ソードアート・オンライン《三人の勇者》(凍結)   作:ホイコーロー

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《血盟騎士団》

 

先の第25層ボス部屋攻略により、攻略組は多大な被害、特に大役を担っていた《ALS》が壊滅的な被害を受けたことで攻略が一時的に停止していた。

《ALS》は今回の事で方針を大きく転換。下層で大きな影響力をもっていた、《シンカー》というプレイヤーが率いるギルド《MTD》と合併し、《アインクラッド解放軍(ALF)》となった。今後は中下層の治安維持に回るという。

《DKB》もまた、力を蓄え直すために一時撤退。名前も《聖龍連合(DDA)》と改めた。

《SSK》は比較的被害は少なかったものの、やはり状況が整うまでは中下層の育成、治安維持に力を入れるようだ。

しかしあれから一カ月がたった今でも、攻略組はその穴を埋めることが出来ず、第26層のマッピングも意欲のある一部のプレイヤーが行うのみである。

そんな中、ある者が攻略会議を開くという情報がプレイヤーたちにもたらされた。

 

 

 

「誰なんだろうな、今回部屋を見つけたのは。」

 

カイトとキリトは会議場所に指定された講堂にやってきていた。

そこには既に十数人のプレイヤーが集まっている。各ギルドから情報をもって帰るためだけに来ているプレイヤーがほとんどだ。カイトたちもそうである。

ハチマンの姿も端っこの方に見受けられた。

 

「それがさ、俺もアルゴに聞いてみたんだけど本人から口止めされてるらしくて教えてくれなかったんだよ。」

「はぁ?なんじゃそりゃ。新規参入の奴ってことか?」

 

そんな話をしていると部屋の扉が勢いよく開けられた。

入ってきたのは見たことのない、赤と白を基調とした装備を身につけたプレイヤーたちだった。

()()()()()()()()()

 

「「ア、アスナ!?」」

 

その面々の中にアスナがいたのだ。

知り合いが突然、正体不明のメンバーと同じような服装をしていたのだから、驚くなという方が無理があるだろう。

アスナはその実力と容姿もあって攻略組でも特に目立つ存在だったので、カイトたち以外もあっけにとられている者がほとんどだ。

その様子を横目に、その者たちの先頭にいたプレイヤーが既に壇上に上がり、その口を開いた。

 

「私の名前は《ヒースクリフ》。突然だが、ここにギルド《血盟騎士団(KoB)》の結成、そして《KoB》の攻略組への参加を宣言する。」

 

 

 

(確かに新規の奴だろうとは思ってたが、こんな形で来るか。しかもアスナを引っ張りだすとは…あいつ、なかなか考えてるな。)

 

周りの面々も次第に状況を飲み込んできたらしい。

それに伴って様々な声が聞こえてくる。

 

『(おい、あのヒースクリフとかいう奴、信用できるのか…?)』

『(それは分かんないが…《紅の閃光》がいるぞ。強さは確かだと思うが。)』

『(いや、それにしたって…。)』

 

プレイヤーたちは決断できずにいた。

二つ名持ちのアスナがいたことは確かに大きいが、決定打には欠けているらしい。

ハチマンはそれを見て怒りを見せるでもなく、落胆したような、しょうがないと納得したような表情を見せた。

彼はかつて部活動でこういった場面に多々出くわしている。所謂、十八番というやつだ。既に第一層でもその実力は遺憾なく発揮されたことは記憶に新しい。

もたれていた壁から離れて、頭の中で段取りを組み立てながら壇上へと向かう。

 

「おい、おm「ちょっと待てよ!!」

 

しかしその計画は一人の青年によって頓挫せられてしまった。

 

 

 

(へぇ…。なかなか面白いことになってきたじゃねぇか。つまりアスナも《KoB》とやらのメンバーになったってことだよな?)

 

それでも次第にプレイヤーたちに疑念が渦巻いていく。

 

(うーん、ビミョーな感じだなぁ…ん?)

 

カイトは壇上へと歩いていくハチマンを見つける。

彼はハチマンがこういう時にどういった手段を取るかということを知っている。

 

(おいおい、あいつまさか……。それはさせるわけにはいかねぇよなぁ!)

 

それを彼が黙って見過ごすわけがないのだ。例え、誰に頼まれなくとも、お節介と言われても動く。その行動力こそが彼の性質とも言うものなのだろう。

 

「ちょっと待てよ!!」

 

 

 

ハチマンが呆気にとられるのも気にせず、カイトは一気にジャンプしてヒースクリフへと詰め寄った。

 

「そんなのおいそれと『ハイ、そうですか。』って言えるわけねぇだろ。」

「ほう、つまり私のことが信用できないと?」

「ああ、そうだな。お前だって予想はしてたんだろ?そのためにメンバーにアスナを引きこみ、そして手土産に今回のボスに関する情報を、ってとこか。」

「そういうことだ。それでは足りないと言うのかね?」

「足りないね。」

「では何があれば足りるのか、教えてもらえるかな。」

「そもそもそんな保証はいらねぇよ。俺らが求めてんのはお前自身の強さそのものだ。」

「なるほど…。それでは、君は私にどうしろと?」

「簡単なことだ。俺と決闘して証明すれば「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」…アスナか。」

「そんなの私聞いてないわ!」

「そりゃー、今決まったんだからな。」

「あなたがするくらいなら私が団長と決闘します!!」

「あのなぁ…それこそダメに決まってんだろ…。お前はそいつの身内なんだからな。それじゃあ、そういうことで。いいよな、ヒースクリフ。」

「ああ、もちろんだ。」

 

 

 

「おい、どういうことだよ。」

「ん?どうしたよハチ。」

「どうしたもこうしたもない。明らかに俺の邪魔しただろ。」

 

ハチマンがカイトの行動の意図を悟っていないわけではない。ただ、それはカイトが彼の行動を先読みしたということであり、つまりハチマンの性質を理解されたということである。

それをハチマンがよく思うはずはなかった。

 

「そんなことか。お前のやり方は第一層で嫌という程知ったからな、今度は俺がやり返してやったってわけ。お前としては仕事が減ってよかっただろ?それにあいつの実力を俺自身の手で試してみたいってのも半分あるしな。」

「…そうかよ。それよりもあれ、後悔すんなよ。」

「…ん?」

「カイト…。」「どういうことかちゃんと説明してくれるかしら…?」

 

ハチマンが指差した先には素敵な笑顔のキリトとアスナがいた。

 

 

 

攻略組一行は大きな広場に移動してきている。

そこではヒースクリフとカイトが対峙するように立ち、その周りを他のメンバーが取り囲むような形になっていた。

どこから嗅ぎつけたのか、サチやクライン、アルゴといった攻略組でない者たちもいる。

 

「用意はいいな、ヒースクリフ。」

「いつでもどうぞ。」

 

カイトが対戦を申し込み、ヒースクリフが承諾。

ルールは《初撃決着モード》、先に有効打を与えた方の勝ちだ。

カウントダウンが始まると周囲が静寂に包まれる。

15秒が過ぎたあたりでカイトは槍を、ヒースクリフは巨大な盾と長剣をそれぞれ取り出す。

そして、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

「イヤー、なかなかの見ものだったナ。」

「うん。私、カイトさんの本気って初めて見たよ。やっぱり凄いね。」

「惚れ直したか?」

「うん、かっこよか…って何言わすのぉ!!」「ぐッは!」

「「「「(アホめ…。)」」」」

 

サチに吹っ飛ばされるハチマンを尻目にアルゴ、クライン、キリト、アスナの四人は先ほどの戦闘を思い出していた。

 

 

 

やはり先に仕掛けたのはカイトだった。

一気に距離を詰めて槍を、盾を持っていないヒースクリフの右側へと振りかぶる。

ヒースクリフもそれを読んでいて、前に出つつ左手の盾で攻撃を防ぐ。

そのまますれ違い際に剣を突き出すが、カイトもすんでのところで躱す。

普通ならこれだけでも決着がつくようなレベルの攻防。

それからは守りのヒースクリフ、攻めのカイトという予想通りの展開。だが、隙のないヒースクリフにカイトは攻めあぐねていた。

ついに痺れを切らし、勝負を仕掛ける。

左右のフェイントを混ぜつつ駆けて近づき、接近戦に持ち込んだ。

しかしそれはヒースクリフの狙いでもあるのだ、腰を据えて迎え撃つ。

そして10分にも及ぶ斬り合いの後。

相手を斬り伏せたのはヒースクリフだった。

 

 

 

「あぁ!クッソ!マジで悔しい!!」

「まぁまぁ、いいじゃないの。結果的にカイト君の株も上がったんだし。」

「そうだよ。もしハチがやってたらワザと自分を落として相手を上げる、なんてことをしかねなかったんだから。なぁ?」

「しょ、しょんなことないでしゅよ?」

「いや、絶対ウソだろ…。」

「それにしても、あのヒースクリフって奴、本気のカイトをあそこまで「まだまだ本気じゃなかったもんね!!」…もういいだろ…。だからよ、あそこまでカイトを手玉にとるたぁな。相当な実力者じゃねぇか。」

「アァ、オレっちも知らなかっタ。」

「アルゴでも知らなかったのかよ。アスナは何か知ってるんじゃねぇのか?」

「いえ、私もよくは知らないの。ただ、強さは本物だし、このまま攻略を止めておくわけにもいかないと思ったから誘いに応じただけ。」

「確かにこれで攻略は再開できそうだな。」

「小耳にはさんだ程度ダガ、《DDA》も戻ってくるらしいゾ。」

「ホントにアルゴさんは情報が早いですよね…。」

「でも素性が分からない以上、まだ信用は出来ないだろ。」

「ハチはまたそんなことを…。その通りではあるんだけど。」

「まぁまぁ!とりあえず喜んどきゃいいじゃねぇか!」

 

 

 

そして次の日に再び攻略会議が行われ、五日後にボス部屋に挑戦することが決まった。

 

 

 

 

 

カイトたちは今、第26層のボス部屋にいた。

 

「な、なんだよ、あれ。」

「マジか…。」

 

第25層のこともあり、ボス部屋に突入する前、攻略組は今までにないほどの緊張感に包まれていた。ハチマンでさえ遅刻していなかった。

初めて攻略に参加するプレイヤーが多かった、というのもあっただろう。クラインたちのギルド、《風林火山(WWFM)》もその中の一つだった。

だからこそ、目の前の光景が信じられなかったのだ。

 

そこには巨大な盾と長剣を手にボスと一対一でやり合うプレイヤー、ヒースクリフの姿があった。

 

「一体誰だ、『素性がわからない限り信用できない。』とか言ってたのは。」

「お前だろ、ハチ…。」

 

確かに第25層が異常だったのは分かる。

それでも第24層より強敵なのには違いないのだ、『苦戦は避けられないであろう。』という嫌な予感は誰の心の中にもあったこと。

しかし、そんなのはお構いなしに、大方の予想を覆して戦況が進んでいく。

 

そしてヒースクリフ率いる《KoB》を中心にボスへの攻撃を続け、そのHPを削りきった。

 

結果、犠牲者は0。

 

しかも、今までで最短のボス戦となり、《KoB》とヒースクリフの名は〈最強〉の称号と共にアインクラッド中へと広まることとなった。

 

 

 

 




書き方安定しなくてすいません…。いずれ統一しますので。

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