ソードアート・オンライン《三人の勇者》(凍結)   作:ホイコーロー

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それでは最終話、どうぞ。


三人の勇者

 

「この日がついに来たな…。覚悟はいいか、キリト。」

「当たり前だ。」

 

12月24日。カイトとキリトは第35層の森の中にいた。

二人はあの後もアルゴの協力のもと情報収集を続け、この層にある巨大なモミの木がイベント発生の場所だということを突き止めていた。

時刻は午後11時35分。後25分でイベントボスが現れるはずである。

 

「でも、それよりも…。」

「あぁ、分かってるって。」

 

しかし、その前にやらなければいけないことがあることに二人は気付いていた。

 

「おい!そこにいる奴ら!出てこいよ!」

「…なんだ、バレてたのか。」

 

そう言って出てきたのはクライン、そしてクライン率いる《WWFM》の面々だった。

 

「どうして俺たちを尾行するようなことしたんだ、クライン。」

「……じゃあ言わせてもらうけどな、たった二人で勝てるのかよ。俺たちみんなで挑んでさあ…LAボーナスはトドメ刺した奴の物!それでいいじゃねぇか!」

「それじゃダメなんだよ!!」

「カイト…。」

「それじゃ……あいつは生き返らねぇだろ。もしこのまま回れ右してくれないなら、ボスよりも先にお前達を倒さなきゃいけないことになる。」

 

そう言って、カイトとキリト、そして《WWFM》が臨戦態勢に入ろうとしたその瞬間。

数人のプレイヤーたちが森の中から出てきた。

 

「はあ…お前もつけられたんだな、クライン。」

 

それは攻略組の一つ、《DDA》のメンバーだった。

彼ら《DDA》は元は真っ当な攻略組だったのだが、最近はレアアイテムのためなら汚いこともする、なかなかにゲスなギルドと化しているらしい。

今回もそのつもりなのだろう。

 

「はあぁ…。全くどいつもこいつもよぉ…。キリト!カイト!ここは俺たちに任せて先に行け!」

「え、でも、クライン、それじゃあ…。」

「いいんだよ!この程度ならどうにでもなる!とっとと追いついてやるから、先に行けって!」

「…サンキューな、クライン。」

 

そしてクラインたちを置いて二人はイベントへと向かう。

 

 

 

 

 

《DDA》が二人の前に現れた頃、とある階層の森の中。

 

「ハッ、ハッ!」(全ク、しつこい連中だネ。)

 

フードをかぶった小柄なプレイヤー、アルゴは何者かに追われていた。

彼女はその職業柄上、人から怨みを買うこともしばしばであり、追われる状況にも慣れてはいる。だが、今回に限っては相手が悪かった。

 

「(どうしたものカ…)っト。」

「おい!《鼠》!今からでも遅くはない。早く情報を渡せ!」

 

今、アルゴを追いかけているのは、カイトたちと同じく《DDA》だった。

アルゴはハチマンの要求で情報をキリトとカイト以外には情報を渡しすぎないようにしていた。もちろん、相手にはそのことがバレないように注意していたのだが、あるはずみで《DDA》に知られてしまったらしく、そのせいで情報を全て渡すように要求されているのだ。

そして、さすがは攻略組といったところか、いくら逃げても回り込まれて待ち伏せされてしまう。

 

「オレっち、しつこい男は嫌いなんだヨネ。悪いケド、あんた達みたいなのに渡す情報は持ち合わせてないヨ。帰ってくれないカナ。」

「こいつ…ふざけやがって!」

 

どうやら今ので《DDA》の逆鱗に触れてしまったらしい。怒り狂ったプレイヤーが武器を構えて襲いかかってくる。

アルゴもトッププレイヤーの一人であるが、これだけの人数の攻略組を相手にしたことはなく、隙を見て逃げようとするもなかなかできない。

 

(ハア…オイラも焼きが回ったネ…。別にあの程度の口約束、頑固に守る必要もないだろうニ。()()()が絡むト、どうも調子が狂うヨ。)

 

剣が振り上げられるのを見て、アルゴは自分の死を悟り目を閉じる。

 

『キィンッ!』

 

しかし次の瞬間に聞こえたのは身体が斬られた音ではなく、金属がぶつかり合うような音だった。

 

(な、何が起こッタ…?)

 

アルゴが恐る恐る目を開けると…

 

「ハチ坊…。」

「やっと追いついた…。お前速すぎだろ。お陰で一回見失っちまったじゃんか。」

 

そこには”忙しい”はずのハチマンが立っていた。

 

 

 

 

 

カイトとキリトはクラインたちと別れた後、ボスと遭遇、交戦を始めていた。

 

《背教者ニコラス》

二人が戦っているイベント《赤鼻のトナカイ》のボス。

蓄えられた長く白い髭と、白と赤を基調とした服装こそ確かにサンタクロースのようではあるが、その四肢は異様に長く、皮膚は枯れてまるでゾンビのようでもある。

 

「やっぱりなかなか強いな。」

「あぁ、もし一人できてたらヤバかったかも。」

 

そして予想通り、第35層で起こっているイベントのボスとは思えないほどの強さだった。

 

「…でも、もうやっちゃっていいんじゃないか?」

「そうだな。クラインたちも心配だし、とっとと決めちまうか。」

 

雄叫びをあげる《背教者ニコラス》。他人がそれを見たならば、顔を青くするのは確実だろう。

しかし二人に怯えの表情はなかった。

 

 

 

 

 

「ど、どうしてここニ…?」

「まあ、もしかしたらこういうこともあるんじゃないかと思ってな…お前の周囲を探ってたんだよ。そしたらなんかこいつらが怪しい動きしてたから張ってたんだ。先に言っとくがこれは決してストーカーなどではなく…「ハチ坊!後ろ!」っとアッブねぇ!」

 

後ろから斬りかかってきたのを寸でのところで避ける。

 

「どうしてお前がここにいる!《銀色の狼》!」

「だから、その名前で呼ぶんじゃねぇよ!(恥ずかしいだろが。)理由はさっき言った通りだが?何か問題でもあったか。」

「だから、お前には関係ないのになぜわざわざそんなことをしたのかと聞いている!」

(ッチ、メンドクセ…。)「そりゃー、お前らに情報渡すなってこいつに言ったのは俺だからな。」

「なっ!?」

「こうなることぐらい予想はつく。アルゴに何かあったら困るだろ。と、いうことで、今日のところはお帰り願えませんかね?」

「ちょっと強いからって調子に乗りやがって!獲物が一匹増えただけだ!やっちまえ!」

「わーお、見事な小物感…。ならしょうがないな。そっちがそのつもりならそれ相応の「ハチ坊…。」ん、どうした。」

「逃げないのカ…?」

 

腐っても相手は攻略にも参加するトッププレイヤーたちだ。いくら《銀色の狼》とは言え、これだけの人数を相手にするならば普通に考えて勝機はない。

 

「問題ない。それよりそこから動くなよ、巻き添えくらっても知らないからな。」

「エ…?」

「何をごちゃごちゃとお!」

 

アルゴを背に、ハチマンは向かってくる敵へと立ち向かう。

 

 

 

 

 

そして彼らは告げる。

 

「ボス相手に使うのは初めてだからな、いい練習台だ。」

 

「あまり時間がねぇ、格の違いってやつを見せてやる…なあ、サンタさんよ。」

 

「教えてやるよ、一体どっちが狩る側なのかってことをな。」

 

 

「「「ユニークスキル」」」

 

 

(キリト)「《二刀流》」

 

(カイト)「《肉体操作(メタモルフォーゼ)》」

 

(ハチマン)「《弓》」

 

ここに三人の勇者が誕生した。

 

 

 




…なんだか下手な打ち切り漫画みたいになってしまいました^_^;
それではご愛読(?)ありがとうございました。また会う日まで〜。

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