インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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この前大特の免許の検定が受かった妖刀です。次は大型Ⅰ種を獲るよていです。

では本編どうぞ


ニセ彼女

「なあ、あんたはいったい誰なんだ?」

 

航はただ刀奈に向けてそういった。

その言葉が理解できないのか、彼女は冷や汗を流しながら、困惑した顔で彼の方を見る。

 

「航、何言ってるのよ。私よ?更識かた―――」」

 

「違う。お前は刀奈じゃない」

 

航の断言にピタリと止まる刀奈。顔も一瞬能面のようになったが、すぐに先ほどの困惑した顔に戻る。航は一瞬目を細めるが、それでも彼女をにらみつけている。

だが刀奈はいきなり偽物認定されたためか、流石に怒った顔になって大声を上げた。

 

「な、なら航!どこに私じゃないって証拠があるのよ!?」

 

「証拠?なら聞くよ。中学の頃にした、3人の夢ってなんだ?」

 

「えっ……3人……?」

 

刀奈は驚きと困惑が混じった顔をしているが、航は追撃を止めずに彼女に話しかけていく。

 

「そうだよ。俺と刀奈と日輪で話した、夢だよ」

 

航はジロリと刀奈を睨む。刀奈は何か言おうと口をアワアワとしていたが、諦めたのか俯いて髪の隙間から赤い瞳を航に向けている。

 

「……ねえ。いつから気づいてたのかしら?」

 

この時、彼女の気配がドロリとした、それも殺意に似たモノに変わり、航は一歩後ろに下がっていつでも逃げれる用意をする。実際彼女との距離は5mとそこそこあるが、もし刀奈と身体能力が変わらないとしたら、一瞬にして詰められるだろう。

だが航は逃げようとせず、彼女が何者なのか知りたかった。ただ、胸の奥でザワリとナニカがうごめく感覚を感じながら。

 

「……俺にもわからん。ただ違うとわかっただけだ。そして教えろ。お前はいったい何者なんだ?」

 

女は何も答えず、俯いたままで何かぼそぼそと呟いていた。だがその口元はニヤニヤと笑っており、とても不気味な運息をさらしだしている。

そのとき、女の体がフルフルと震え出した。

 

「ふふっ。ふふふ。あははははははは!」

 

彼女は壊れたかのように笑い出した。あまりに可笑しいのかおなかを抱えて笑っており、そして30秒ほど笑った後、ニタァと笑みを浮かべた彼女がワタルをジロリと見つめる。

 

「貴方、こういうのは鈍感で気づかないと思ってたのに早く気づいてたのね。最っ高だわ!」

 

女は狂おしそうな目で航を見ている。刀奈の顔をしてるため航はそれが不快に感じ、眉間にしわを寄せる。

その時だ。女はどこから出したのか、両手にナイフが1本ずつ握られていた。

 

「さて、貴方が聞きたいのは自分の両親を殺したのは誰かってことね?答えは私。ふふ、どんな気持ちかしら。自分の好きな相手の姿をしたヤツに殺された気持ちは。そしてそんな殺した犯人と一緒に君と来たことに両親はどう思うのかしらね?」

 

女はケラケラと笑いながら航を見る。そして彼女は航の両親を殺すときの楽しさ、親の絶望したときの顔、そんなのを楽しそうにペラペラとしゃべりだした。

挑発だとわかってる。乗ってはダメだ。そんなことは頭では理解しても航の顔は驚き、怒り、悲しみそんなものが混ざったかのような顔をしており、女はその顔を見て愉悦に浸っていた。

 

「なっ……ぁ……!?」

 

航は怒りを抑えられずにいた。こんな奴に両親が殺されたのかと。ただ怒りが、憎悪が彼の中を駆け巡る。

この時、彼の中でナニカが口を開き、その鋭い牙が見える口がニタァと笑う感覚がした。そしてナニカは呟いた。“解き放て、その激情を”と。

航の指がピクリと動く。それと同時に背中にある背びれが少しずつ大きくなり始めてた。

 

「じゃあ、サヨナラよ!」

 

女は姿勢を低くして、一瞬で航の懐へと詰め寄り、そして両手に持ってるナイフを突きつけようとした。だがしかし、彼女が勢いよく突き立てたと思った先には、すでに航はいなかった。

 

「へっ?」

 

一体どこに消えたのか。そう思った刹那、自分の頭上が少し影を差したため上を向くと、そこには大きく跳躍して、右足で踵落としを女にくらわせようとする航の姿があったのだ。

女はとっさに反応して自身の腕をクロスさせて踵落としを受ける。だがその瞬間、同時に振り上げていたもう一方の足、左足がワンテンポ遅れて彼女の前腕部に直撃させる。

 

「ぐぅ……!?」

 

この一撃が重かったのか、女は膝を落として威力を逃がそうとしたが、それでも鈍い痛みが腕に残る。そして航は地に手を着いた後すぐに後ろにジャンプして着地する。そしてゆらりとゆっくり立ち上がり、その目が女をにらみつけたとき、女は驚きと畏怖の顔になった。

この時女が見たモノ。それは、ほぼ白目になった目でギョロリと女を見ている航だったのだから。白紙に墨汁を一滴落としたかのような瞳は、殺意だけで女をしっかりと見ていた。

 

「アァァァ……ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 

「速いっ!?」

 

航は吼え、地面を蹴って一瞬で手が届く距離にまで迫る。そして右腕を引いて開いた手、掌底を女に叩き込もうとしたのだが、女は後ろに下がることでどうにかこの一撃をくらわずに済んだ。だがしかし、航はさらに一歩踏み込み、無理やり一撃をぶつけてきた。

骨が軋み、女は肺から息を絞り出す。まるで鈍器で殴られたかのような衝撃に女は驚きを隠せなかった。だが最初に後ろの下がってたおかげでそのまま吹き飛ばされるが、数メートル後ろで着地をする。だが予想以上の力で殴られたため、女は片膝をついた。

 

「何で…!?貴方、一般人じゃ…!?いや、そうだった…。忘れてたわ、貴方が化け物ってことを」

 

女は小さく歯噛み、あの男が航がどんな人間か言ってたかを思い出す。正直こういう一般社会に紛れ込んでたせいで、弱いと慢心していた自分にイラついたが、今はその慢心も消して航を殺すことだけに専念する。

そして航が突っ込んできた。その動きは獣のように素早く、そして荒々しい。

その動きに翻弄されながらも女はナイフを使って斬りかかるが、航の回避の速度が速いのか若干掠めるばかりでいまいち有効な1撃が決まらない。だがこれは航も同じであり、航の拳や蹴りは回避されるか受け流されるばかりだ。だが時折被害無視の一撃を決めてくるため、女の方が若干不利になってきている。

今はとりあえず航の攻撃を躱し、防御を繰り返しており、彼の攻撃に隙ができるのを待った。そして航が右ハイキックから流れるように左後ろ回し蹴りを浴びせ、そのまま拳を叩き込もうとした時だ。

女は口から何か出し、それを目に当てたことで航の動きが鈍らせたのだ。

 

「そこよ!」

 

女は手に持ってたナイフを投げ、それは航の左腕と腹部に刺さった。それで動きが止まり、女は航にハイキックをし、航の首に直撃させる。だがしかし、航は足を開いて無理やりそれを受け止めたのだ。

 

「かた、い…!」

 

女は石でも蹴ったかのような衝撃に顔を歪め、そして距離をとろうとバックステップで後ろに下がる。だが想像以上にいたかったのか、動きは少し鈍くなって動きが少し重い。

 

「オァッ!」

 

だが航は体に2か所刺さっているナイフを抜き、そして女の方へと勢いよく投げたのだ。

 

「なっ!?」

 

女もそれは予想外だったのか、反応に遅れてしまって肩を大きき切り裂いて血が舞った。それで女は肩で息をしているが、それは航も同じ。いやむしろ向こうが重傷のはずなのだろう…だが、現実は違った。

航は血が少し噴出したにもかかわらず、それを無視して女に襲い掛かったのだ。さすがの女も反応しきれず、そのまま首側面に回し蹴りをまともにくらい、吹き飛ばされる。

 

「ったく…もっと血が出てきたじゃない…!」

 

女は首元を触り、自分が血を流してることを知る。そして握りこぶしを作り、航めがけてその拳フックのようにして振りぬいたが空ぶり、航は女の脇を抜けて後ろに回り込もうとしたが……。

 

「っ!?」

 

「かかった」

 

航は首に何かが当たったと思った頃には遅く、女の首元からワイヤーが出ており、それが航の首を1週回ってから絞めているのだ。先ほど首元を触った際に引き出したのだろう、女は即ワイヤーを巻き取り、航と背中合わせになるようにして彼の首を絞める。こうすれば航の手は女をはがそうにも力が上手く入れれないが、女はワイヤーを引っ張ればいいだけなので一気に形勢逆転する。

 

「グッ…!が……!?」

 

「さあ、首が絞められて殺される気持ちはどんな気持ちかな?まあ、貴方もご両親のところに送ってあげるから安心してね。いや、あれは両親じゃないわね…まあ、どうでもいいけど」

 

ワイヤーで首が絞められ、意識が朦朧とし始める中、航はこの苦しさで自分の意識を取り戻し始めてた。

 

(死ぬ…俺は、死ぬ…の……?)

 

苦しい。助けてほしい。

ただそれだけだった。怒っても、悲しんでも、憎んでも、この偽物は殺せない。それだけ強いのだから。

航はただ平和に暮らしたかっただけなのになんでこうなったのか。

いろいろ変えれたはずなのに、この女のせいでいろいろ壊れてしまった。刀奈との仲もめちゃくちゃになった。

航はこの女をどうしても……ただ両親の仇を討ちたかった。

 

 

――もっと暴れようよ――

 

 

誰の声かわからない。ただ懐かしい感覚が彼の中を突き抜ける。

この瞬間、航の瞳は点どころか消え、胸の中にある怒りを吐き出すかのように吼えた。

 

「ぁぁぁ……がァァァぁぁあアアアアア!!!!!!」

 

「何っ!?」

 

航が首絞められた状態でも吼えて引き剥がそうと無理やり動き出したため、ワイヤーを手繰り寄せようと手に力を入れる。だがその時、航の右手が彼女のの半分を覆った。そして人差し指が女の左目の上に来る。

 

「うそっ……!あああああ!!!」

 

その瞬間、女は航に左目を潰されてしまい、手の力が緩んでしまう。そして航は体を跳ね、女から素早く離れる。ワイヤーの押し付けられていた部分からはうっすらと血が流れており、まるで血のネックレスをしてるようにも見える。

女は痛みからか自分の目を手で押さえており、片膝をついたまま右目で忌まわしそうに航をにらみつける。

 

「許さない……女の目を潰すなんて許さないわ!」

 

そして女は立ち上がり、落ちてたナイフを拾い、構えて航めがけて突っ込んだ。むろん航もそれに迎え撃つかのように爪を立てて突っ込む。そして女はナイフを航の顔めがけて投げるが、彼は躱すとかそういう行動をせず、ただ自分の左手のひらで受け、貫通しながらも悲鳴1つも上げず女の顔に右掌打を叩き込み、そしてそのまま体重を乗せて女を地面に叩き付けた。だがそこで終わらず、航はジャンプして右膝を女の顔に捉えていた。このまま叩き付けられたら女は地面と膝の挟み撃ちにより最悪死ぬだろう。だが航はそんなのを気にせず、そのまま叩き落そうする。

だが女はそれにすぐに気づき、航の右腕を掴んで無理やり横にずらし、そして即顔も動かしたおかげで膝が彼女の顔をかすめただけで済んだ。

そして女はすぐに体を起き上がらせてナイフを再び出して航の顔めがけて刺そうとした。だがそれに気づいた航はすぐに身を後ろに逸らした後、そして彼女の手首を右手で掴み、そして左手のひらを女の肘に押し当てて、そのまま勢いよく投げた。すると逆間接に極まってしまい、女の腕から骨が折れる音がする。だがそのまま投げ落とされ、女は頭から地面に叩き落された。

だがしかし、女は叩き落される瞬間に空いてる方の手に持ってたナイフで、航の足の腱を斬ったのだ。それで航も倒れる。

そして女はフラフラながらも立ち上がり、立ち上がれない航に再び取り出したナイフで刺そうとしたが…。

だがその時、女の目はギョロリと右を向き、そして即立ち止まって後ろのバック転を数回する。だがそれと同時に3発の銃弾の音が響く。

何があったのか。音のなった方を向くと、航は目を大きく見開いた。

そこにいたのは、ISスーツを着てハンドガンを構えている更識刀奈がいたのだから。




間に合った刀奈。ただ彼女が見たのは満身創痍の航と、自分の偽物が航を殺そうとしてる姿だった。
そして刀奈は“楯無”の名のもとに女を始末することにする。



次回、“更識楯無”

お楽しみに!

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