたもの以外にもどんどん溢れてくる。

ここで今のキリトでは二人を守りながらこの数を相手にするのは現実的ではない。

しかし、ここで逃走しようにも道をうまくかいくぐることはできないだろう。

となると残る選択肢は、

 

 

「二人とも!あの穴に飛び込むぞ!」

 

 

おあえつらむきにあるあの下の階層に繋がっている穴。

それに飛び込んで逃走を図ることが今打てる最善策。

しかし、ヴェルフとリリは抗議する。

 

 

「おい!今のこのパーティーで下の階層にいくのかよ!」

 

 

「生き残れる可能性は低いです。それでも行きますか?」

 

 

これだけ激しい戦闘の中で一瞬だがキリトは二人と目が合う。

そして、口角を吊り上げてこう言い放つ。

 

 

「生きてここから出るぞ!」

 

 

その言葉に二人は覚悟を決めて言い返す。

 

 

「おう!」

 

 

「はい!」

 

 

その言葉に二人はもう迷いはない。

一気に穴に向かって走りだす。

そのタイミングで後方からヘルハウンドが口から火炎攻撃の態勢に入る。

 

 

「やべぇぞ!」

 

 

「止まるな!いけ!」

 

 

キリトが先を促す。

しかし、モンスターがいるの中で思うように前に進めない。

そして火炎攻撃がキリト達に向かって放たれる。

 

 

「ちっ!」

 

 

キリトは手に持つ剣を前にかざす。

そして、剣を高速で旋回させて目の前にかざすことによって剣は盾のように火炎を防ぐ。

片手剣剣技防御技《スピニングシールド》

剣の盾とダンジョンに潜る前に買っておいた《サラマンダー・ウール》のおかげでダメージを最小限に抑える。

 

 

「よし!飛び込め!」

 

 

そして、穴にようやくたどり着いた三人はキリトの指示で勢いよく飛び込んでいった。

 

 

★☆★☆★☆

 

「……みんな生きてるか?」

 

 

「なんとかな…。」

 

 

「リリも生きてます…。」

 

 

 

あの後、縦穴に落ちたパーティー一行は思ったより深かった為に落下によるダメージでしばらく動きが取れなかった。

いまはポーションで幾分かは回復したが、この先の戦闘を考えるとこれ以上の使用は避けるべきだ。

しかし、この先は全くの未知の世界だ。

イレギュラーな事態にいくつも出くわす危険がある。

 

 

 

「さて、ここからどうやって下の階層にいくかな?」

 

 

今後の方針としては安全層である18階層目指して移動していくわけになるのだが、なるべくモンスターとの戦闘は避けたい。

ここで、知識が豊富なリリにキリトは相談する。

 

 

 

「そうですね、このまま縦穴を利用しながら下の階層を目指した方がいいでしょう。急な落下だったので、今ここがどの階層でどの辺りにいるのかが把握できていませんからね。」

 

 

感覚的には2階層程度落下したような気がするが、気がするだけで全く根拠がない。

よって、ここがどの階層なのかさえわからないのだ。

ここはリリの言う通り縦穴を使っていくのが最善だ。

 

 

「そうとわかればさっさといこうぜ!」

 

 

ヴェルフは気合十分な感じで先頭を歩いていく。

 

 

「陣形を乱さないでください!まったく、もう!」

 

 

「あはは…」

 

 

その後、18階層までの逃避行は順調に進んでいった。

途中ヘルハウンドの群れに遭遇した時はキモが冷えたが、ヴェルフの対魔魔力魔法《ウィル・オ・ウィスプ》。

この効果で、敵が魔法及び魔力属性の攻撃を発動させる際、タイミングよくあわせることで強制的に魔力暴発(イグニス・ファトゥス)を誘発させ、自爆させることによってなんとか危機を乗り越えていた。

しかし、途中で魔法酷使による精神疲弊(マインドダウン)によりヴェルフが戦闘不能になってさらにパーティーは危機に立たされた。

 

 

「キリトさん。もう残りのポーションも少ないです。このままでは…。」

 

 

「くっ…。」

 

 

 

感覚的には16階層辺りまではきている。

17階層は階層主がいる階層で現在遠征向かっている《ロキ・ファミリア》が倒してくれたおかげであと数日は現れないだろう。

だとすると、ここが踏ん張りどころだ。

 

 

 

「諦めるな、リリ。もう少し行けばきっと次の縦穴が…。」

 

 

すると、目の前には縦穴を発見した。

なんとも幸運なんだろうかと安堵したのも束の間だった。

 

 

 

『『『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』』』

 

 

 

いくつものモンスターの咆哮が重なったものがダンジョン内に響く。

縦穴付近にはヘルハウンド、そしてミノタウロスがいた。

 

 

 

「そんな…あと少しで…。」

 

 

 

「下がってろ、リリ。ここは俺がやる。リリはヴェルフを頼んだぞ。」

 

 

 

キリトはゆっくりと背中にある剣を抜く。

今度は二本その両手にはあった。

右手には《牛鬼》、左手には《黒い剣》。

赤と黒の剣をゆっくりと構えて、モンスターたちと対峙する。

一瞬の静寂は、すぐに破られヘルハウンドが火炎ブレスで攻撃してくる。

 

 

後方にはリリとヴェルフがいる。

ここで躱したら二人に当たってしまう。

なら、一体どうすればいい?

せめて、魔法を剣で斬れるなら…。

 

そう考えたキリトは数回剣を振り回して、右肩に剣を構える。

青白く光を放ち始めた剣にさらに冷気が纏っていき、それをキリトはヘルハウンドの火炎に向かって振り下ろす。

《魔法付与》により、剣の斬撃自体が魔法効果を持ったことにより魔法を相殺しようとキリトは考えたのだ。

一撃、二撃とキリトは剣で火炎を切っていく。

 

 

「うっそぉ…」

 

 

その光景を見たリリはあまりの光景に開いた口がふさがらない。

魔法を剣で切ろうなんて誰が考えるのだろう。

 

 

そして全て斬り終えた直後に一気にモンスターとの距離を詰める。

ヘルハウンドが追撃をしようと、ブレスのモーションに入る。

そこを狙って、先ほどこっそりリリから拝借しておいたボウガンの矢をヘルハウンドの目にめがけて投げる。

ヘルハウンドがひるんだ際にミノタウロスと対峙することをキリトは選んだ。

 

 

『があああああああああああああああ』

 

 

前回は大いに苦しめられたこのデカブツ。

だが、前とは違う。

振り下ろされる天然の大剣をキリトは右手の剣でバリィすると、左手での剣で追撃する。

ランクアップした能力なら片手の剣でも相手の大剣の側面を狙えば十分に防げる。

余った左手はその隙をついいて確実にタメージを与えていく。

しかし、ミノタウロスに時間を掛ける猶予はあまりない。

ここで一気にカタをつける。

両手の持つ剣が黄色に光り、ソードスキルを発動させる。

右手の剣で左斜めに切り下げ、すぐに左に持っていた右手の剣を右下に切り下げる。

そして、左手の剣を右下に切り下げ、下げた左手の剣を左上に再び切り上げる。

ここでのけぞったミノタウロスに追い打ちと言わんばかりに両手の剣を上段から振り下ろし切りつける。

二刀流剣技7連撃技《ローカス・ヘクセドラ》

 

 

「いまだ!穴に飛び込め!」

 

 

ミノタウロスを打破したキリトはすぐさまリリに指示を出す。

リリはヴェルフを抱えて必死に走りだす。

キリトたちはこれで最後であると祈りつつ再び暗い穴へと飛び込んでいった。

 

 

 


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