インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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さて、久々にシリアスじゃない話です。すごい感覚が上手くつかめない(´・ω・`)


では本編どうぞ


復帰

あれから2日ほど経った。学園ではとある噂が生徒たちに流れていた。それは1年1組でも流れており、朝のHR前ながらも生徒たちは、そのことで話題になっていた。

 

「え、篠栗君学園に復帰するの?」

 

「みたいよ。嫌だわぁ、女性に暴力ふるう男なんて」

 

「そうよそうよ。そんな野蛮な人間とか人間じゃないわ」

 

そんな悪口が飛ぶ中、一夏は腕を組んで窓に背を預けて空を見上げていた。そして小さくため息をついたり、頭を掻いたりしてまたため息を吐く。

この様子を見ていた箒やセシリアは彼に話しかけようとするも、何か躊躇ってるのか話す言葉がない。それを見ていたラウラは2人の様子に首をかしげており、とりあえず原因である一夏の元へと寄る。

 

「一夏、ちょっといいか」

 

「ああ、ラウラか」

 

「いったい何を悩んでるんだ?」

 

「あー、航の事なんだが……」

 

「メカゴ…いや、機龍のパイロットか。彼がどうしたんだ?」

 

前に一夏の前で、機龍のことをメカゴジラと言った際に口を酸っぱくして「メカゴジラじゃなくて機龍だ」と言われたため、もうこれ以上言われるのは勘弁なのかさすがに機龍と呼んでいた。ラウラはどっちでもいいような気がしたが、これも日本のこだわりなんだろうと判断し、今はそうしている。

 

「それなんだけどさ…航、復帰するらしくてな」

 

「それは噂なのだろう?まあ、学生なら学業に復帰しなければならないが」

 

「だよなー。でも航からしたらこの教室、すごい居心地悪そうでな……」

 

周りを見渡すと噂してる女子ばかり。だがその内容が一夏の耳にも聞こえ、少しうんざり気味になっていたのだ。今の一夏にはこれをどうするか考えても思い浮かばず、これなら来ない方がいいんじゃないかと思うほどにうるさい。

 

「ふむ…私には家族というものがないから分からないが、隊から人が消えていくのは寂しく感じる。それがまだ別の隊に異動や自分から辞めるならともかく、負傷などで消えていくのは心に来てしまうな。自分が弱かったからこうなったのではないか、と」

 

何かとんでもない発言を聞いたような気がしたが、一夏は聞かなかったことにしてラウラの言葉を聞いていた。

自分が弱くて、それで誰かを失ったら……。一夏は自分が弱いことを知っている。そのため、毎日専用機の内の誰かと一緒に練習したり、勉強とかを行っている。だがいまいち結果に出ないため少し悩んでいた。

 

「……」

 

「……!」

 

「ん?なんだ?」

 

何か廊下が少し騒がしく感じ、なんだと思って視線をラウラから外す。一体何なのだろうと思い、一夏は背中を上げて動こうとした。

この時、教室の扉が開いて中に人が入ってきた。だが生徒はその()()()を見たとき、驚きの表情を浮かべてる子が多数だった。

 

「わた、る……?」

 

そこにいたのは航だった。学年別タッグトーナメントで見られたぼさぼさに長い髪もバッサリと切られ、いつもの短い髪にまとめ上げられてる。航が自分の席に着いたため一夏は彼に話しかけようとしたとき、ホームルーム前の呼び鈴が鳴ったため、急いで席に着く。そして1分後に千冬と真耶が教室に入ってきた。

 

「今日から篠栗が復帰する。彼も病み上がりだからあまり無茶させるな。いいな!」

 

『はい!』

 

千冬の鶴の一声で返事する生徒たち。そしてホームルームも終わり、そのまま授業が開始された。

 

 

 

 

 

それから昼休み。航の周りには女子たちがひそひそと何か話しており、すごい居心地悪そうにしている。そして航が動き出そうとした時に、一夏も急いで立ち上がって彼の元へと駆け、そして肩に手をかけた。

 

「航、屋上まで来てもらってもいいか」

 

「…わかった」

 

そして一夏に連れられて屋上に向かう航。道中一夏を見つけて話しかけようとした女子がちらほらいたが、航の姿を見て一気に引き返したため、すぐ屋上に着く。現在屋上は誰も使っていないため2人だけしかおらず、2人はフェンスから外を見ている。

 

「やっと復帰したんだな、おめでとう」

 

「ああ、ありがと」

 

「「……」」

 

両者の間に沈黙が流れる。お互い、どう話しかければいいのか悩んでいた。下手なこと言って地雷を踏み抜かないか警戒する一夏。どう謝ればいいか悩む航。

それから1分も立ってないだろうが、2人にはそれが長く感じ……。そして航はため息を吐いて、一夏の方を向いた。

 

「……一夏」

 

「なんだ?」

 

「すまなかった」

 

「……」

 

航は頭を下げた。一夏は予想してたのか、特に表情を変えず、航を見てる。

 

「記憶がおぼろげだけど、一夏たちにもひどいことをしたのは覚えてる。だから別に許してくれとは言わない。だからこのまま絶縁してくれても構わない。本当に、すまなかった……」

 

「そう。それなら……」

 

その時、一夏が航を殴った。拳は頬に見事に入り、航はそのまま吹き飛ばされて尻もちをつく。口を切ったのか校内で鉄の味がし、航は一夏を見ると彼の顔は怒ったかのような表情だ。

 

「俺はこれで手打ちだ。それで許してやるよ」

 

そして一夏は笑みを浮かべて航に手を伸ばす。キョトンとしていた航だが、二って笑うと、彼の手を取って立ち上がった。

こいつが友人でよかった。航は心の底から思った。

 

「ああ、すまんな。ありがとう」

 

航が立ち上がった後、近くにあったベンチに腰掛ける一夏。隣に航も座り、そこから学園を眺める。

 

「まー、誰だって身内に手を出されたら怒るし、心がめちゃくちゃになるよな。俺も千冬姉が同じことになったらそうなるかもしれないし」

 

一夏は唯一身内が千冬しかいない。万が一にでも彼女に何かあれば、航と同じ行動をとってたかもしれない。さすがにないと思いたいが、人間何が起きるかわからないのだ。

 

「一夏……。俺ら、もっと強くならないとな。誰か大切な人を護れるほど強く」

 

「ああ、そうだな……」

 

自分の弱さで誰かを悲しませたり迷惑かけるのは勘弁だ。これは2人に共通することであるため、航と一夏はお互いの握りこぶしを軽くぶつける。そしてなぜかは分からないが、2人は軽く笑った。

それから何分語っただろうか、2人はそこそこいろんな話をしている。

 

「そういえばこの前楯無さんと話し合ったらしいけど、どうだったんだ?」

 

「どうしてそれを?」

 

「昨日楯無さんがうれしそうに話してくれたから」

 

なんとなく想像ついたのか、小さく笑みを浮かべる航。

 

「ああ。俺、独りになったかと思ったけど、案外そうじゃなかったな。一夏たちもいるし」

 

「当たり前だ。仲間を放っておいたり見捨てるほど俺は薄情ものじゃないぜ」

 

「あと、かた…楯無がずっと俺のそばにいてくれるって。俺を独りにしないって言ってくれた」

 

一夏のような友人関係とかではない。だからって父母のような家族でもない。自分のことを思ってくれる特別な人。今は彼女が一番自分を癒してくれる。

一夏は、人を好きになるというのはここまで人間変化するのかと思い、少し羨ましく感じた。鈴のことはlikeとloveが丁度半分程度で、これがloveに傾いたらこうなるのか、と。

その時、ガチャリと屋上の扉が開く音がしたため、航と一夏はとびらのほうを向く。

 

「航ー、お・ま・た・せ♪」

 

そこにいたのは、そこそこ大きな弁当箱を持った楯無の姿であった。一夏は航がここに来た理由、そして楯無がここにいる理由が分からず、首をかしげてしまうがそれを見た楯無がクスクスと笑っていた。

 

「あら、一夏君。お昼はどうしたの?」

 

「これから食堂で食べようかと…楯無さんは?」

 

「表向きは航の監視という名目で、一緒に昼食を食べるのよ」

 

そして扇子を広げ「愛妻弁当」という文字を見せる。

現在航は監視付きで学園内をぶらつける。監視役に教員をいちいちつける余裕学園になく、一番彼を鎮圧できる生徒として更識楯無を選んだのだ。まあ楯無からしたら棚から牡丹餅で、それを喜んで引き受けたという。そして現在、こうやってお昼を共にするわけだ。

 

「じゃあ、俺は食堂行くから」

 

空気を呼んだのか分からないが、一夏が屋上を後にしたため、現在ここには航と刀奈しかいない。そして2人はベンチに腰掛けて、刀奈が弁当箱の包みを取ると、そこには重箱ほどではないが3段重ねの大きな弁当箱が入っていた。

 

「あれ、刀奈の分は?」

 

「これを一緒に食べるのよ。だから大きいのにしたの」

 

「大きいのって…」

 

「もしかして、作りすぎちゃった……?」

 

「大丈夫だからな!?食べれないことないから!い、いただきます!」

 

そして最初目についたおにぎりに手を伸ばして食べようとしたが、この時時刀奈が卵焼きを箸でつまんで航の口に近づけた。

 

「はい、あーん」

 

航は口を開いて食べようとしたが、近くに来たときナニを思ったのか口を閉じてしまった。理由を察した刀奈は頬を膨らませて不満げな顔をする。

 

「もう、毒とか入れてないわよ?ほら」

 

そういって刀奈はつまんでいた卵焼きを自分で食べて美味しそうな顔をしたため、航がゴクリと喉を鳴らした。

 

「ね、わかったでしょ?だから、はい、あーん」

 

今度は何も抵抗せずに食べる航。

 

「ん、美味しい」

 

「ふふっ」

 

嬉しそうな航の顔を見て笑みがこぼれる刀奈。久しぶり彼の笑顔を見れてよかったのか、刀奈は次々と航に弁当の中身を食べさせていく。そのため、3段重ねのうち2段はほとんど航の腹の中に納まったが、流石に短時間に突っ込まれたことあってか航は少し苦しそうにしてる。

だがその美味しさゆえに食べることをやめず、最後の1段は刀奈と一緒に食べたが、結果満腹で動けなくなったという。

 

 

 

 

 

「―――ということがあってだな」

 

現在一夏は食堂に来ており、そこで箒、セシリア、鈴、ラウラの自分あわせて5人で食事をとっていた。

 

「まあ、よかったんじゃない?さすがに私も航のあの姿は見るのはつらかったし」

 

「家族を失うのは辛いことだからよくわかりますわ……」

 

「そうか…航が……」

 

安堵する者、落ち込む者、考え込む者と三者三様だが、全員航のことを思ってくれて一夏は安堵した。鈴はともかく、箒とセシリアに若干の不安が残ってたため、この反応に安心を覚えた。とりあえず航の敵ではない、と。

ただこのとき、少し雰囲気が暗くなった感覚がしたので、一夏は話題を変えるが、これがいけなかった。

 

「それにしても楯無さんの料理おいしそうだったなー。航、食べさせてもらってたし」

 

この時、3人がピクリと反応した。それにより箸の動きも止まり、一夏hあ不思議そうに3人を見ていたが……。この時だ。バンッ!という机をたたく音と共に箒が立ち上がったのだ。

 

「い、いい、一夏!明日、私が一夏の分の昼食を作ってくるから!屋上で待ってろ!」

 

「お、おう……」

 

「なっ、それなら私もよ!美味しい酢豚作ってあげるんだから」

 

「それならわたくしもですわ!」

 

「「それはやめて」」

 

「な、なんでですのー!?」

 

箒の言葉に反応したのか、鈴とセシリアも何か燃え出した。その迫力に生返事しかできない一夏は、ただ言い争う3人を見てることしかできなかった。

 

「一夏よ、なんか大変そうだな」

 

「そう言ってくれるラウラは優しいよ」

 

そしてラウラの頭をなでる一夏だが、ラウラは少し首をかしげて一夏を見つめていた。そして千冬が注意しに来るまで2人は、昼飯を食べながら3人の喧嘩を見ているのだった。

なお連帯責任で、3人含めて一夏たちも出席簿で頭を叩かれたのは、また余談である。

 

 

 

 

 

それから時間は経ち放課後。航は刀奈が迎えに来るとか言われてたため教室に残っていたが、メールでちょっと来れないと書かれたため、小さくため息を吐いて寮へと向かう。

 

「あ、篠栗君残っていたのですね」

 

「あれ、山田先生?」

 

その時、教室に副担任である山田真耶が来たため、手持ちかばんを机の上に置いて彼女の方を向く。

 

「あの、何の用ですか?」

 

「はい、篠栗君の部屋の鍵を渡そうと」

 

「え、部屋ってこれじゃ?」

 

そういって彼は懲罰室の鍵を見せる。

 

「今日の朝までそうでしたが、今日から再びちゃんとした部屋での生活を送ってもらうため、新たな部屋の鍵を渡しに来ました。はい、どうぞ」

 

そう言われて航は鍵をもらう。番号は1023と前住んでいた部屋の番号であり、

 

「なら前住んでた部屋の荷物は…」

 

「それなら既に新しい部屋に移しました」

 

「ああ、それならありがとうございます」

 

「それじゃあ、道草を食べずに部屋に戻ってくださいね」

 

「はーい、じゃあ先生さよならー」

 

「はい、さようなら」

 

笑顔で小さく手を振って見送る真耶。そして航が見えなくなるまで見送った後、小さくため息を吐いて安心した表情を浮かべていた。

彼女は安心していた。両親を失って壊れた彼がどうなってしまうのか、それを教員である自分がどうにかできるのか。だが彼は今は安定しており、今まで感じていた不安がどこかに行ったが、真耶はこのまま航に身内が死んだ悲しみをちゃんと超えれるように祈った。

 

 

 

 

 

航はあれから寮へと向かい、久々に寮の2階から上へと続く階段を上って前まで使っていた部屋へと向かう。約1か月の間だったが、何かすごく懐かしく感じ、そして着いたため扉を開くと……。

 

「おかえりなさい。ごはんにしますか?お風呂にしますか?それともわ・た・し?」

 

航は扉を勢い良く閉めた。そして鍵の番号と部屋の番号を確認する。

 

「え?……え?what?」

 

何か言葉が英語になるほどの衝撃だった。

彼が見たのはどう見ても刀奈だ。服装は見間違いでなければエプロンをしていた。だが、一番の問題はエプロンの下に何も来てないように見えたのだ。

いわゆる、裸エプロンというやつだが、航は現実か夢なのかわからなったが、これではらちが明かないと、もう一度ドアノブに手をかけて扉を開けると……。

 

「おかえりなさい。私にしますか?私にしますか?それとも、わ・た・し?」

 

変わっていなかった。むしろ先ほどより選択肢が減っており、完全に彼女以外選べなくなってしまっている。刀奈はこれにどう反応するのか楽しみで、少しニヤニヤしているが、この時彼女は、自分の想像と超えた行動を、彼がとるとは予想打しなかった。

そのとき、航が抱き着いてきたのだ。

 

「え、えええぇぇ!?わ、航!?」

 

いきなり抱き着かれたことに驚き、顔を真っ赤にする刀奈。航は彼女のわきから手を回して抱き着き、顔を彼女の胸にうずめている。刀奈は驚いてはいるがこれを一切引き剥がそうとはせず、ただオロオロしていた。

 

「何か安心する……お願い、もう少しこのままでいさせて」

 

「あっ、うん……」

 

「ありがと…。あったかい……」

 

それにハッとしたのか、刀奈は突っぱねるわけでもなく、彼の要求に応える。ただ扉が開きっぱなしだったため、それだけは閉じて、その後刀奈はベッドに腰掛け、航は膝立ちの状態で刀奈に抱き着いている。

航はまだ完全に治ってない。それにずっと懲罰室で独りぼっちだったせいでもあるのだろう、人肌が恋しいのか、彼女のぬくもりが欲しいのか分からない。だけどこれが安心するため抱き着いてた。

刀奈は微笑みを浮かべてそんな航の頭をなでており、約10分はこの状態でい続けた。そしてスッキリして航は刀奈から離れたが……。

 

「すっきりした?」

 

「うん……そうだけど……」

 

航は今頃になって刀奈の姿に赤面していた。ただ顔を知らしても、チラチラと刀奈の方を見ている。それを見た刀奈はくすくすと笑い、エプロンの裾を指でつまんで少しずつ上げていく。目をそらそうとしてもくぎ付けの航。そして……。

 

「残念、水着を着ていましたー」

 

くるりと回って背中から水色のビキニを着た姿を見せる刀奈。航はそれに安心感と残念感を同時に感じ、流石にこのことを言葉にできなかったため、とりあえず脱力した笑いを浮かべた。

その後刀奈は脱衣室に向かって2分後には部屋着なのだろう、Tシャツにスパッツを履いた姿で出てきた。そして2人はお互いのベッドに腰掛けており、ベッドとベッドの間にある仕切り越しに話している。

 

「てかなんで刀奈がこの部屋に?というか鍵は……」

 

「言ったでしょ?監視役で一緒にいるって。だからこうして同室になったの。わかった?」

 

「お、おう。じゃあ、またよろしく」

 

「うん、よろしくね」

 

刀奈は笑顔を浮かべる。そして彼の笑顔を見たいため、彼女は夕食を始めた。

 

 

 

 

 

それから夕食も食べ、お互い風呂も済ませて現在夜10時半。窓側のベッドに、2人は寝間着姿で腰かけていろいろ話をしていた。だが航が割と疲れてるのか、少し頭がフラフラとしている。まあ、彼もこれまでいろいろあったのだ。それの疲れが一気に出てきたりすることもあるのだろう。

 

「航、もしかして眠い?」

 

「んー…かもしれない」

 

「まあ、無理せずにもう寝ましょうか。無理は体に毒よ」

 

「わかった…それじゃおやすみ……」

 

そして航は欠伸しながら、今据わっているベッドにもぐりこもうとしたが、この時自分の背中側で、刀奈がニヤニヤしてるのを航は知らないままベッドに横になり、眠りについた。




さて、ようやく航も学園に復帰しました。これから彼はどう学園で動くのか……。

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