ソードアート・オラトリオ   作:スバルック

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4月15日にはいよいよダンまちの新刊が出ます!
早く続きが見たいです!( ´ ▽ ` )ノ


第12話

「くっ!」

 

 

『があああああああああ!』

 

 

決定打に欠ける今の状況でこいつに勝つのは難しい。

ましてや、単純な力は奴が上だ。

攻撃を喰らわないように多くは躱すが、躱しきれないものは剣を当てて流すがその度に身体のバランスを崩される。

そして、大きく距離をとってまた対峙する。

それをひたすら続けているが、そろそろ体力の限界が近づいている。

また、終わりが見えないのも精神的な疲労が募っていく。

なんとかして攻撃を当てていくが、徐々に刃こぼれを起こしはじめている。

この時ばかりはギルドに対して剣の品揃えと金額の設定への不満が爆発しそうだ。

それでも、諦めないのはヘスティアとの約束があるからだ。

 

 

神様…信じてますよ!

 

 

★☆★☆★☆

 

 

「むむ!」

 

 

「どうかしたんですか?ヘスティア様?」

 

 

「今キリト君の心の声を聞いたような気がする!」

 

そんな馬鹿な…なんて二人してそんなことを思うのだが、神の力を使えずとも彼女は神様なのだ。

ありえないことはないかもしれない。

 

 

「「はは…」」

 

 

同じ事を考えてたのか、リズとシリカは顔を合わせて苦笑いをする。

そうこうしているうちに三人は先ほどキリトと別れたという地点に来たが、彼の姿は見当たらない。

 

 

「もしかしたら移動したのかもしれないわね。」

 

 

「だとすると、ここからは手分けしたほうがいいですかね?」

 

 

「よし!では、僕はこっちを担当するよ。君達はあっちを頼む。」

 

 

「「わかりました。」」

 

 

ヘスティアでの担当を振りわけられ、三人はそれぞれ違う方向に探しに行く。

リズベットは自分の勘を信じてすすんでいく。

しかし、この住宅街はホントに迷路だ。

何度か立ち寄ったことはあるが、それでも道を覚えることはなかった。

 

 

『…ドーン」

 

 

「今の音…もしかして!」

 

 

少し遠いが、確かに普段のこの市街地では聞かない音が聞こえた。

リズベットはその音の方向へ向かう。

そしてそこに行くと、

 

 

「キリト…」

 

 

そこにはシルバーバックを相手にギリギリの攻防をしているキリトがいた。

側から見ても勝つのは厳しそうに見える。

 

 

「リズさん!」

 

 

立ち止まってその光景を見ていると、シリカが後ろからやってきた。

 

 

「キリトさん!」

 

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

 

シリカはキリトを見つけると側に駆け寄ろうとする。

それをリズベットが止める。

 

 

「なにするんですか!早く助けないと!」

 

 

シリカはキリトを助けに向かうことしか頭にないのか、リズの制止を振りほどこうと必死に動く。

 

 

「あんたさっき青い奴に言われたこと忘れたの?!今行ったらどうなるかわからないわ!」

 

 

「だからって、何もしないで見てるだけなんて私には出来ません!」

 

 

それを聞いたリズベットは心が痛む。

だが、ここでみすみすシリカを向かわせるなんて出来やしなかった。

 

 

「あいつを…キリトを信じましょう。あいつは昔からとんでもないことを平然とやってのける凄い奴なんだから。」

 

 

その言葉にシリカも納得したのかしていないのかわからない。

けれど二人のやり取りに区切りがついたその時、ヘスティアがキリトの元に辿り着く。

 

 

★☆★☆★☆★☆

 

 

「キリト君!」

 

 

「神様!」

 

 

ヘスティアが現れると、それまで向かっていたヘイトが向こうに切り替わる。

シルバーバックはヘスティアに向かって襲いかかる。

 

 

「危ない!」

 

 

キリトは助けに向かおうとするが、ちょうどシルバーバックを間に挟んでいる状態で助けに向かおうにも奴と同等の敏捷しかないキリトは奴には追いつけない。

 

 

「ま、待ってろよ!キリト君!必ずこれを君の元に届けるからな!」

 

 

そう言うと、ヘスティアは剣を抱えシルバーバックに向かって走り出す。

 

 

「そんな無茶ですよ神様!」

 

 

そんなキリトの言葉には耳を貸さずに突っ込んでいく。

 

 

「うおおおおおお!」

 

 

シルバーバックがヘスティアに飛びかかる。

しかし、ヘスティアは足を止めずに向かっていく。

そしてギリギリまで引きつけ、

 

 

「今だっ!」

 

 

ヘスティアはシルバーバックが飛んだことで空いている下の部分を抜けようとヘッドスライディングをする。

 

 

「ぶう!」

 

 

躱すのはうまくいったが、顔から地面を滑っていく。

正直かなり痛そうだ。

 

 

「か、神様ああああ!大丈夫ですか?!」

 

 

ヘスティアは地面に突っ伏したまま動かない。

どこか当たりどころが悪かったのか?

 

 

「うう…」

 

 

「か、神様?」

 

 

「痛い…」

 

 

顔から思いっきり地面を滑ったのだから、当たり前といえば当たり前である。

キリトはヘスティアの身体を支え起こす。

 

 

『ガアアアアアア!』

 

 

ヘスティアの傷を治療したいのは山々だが、今はそれどころじゃない。

一刻も早くこの状況なんとかしないといけない。

 

 

「キリト君これを!」

 

 

ヘスティアが布を取ると、そこにあったのは一本の黒紫の剣だった。

鞘にはヘファイストス・ファミリアの紋章がある。だが、その剣に凄みは感じない。

試しに剣の柄を握る。

すると、剣に刻まれているヘスティアが描いたステイタスの紋章が光り出す。

 

 

「これは…」

 

 

先ほどまで全く感じられなかった重さや切れ味がみるみると加わっていく。

いや、取り戻していくというような気がした。

この剣の力の底が見えない。

一緒に戦えばもっと見えるような気がして胸が高鳴る。

そして、どことなく懐かしさを感じる。

 

 

「いける…」

 

 

先ほどヘスティアに躱されたせいかより苛立ちを見せて、キリトに襲いかかる。

けれど、先ほどの焦りを彼には感じない。

 

 

『ガアアアアアア』

 

 

シルバーバックが右手の爪で切り裂こうとするところに合わせて、斜めに軌道を描くソードスキル《スラント》を繰り出す。

それをただ当てるだけでなく、より斜めに剣を当てることで攻撃を弾く。

今まで常に攻撃を躱すか、剣で防ぐだけだったので弾かれたことにシルバーバックは驚く。

そこをキリトは見逃さない。

今度はキリトがシルバーバックの懐に潜り込み、V字に切り込む《ヴァーチカル・アーク》を打ち込む。

 

 

『ギャアアアアア』

 

 

攻撃が通ることによって大きく戦況が変わりつつある。

シルバーバックもそれを感じ取っているのだろう。

ここで奴は自身の最大の力を使って両爪を振り下ろし、戦いを終わらせようとする。

だが、奴が今まで見せたことない大きなモーションに身体が反応する。

身体を回転させ、奴の左脇腹に回り込む。

そこに今持っている最大連撃の剣技を叩き込む。

 

 

「はあああああああああああああ!」

 

 

右斜めに切り下げた後、反対側にも切り下げる。

次に右斜めに切り上げると、反時計回りに身体を回転させた勢いで剣を左斜めに切り上げる。

垂直4連撃剣技《ヴァーチカル・スクエア》。

 

 

『ギャアアアアアアアアアアアア』

 

 

凄まじい悲鳴とともにシルバーバックは倒れ、動かなくなった。

そして斬り込んだ身体から魔石が飛び出し、灰となって消えた。

これでようやく安心したのかキリトはその場に座り込んで一つため息を吐くのだった。

 

 

★☆★☆★☆★☆★

 

 

「イテ!イテテテ!キリト君?もう少しお手柔らかに頼むよ。」

 

 

「傷が染みるの仕方ないことなんで諦めてくださいよ」

 

 

あの戦闘の後、神様を抱えて市街地を出てホームに向かっている最中にシルと出会い奥の一室で休憩させてもらうことが出来た。

シルから受け取った救急箱を手にお互いに傷の治療を始めたのだった。

 

 

「それにしても、よくこんな武器を持ってましたね。どうやって手に入れたんですか?」

 

 

「そ、それはほら…僕とヘファイストスは親友だからね!親友割引で特別にだよ!」

 

 

若干神様の声が上ずっているのは気のせいではないだろう。

相当苦労して作ってもらったんだろう。

 

 

「すみません、神様。迷惑かけてばかりで。」

 

 

「迷惑なんてとんでもない!僕は君の家族だ!むしろこれくらいさせて欲しい!」

 

 

ヘスティアは親指を立ててウィンクを決めてくる。

そんなヘスティアの思いやりに心が温まる。

 

 

「神様…ありがとうございます。まだまだ迷惑かけるかもしれないですけど、これからもよろしくお願いします。」

 

 

「ああ!末長く幸せになろう!そして…」

 

 

(結婚しよう!)

 

 

 

「そして?」

 

 

「な、なんでもないよ!」

 

 

「気になるじゃないですか!教えてください!」

 

 

「嫌だ!こういうのは男性の方から言って貰わなきゃね!」

 

 

仲良く戯れる二人をシルがそっと覗いて微笑みながら、少し羨ましいと思っていたことはここだけの話。

 

 

★☆★☆★☆★☆★

 

 

「あのモンスターじゃ少し物足りなかったかしら?」

 

 

「だから言っただろう。あの程度じゃあいつを死にかけるまで追い詰めやしない。」

 

 

「次はどんな試練を彼にさせようかしら?貴方の意見を聞かせてちょうだい?《ブルーム》」

 

 


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