ゴジラvsモゲラ   作:サイレント・レイ

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プロローグ 白騎士事件の闇

――― ???? ―――

 

 

「♪~…」

 

 此の時、篠乃之束は至高の光景を観戦しながら、コンソールを鼻歌を交えて操作していた。

 

「…良いね、良いねぇ~……ちいちゃん、最高だよぉ~…」

 

 いい歳をしている束が幼子の様に喜び燥いでいたが、それは無理も無い話であった。

 なんせ現在、スクリーンには束が生み出したパワードスーツことIS(インフィニット・ストラトス)の中でも最高傑作と言える白騎士を、彼女の幼馴染みであるちいちゃんこと織斑千冬が纏って、無限とも思える程のミサイルを片っ端から斬り捨てていたからだ。

 元々ISは宇宙活動を目的に束が作り上げた代物だったが、軍事兵器としても恐るべき潜在能力を秘めていたのだった。

 処がISは開発が大停滞をしていた上に女性しか装着・起動しないと言う致命的な欠点を持っていた為、従来兵器を信奉されていた事もあって、誰からも見向きもされなかった。

 だが此の一件でISは世界中から注目を集めるのは間違いなく、現に世界各国は偵察衛星等を通して此の光景を目撃していた。

 そしてISが世界の中心となる上、世界其の物が変わると確信していた。

 此の為、歓喜の笑いを必死に堪えていた束であったが…

 

「……うん?」

 

…今までのミサイルと明らかに違う大型の物が目に映った。

 最もそれの正体を探ろうとする前に千冬も気付き、更に危険性を感じ取って真っ先にそのミサイルの弾頭を切り捨てた。

 

「…ありゃりゃ、核ミサイルまで交じっちゃってたか。

あ~…しかも此れだけじゃないな」

 

 その弾頭の外装が剥がれて中から放射能のマークが描かれた物体が落ちていったのを見て核弾頭……しかも戦略級の代物であった事に気付いた。

 只、此れに流石のクールビューティの千冬が画面越しでも分かる位に驚いていたが、当の束は他人事の様にしていた。

 

「……ちいちゃ~ん、核ミサイルがかなりの数が紛れているから、それ等を優先して落としてくれな~い?

勿論、ちゃんと教えるから」

 

 だが通信機越しに怒鳴っている千冬が、核弾頭その物を傷つけないように上手く落としていた事もあって、束は余り気にしてはいなかった。

 しかも現在、千冬がいるのは深度の深い海域だった事もあって、核弾頭が回収されなくても暫くは大丈夫だろうと千冬(束は兎も角)は判断していたが、此れが間違いであった。

 とは言ってもそうするしかなかったと言い訳は出来たが、後に“白騎士事件”と呼ばれる此の出来事が齎した悪しき影響を知った千冬は酷く後悔していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その理由はたった今、千冬が撃墜した最後の核弾頭を追いかけて見れば分かった。

 

 海に落ちたその核弾頭は当然の事だが、海流に揉まれながら静かに沈んでいった。

 

 勿論、やがては光無き海底に落ちるのだが、その海底に堆積した泥がクッションになって落下衝撃を緩和したお陰で、今まで落ちた核弾頭群が変形や損傷をして、中の放射性物質が流失する事態になって折らず、此れ等核弾頭を深海魚達が興味本位で口先を突いていた。

 

 だが最後のは違い……最悪な事に鋭い突起物に突き刺さってしまった。

 

 勿論、その損傷箇所から放射性物質が流失し始めていたが、その放射性物質を突起物が取り込んでいた。

 

 そして放射性物質を全て吸収し終えた突起物は、少し間を置いて青くゆっくり……まるで鼓動と思える何処か不気味な点滅を始めた。

 

 更に此の突起物に連動して、前後左右の突起物群が次々に同じように点滅を開始していった。

 

 そして突起物全てが点滅ではなく完全に発光すると、周囲の泥ごと発光している物の先から凄まじく長い尻尾が現れて直に落下して泥を巻き上げた。

 

 続けて突起物群の左右から両手が、尻尾とは逆の方が持ち上がると肉食恐竜型の顔が唸り声を上げながら現れた。

 

 青い発光が収まり始めた突起物…否、背鰭の主であるその生物は、その巨体を左右に揺らした後、自身の周囲に他の核弾頭群を感じ取った。

 

 生物は核弾頭を見詰めて硬直していたが、深海魚達は此の場で永遠に眠っていると思われていた此の生物が目覚めたのを感じ取って忙しなく動き出していた。

 

 そして嬉しそうに上唇を持ち上げると、深海魚達が逃げ出すと同時に、近くの核弾頭を二つ掴み上げて握り潰して背鰭処か、両手の鋭い爪までもを青く発光させながら放射性物質を取り込んでいた。

 

 生物は尻尾を振りながら気持ち良さそうな声を上げていたが核弾頭の放射性物質が無くなった為、不満そうな唸り声を上げながら手の中の物を露骨に捨てて別の物を取った。

 

 掴む、潰す、吸収、終了、探してまた掴む……此等の行為を何回か繰り返している生物の青く発光している背鰭が突然放電を始めた

 

 そして最後の核弾頭から放射性物質を吸収し、海底を照らす程に眩く発光させると、大量の気泡を吐きながら巨大な咆哮を頭上へ上げた。

 

 だがその背鰭から光が急に消えると、生物は前のめりに倒れこんだ。

 

 そしてそのまま生物は再び眠りに入ったが、何処か満足そうな表情をしていた。

 

 だが眠った生物に反して深海魚達は慌てふためく様に忙しなく更に動き回っていた。

 

 此の時、深海魚達だけが此の生物……此の地球上のあらゆる生物達の恐るべき最強の存在にして、人々に絶望的破壊をもたらす最悪の存在……怪獣達の王の復活が近い事を悟っていた。

 




 感想・ご意見お待ちしています。

 捕捉情報ですが、此の作品のゴジラそのものは“xメガギラス”のを母体にしています。
 詰まり、此のゴジラは簡単に言ったらオキシジェンデストロイヤーで殺されずに“vsキングギドラ”の作品初期みたいに長期間休眠していた初代ゴジラです。
 ですので芹沢博士は二度目の東京襲撃時に“死亡”或いは“行方不明”になっているとします。

 次回は一気に福音の出来事まで飛びます。

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