ソードアート・オンライン《三人の勇者》(凍結)   作:ホイコーロー

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ヒッキーがマジで「お前誰?」っていうレベルでキャラ崩壊しとる…。



四人目の勇者?

三人は森の中を走っていた。

 

「昼間見かけた奴があそこで話しかけてきたのにはかなり驚いたぞ。」

 

「まぁ…なりふり構ってられる状況じゃなかったしな。」

 

(話には聞いてたけど…確かにすごい目だな。まるで目が腐っt「俺の目は腐ってなんかないからな、キリト。」!?)

 

思考を読まれてキリトは表情が固まっている。

ハチマンからすればいつものことなので別に気にはしない。

 

(おいおい、マジか。ゲームの中だとだいぶ普通に話せるんじゃないか、俺。まさかここが俺の生きる道!?……なんかそれ、逆にショックだ…。)

 

とはいえ、もし全く面識がなければハチマンは二人に声をかけることはなかっただろう。この緊急時にカイトを見つけたことはハチマンにとって不幸中の幸いだった。

 

「それにしても二人ともβテスターだったとはな。(これが一石二鳥ってやつか?…どっちかっていうと、棚から牡丹餅って感じだな。)」

 

「いや、こっちこそハチマンみたいな上手い奴が加わってくれて助かった。正直、二人だと不安だったからな。さっきの戦闘だって一人で終わらせちまったじゃねぇか。」

 

「しかもソードスキルを使わずにそれだけできるんだから…本当に驚いたよ。」

 

そう、キリトの言う通り、ハチマンは今のレベルで取得できる二つのスキルに《隠蔽》と《索敵》を選択している。これではソードスキルを発動する事は出来ない。本来それはこのSAOにおいて致命的ともいえることだった。

 

「その方がやりやすかったんだから、しょうがないだろ。まだ俺に必殺技なんてモノは必要ないってことだ、っと。また来たみたいだ。」

 

索敵スキルを発動させていた彼はいち早く敵に気付き、一人で大丈夫だと判断すると先行して隠蔽スキルを発動させながら近づく。ステータスも《敏捷》に多めに振っているらしく、敵に気付かれる頃には既に初撃を加えてしまっている。

しかし、もちろんソードスキルは使っていないのでそれだけでは倒せない。

 

(何度見てもあっぱれとしか言いようがないな、あれは。)

 

むしろ彼の本領はここからなのだ。

一撃を加えた後、距離をとって相手の動きをよく()()。その僅かな動きも見逃さず、敵が行動をする時には彼はすでにその先をいっていた。

そして敵の隙をついてダメージを与えていく。

数回の斬り合いの後、エネミーはポリゴンとなって消滅した。

言葉にするのは簡単だが、それをこの短期間で習得し、実行するには相応の覚悟や能力が必要だ。ちょっとしたミスが命取りになる。

しかしハチマンはそれをいとも簡単にやってのける。それもものすごい早さで。

つまり彼はその場の状況整理とそれに基づく駆け引きが非常に上手いのだ。無謀とも思える踏み込みも冷静な判断によるもので、戦闘時間を下手に伸ばすよりも遥かに安全な戦法である。

 

「で、この後はどうするんだ。」

 

「あぁ、この先の村で《森の秘薬》っていうクエストを受けよう。それをクリアすれば《アニール》っていう種類の強力な武器が手に入る。」

 

「まあ、βテストと変わりがなければ、の話だがな。」

 

「「……。」」

 

「二人とも、気をつけろよ。これからは情報の真偽は命に直結する。まずは全てを疑え。しばらく”安心”なんてモノは…手にはいらねぇぞ。」

 

「言われなくとも。」

 

「そしてキリト。」

 

「?」

 

「あまり気にしすぎるな。誰にだってできないことはある。しかも今の俺たちは弱い。誰かを守りたいなら…力をつけろ。」

 

「!!…分かってる…。」

 

 

 

 

そして目的の村に到着し、装備を整えた三人はクエストを受けて森の中へと進んだ。

 

「《花付き》を探すんだ。逆に《実付き》を見つけたら気をつけろ、絶対に手は出すな。」

 

「了解…《実付き》ってあれのことか?」

 

「何!?あれは…《花付き》じゃないか!驚かすなよ…。それにしてもラッキーだぜ!アタリを初っ端から見つけるとは。」

 

「よし、じゃあこれで一つ目だな。作戦はさっき話した通りでいこう。」

 

このクエストの標的の《リトルネペント》は群れで動くので、まずはキリトとカイトが突っ込み《リトルネペント》からのヘイトを集め、その隙にハチマンが隠蔽スキルを使いながら《花付き》に近づいて仕留めることにしていた。

今回は三人とも無傷で終わらせることが出来た。

 

「なんだ、案外すぐに終わるんじゃないか?」

 

「おい、やめろ!変なフラグを建てるんじゃない!」

 

「え?」

 

 

〜約一時間後〜

 

「やってくれたな、キリト…。」

 

「いやいや、俺のせいじゃないだろ!さっきも言ってたじゃないか!βテストの時より出現率が下がってるのかもしれないだろ!?」

 

「いや、お前が悪い。」

 

「二人して!?」

 

キリトが見事にフラグを建ててしまったからなのか、二匹目の《花付き》が現れなかった。

がっくりと肩を落とすキリト。カイトはそれを見て笑っているが、ハチマンの目は半分本気だったのに二人は気付かない。

そんなやりとりをしているとそこに、

 

「あ、あのぉ…皆さん、《花付き》を探してる方々ですか?」

 

一人の少年が話しかけてきた。

 

 

「そうだが。何か用か?」

 

「よければ僕も混ぜてほしいな…なんて…。」

 

「あぁ別に構わ「「ちょっと待て!」」うぉッ!?」

 

「どうして俺たちだったんだ?その情報を知ってるってことはお前もβテスターなんだろ。(俺と違って)別に一人でも出来るはずだ。」

 

「さっき皆さんが戦ってるところを見たんです。そしたらすごい強くて。それにあの茅場って人が言うにはここで死んだら本当に死んじゃうみたいだし、一人だと不安じゃないですか…。だから皆さんだって三人で行動してるんでしょ?」

 

彼の言い分は至極まっとうなもので、自分も人のことが言えないハチマンとしては一人で決断を出すことはできないと判断する。

 

「(どうする。)」

 

「(別にいいだろ。何か心配でもあるのか?)」

 

「(まあ、こっちは三人であいつは一人。いざってなってもどうにかなるしな。)」

 

「…もう一つ。そっちから頼んできたんだ、お前の分は最後で、明日の朝までに見つからなかったら諦めろ。それでも構わないな。」

 

「はい!もちろんです!」

 

「…カイトはどうだ。」

 

「あぁ、俺もそれだけ聞ければ十分だ。」

 

「と、いうことは…?」

 

「いいぜ、入れてやるよ。」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

そして《コペル》を加えた四人で狩りを再開した。

 

 

〜さらに約二時間後〜

 

「出ませんね…。」

 

いまだに二匹目の《実付き》が現れる気配が全くない。

さすがに四人の表情に焦りが見えてきた。

 

「あぁ、そうだな、ってどうして二人して俺の方を見るんだ!さっきからずっと視線が痛いんですけど!?全く…俺のせいじゃないだろうってのに…ん?」

 

その時キリトが《リトルネペント》の群れを見つける。

 

「おい、あれって《花付き》じゃないか!?」

 

そこには確かに《花付き》の姿が。しかも、

 

「二体!?」

 

「こりゃあ、スーパーラッキーだぜ!これで少なくとも俺たちの分は確保できる!あ、今回は別にコペルは参加しなくていいぞ。そこら辺で待っとけ。」

 

「は、はい!」

 

「じゃあ、はじめと同じ方法で「ちょっと待て。」どうした?」

 

しかしハチマンが気付く。

 

「あれ、《実付き》じゃないか…?」

 

「「!!??」」

 

 

「どうする…?」

 

「やることは変わらない。ただ、《実付き》を抑える役目が必要だな。キリト、頼めるか?」

 

「問題ない。じゃあハチマンが《花付き》を、カイトがその他をってことで行くか。」

 

「オッケー!」「了解。」

 

それぞれの役割を決め、駆け出していく。

 

キリトは実を傷つけないようにしっかり《実付き》をコントロールし、カイトも十体近い《リトルネペント》を器用にあしらっている。

その働きに応えようと、ハチマンは今までより遥かに早い時間で二体の《花付き》を処理した。

 

「なんだ、思ったより簡単じゃないか。」

 

「お前はまたそうすぐ油断して…。」

 

「まぁまぁ、確かに上手くいったんだし後はコペルの分を見つけるだけなんだから、ってあいつはどこいった?」

 

「!!??」

 

一番早く気付いたのはまたしてもハチマンだった。

コペルは《実付き》へと剣を振りかぶっていたのだ。

 

「やめろ!!」

 

「…ごめん。」

 

そして《実》が破裂した。

 

 

既にコペルの姿はそこにはなく、すぐに大量の《リトルネペント》が方々から集まってくる。

 

「くそッ!初めからこれが狙いだったのか!」

 

「落ち着け、キリト。慌てると出来るもんも出来なくなっちまう…ハチマン、どうかしたか。」

 

(軽く50は超えてるな…。一人ノルマ20。まあ、俺たちならできなくはない、とその前に。)

 

次の瞬間二人の前からハチマンが消え、

 

「ぐぎゃ!」

 

コペルを脇に抱えて木の陰から出てきた。

 

「お前!よくも!「落ち着けって。」でも!」

 

「こいつを逃すわけにも行かなかったが、とりあえずは目の前の問題だろ。

一人ノルマ20。いけるな?」

 

「ハッ!当然!」「…分かった。」

 

そして呆然とするコペルを置いて三人は《リトルネペント》の大群へと向かっていった。

 

 

 

 

「死ぬかと思った…。」

 

見ればキリトのHPは危険を表す赤色。しかしなんとかやり遂げた。カイトとハチマンも無事なようだ、というか二人とも赤色にもなっていない。

 

「さて、それじゃあ、お話を聞こうか、コペル君?」

 

コペルはハッとしたように顔を上げるが時既に遅し。三方を三人に囲まれてしまっていた。

 

「話なんて聞く必要ない。こんだけのことをしたんだ、それなりの覚悟があってのことだろ。」

 

ハチマンがそう言って剣を振りかぶる。

 

「待ってくれ。」

 

しかし、それをカイトが阻止した。

 

「なんだよ。まさかこいつをこのまま見逃すって言うんじゃないだろうな。」

 

「まさか。ただ、()()はダメだ。プレイヤーを攻撃したりするとペナルティが発生するんだよ。こんなことでわざわざデメリットを負う必要はない。だからこそ、こいつもこんな回りくどい方法をとったわけだし、なぁ、コペル君?他人を蹴落としてでも生き残ろうとするその根性は悪くはないが相手が悪かったな。」

 

「じゃあ、どうするっていうんだ?」

 

するとカイトは笑みを浮かべ、キリトとハチマンに嫌な予感が走る。

 

「コペル、お前のその腐った根性、俺が叩き直してやるよ!!」

 

 

 

 




・クエスト《森の秘薬》で片手剣以外の武器も手に入ることにしました。
・スキルスロットはLv.1、Lv.2、Lv.6、Lv12、Lv20になったところで一つずつ、それ以降はレベルが10上がるごとに一つずつ増えていくことにします。
〈例1〉Lv.8…3個
〈例2〉Lv.57…8個

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