それでは本編をどうぞ
――― 八尾駐屯地 ―――
「何だ、何だ!?」
「港湾の様子がおかしいぞ!」
新次郎の誘引作戦が行われいた頃、不本意ながら基地待機となった自衛官の面々は、各々いろんな手段で港湾を見つめ、上手い具合にゴジラが沖に導かれているとの報告に誰もが喜んでいた。
だが突然爆発が起こり、続けて砲撃が開始された為に騒然となっていた。
当然、自衛官達は現場の警察官達が兵器運用など出来る筈がなく、更に使っている兵器が旧式である事を知っている為、危険度を察していた。
しかも彼等の不安を煽るかの様に、ゴジラの『放射熱線』が天に上って大きく揺れていた。
此処まででも十分であったが、更に火に油を注ぐ出来事が伝えられた。
「大変です!!
ゴジラに続いて、先月台湾を襲撃したオオタチが上陸した模様です!
厄介な事にゴジラとオオタチは争いながら都心に向かっているそうです!」
此の報告に全員が一斉に「ええ!?」と叫んだ。
「何でオオタチまでが現れたんだ!?」
「情報が錯綜していて分かりません。
ですが、ゴジラの誘引しようとした照明弾がオオタチを誤って呼び寄せてしまったとの未確認情報が入ってます」
此処まで来たら彼等がやろうとする事は一つであった。
「…みんな直ぐ出撃の準備だ!!」
誰かが叫ぶと同時に自衛官達は一斉に武器や車両の元へと走り出した。
更に同時刻、各署で隊長達が司令官室に詰めかけていた。
当然、その理由は全員同じであった。
「直ぐ出撃すべきです!」
「怪獣が二頭も現れた以上、警察では此の現状を打破出来る筈がありません!」
「今なら間に合います!
戦闘が駄目でも、せめて府民の避難誘導をやらせて下さい!」
「そうや!
ゴジラとオオタチの進路上にはかなりの府民が取り残されています!」
司令官も隊長達の主張には賛成で今すぐにでも出撃を命じたがっていたが…
「駄目です!!
そんな事は一切認められません!」
…彼等の訴えは悉く司令官の脇にいる、ご丁寧に自衛隊が変に動かない様に政府から監視目的で派遣された女性書記官に却下されていた。
「どう言う事ですか!?
書記官は此の現状を分かっていないのですか!?」
「此の現状だからです!
都道府県や政府から要請が出ていないのに、出撃を許すと思っていたのですか!?」
書記官の指摘で隊長達が「うっ」と呻いた通り、嘗ての国軍の暴走からのアレルギーから自衛隊に法的束縛を“これでもか”と規制されている以上はどうする事も出来なかった。
ましてや、自衛隊は対怪獣作戦は戦闘ではなく害獣駆除の一つと主張しているのだから、尚更であった。
「…直ぐに政府や大阪府に至急連絡を取れないのですか!?」
「既にやっていますよ。
大阪府はまだ繋がりませんが、政府から滋賀、和歌山、奈良、京都の隣県から増援を送る事が通達されています」
書記官の通達に隊長達が思わず「はぁ!?」と叫ぶだけでなく、司令官が頭を抑えながら臥せっていた。
「馬鹿な!!?
怪獣同士の戦いが起こっているだけでなく、逃げようとしている府民達で大混乱が起こっている現場に他所の奴等を放り込む気なのか!?」
「それ以前に間に合わんぞ!!」
「大丈夫です。
飛んでくる事には何の問題も有りませんから」
此の返事から、送られるのがIS部隊だけであると言う事に加え、ゴジラとオオタチを倒せるとの盲信に全員がギョッとしていた。
そして彼等は嘗て自衛隊嫌いの県知事が出動要請を長期間渋った為に無駄に被災者を死なせてしまった阪神淡路大震災(そしてその責任を自衛隊が取らされた)だけでなく、伊浜での一件をまるで学んでいない政府に失望に近いモノを感じていた。
更に人間とはこんなに愚者なのかとも思っていたが、此の裏で現場に当たっている大阪警察が自衛隊への引き継ぎを強硬しようとしていたが、残念ながらその直前にゴジラの『放射熱線』が直撃して、署もろとも蒸発していた。
だが、彼等は此の書記官を感情任せに殴ろうとは頭の片隅には有ったが、そうしたら自衛隊が本当に終わってしまう事を自覚してギリギリの処で抑え込んでいていた。
だからこそ書記官をなんとか説き伏せようとしていたが、彼等自身無駄な水掛けになっている事を自覚していた。
尚、此れは大阪府内のもう一つの駐在地である信太山でも同じ事が起こっており……結局自衛隊は出動が遅れる処か出動出来ずに終わる事となった…
――― 大阪市内 ―――
自衛隊が動けずにいた上に府民避難だけでなくゴジラ迎撃を不本意で任されていた警察官達は、人災と思われるミスでゴジラに防衛線が突破されるだけでなく、ゴジラに続いてオオタチが出現して怪獣同士の戦いが起り、しかも二頭が争いながら都心部に近付いている事が通達され、しかも色々な経路は不明だが府民達にもそれが伝わって一斉に市外へ逃げ出した為に大阪全体に大混乱が発生していた。
勿論、警察官達は必死に避難誘導をしていたが、元々クリスマスイブで平日を遥かに超える府民達に反比例して職員が少ない事に迎撃作戦をやらされたのだから、瞬く間に許容範囲を超えて総崩れとなっていた。
「何をやっとんや!!」
「早く退かんか!!」
当然この結果、大阪の至る所で動脈硬化が起こって無駄な争いや停滞が起こり、そこにゴジラとオオタチが争いながら来たのだから語るも悲惨な出来事が起き続けていた。
しかも此の大混乱にゴジラとオオタチが変電所を片っ端から破壊した為、大阪全体で停電が起きて状況をより悲惨なモノにして、人々の中に足手まといになりかねない幼子や年老いた親(此方のみには親が自分から切り捨てを望み、それを泣きながら了承した者達がいた)を切り捨てる者達が少なからず出ていた。
だが此の惨状を作った張本人達はそんなのお構いなしに戦い続け……二頭が気にもせずに踏み潰し続けるだけでなく、立ち上がった処に隙が出来たオオタチをゴジラが高層ビルに押し付けた為、ドミノ式にビル群の崩落が相次いで逃げ遅れた人々が生き埋めになっていっていた。
更にゴジラは『放射熱線』の追撃打を放とうとしたが、それに気付いたオオタチが尻尾の鉤爪でゴジラの首を掴んで無理矢理射線を変え…代わりに通天閣が周囲諸共爆散し、それ等の残骸が人々目掛けて降り注いでいた。
だが今回のはまだマシな方で、大抵の場合は『放射熱線』が動けずにいる車両群諸共人々を蒸発させて、至る所で火災が起きていた。
更にオオタチも負けずに『消化液』をゴジラ目掛けて放ち……当のゴジラは悲鳴を上げるのみだが、『消化液』の流れ弾が人間融解と言う惨劇を多々起こすだけでなく、ビルも解け落ちて次々に崩落していた。
「地下や! 地下鉄に行くんや!」
地上がこんな有様である以上、人々が地下鉄に殺到していたのは当然な話であった。
「押さないで下さい!! 押さないで下さい!!
列車はまだまだ来ます!」
「そんなん信じられるか!!」
「頼む、乗せてくれ!
金なら幾らでも払う!」
だがその地下鉄処か、地上の列車群も車両に殺到する人々が原因で動く処か、扉さえ閉めれずにいた。
否、中には恐怖に駆られた運転手によって強行発車をして、路線に落ちた轢き殺しながら進んでいき、その結果は次の駅で停車している別の列車に追突して乗客やホームの人々を殺傷していくか、線路が破壊されていた為に架橋から落下して近くの人々を押し潰していた。
だが地下鉄に関しては追突事故が起きてはいるが、線路が破壊されているのが無い為か、極少数は脱出に成功しているのがいた。
しかしその地下街も含めて怪獣二頭の重さに耐え切れず、地上の建物群を巻き添えに地盤が崩落して人々が埋まっていっていた。
そして地下の者達にトドメとして……川沿いにいたゴジラにオオタチが体当たりした為、ゴジラの足元が地滑りを起こしてしまってゴジラとオオタチが縺れながら川に落下し、特大の地鳴りを起こす程の大規模の崩落が起こってそこ真下にあった地下鉄の路線に川の水が流れ込んでいった。
「……っ!?」
その後、近くの駅で駅員に続いて人々が序々に大きくなっている轟音に気付いて全員が硬直していると……川の水が押し寄せて来た!
当然、人々は直ぐ逃げようとしたが、水に気付かない後続に阻まれてしまい、アッと言う間に飲み込まれていった。
その中のほんの何割かは水没しながらもヒーターや柱に掴まって抗ってはいたが、酸欠や真冬の川の冷たさに加えて過重量積載の列車さえも押し流す激流に耐え切れずに次々に手放していった。
しかも此の水は地下鉄各線だけでなく、地下鉄に隣接する地下街をも次々に水没させていき……よりにもよってゴジラとオオタチが崩落箇所で争い続けていた所為で浸水箇所が広がってしまい、水量が益々増えていた。
「ああ…」
新次郎を取り押さえた一夏は彼を生き残った警察官達に託すと、ゴジラとオオタチを追いかけてきたが、その二頭が次々に起こす惨劇に言葉を失っていた。
だがその一夏の脇を報道のモノと思われるヘリに気付いて退避を促そうとした直後、ゴジラがオオタチを持ち上げて振り回した後に投げ飛ばされると……そのヘリにオオタチが直撃して落下した!
で、逆さまになったオオタチが足掻いている隙に崩落箇所から上ってきたゴジラが歩み寄ってきたが、素早く立ち上がったオオタチが『消化液』を放ち、左目に直撃したゴジラが意に返さずオオタチの口の中に右手を突っ込み……『消化液』の器官を引き千切ってしまった。
当然ながらオオタチは絶叫していたが、器官を脇に捨てたゴジラも左目が焼けただけでなく、右手の甲の皮膚がごっそり溶けて骨が剝き出しになっていた為に辛そうに呻いて僅かに伏せていた。
だが此の隙に怒り心頭のオオタチが尻尾の鉤爪でゴジラの首を絞めて左右に揺さぶっていたが、背鰭を青白く発光させたゴジラが発射直前の『放射熱線』を飲み込んでしまい……ゴジラの体全体が白く点滅した直後、新技『体内放射』によってオオタチの尻尾が根元から爆散した。
此れによってオオタチが当然ながら絶叫したが、その直後にゴジラに素早く昇って後ろの両足で両肩をがっちり掴むと……前足が翼に変形させてそのまま飛び上がろうしたが、予想以上にゴジラが重かった所為で一回落ちてしまった。
「す、凄げぇ…」
オオタチの行為に一夏や人々が驚いていたが、ゴジラがされるがままな訳がなく…『放射熱線』でオオタチの右翼をぶった切ってしまい……何時の間にかに近くにあった大阪城の堀にゴジラが落ちた後、オオタチが天守閣に頭から激突したが、なんとか耐えた天守閣に凭れたオオタチが伸びていた。
もっとも直ぐ目を覚ましたオオタチだったが、此の隙にゴジラに首を噛まれてしまい、なんとか振り解こうと悲鳴を上げて足掻いていた。
「…大阪城が!?」
だが天守閣が崩れた直後、ゴジラに首の骨を折られたオオタチが絶叫を上げ、ゴジラが口を放した後によろめきながら少し前進したオオタチは堀に崩れ落ちて動かなくなってしまった。
オオタチの最後を見下ろして確認したゴジラは体を揺らして特大の咆哮を上げると、最後にトドメの『放射熱線』をオオタチに放って炎上させた。
火葬状態のオオタチとの戦いに満足したのか、ゴジラは体を揺らしながら勝利の雄叫びを上げると、そのまま回れ右をして真っ直ぐ海へ帰還していった。
戦いは終わった………だが大阪の地獄以上の地獄絵図が一夏の眼前に広がっていた…
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今回の話は“ゴジラの逆襲”と基本とし、“ガメラ3