1人のゴジラファンとしてお悔やみ申し上げます。
――― 整備工場 ―――
『…モゲラ起動確認!
整備員は最終作業に入れ!』
「おっしゃぁぁー!!!
30分以内に終わらせるぞ!」
モゲラの動力炉が起動した事を告げるアナウンスが流れ、整備長である神那の雄叫び後の号令下、整備員達が一斉にモゲラに取り付いた。
「30分、ねぇ…」
「大した根性の持ち主だよ、神那さんは」
「それにしても、兵器の王様にも困ったもんだ」
で、本当に30分以内に終わらせそうな勢いでテキパキ動き回っている整備員達に、箒が呆れて、一夏は苦笑していた。
因みにモゲラは“人類史上最強にして最高の兵器”との渾名で称賛されていたが、“名が長い”との理由で何時の間にかに“兵器王”に改名していたが、「
「て事は、30分強後に試運転って事がになるな」
「じゃあ、俺はガルーダの所に行った方がいいな」
「いや、ガルーダは私が乗り込むと言われている。
一夏、お前はグリフォンに乗ってもらうそうだ」
「じゃあ、ワイバーンはどうなるんだ?
メインパイラーが後4人いないだぜ」
一夏が指摘した通り、モゲラの採用したドリフトシステムにはパイラーが最低でも2人必要であるだけでなく、
此の為にドリフト式の機体のパイラーには兄弟(姉妹)や家族等の血縁者か夫婦が適正であり、実際ロシアのメカニコングのパイラーにはロシア人IS乗り第4号且つ初代ロシア代表アレクシスと、彼女の夫のサーシャのガイダノフスキー夫婦が内定していた。
遠隔操作式のジェットジャガーと建造中で仕様不明な紫龍は兎も角として、機龍号は詳細不明ながら新型補助コンピューター搭載で単座化していたが、質実剛健を優先した為に人の手を必要以上にいるロシア兵器の短所が出たのか、モゲラはメインパイラーが3人いるだけでなく、メインパイラー3人各々に補助要員が2人付く計9人が乗り込む大所帯となっていた。
当然ながらメインパイラーの3人内の2人は、司令官桜の小飼の箒と一夏であったが、3人目の事は彼等2人は全く知らないでいた。
そして動力担当のガルーダ搭乗の箒と探索担当(指揮官機)のグリフォン搭乗の一夏の2人が揃って射撃の腕がイマイチな事{特に後者“(銃が)無い方がマシ”“回避運動をしたら逆に当たりそう”とよく馬鹿にされている}に反して、砲火器を多々搭載するモゲラを生かす必要性から、火器担当のワイバーンに搭乗する3人目はある程度射撃に腕のある者が必須条件である事は言うまでもなかった。
更に一夏(箒は兎も角)との相性もあって、最有力候補がシャルロットだったが、彼女は日本支社長就任の上にIS乗りを引退している等諸々の事情で、代わりになりそうなセシリアとラウラにも声が掛かるも両人共に軍上層部が許可しなかった為に御破算、若干未知数の楯無は所在不明の上に何故か候補ですらないと聞いていた。
此の事に加えて時間的問題から鬼神隊のIS乗りから輩出されるのではと予想されいたが、その誰もが桜自らが人選した相当な実力者達が揃っていたのだから、誰が選ばれても不自然さは無かった。
先述したエレンとエリカ&ヒメルダ姉妹は言うに及ばず、医師長として普段はいない花怜は女子フェンシングオリンピック金メダリストにして生物学の世界的権威にしてノーベル賞受賞者白神源壱郎を祖父に持つサラブレッドに相応しい医学&生物学の期待のポープ、部隊長の美希は実力至上主義のハイパーレスキュー隊を渡り歩いた女性隊長第一号にして日本唯一のISを運用する
唯一の例外に近いのがみなみで、摩耶と同期の日本代表だが、彼女の自殺から桜に自らを売り込んだ志願者であった。
だが箒が安心しながら確信しているのが、一夏が歳上好きでなければ、彼女達は一夏を狙う恋敵には絶対ならない事であった。
更にどうも桜は妹分の箒に一夏をくっ付けたがっている気があった。
「あ~…いよいよブレイン・ハンドシェイクをやらされるんだな…」
で当の一夏は、プライバシーの侵害著しいブレイン・ハンドシェイクを嫌がっていて、それを見た箒も溜め息を小さく吐いた。
「…い……一夏、わ、私は、そんなに、気にしていないぞ」
「…なんで?」
「だ、だって、ほら、ブレイン・ハンドシェイクで相性が良かった男女は…恋人関係になったり……更に…け、結婚するのもいると聞くじゃないか」
えらく滑舌が悪く、更に何かを思い浮かべて徐々に顔を赤くしていき……最終的に湯気処か、某F91みたいに口から強制廃熱をしそうに湯気を喋りながら吐いて真っ赤っかな箒だったが、一夏も彼なりに何かを察して顔を赤くしていた。
まぁ、それでも箒は恋と物理の2面でなんとか前進しようとしていたが、両面揃って亀より鈍足のミリ単位でしか進んでいなかった。
「…箒め、相変わらず肝心な時に臆病になるな」
「私なら一夏くらい完璧に落としてみせますよ」
「でも、強気そうな外見に反して、初々しくて可愛らしいじゃないですか」
「でもさぁ~…こんなんじゃ、何時まで経っても変わんないよぉ~…」
「そうそう、やっぱり恋も戦いも強引じゃないと」
で、そんな箒の一夏への対応を、2人の遠方且つ上階で桜、美希、エレン、エリカ、ヒメルダの5人が各々の望遠鏡で覗いていた。
「……何やってるんですか?」
そんな5人を、六花や近くを過ぎる整備員達が呆れながら見ていた。
「なに、暇潰しだ」
「他人のを覗くのは、どうかも思いますよ」
「だってこう言うの面白いじゃん。
それに振られたらもっと面白いしね。
ほら“人の不幸は蜜の味”って言うし」
「…皆さん、他にやる事無いんですか?」
桜に続いてのエリカの返しに六花が溜め息を吐いたが…
「…あ!! 箒が一夏の隣に着いた!」
「「「「…何!!?」」」」
「え、何!!?
何が起こってるんの!?」
…ヒメルダの報告に桜達四人が一斉に反応して望遠鏡を覗き、その五人の背後で六花がなんとか覗こうと必死に動き回っていた。
で、見てみたら、箒が一夏が何度か咳き込んだ絶好の好機を突いて、急接近して彼の背中を擦っていた。
尤も2人が目線を合わせた直後に思わず退いたが、良い雰囲気になっていた。
「……い、一夏、もし良かったら私t…」
箒の求めに一夏も肯定し、そのまま
「「……っ!?」」
…その直前に、何かが手摺をぶった斬って、慌てて退いた2人の間に文字通りに割って入って通路に突き刺さった!
「…こ……此れって、双天牙月……だよな」
その物体を一夏と箒が茫然と暫く見つめていたが、一夏が物体がとあるISの武器である事に気付いた……否、此の場合は思い出したであった…
「……て事は、まさか…」
箒の呟き後、2人揃って双天牙月が飛んできた上方にゆっくり振り向くと…
「…いぃぃぃちかぁぁぁ~!!!
そろそろ作業が終わるから、グリフォンの所に行ってほしいんだって!」
…その先に甲龍を纏った鈴音が宙に浮かんでいた。
そして鈴音は悪魔ならぬ、鬼の笑みを浮かべていた。
「……す、鈴…」
「…うぉ前が何で、此所にいるんだぁぁぁー!!?」
鈴音に一夏が思わず退いて、箒が叫び……ではなく、ゴジラの幻影が見える程の咆哮を上げた。
更に言うと桜、美希、エレンの3人が“えっ!?”となり、エリカとヒメルダの双子は爆笑していた。
「何でって?
だってそれは…」
で、箒達への答えとして、鈴音は一夏の後ろに着地して…
「…私がワイバーンのメインパイラーだからよ!」
…甲龍を解除し、陸自の制服姿(見た処、階級証は箒と同じ三尉)で胸を張りながら答えた。
「そうか! 鈴がワイバーンのメインパイラーなのか!」
「馬鹿な! 何でお前なんだ!?」
鈴音の事を一夏は単純に喜んでいたが、自衛隊には外人部隊も無ければ、客人将校制度も無い以上は箒の様に疑問を感じるのは当たり前であった。
ましてや鈴音は中国人且つ中国籍であり、領海等で対立傾向である上に機龍号の事もあっては尚更だった。
因みに鈴音のワイバーンメインパイラー発言に美希、エレン、エリカの望遠鏡を拝借した六花の3人(エリカとヒメルダは笑い過ぎて行動不能)が一斉に桜に振り向いて、“本当にそうなの!?”と視線で訴えていたが、当の桜は顔前で右手を振って“知らない知らない!”と答えていたが、その直後に麗花から鈴音の着任の書類一式を受け取って顔をしかめていた。
「ああ、その点等は大丈夫だ」
「あ、神那さん!」
「「神那さん!?」」
で、そんな時に神那がリフトで上がってきた。
「どう言う事ですか?」
「私、自由国籍権からの日本代表枠を得たから問題は無いわよ。
それに、ちゃーんと日本国籍も得たしね」
「そんで私がコイツの後継人って事だ」
一夏は兎も角として、箒は“ぎょっ!”としていたが、実際IS学園在学時代の鈴音は驚異的な鍛練と勉学で学年成績で五位以内に常時居続け、更に代理として再任した六花を挟んでの刀奈の後任生徒会長に当選していた。
で、その結果、自由国籍を得るだけでなく、一夏退学で空いた日本代表枠に滑り込んだのだから、流石と言うしかなかった。
元々鈴音は同じ転入生だったシャルロットとラウラの二人と違ってそれなりのバックを持たずに、実力だけで国家代表としての地位を得た秀才だったから、そんな彼女を
「…っ! 甲龍はどうやって持ち出したんだ!?
アレは中国の機密事項の塊みたいな物なんだろ!」
悪足掻きに近かったが、箒が指摘して一夏が気付いた通り、世が2つの第四世代機の御時世であっても、鈴音の甲龍は第三世代機内でもかなりの名機である上、龍砲等の中国独自の技術が詰まっている以上、中国が甲龍の持ち出しを許すとは思えなかった。
「ああ、その事なら私自身でちゃんと話を着けてきたから。
最近の上の連中は話が分かりやすくて楽だったわよ」
((……脅したな))
元々なんとなく予想はしていた一夏と箒だったが、鈴音の返事から真実を察した。
なんとも酷い事だが、ラウラやシャルロット(当時は男装してシャルルと名乗っていた)みたいに政治的理由が一切無かった鈴音は、中国の軍及び政府の高官達を脅迫してIS学園への編入を成し遂げると言う前科を持っていた。
「と言う訳で、コイツと仲良くしてくれや!」
神那に合わせて鈴音も笑っていたが、目の中に“一夏は渡さない”と書かれていたのを箒は気付いた。
「……ほ、箒……鈴…」
そんな事を全く分からないでいる一夏は箒と鈴音の怒気とも殺気とも言える何かで退いて、更に2人の各々背後にゴジラと
で此の間に神那が作業に戻ろうとしたが、その前に桜達に向かって舌を出していた。
「…やってくれたな、神那!」
桜が手摺を殴っていたが…
「皆さん、やる事あるでしょ?」
…直ぐ脇に来たエレンが満面の笑みで右の掌を差し出した為、美希、エリカ、ヒメルダの3人と揃って舌打ちをした後、そのエレンの手に次々に1万円札を叩き付けていた。
「……1万円の出費…」
「箒がグダグダやってるからこうなるんだ!」
「あんなの誰だって予測出来ないよ!」
「皆さん、予知せぬ可能性を予測する事は、戦略上大切な事ですよ」
「…なんか、千冬の勝ち誇って笑う顔が浮かんで腹立たしいぞ」
「私を通して“弟さんは簡単には渡さない”って、言ってきたんじゃないですか?」
賭けに1人勝ちしたエレンに敗者である美希、エリカ、ヒメルダの3人が毒づき、更に桜が仏頂面になっていたが、当のエレンは見せ付けるかの様に4枚の1万円札を馬鹿丁寧に確認していた。
そんな5人に呆れて特大の溜め息を吐いた六花の右肩を麗花が掴んでいた。
で、こんなんで苛立った桜の殺気を感じた箒に悪寒が走った後、その殺気の方角の先にいる桜達に気付き、更に一夏とのやり取りを終始見られていただけでなく、賭けが行われていた事を察した。
賭けの結果など、殺気を発する桜だけでなく、笑顔で手を振るエレンを見たら簡単に分かった。
桜に八つ当たりされる未来を予想した箒が顔を青くした直後、その桜が何所からか拡声器を取り出した。
「其所の3人!!!
さっさとモゲラに乗り込む準備をしろ!!!
それと箒、お前には話す事があるからな!!!」
一夏達3人は桜に慌てて了解を示す敬礼をしたが、箒のみは死刑申告をされてゲッソリしていた。
「アンタも大変ね…」
そんな箒に、一夏は彼女の左肩を叩き、鈴音は慰めの言葉を掛けていたけど…
感想・御意見お待ちしています。
と言うわけで、ヒロインが抜け駆けしたら成功直前で怒り心頭の他のヒロインが乱入すると言うIS恒例行事で、3人目のメインパイラーである鈴音が登場。
自分で言うのもなんですが、鈴音らしいよねぇ~…
桜
「此れでいよいよモゲラの稼動か?」
先ずは実際に搭乗しての最終試験、その試験結果を総理を務める昴への報告+α、そしてモゲラの初陣を予定しています。
桜
「相手はゴジラか?」
最初は機龍みたいにそうしようかなと思っていましたが、初陣故に色々粗が出るのでvs版以上に破壊される可能性が大だったので、別の怪獣にしました。
で、その予定される相手は“パシフィック・リム”の初盤で主役機ジプシー・デンジャーを追い詰めたナイフヘッドです。
桜
「ある意味、初戦で粗が出るのはメカゴジラの伝統行事だからな。
なにせ、初代はヘッドコントローラーが損傷、vs版はエネルギー逆流(+α)で大破、そして機龍は暴走したからな」
更に言えば、没になった機龍の初陣の相手がアンギラスだった事も影響していますよ。