Monster Hunter ~失ったもの、手に入れたもの~   作:小松菜大佐

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9話 ミナガルデ

「………」

何度目の、呆然だろうか?なんだか、疲れちまった。

「ほら、これがミナガルデだ」

「いや、わかってる。分かったんだけど……」

「おうおう、なんだ?さっきまでワクワクが止まんねーって感じだったんじゃないのか?」

「そうなんだけどさ……」

俺は、何度でも言う、疲れたのだ。

田舎者の俺はゴンドラなんか見たことがあるはずもなく、ゴウンゴウンと音を立てる度に騒いでいたのだ。ついでに言うと風によって揺れる度にも悲鳴を上げていた。他人の目なんかどうでもいいってぐらいで。

だから終わった後には、目の前に広がる大きな町並みに反応できるほどの元気は残っておらず、疲れきって溜息をつくくらいである。

でも、まあ。

「まあ、すごいなあ……」

山の中腹を削りそこに建てられたこともあるのか、人の住んでいるところと自然が共生できているのが印象的である。モンスターの襲撃に対して迎撃するための物であろう、大きな大砲が4門空を睨んでいた。

このテンションの低さを不思議に思ったか思わずと言ったふうに首を傾げるお兄さん。

「あれ?ワクワクが止まんねーなんて言わねえよ、的な感じでツッコミを入れてくると思っていたんだがな」

「あんたは俺をどんな風に見ているんだ……」

「……ツッコミ役?」

「……どうせあともう一つあるだろ」

「ああ、暇つぶしだ」

「予想通りだよ」

やっぱ、この人はこんな感じなんだな。

「まあ、俺はギルドナイトの仕事でギルドに顔出さなきゃなんねえんでな。ここら辺でさよならだ」

「あ、マジで?」

ここでまさかとのお兄さんとのお別れ。そういや俺、ここからの道分からねえんだけど……

「ああ、大マジだ……って、そうか。お前も一回ギルドに顔出したほうがいいか。そうだな。んじゃ、行くぞー」

付いて行くのかいかないのかよく分からない言い方。俺は思わず頭に疑問符を浮かべるが、そんな俺を置いてお兄さんはどんどんと遠ざかっていってしまう。

「え、ど、どっち?付いてくの?付いてかないの?」

「付いてこい」

有無を言わさぬようなその言葉、それに引き連られるように俺はお兄さんのあとを追う。

そして、俺たちはラージ村とは比類にならぬ程の凄まじい人ごみの中に入るのであった。

 

 

人ごみをかき分け、どこまでも続きそうな石畳の道の上を歩く、歩く。

歩く、歩く、歩く。

歩く、歩く……

「……遠くね?」

ドンドルマはハンターの聖地と言われてもいいくらいの街だ、って聞いてたから、その本拠地であるギルドはすぐに見つかるもんだと思っていた。

その疑問にはお兄さんが応える。

「そりゃそうだ。ギルドが破壊されたらこの街はかなりまずくなるんだぞ?一番奥深く、かつ一番安全なところにギルドを置くに決まってるだろ」

とのこと。

「あ、なるほど」と普通に納得できた。

「つっても、もう見えてるけどな」

「え?」

「ほら、あれだ」

そう言って、お兄さんが何度も見たようなポーズで指を向ける先。そこには……酒場?

「なんか、予想してたのと違う……」

石の壁の一角を切り崩し、くりぬいて入口が作られているそれは、中から男の笑声、そして昼過ぎだというのにどぎつい酒の匂いがしてきていた。俺はあんまり好きじゃない空気だな……

「まあ、ここがギルドだ。予想が外れて残念だったな。そしてギルドマスターに謝ってこようか」

「あ!」

俺はそこで、大分ヤバイ失言をした事に気付いた。冷や汗がこめかみを伝って流れ落ちる。

「……内密に、お願いします」

そう言うと、めんどくさそうに頭を掻いたお兄さんはさも何もなかったかのように入口へと向かっていく……って、無視!?

「え、ちょ、勘弁してくれよ!?最初っからギルドマスターに悪印象持たせたくねえんだ!!」

「言わねえって」

「これほど信用できない『言わねえ』は初めてだよ!!」

「マジだよ。こんなことに時間は使ってられないしな。ほら、行くぞ」

そう言葉を発するお兄さんはどんどんと足を進めていく。

「あ、待ってくれよー!」

「断る」

言うと思った。

俺は一度立ち止まり、溜息をついた後、改めてあの人の背中を追いかける。

 




話的にここで切るしかなく……
もう一話出します。

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