ソードアート・オンライン《三人の勇者》(凍結)   作:ホイコーロー

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今回、ちょっとオリ設定入ります。ホントにたいしたことありませんが。


《月夜の黒猫団》

SAOには《攻略組》と呼ばれるプレイヤー集団が存在する。

その中でも現在、最強と呼ばれるプレイヤーは片手で足りるほどしかいない。

彼らは全プレイヤーから尊敬と畏怖をもって《色》を与えられ、

それに由来する二つ名を持っている…。

 

 

 

 

 

 

 

~第11層~

 

「おらよっと。」

 

ハチマンが短剣を振り下ろすとあっという間にエネミーは消滅した。

さすがにもうソードスキルへの違和感はなくなっているらしい。

 

「よっわ…。」

 

現在の最前線は第23層。

攻略組である彼にとってこの程度なら目をつぶっていても倒せるレベルだった。

ハチマンがこんな下層にいるのはとあるアイテムを手に入れるためなのだが、彼がそれで何をしようとしているのかは今は置いておこう。

 

 

今彼が使っている主な装備は短剣と《アリアドネの糸》という防具。

とあるボスのLAボーナスで手に入れたものだった。

 

《ジ・アラクネ・クイーン》

”虫の巣窟”とも言われた第20層のボスで、今のところ最も攻略が難航した、蜘蛛の胴体に人間の女性の頭がひっついたような外見の化物。

第20層全体に言えることだが、昆虫系のエネミーは他のエネミーに比べて攻撃力は劣るものの防御力は比べ物にならないほど高かった。

さらにこいつが厄介だったのは、盾役が追いつかないほどの俊敏な動きに、こちらのステータスを低下させる糸をはいてくること。

長期戦になればどんどん不利になるのに、あまりの早さと硬さから早期決着は不可能だった。

そのおかげで攻略するのに通常の3倍以上の時間がかかってしまった。

不幸中の幸いというか、犠牲がいなかったのはその攻撃力の低さのおかげだろう。

 

そいつからドロップしたのがこの《アリアドネの糸》。

カテゴリーは防具ということになってはいるが、その真価は別のところで発揮される。

それは()()()()()取り付けることが出来るのだ。

しかも勝手にひっつくのでなく、使用者の任意で自由に取り外しができる。

射程もかなり長い。

武器につけておけば手繰り寄せることが出来るし、高いところによじ登ることもできる。

蜘蛛からドロップしただけあってなかなか頑丈だ。

ハチマンの《筋力》の低さから使っていた《短剣》《投剣》との相性も良く、好んで使っている。

今や彼の代名詞のようにもなっていた。

 

 

彼の現状について長々と説明してしまったが、言いたいのはつまり、

 

この時この場所に偶然彼がいた、ということ。

 

「きゃああ!」

 

「!?い、今のって…いや、きっと幻聴「い、いや!来ないで!」…はぁ…。」

 

索敵スキルを使うと少し先で五人のプレイヤーが中型のエネミー三体に襲われているのが分かる。

 

「メンドクセェ…。」

 

 

「どうもありがとうございました!」

 

「別に大したことじゃない。これからは気をつけろ。」

 

ハチマンはエネミーを倒すと、そのまますぐにその場から立ち去ろうとした。

しかしそうは問屋がおろさないのが世の常。

 

「待ってください!!」

 

「…なんだ。」

 

「あ、あの!つかぬことをお伺いしますが、あなたのレベルは…?」

 

さっきの戦闘を見て気になったらしい。

別に嘘をつく理由もないので正直に答える。

 

「…43だが。」

 

「「「「「よ、よんじゅう…!!??」」」」」

 

その途端、なにやら肩を組んでひそひそ声で話し始める5人。

 

(とっとと退散して方がよさそうだな。)

「それじゃあ「あ、あの!!」…それじゃあこれで「待ってください!!」なんだよ…。」

 

「ぼ、僕たちを、《月夜の黒猫団》を特訓してください!」

 

「…は?」

 

 

 

 

「おりゃ!!」

 

トドメにソードスキルを放つとエネミーはポリゴンとなって消滅した。

 

「ど、どうでしたか…?」

 

ハチマンはまだ彼ら《ケイタ》《テツオ》《ササマル》《ダッカー》《サチ》の五人、《月夜の黒猫団》と一緒にいた。

聞くところによると、彼らはいつかは攻略組に参加したいと考えているらしく、そのためにハチマンにあのような無茶なお願いをして来たらしい。

もちろん初めは何を頼まれても断るつもりだったのだが、彼が探していたアイテムを彼らがいくらか持っていることが判明。それを条件に少し様子を見ることになった。

 

「あー、まぁ、よくやってる方じゃねぇか?」

 

「ほ、ホントですか「だが。」?」

 

「攻略に参加するってんなら話は別だ。それこそ話にならないレベルで、な。」

 

「そ、そうですよね…。具体的にはどの辺が…?」

 

「レベルが低い、戦術が拙い、連携がなってない、と全部上げてたらきりがねぇな。」

 

「そんなにダメでしたか…。」

 

予想以上のダメ出しっぷりにショックを隠せない様子のメンバー。

 

「まあこんなのはこれからどうにでもなることだ。そんなに気落ちする必要はない。」

 

「ありがとうございま「ただし一つを除いてな。」え?」

 

(こいつら表情コロコロ変えすぎだろ…。)

「一つだけ、時間をかけても今のままやってたらどうにもならないことがある。それ自体は簡単なことだが、今すぐにでも改善するべきだな。」

 

「はい!どうすればいいですか?」

 

「そこの…さ、サチ。」(言えた…。)

 

「は、はいッ!」

 

「…お前は向いてない。これ以降、戦闘には参加するな。」

 

「え?」「「「「は?」」」」

 

「な、何言ってるんですか、これまで一緒に戦ってきた仲間ですよ…?そんなの出来ないに決まってるじゃないですか。」

 

「別にギルドから抜けろって言ってるわけじゃない。ただ戦闘には出るな。このまま一緒に戦えば必ずチームの足を引っ張る、というかそんなの本人が一番よくわかってるはずだが。」

 

「そ、そんな…。」

 

「後、すまないが俺には誰かを特訓してやれるような器用さはない。」

 

「「「「「えぇ!?」」」」」

 

「だがまあ安心しろ。俺の知り合いでそいうのが大ッ好きな奴がいるから。」

 

そういってハチマンはとあるプレイヤーへとメッセージを送った。

 

 

~十数分後~

 

「で、俺たちが来たと分かった途端にハチの奴はどっか行っちまった、と…。」

 

「そうです。」

 

「「(あ、あんの野郎~~!!!)」」

 

そこにやってきたのはカイトとキリトだった。

 

 

ハチマンはカイトたちから再三送られてくるフレンド申請をけり続けているので、直接ではなく、便宜上唯一フレンド登録しているアルゴに連絡を取ってもらったのだ。

()()()()()()()

カイトからしてみればそんなことは初めてだったので、よほどの緊急事態なのかと思い、わざわざキリトにも連絡を取って急いで駆け付けたのだ。

結局まんまと嵌められてしまったわけだが。

 

 

「………”黒いコートを羽織った剣士”に”青い全身タイツの槍使い”………。」

 

何かに勘ずいたらしいテツオが呟く。

 

「ん?どうした?」

 

「もしかして…お二人は《(カラーズ)》の《黒》と《青》のお二人だったりしません…よね…。」

 

「おまえ、そんなわけないだr「ああ、そうだが。」…今、なんと…?」

 

「だから、こいつが《黒》で俺が《青》だって。」

 

「「「「「えええぇぇ!!??」」」」」

 

色で判別するだけあってその外見は非常にわかりやすいものだった。カイトなんかはえらく気に入って、わざと全身を青に染めているきらいすらある。

その姿はまるでケルト神話の犬の兄k…ゲフンゲフン。

 

「そ、そんなに驚くことか?」

 

「そりゃあ《虹》って言ったら攻略組の中でも最強の、全プレイヤーの憧れですし!」

 

「そ、そうか、照れるな…。でもさっきまでハチと一緒だったんだろ?」

 

「それはどういう…?」

 

「まあ、確かにハチは見た目だけじゃわかりにくいかも。あいつも《虹》の一人、《銀》だぞ?」

 

「「「「「え、えええぇぇぇ!!??」」」」」

 

この日何度目かの悲鳴が森に響き渡った。

 

 

「で、結局俺たちはどうして呼ばれたんだ?」

 

「あ、それはですね、かくかくしかじかというわけでして。」

 

「それで伝わるわけn「なるほどな。」マジで!?」

 

「でも、一度見ない限りにはわかんねぇな。ちょっとやってみせてくれるか?」

 

 

 

 

「サチ!さがって!!」

 

「うん!」

 

サチが敵の攻撃をはじいて後衛と交代する。

《スイッチ》と呼ばれるパーティ戦の基本的な連携だ。しかし、

 

「うわッ!?」

 

うまくいかずに敵の反撃を許してしまう。

ササマルが敵の攻撃をくらいそうになった時、

 

「はい、そこまで~。」

 

カイトが敵の攻撃を跳ね返してキリトがトドメをさす。

お手本のようなスイッチだった。

 

「でもまだ終わってなかったですけど…。」

 

「いや、もう大体分かった。」

 

「確かにこれは…ハチマンの言いたいことも一理あると俺は思うよ。サチ、君はもう戦闘に参加しないほうがいい。だって怖がってるじゃないか。」

 

「で、でも!みんなの役に立ちたい…し…。」

 

「だから言ってるだろ?戦闘はダメ。ありがたいことにSAOには他にもたくさんできることはあるだろ。どうしても出来ないことの一つや二つ、誰にだってあるって。気にすんな。」

 

「…わ、わかりました…。適材適所…ってことですね…。」

 

「そうそう!」

 

「それじゃあ、僕たちは?四人だとかなりきついんですけど…。」

 

「そのために俺たちが呼ばれたんじゃないのか?」

 

「そんくらいどうにでもしてやるよ!もどったら早速さっきの戦闘を踏まえて反省会だな。攻略組に参加したいんだったら容赦はしないからな、覚悟しとけよ!!」

 

「「「「よ、よろしくお願いします!!」」」」

 

「サチ、君も自分に何ができるかよく考えておいてくれ。」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

「ばらしちゃったのかよ…。」

 

「いいじゃないか、別に隠す理由もないんだし。」

 

キリトはとある喫茶店でハチマンと話していた。

またしてもアルゴの仲介で。

 

「お前らは気に入ってるから別にいいだろうが。俺はずっとやめろって言ってんのに一向に収まる気配がない…。」

 

 

銀色の狼(シルフ)

それがハチマンの二つ名だった。

誰よりも速く、獰猛に敵へと向かっていくその姿と、狼のそれのように見えなくもない彼の目つきから付けられたものである。銀色は、まあ、彼のイメージだったのだろう。

しかしハチマンはその名前で呼ばれるのを異様に嫌がっている。

ちなみに他の二つ名持ちは

キリト《黒の剣士(ブラッキー)》、アスナ《紅い閃光(ルビア)》、カイト《蒼い貴公子(ブルース)

といった感じである。

偶然にも、いや必然だったのかもしれないが、第一層の()()パーティの面子は全員もれなく二つ名持ちとなっていた。

 

 

「で、結局あいつは裏方に徹することに決まった、と。当然だな。」

 

あの後二人は彼らに出来る限りのアドバイスをした。

その上、カイトはしばらく《月夜の黒猫団》で活動するらしい。

コペルの事があるとはいえ、その面倒見の良さは半端じゃない。

 

「お前なぁ…、もうちょっと愛想よくならないのか?」

 

「何言ってる、充分友好的だろ。むしろこんなに人にやさしくしたのは生まれて初めてだ。」

 

「ま、マジか…。」

 

「エリートボッチなめんな。」




苦渋の決断でしたが、サチイベはこんな感じになっちゃいました。ホントすいません。

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