プロローグ
薄暗い通路。
ここ『ダンジョン』と呼ばれる地下迷宮の中だ。
この地下迷宮は幾つもの階層に分かれており、下に降りる毎に過酷さが増していく。
数多の凶悪なモンスターに武器一つでのし上がり、求めるのは富か名声かはたまた未知なる景色を見るためか。
冒険者の目的は冒険者の数だけあるだろう。
ここ第5層で現れるモンスターはLV.1でも多数対一の状況を作らなければ、十分に探索は可能だ。
そのはずだったのだが…
「うおおおおおおおおおお!」
現在絶賛全速力で逃走中。
俺は今まさに修羅場を迎えている。
なぜなら…
「くっそ!あり得ないだろ!こんな上層でLv.2のミノタウロスにエンカウントするとか!」
『グルルルルルルルルルル!』
「くっそ!」
ジリジリと詰め寄ってくる。
いつあの2Mを越す巨体で突進してきてもおかしくない。
「こうなったら一か八かだ!」
俺が叫んだのを機に突進してくるミノタウロス。
俺はそいつに背を向け壁に向かって走る。
その勢いのままジャンプし、壁を蹴って後方に宙返りした。
思惑はうまくいき、ミノタウロスはそのまま壁に激突して動きが鈍り、俺は奴の背後をとることに成功した。
俺は背中に装備している片手剣を右肩に背負うように持ち、左手を前に出し、助走をつける。そして、左手と右肩に背負うように持つ片手剣を入れ替えるように身体を捻り剣をおもいっきり突き出す。
片手剣
「なっ…」
絶望。
思考が一瞬途切れる。
その間にミノタウロスが襲いかかる。
(もうダメだ…)
次の瞬間ミノタウロスの身体が真っ二つに切れていた。
「大丈夫…?」
そこに立っていたのは女神のような女の子だった。
蒼色の軽装に身を包んだ細身の身体。
俺を見る瞳の色は金色。
蒼い装備に身を包んだ、金髪の女剣士。
半月前に冒険者になった俺でもわかる。
【ロキ・ファミリア】に所属する第一級冒険者。
全ての種族間の女性の中でも最強の一角と謳われるLv.5。
「あの…大丈夫ですか?」
これは一つの
《黒の剣士》キリトが歩む冒険譚。