ゴジラvsモゲラ   作:サイレント・レイ

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 注:今回の投稿とほぼ同時に前話のサブタイトルの尻に“(前編)”を着けました。

 それでは本編をどうぞ。



第11話 箒の帰還(後編)

――― 整備工場 ―――

 

 

 IS学園時代施設中で最も巨大で象徴的にしてクラス対抗マッチや学年別トーナメント等、世界中から来賓を招いての数多の名勝負が行われたアリーナであったが、自衛隊に摂取されて以降、外見こそ代わり映えしていなかったが、その地下をごっそり抉り取っての大改装によって対怪獣兵器専用の整備工場と化していた。

 

「…グリフォン、偽装工事終了。

最終調整も間も無く終わります」

 

「やっと出来たか」

 

 そして現在、その整備工場では大型戦闘機グリフォンが完成していた。

 

「…やっと末っ子が出来たか。

で、ガルーダとワイバーンはどうだ?」

 

「ガルーダは少しメンテナンスを行えば良いだけですが、ワイバーンは手直し工事をかなり行う必要がありますので……三十分強は掛かります」

 

「分かった。 では三機揃っての最終試験は一時間後に行う事とする。

時間内にしっかり仕上げろよ」

 

 グリフォンのすぐ脇の連絡路で、ロボットアーム群と共に整備員達が張り付き始めたガルーダとワイバーンの報告をアイパッドで確認しながら受けていた此所の司令官は、グリフォンの製作に助っ人として入っていた春日麗花…日本舞踊の家元でもある異例のISテストパイラーである彼女の肩をバンと叩いて指示を出すと、その麗花が敬礼しての見送りを背を向ながら手を振って自分の主な職場である司令官室へと歩いていった。

 と言っても司令官が向かったのは校長室を転用した正規のではなく、整備工場のすぐ脇に作られた臨時の所のであった。

 

「……さてと…」

 

 で入室して席に座ると防衛省や政府への報告書の制作に入ったが、暫くするとノックが聞こえたので打ち止めとなった。

 

「…黒木です!!」

 

「ああ、エレンか!

入って良いぞ!」

 

 司令官がノックの主がエレンだと分かると同時に彼女の目的と同伴者を察した様だった。

 で実際エレンが入室きて敬礼している隣に箒が続いて表れた。

 

「…大神司令官、篠ノ之箒をお連れしました!」

 

「……申告します!

篠ノ之箒、只今着任した事を報告します!

此れは防衛省からの着任書です」

 

 エレンが何処かわざとらしさを感じさせる程に馬鹿丁寧に報告した後、箒は被っていた軍帽を脱いで左脇に挟んで敬礼すると司令官に着任報告をして書類を手渡した。

 

「…軍事訓練と実戦経験は?」

 

「イギリス代表のセシリア・オルコットの紹介でイギリス軍の特別訓練に参加、また中東への半年間の派遣任務を受けています!」

 

「……よろしい!

特殊生物迎撃統合任務部隊の司令官として貴女を三尉として歓迎します」

 

「は!!!……此れで問題無いですよね、桜さん?」

 

 簡単であったが儀式を無事に終えた箒に司令官は…陸将補に昇進した桜は彼女に微笑んだ。

 因みに特殊生物迎撃統合任務部隊とは総理大臣直轄として対怪獣作戦のみ独立権限で活動可能(但し総理への事後報告は必須)な陸海空から選抜されたISが集中配備部隊であるのだが、此の独立部隊は憲法の束縛(時間と予算が無かった為に憲法改正が出来ず)や無用な権益争いを回避する為に人員数は一部隊強のみ、表向きはあくまでも自衛隊本隊が動くまでの時間稼ぎが任務となっていた。

 因みに部隊名が長過ぎる為に略称か通称を募集しようとしたが、桜がごり押しで“鬼神隊”に決めたのだが鬼の字を入れた為に縁起が悪いと反対が少々あった。

 

「エレン、後は私がやっておく。

下がって良し!」

 

「はい!」

 

 笑って敬礼しながら了解したエレンが退室した後、桜は机の引き出しの一つから三尉の階級証を二つ取り出すとそれ等を箒の制服の両肩に着けた。

 

「…此れで良し!

ん~立派立派!!」

 

 司令官でありながら自ら階級証を着けて肩を軽く叩いた桜に、箒が少し照れて頬が少し赤くなっていた。

 

「…そ、そう言えば桜さん、何か見ない間に髪白くなりましたね」

 

 照れ隠しから箒が自分と同じようにポニーテールにして束ねている黒い長髪が白髪が混じっていた為に鼠色になっている事を指摘したが、当の桜は「ああ、此れ」と言わんばかりに髪を撫でていた。

 

「なに、将校にして司令官となると気苦労と多くてね。

特に我が非常に強いIS乗り達を束ねているとこうなるよ」

 

「だとしたら大神一郎少将の偉大さがよく分かったんじゃないんですか?」

 

「ああ、本当に曾祖父の偉大さには頭が下がるよ」

 

 桜と箒が脇の本棚の写真立てに入っている白黒写真に写っている……知らない人には“ベルサイユの薔薇”を思い浮かべそうな旧国軍の礼装に身を包みサーベルを携えた大神一郎海軍少将を見つめた。

 桜の曾祖父である大神一郎とは太平洋戦争末期、剣部隊(第343海軍航空隊)や芙蓉部隊と並んで称賛される旧国軍唯一の女性のみの戦闘機隊(しかも海軍最強の戦闘機・紫電(二一型)で固めた剣部隊とは違って旧型の零戦のみ)を私兵団に近い形で組織し、半年にも満たない短期間であったが帝都東京を守った名将と言える御仁であった。

 ある意味日本のみではIS関連の先見性を見ていたとして、女性達からも評価を得てもいいと普通は思われるのだが、“英雄色を好む”の言葉通り女性関係がドン底評価で、並み以上にモテる一夏さえも真っ青な十三股伝説(実際はもっといた可能性大)や入浴中の女性への覗き常習犯(本人曰く“体が勝手に動く”との事)の二つの大罪を持っていた。

 当たり前の話だが、此の為に桜の曾祖母にして一郎と結ばれた妻に彼は何度も殺されかけた(不思議な事に離婚話は全く無い)上、現代の女性達処か男性の半分……と言うか、モテない男性達にも嫌み嫌われる存在と化し、凄い事に広辞苑に“スケコマシ或いは女性と男性一部の敵”と形容詞(某ニューリーダーとほぼ同じ扱い)でも載っていたが、人格者にして我が強い女性戦闘機乗りを束ね従えた名将(旧海軍が解体されなかったら将来的に連合艦隊司令長官となっていたと最高評価、軍人としての評価は批難皆無)であった事は確かで、悪行伝説も含めて男性達の憧れ、多くの作品で名男優に演じられる程のカリスマ的人気を保っていた。

 因みに一郎に共感するものがあるらしい一夏は、此処暫く彼の墓をやたら訪れては色々悩みを打ち明けているらしく、更に桜の実弟・神宮司新次郎にも一郎の遺伝子が色濃く受け継がれて覗き常習犯となっており…何と束と千冬のを覗いて両者各々に殺されかけると言う伝説(本人曰く三途の川を腰が沈む程進んで対岸で手を振っている一郎を確認)を持ち、箒と一夏も各々の姉が関わった二つの出来事を目撃していて実際に担架で運ばれる瀕死の新次郎を目撃していた。

 因みに伝説の後日、覗きに関して……と言うより束と千冬の裸体を聞きたがる人間が多数(意外な事に男より女性の方が多かった)いたが、残念(?)な事に新次郎は覗き何処かその週丸ごと記憶が欠落していた。

 で話を戻して、大神一郎の写真を見詰めていた二人だったが、扉をノックする音が聞こえたのでそちらに振り向いた。

 

「…入れ!」

 

「……失礼します!」

 

「…宮島先輩?」

 

 桜の許可の下に入室したのがIS学園に於ける箒の二年上の先輩であった宮島六花であった事に少し驚いていた。

 因みに六花は刀奈の先代の生徒会長であったのだが、刀奈の退学によって選挙が行われる迄の代理として生徒会長に再任した事があった。

 

「…大神司令官、三機の準備が出来たので直ぐ来て欲しいとの事です」

 

 只、当の六花は箒を一目見ただけで、桜に伝令を伝えるだけであった。

 

「分かった。 直ぐ行くから先に行ってろ」

 

「分かりました」

 

 桜に敬礼した六花はそのまま退室し、扉を閉める前に箒に微笑ましながら手を振っていた。

 

「…さて、丁度良い時だから見させてやる」

 

「はい!!」

 

 箒も断る事なく桜に続いて整備工場へと向かった。

 只、その移動中、何故かそわそわしていた箒に桜は“落ち着け”と肩を叩いていた。

 で到着するとグリフォン、ワイバーン、ガルーダと上から順に吊り下げられている光景が先ず目に入った。

 

「……一夏ぁ~…相変わらず下手だったねぇ~」

 

「そうそう、此所じゃ“織斑千冬”の名札は効かないんだから、こりゃもっとしごかないとねぇ~」

 

「エリカさん、ヒメさん、そりゃないですよ!」 

 

「ど~する~…ヒメェ~?」

 

「ど~しようか、エリィ~?」

 

 此の時、桜は整備員達と三機の事で打ち合わせをしていたが、ガルーダとワイバーンの搭乗員と思われる者達が歩み寄ってきていて、その中でラウラと同等かそれ以下の小柄体型のエリカ・K・インメルマンと妹のヒメルダ(通称:ヒメ)に弄られている一夏を見つけた。

 因みに織斑家(千冬&一夏)や更識家(刀奈&簪)を例に姉妹でIS乗りはそれなりにいるのだが、エリカとヒメルダの場合は現在確認されているなかでは世界唯一の双子(しかも意外にいないハーフ)のIS乗りであった……そこ、ハルトマンとか言わない!!

 勿論、姉妹共に凄腕なのだが、何より此の双子ならではの特性でIS学園在学時代の三年間(此の双子には千冬さえ撃墜されかけたとの噂あり)だけでなく卒業以降もタッグ戦での絶対王者として君臨していた。

 只、外見だけでなく中身も子供っぽいらしく二人して部隊長である辻森美希に頭を殴られていた。

 

「……箒?」

 

 此処で一夏も箒に気付いたが、その箒は桜処か美希達にも気づかれる程に動揺していた。

 

「…みなみはどうした?」

 

「微熱があったので医療室で白神先生に診てもらってます」

 

「……やむを得ないと言え、また花怜にぼやかれなきゃ良いんだが…」

 

 美希から彼女の同僚の冨樫みなみが生物研究主任兼医師長の白神花怜の所に出向いている事を伝えられた桜が小言を言っている脇で、箒と一夏が相手に何を言おうかと戸惑っていた。

 その二人に、にやついているエリカとヒメだけでなく、桜と美希も然り気無くやり取りをしながら横目で見ていた。

 

「……ほ、箒…」

 

 最初に口を開いた一夏に箒だけでなく、桜達四人も反応したが…

 

「…千冬姉の動向で何か聞いてないか?」

 

…まぁ彼なりに頑張って何とか出したんだろうが、出たのが姉に対する事だったので箒がムッとした直後、一夏がエリカとヒメに美希の順に殴られるだけでなく桜の飛び蹴りで吹き飛ばされた。

 

「…何で!?」

 

「少しは女心を学ばんか!!」

 

 起き上がりながら抗議した一夏に桜が説教をしている間、箒が哀れみとして美希達三人に肩を叩かれていた。

 

「…まったく千冬はどんな教育をしていたんだ?

否、意外に人間関係がぶきっちょのアイツにそれは無理か…」

 

 更に千冬にまで誘爆していたが、何故かいない本人ではなく、たった今此所に来たエレンがウッとなっていた。

 

「…あ、あの、桜さん、戦部整備長がグリフォンに来て欲しいそうです」

 

「ああ、そうか。

箒、お前と一夏は暫く後で良いからな」

 

「ではその移動中にワイバーンとガルーダの報告をします」

 

「ええ~!! 此所で良いじゃん!?」

 

「そうだ!! そうだ!!」

 

 箒に気を利かせた桜と美希が嫌がったエリカとヒメを引き摺って行き、それにエレンが首を傾げながら続いたが、箒は感謝と同時に変なプレッシャーを感じていた。

 

「…い、伊浜の一件後、に、中退して怠けていると思ったが、中々逞しくなっているじゃないか?」

 

 弱冠たどたどしかったが、先程は見事に爆沈した一夏と違って箒は上手い具合に切口を作った。

 

「ああ、桜さんの引き抜きと七光りがあったけど、一曹になった上に近々曹長に昇れるそうだ!」

 

 現在は桜付きの一曹の身分だけでなく曹長への昇格内定に一夏が嬉々としながら話していたが、自分は三尉である事を黙っていた箒は気付かれない様に申し訳なさそうにしていた。

 只、桜の行為が有るが故に嫌がらせ等があっただろうに、それを乗り切った事は確かだと箒は察していた。

 

「それに新次郎の兄やと一緒だったと言え、俺ゴジラと会ったからな」

 

「…一夏、お前もあの大阪の一件にいたのか!?」

 

 伊浜の一件の半年後に起こった大阪の出来事に一夏がいたとの事に箒が驚いていた。

 

「ああ、何とかな…」

 

「…あの事は私達も聞いている。

アレは酷かっただろ?」

 

「ああ、新兄も不可抗力だったと言え、未だに悔やんでるからな…」

 

 通路脇の手摺に胸部を乗せた一夏に釣られて箒も複数のロボットアームで溶接されているワイバーンを見詰めたが、此の時に一夏は携帯式の呼吸器を一口吸っていた事に気づかなった。

 そして当時を思い起こしながら一夏はゴジラの大阪襲撃を語り始めた…




 感想・御意見御待ちしています。

 先ず最初に前回後書きで書いた“機動戦士ガンダム 逆襲のシャア”のロンド・ベルを参考にした部隊の名前“特殊生物迎撃統合任務部隊”は感想欄でも書いた通り俊伯さんのを採用しました。
 通称“鬼神隊”は自分が作りましたが、何故此れになったのかはちゃんと本編で書きます。

ラウラ
「…何か前回のエレンを初めとした女性キャラが今回ポンポン出てきたけど、何か私と教官とセシリアには聞き覚えのがあるのだが?」

 まぁ、女性陣は元ネタのキャラ達に東宝特撮群から姓を替えました。
…で以下はその通り

・花怜 → vsビオランテ
・美希 → xメガギラス
・エリカ & ヒメルダ → 地球防衛軍
・エレン → vsビオランテ & vsデストロイア
・麗花 → ガス人間一号
・六花 → 対メカゴジラ
・みなみ → xメカゴジラ & GMM


「…此れ、誰と誰を混ぜたのが分かる人いるのか?」

 さぁ?
 少なくともWikipediaで調べたら姓の元は分かる筈だよ。

 さぁ~て、次回からは大阪で何が起こったのかを書いていきま~す。
 少しネタ晴れですが、大阪のは明らかに人災です。


「“シン・ゴジラ”でも描かれていたが、自衛隊って如何に動かすのが面倒臭いが分かったしな…」

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