ソードアート・オラトリオ   作:スバルック

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時雨沢恵一さんが描くSAOオルタナティブがすごく面白いですね!
現在2巻を読んでいるのですが、あそこでシノンさんとか出てきてくれたらなんて想像しちゃいますw


いつの間にかお気に入り数が500なんてものすごい数字に到達していて驚きを隠せないです!
感想などいつでもお待ちしておりますので気軽に書き込んでください^^


第18話

「くっ…」

 

 

そろそろ限界が近づいてる。

この魔法のおかげでなんとかなっているが、徐々に攻撃をかすってくるもの増えてきた。

そして、魔法自体が初めてであるキリトは精神力の最大値が少ない。

このままだと魔法の使い過ぎで精神力が疲弊した状態である精神疲弊(マインドダウン)を引き起こすだろう。

なんとか活路を見出そうと考えてはみるが、こうも戦闘に余裕がないと思考がまとまらない。

そんな時、

 

 

「キリト様!これを!これを受け取ってください!」

 

 

リリから投げられたもの。それはキリトの《黒紫の剣》。

キラーアントの上を通過していく。

だが、おそらくこれは届く前に奴らの群がっているところへ落ちる。

 

 

ー 一か八かだ!

 

 

キリトは剣を受け取るために少し助走をつけて跳躍をする。

キリトはその剣を鞘から取り出す。

そして、オラリオに来てから使うのは初めてとなる剣技を発動させる。

空中で回転しながら剣をモンスターに向かって叩きつける剣技(ストームストライク》。

 

 

真下にいたキラーアントの数体は灰となって消滅した。

他の虚をつかれたキラーアントはキリトが着地した地点から一時的にスペースを空ける。

そのおかげでスキル硬直の間、攻撃されずに済んだ。

一瞬虚を突かれたが、数で圧倒的に勝っているキラーアントの群れは再びキリトに襲いかかる。

しかし、先ほどの違いはキリトが剣を二本装備しているのだ。

剣技での隙を体術で補っていたが、体術では決定打にかけていたものを二本目の剣でとどめをさせるようになり、戦況が大きく変化した。

 

 

右手にある剣で一体目を倒す、その際に二体目がやってくるのを左手の《黒紫の剣で》で受け止め、再び右手の剣で倒す。

次々と前のペースより早く倒せるようになったが、まだ多くのキラーアントがいる。

もはや、こいつらと長く相手をする気はキリトにはない。

今、片手剣を二本装備しているいわゆる《二刀流》だ。

なら、剣技も変わってくるはずだ。

試す価値はある。

 

 

キリトは両手に持つ剣を左脇に抱えるように構える。

が、

 

 

「あ、あれ?」

 

 

なんにも反応がない。

もしかするとこの構えじゃなかったか。

 

 

 

『ギシャアアアアア!』

 

 

あちらさんは待ってくれるはずなんかない。

キリトは仕方なく路線を変更して片手剣剣技での範囲技、水平に斬りつける《ホリゾンタル》を発動させる。

 

 

「せやああああ!」

 

 

『ギィィィィィィィィィィ!』

 

 

 

「まだまだぁ!」

 

 

そうだ。もう一つの試み。

それは、剣技の連続の発動だ。

剣技は発動のモーションが必ず存在する。

それを剣技の発動中に次の剣技のモーションをすれば硬直なしで剣技ができるといううことだ。

今回は初めての試みだ。この体制で一番繋げやすいのは先ほど使った《ホリゾンタル》。

それに加えて《黒紫の剣》に魔法を纏わせるあの魔法を使う。

今回加えるのは火。奴らに次々と燃え移らせるべくありったけの魔力をつぎ込む勢いでモンスターにたたきこむ

 

 

 

「終わりだ!」

 

 

キリトのありったけの魔力をつぎ込む勢いでモンスターに叩き込む。

そして、すべてのキラーアントに燃え移り灰とかす。

 

 

「ふう〜…。」

 

 

ようやく戦闘が一区切りつき、ため息をつきながら剣をしまう。

 

 

 

「さっきは助かったよ。ありがとう。リリは無事?」

 

 

そして、さも当たり前のようにリリに話しかけ心配そしてくる。

そんな彼に対して本当はうれしいはずなのに、どうしても感情が言葉が彼への疑問で溢れてくる。

 

 

「どうしてなんです…」

 

 

「ん?」

 

 

「リリはキリト様を魔剣で攻撃しました。そして、さらにはあなたの剣まで盗みました。」

 

 

「うん。」

 

 

「それだけじゃありません!報酬のお金を半々ではなく6:4にしてたりしていました!調子に乗って7:3にした日もあります!」

 

 

「うん…って7:3?!そ、それは気づかなかったな。はは…」

 

 

「リリは悪い奴です!盗人なんです!なのに、どうして?どうしてそんな平然としていられるんですか?!」

 

 

本当はなんにも気づいていないように装ったほうがよかったかもしれない。

でも、今まで人を騙し騙されきた彼女だ。

キリト自身、自分の嘘などすぐにバレるだろう。

だから正直に答えることにした。

 

 

「本当は初めから薄々は気づいていたよ。あのぶつかった小人(パルゥム)がリリだってことも。そして、君がお金が欲しがっていたのも。冒険者を忌み嫌っていることもね。」

 

 

「え?」

 

 

「ソーマ・ファミリアの噂は少しだけど耳にしていたからね。何度か彼らを尾行したり、あのリリが休みが欲しいって言った日は悪いと思ったけど後をつけさせてもらったよ。」

 

 

「そう、だったんですか…。なら、なおさらキリト様は私とダンジョンに?」

 

 

「君が俺と同じ顔をしていたからだよ。」

 

 

その答えにリリはよくわからないと言った風に首をかしげる。

その顔をみたキリトは微笑みながら話す。

 

 

「俺は君のすべてを理解することはできない。でも、時折みせるあの暗い表情は見覚えがあったんだ。」

 

 

「…」

 

 

リリはキリトの言葉ただただ黙って聞く。

なのでキリトは続けて話す。

 

 

「だからわかったんだ。リリはほんの少し間までの俺と同じだって。この世に絶望しきってなにもかもがいやだったあの日の自分と。でも、ある人が俺に希望をくれたんだ。だから、今度は俺が君に希望をあげたいんだ。冒険者も捨てたもんじゃないぞってね。」

 

 

 

「無理です。今更冒険者を信じるなんて…」

 

 

そう言うとリリはキリトに背を向け走り出す。

 

 

「リリ!ちょっと待っ…くっ」

 

 

先ほどの魔法の酷使ですでに精神疲労(マインドダウン)寸前だったキリトは立ちくらみを起こしその場に座り込む。

そして再び顔を上げてリリの姿を探すがすでに目に見えるところにはいなかった。

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

やってしまった。

キリトに対してあれだけのことをして、さらには逃げ出してしまったのだ。

いよいよもって愛想つかれてもなんら不思議ではない。

それなのに、

 

 

「それなのにどうしてこんなところに来てしまったんでしょう…」

 

 

そこはいつもキリトとダンジョンに行くために決めていた待ち合わせ場所だった。

あの時冒険者なんて信じられないとは言った。

けれど、彼なら…

 

 

「リリルカさん、リリルカさん。」

 

 

そう、彼なら。

 

 

「冒険者が信じられないなら俺を信じてくれないか?」

 

 

「いいんですか?リリ、またキリト様を裏切るやもしれません。そんな奴を側において。」

 

 

「俺はリリを信じているよ。だからもう一度俺を信じて欲しい。」

 

 

そう言うと、彼は手を差し出してリリに言うのだ。

 

 

「俺ともう一度一緒にダンジョンに潜ってくれないかな?」

 

 

今、リリはどんな顔をしているでしょうか?

泣いているんでしょうか、それとも顔を真っ赤にしているのでしょうか。

多分、両方ですね。

彼へのもう答えは出ています。

もう一度この世界で生きていくために、リリは彼の手を取るのだった。




この話で《うそつき》の章は終了です!
次回はどんなタイトルつけたらいいかな?(ー ー;)

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