【完結】進撃の美少年クラブ   作:器物転生

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【あらすじ】
巨人の2人と会い、
ジャンと事故って、
マルコに刺されました。

※BL(ボーイラブ)の警告タグを追加しました。
寝取り書いてたらBLタグを付けるハメになったでござる。


オペラント・コード(下)[警告ボーイズラブ]

 マルコに刺されたオレは、保健室のベッド入りをする事になった。すでに再生能力で傷は治っている。だけど、アイスピックで腹部を刺された人間が、平気で歩き回っている光景は問題があった。そんな訳でベッドの上に寝転び、暇を持て余していると、リヴァイさんが訪れる。きっと見舞いに来てくれたのだろう。今は、そう素直に思えた。

 

「ガーデン・アイリス、おまえに教える事がある」

「その前にガーデン・ローズ……この前は酷いこと言って、すみません」

 

「……敬語に戻したのか」

「はい……オレは、オレの生活がガーデン・ローズたちに支えられている事を分かっていませんでした」

 

「ガキがくだらねぇ事を心配するな……おまえは何も悪くない」

 

 ああ、またコレだ。オレが悪くない訳がない。それなのにリヴァイさんは悪くないと言う。オレはリヴァイさんが過保護である事に、やっと気付いた。そんなリヴァイさんがトーマスたちにオレを襲わせたり、オレの周りにいる仲間を消したり、食事に睡眠薬を混ぜたりしていた。美少年クラブという一点に限って、リヴァイさんの行動は不可解だ。きっと、それはリヴァイさんの意思ではないからじゃないのか。

 

「……ガーデン・ドールズ。それが学園にいる少年たちの、もう一つの呼び名だ。

 "蕾組"の施設で生み出され、管理された少年たち……その少年たちを扱う上で、"オペラント・コード"という物が仕込んである。"特定の声"に反応し、彼らを思うがままに操作できる権限だ。それは、おまえの声にも付与されている。それを今から教える。何か困った事が起きたら使え」

 

 そのオペラント・コードで生徒の記憶を消していたのだろう。声で人を操る。似たような話を昔、オレは聞いた事があった。人の記憶を消し、巨人の行動を操る、"叫びの力"だ。だけどオレやアルミンは記憶を消されていない。それは「アルミンも権限を与えられていた」という事なのか。

 

「イキシアも権限を与えられていたんですか?」

「イキシアも消失した生徒の事を憶えていた件の事か」

 

「もしかしてイキシアは、ガーデン・ドールズじゃなかったんですか?」

「……強力な意思の前には、オペラント・コードも無意味という事だ」

 

 アルミンは意思の力で、記憶の削除を拒んでいたらしい。オレが思っているほどオペラント・コードは、万能な力ではないという事か。相手が「本気で嫌だ」と思えば抵抗できる。知性のない巨人に対しては"叫びの力"が効いても、知性のある巨人に対しては効かなかったような物だな。

 オペラント・コードの使い方を教えると、リヴァイさんは立ち去った。こんな学園の秘密と言える物をオレに教えるほど、リヴァイさんは心配してくれているのだろう。だけどオレは、こんな力は使いたくなかった。このオペラント・コードを使えば、人の意思を侵すことになる。

 ふと、オレは思う。「学園を打っ壊す」ことがオレの役目と、ベルトルトが言っていた。校内放送を使えばオレは、生徒全員に対してオペラント・コードを行使できる。だけどリヴァイさんもオペラント・コードの権限を有していた。もしもオレの権限で無茶苦茶に生徒を操っても、リヴァイさんの権限で鎮圧できるのだろう。そうでなければ、おかしい。

 

 

 翌朝、お腹の傷は跡形もない。マルコにアイスピックで刺されて間もなく、血は止まって傷も塞がったもんな。だけど偽装のため執事によって、布製のサポーターを腹に巻かれた。お腹を締める物ではなく、サポーターの表面は柔らかい。お腹に巻いても違和感は覚えなかった。

 保健室から退室したオレは寮へ向かう。鏡を見ると気になって、"身だしなみ"を整えた。食堂へ行くとジャンたちを見つける。するとオレは真っ先にジャンの下へ行き、その横に自然と座った。ジャンと同じ席に着くなんて初めての事だ。そんな異常なオレの行動に、オレは疑問を感じていなかった。

 昔のジャンとオレは仲が悪かった。ジャンは自分を「正直者だ」なんて言っていたけれど、オレから見れば嫌な奴だったからな。訓練兵団の時代は殴り合いになる事も珍しくなかった。それが今は、そんな事はない。今のオレが女だから、なのだろうか。「ジャンに女として見られている」と考えると、オレの気持ちが分からなくなる。

 

「クルミたちは、どうしたんだ?」

「朝まで罰として鳥カゴに入ってて、今はバラバラに食ってるな」

 

 まるで他人事のようにジャンは言う。鳥カゴは、学園の林の中にあるスタイリッシュな牢屋だ。そんな風通しの良い牢屋の中で、一晩すごすのは大変だろう。けして軽い罰ではない。マルコは1人で食べ、ダズとサムエルは2人で食べていた。暗い顔をしている。オレは席を立ち、そいつらを呼びに行った。

 

「ガーベラと一緒に食べようぜ」

「……君が、それを言うのか」

 

 マルコは勝手に告白して、勝手に自爆した。それをオレのせいだと思っているのか。オレがジャンに抱き上げられ、保健室へ運ばれた光景はマルコも見ている。告白して拒絶された直後に、オレに奪い取られたような物だろう。マルコの声は怒りを通り越して憎しみに満ちていた。こいつ、ちっとも反省してないな。

 

「あんな時に告白するからだろ。周りの雰囲気とか考えろよ」

「ボクが悪いって言うのか」

 

「ああ、悪いね。おまえ、このままガーベラと絶交するつもりかよ」

「誰のせいだと思ってるんだ……!」

 

「おまえのせいだよ」

 

 マルコが立ち上がり、オレの首もとを掴んだ。食事中の生徒たちがザワザワと騒がしくなる。騒動に気付いた執事の一人が、こちらへ向かって来ていた。その執事にオレは手を向けて止まってもらう。止まってくれるか分からなかったけれど、執事は空気を呼んで止まってくれた。

 

「おまえが……! おまえさえいなければ……!」

「オレが居なくなったって関係ないだろ。おまえとガーベラの問題だ」

 

「ボクとガーベラの間に割って入ったくせに、なにを言う……!」

「オレは信じなくても良いから。ガーベラは信じてやれよ」

 

「ガーベラを……?」

「よく考えてみろよ、クルミ。ガーベラが、おまえを嫌いになる訳がないだろ」

 

 告白されたジャンが、マルコの事を「どう思っているのか」なんて知らないけどな。だけどマルコは一瞬、オレの言葉に釣られた。しかしジャンに拒絶された記憶が、マルコを苦しめる。それは叩き込まれた杭のように、マルコの心に突き刺さっていた。その苦しみは表情の歪みから見て取れる。

 

「おまえだってオレに突然、気持ちを打ち明けられたら困るだろ」

「吐き気がするね」

 

「おまえとガーベラの関係は、その程度で壊れちまうもんなのか?」

「おまえが、それを言うな!」

 

「ガーベラを信じてやれよ。まだ諦めるには早すぎるだろ」

 

 マルコに期待を持たせる。マルコの信じるジャンを信じさせた。それは虚像かも知れない。マルコの事をジャンは、死ぬほど嫌っているかも知れない。オレはマルコを連れて、ジャンも下へ向かう。途中でダズとサムエルも拾った。ダズとサムエルに関しては、オレは許せば済む話だ。さて、ジャンは如何するのか。

 

「悪ぃな、クルミ。オレは、おまえの気持ちを受け入れられねぇ」

 

 ジャンは初っ端から爆弾を投下する。オレとマルコの言い合いで、オレたちは注目されていた。この朝から始まった一大イベントに、みんなが聞き耳を立てている。そんな中で流れに流されず、マルコを拒絶できるジャンは大したものだ。そんな事が出来るのは自分の事しか見えておらず、周りの事が見えていない人間だろう……なんか身に覚えがあるな。だけどジャンの言葉には、まだ続きがあった。

 

「だけどオレは……おまえの事を嫌いじゃねぇ。いつも隣にいたおまえが居ねぇと居心地が悪ぃんだ。今日だっておまえの姿を、いつもの癖で探していた。オレはおまえに。居なくなって欲しくないと思ってる」

 

 ジャンに必要とされている。そんなジャンの言葉にマルコは救われた。マルコを救えるのはジャンだけだった。こいつら両思いなんじゃないか……いいや、ジャンがマルコと一線を越える事はないだろう。だからと言ってジャンは、オレを好きな訳でもないんだよな。オレが女だからと言って、飛びつくような奴じゃなかった。

 

 

 食堂で食事を終えると、オレたちは教室へ向かう。だけどオレは、その途中でジャンたちを人気のない教室へ連れて行った。仲直りのプレゼントがあると言って、みんなを誘った。ジャンたちが不審に思っている様子はない。だけどマルコはオレを警戒していた。そんな皆の前で、オレは机に腰かける。

 

「オペラント・コード000、コードキー"ガーデン・アイリス"!」

 

 それはリヴァイさんから教えてもらったオペラント・コードだった。すると、みんなの体が一瞬、意思に反するようにビクリと震えた。ジャンやマルコたちは、オレが何を言っているのか分からない様子だ。オレは特に迷う事もなく、机に腰かけたまま、言葉で人の意思を侵す。

 

「——動くな!」

 

 オレの言葉を聞いたジャン、マルコ、ダズ、サムエルの動きが止まった。オペラント・コードは効いている。その光景は時を止められたかのようだった。床に倒れる可能性も考えていたものの、その心配はないらしい。みんなは両足で床に立ったまま、動けなくなっていた。

 

「体が……動かない……!」

「どうなってるんだ!?」

「アイリス、おまえが……?」

「これは如何いう事だい、ガーデン・アイリス!」

 

「——服を脱げ!」

 

 女王のように高みから、オレは命じる。するとジャンやマルコたちの意志に反して、その体は服を脱ぎ始めた。茶色のジャケット、白いシャツ、白いズボン、そして下着。それらが床に落ちて、男子の体が晒される。ジャンやマルコたちは剥き出しになった股間を手で隠していた。

 

「アイリス、こりゃあ何のつもりだ!?」

「どうして体が言う事を聞かない!」

 

 その間も焦った声で、オレに疑問を投げかける。考える事や、喋る事はできるようだ。オレは腰かけていた机から下りると、裸のジャンに近寄る。その力強い体の上で、指を這わせた。ジャンの下半身に手を伸ばし、掴む。ポンプを押すように締め付けると、それは大きくなった。

 

「ガーベラ、オレに揉まれて興奮してるのかよ?」

「おい……どうしたんだよ、アイリス。おまえ、おかしいぞ……!」

 

「やめろー! ガーベラに触るなー!」

 

 ジャンをもてあそんでいると、その隣にいたマルコが叫んだ。大声を出すと教室の外まで聞こえるじゃないか。その必死なマルコの様子を、オレは横目で確認する。あざ笑う表情を見せると、オレはジャンから離れた、ズボンを脱いで、おしりを突き出す。机に手を置いて、みんなに見えるようにした。

 

「——ガーベラ、オレを犯せ!」

 

 「ひゅっ」とマルコの息を呑む音が大きく聞こえる。オレとジャンがSEXするのは初めて……という訳じゃないんだけどな。そんなにショックなのか。オレの指示を受けて、ジャンが進み出る。マルコの横から、オレの後ろへ歩いて行く。その光景をマルコは絶望した表情で見ていた。

 ゴツゴツした手に腰を掴まれ、ジャンの腰が押し付けられる。ジャンの意思と無関係に、オレの中で動き始めた。オレは快楽を感じ、あえぎ声を漏らす。ジャンの意思でも制御できない動きは、強引な快楽をジャンに与えていた。ジャンは苦しそうに、オレの後ろで声を漏らす。

 オレはジャンに犯されている。それともオレがジャンを犯しているのか。人の意思を侵して、オレを犯させている。ジャンに犯されたまま、オレは後ろを見た。マルコが顔を歪めて、歯を食い縛り、涙を流している。そうだよな……告白したら「気持ち悪い」と言われて、せっかく仲直りしたと思ったら目の前で男を奪われたんだ。

 

「目の前で好きな男を犯されて、どんな気持ちだ?」

「ふざけるなぁ! この、悪魔め! 殺してやるっ!」

 

 マルコは泣きわめく。すると突然、その体は動いた。勢い余ってマルコは床に倒れる。リヴァイさんは「強力な意思の前には、オペラント・コードも無意味」と言っていた。マルコは一時的にオペラント・コードを無効化したのだろう。自由になったマルコは、血走った目でオレを見ていた。

 

「——ガーベラ、クルミを取り押さえろ!」

 

 オレの体から離れたジャンが、マルコの前に立ち塞がる。そしてマルコの手首を掴み、床に押し倒した。顔を床に押し付けられ、マルコはうつ伏せになる。そんな事をしてしまったジャンは、苦しそうな表情でマルコを見つめる。そんなマルコとジャンを、オレは立たせた。

 

「泣くなよ、マルコ。次は、お前だからさ」

「やめろ! 近付くな! ケダモノォ!」

 

「——ガーベラ、マルコを犯してやれ!」

 

「なにぃ!?」

 

 オレの命令を聞いたジャンが驚き、しかしオレの命令を受けた体が従う。マルコのおしりに、ジャンが腰を押し付けた。だけど、なかなか入らない。それは、そうだろう。そこは処女のように固く閉ざされ、男の侵入を防ぐ。だけどジャンの体に付いていたオレの体液が、滑りを良くした。

 

「すまねぇ、クルミ!」

「ガーベラアーッ1」

 

 オレもクルミの一部を受け入れる。ジャンは背後から、オレは正面からだ。マルコを挟み込んで、逃がさない。マルコはガクガクと体を震わせて、悲鳴も小さくなって行く。やがて目から光を失い、焦点が合わなくなって、あえぎ声を漏らし始めた……なんだ、つまらない。

 

「ひいっ!?」

「やめてください!」

 

 ああ、ダズとサムエルも居たっけ。見ているだけなのは、かわいそうだ。マルコはジャンに任せて、オレは2人に近寄る。怯える2人に、華やかな笑みを向けた。怖がる必要なんて何もない、気持ちいいに決まっている。そこにリヴァイさんに対して覚えたような罪悪感はなかった。

 だってオレは女なのだから。相手も気持ちいいはずだ。男と体を重ねても、なにも間違ってはいない。愛し合う事は正しくて、愛し合わない事は間違っている。みんなが愛し合えば、みんなが幸せになれる。頭の中の密室に閉じ込められて、悪い物として扱われるのは嫌だった。

 私は女と見られたい。私は女と見られるのが嬉しい。ずっと私を見て欲しかった。本当の私を見つけて欲しかった。私は、ここにいる。エレン・イェーガーではなく、ただのエレンとして。愛情でも憎悪でも良いから、私の名前を呼んで欲しい。だから見て、私を見て。

 

 

 薄暗い教室の床に4つの影が転がり、1つの影が立っていた。最後に立っていたのはオレだ。ジャンもマルコもダズもサムエルも、力尽きて床に転がっている。体液で濡れた教室は、ペチャペチャとしていた。それは愛の証だ。汚いなんて事はない。オレは目を逸らさず、その光景を穏やかな気持ちで見つめていた。

 ピーンポーンパーンポーンとチャイムが鳴る。校内放送とは異なるリズムだ。授業の1時限目が終わったのだろう。オレと床に転がっている4人は、授業を無断欠席した事になる。キース教官が怒るだろう。だけど休み時間の間に、4人が復活するのは難しそうだ。指で突いても反応がない。

 性行為をするのは、これで何人目だったかな。最初は屋敷でリヴァイさん、次は学園でトーマスとナックとミリウス、保健室でアルミン。そしてジャンとマルコとダズとサムエル……なんだ、まだ9人目か。こんなに気持ちいいのに、どうして私は我慢してたんだろう。もっと、もっと私は欲しかった。

 

「貴様ら、ここで何をしている!」

 

 噂をすれば何とやら……というかオレたちを探しに来たのかも知れない。それはキース教官だった。教室の中を見回すと、半裸のオレ、全裸の4人が見える。何があったのかは言うまでもない。教官の怒りが爆発するのは間違いなかった。それにしても教官って、よく見ると……

 

「ガーデン・アイリス、これは何事だ!」

「先生って、頭がツルツルで、かわいいですよね」

 

「貴様の耳は節穴か! 私の質問に答えろ!」

「先生で、ちょうど10人目です」

 

「10人目だと? まさか貴様……」

「オペラント・コード000、コードキー"ガーデン・アイリス"!」

 

 

——第六話「オペラント・コード(下)」

 

 

 エレンは仲の悪かった生徒と和解した……と思ったら空き教室へ連れ込み、授業を無断欠席して乱交する。さらに、その惨状を発見した教師にも襲いかかった。その後もオペラント・コードを悪用して、廊下で擦れ違った少年を、その場で犯している。明らかにエレンは暴走していた。

 

「"彼女"が手当り次第に少年たちと交わって、拷問部屋送りになる生徒が後を絶ちません。壁の修復も、地下の復旧も完了しておらず、このままでは学園の運営に支障が……」

「こうなると美少年クラブのシステムも意味を成さないな……」

 

 ヒゲを生やした執事の報告に、ガーデン・ローズは頭を悩ませる。執事の数は足りず、生徒の数も減りつつあった。地下が崩落しているため、拷問部屋送りとされている生徒も、別の場所に仮置きされている。最近のエレンは性格が過激になった。とは言っても、こんな行動をエレンが取るのは予想外だ。なぜ、これほどエレンが積極的になったのか、ガーデン・ローズは理解に苦しむ。

 

「……仕方ないな。地下の復旧に人手を回すか。それと少し早いが、"蕾"を解放する」

「了解しました」

 

「おまえは復旧の手配に向かえ、オレがガキどもの面倒を見る」

 

 エレンと少年たちの性行為は少なかった。そのため地下の復旧を後回しにしていたものの、エレンの暴走で拷問部屋の重要度は高まる。ガーデン・ローズは地下の復旧に手を付ける事になった。そしてガーデン・ローズは鍵束を持って、生産施設のある学園の端へ向かう。「蕾」というプレートの掛かった頑丈な鉄の扉を開け、数人の少年たちを招き入れた。

 

「ここがガーデンか!」

「一番乗りー!」

「おい、寮の場所わかるのか!」

「分かるよー!」

「まったく……」

 

 ガーデン・ローズが少年たちを連れて、廊下を歩く。その途中、窓に取り付けられているカーテンが閉ざされていた。そのカーテンは短く、カーテンと床の隙間に人の足は見えない。それを特に気にすることもなく、ガーデン・ローズは通り過ぎた。少年たちと共に、廊下の反対側にある扉から出て行く。

 その後でカーテンが開き、エレンが姿を見せた。よく見ると窓は、壁から外へ飛び出す形になっている。窓と壁の隙間に物を置ける場所があった。そこエレンは足を着け、カーテンに身を隠している。そこから飛び降りるとエレンは、少年たちの来た方向へ向かった。

 エレンは「蕾」の扉に手をかける。鍵は掛かっておらず、扉は開いた。その隙間に身を滑り込ませ、エレンは扉を閉める。その後、戻ってきたガーデン・ローズは扉の鍵を締めた。「蕾」に侵入したエレンに気付くことはなく、その場を立ち去る。壁に閉ざされたガーデンの、最後の夜が始まった。


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