インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
あと福岡市美術館にてゴジラ展を見てきました。まさかの怪獣たちがいて驚きの連続でした。
では最新話、どうぞ!
メガヌロンの手によって渋谷が水没し、すでに1か月。渋谷は現在、底から高さ20mほど水没し、すでに水面からは底が見えない。
その元渋谷駅前を自衛隊の小型ボートが進んでいた。そのボートには89式5.56mm小銃を持った男性自衛官が2人と、89式5.56mm小銃を持った女性自衛官1人が乗っており、彼らは周りを少し驚いた様に眺めている。
「ここまで変わるとはなぁ……」
「本当ですね。てかここら辺にハチ公像があるんでしたっけ?」
「えぇ。にしても私が戦った時と大きく変わり過ぎよ……」
そういう彼女、秋椿凛1士は小さくため息を漏らしながら空を見上げた。あの渋谷での出来事の後、上官である鷹月仁元一尉が捕まり、そして彼の隊は解散。その後仲間たちとはバラバラになり、そして別の隊に配属されたのだった。まあ、前の隊で同じだった梅宮健二2士と木島現1士が一緒だったが。
そして現在は任務でこの渋谷に来ている。その任務とは、『渋谷の現状を報告するとともに、逃げ遅れた人がいないかの確認』というものである。それに選ばれたのは凛と現と健二の3人であり、彼らは現在ボートでここにいるというわけだ。
「てか作戦開始前に避難誘導とかしたんでしょ?それで残ってるとかないでしょ」
「ところがね、割といたりするのよ。すでに亡くなった姿で……」
「え゛っ……いや、冗談、ですよね……?」
健二は少し顔を青くして凛に尋ねる。
「まあ噂ではそういうものだし。とりあえずどこか止まれるところ探して調べてみましょうか」
「お、おう……あ、あれは止まれるんじゃないか?」
そこにあったのはとあるマンションで、そこの階段のところにボートを止めれそうな場所があったのだ。とりあえずしらみつぶしに、そこのマンションにボートを停留させて入ってみた。
「うわぁ……ずっと整備されてないせいで苔とか生えてますよ……」
「ここから毎日釣りできて楽しそうだな」
「メガヌロンが釣れなければ、ですけどね」
「だよなぁ……」
現は冗談を飛ばしたつもりだが、凛の対応に少し落ち込む。だがパッと見ではそんな様子を見せず、機銃をしっかりと構えている。いつメガヌロンが出てくるのか分からないのだ、そうなっても仕方ないだろう。
そしてマンションを進んでいくが何も現れず、ただ時折鍵が壊れたのか扉が開いたままの部屋が点々としている。
パリィン!
「「「っ!」」」
それは目の前にある部屋からであった。まるでガラスの割れる音であり、何が起きたのか今いるところでは若干わからない。
しかも壊れ方が外から突進でもしたかのようになっており、彼らはそれを警戒して健二が中をのぞき込む。現は周りの警戒を怠らずやっており、そして3人は慎重にその部屋に入り込む。
その部屋は完全に荒れており、窓ガラスはほとんどが割れてボロボロのカーテンから光が漏れ出している。キッチンも何かが大きく切り裂いたかの跡を残し、冷蔵庫は扉が吹き飛ばされて、中にある食べ物が何者かに食われている。そして残った食べ物には虫が集っており、コバエが飛んでる。
そして奥にあるリビングでは、腐敗した死体があった。
「現さん、これは……」
「あぁ……。おそらくここの住人か。パッと見だと女性だが、上半身が無いとなるとなぁ……」
そこにあったのは人の死体であった。スカートをはいてることから女性である可能性が高いが、上半身は何かに食いちぎられたのかと言わんばかりに無くなっており、残った下半身もずっと放置されてたせいか腐敗しており、ただスカートだけが女性と仮定するだけの材料でしかない。
その臭いに顔を顰める3人。この女性?が誰かを断定するためのものがあるのかと凛が勝手に近くにあったバッグを探ると、そこから警察手帳が出てきた。
「現さん、健二君。この人、すぐそこの渋谷交番の婦警さんよ。ほら、前に1人行方不明になったっていうニュースがあった」
「あー、何かありましたね。てかなんで警察の人がここで死んでるんですか……」
「勧告を無視してたか、それ以前に死んでいたか、って……ぇ」
健二は少し冷や汗を流しながら凛の方を向くと、そこには確信めいた表情をする凛がいる。
「間違いないわ、メガヌr」
「キシャアアアア!」
その時だ、ボロボロのカーテンが盛り上がったかと思うと、そこから体長2mほどのメガヌロンが現れたのだ。健二と現は機銃を構え複眼にめがけて撃ち、そのまま複眼を破壊する。するとメガヌロンはいきなり目の前が見えなくなったことに驚いたのか、その場でもがくかのように暴れだす。
「伏せて!」
凛はそういうと同時に右手が光り、右手には迷彩色のラファールリヴァイブの椀部が展開される。そして同時に展開された
「……さすが凛さん。IS使える人連れて来て正解だった」
「ここは危ないから逃げましょ」
「あ、あぁ、そうだな。ボートの場所まで引こう」
現がそういうと同時に3人はこの部屋から出て、ボートのあった場所まで移動する。だが先ほどとは違って扉1つ1つを警戒しており、問題ないと判断するとさっさと次の扉の近くまで移動を繰り返す。
そして警戒をしながらも、時間をあまりかけないようにした3人はさっさとボートに乗り込み、この場を後にする。だがこのマンションの裏がどうなってるのか気になってしまった。
あの時は、路地裏などにしかいなかったメガヌロンが完全に外に出ているのだ。
「健二君。ごめんけどこのマンションの裏に回ってくれる?」
「えっ、マジですか……さっき出てきたんだかどう見ても……」
「裏に数匹引っ付いてると……」
「たぶんね」
「……だーもう!分かりましたよ!」
ボートは目の前にあるマンションの裏へと進んでいく。もしかしてを予想して凛と現は機銃を構え、そして近くにあった十字路を2回曲がり、そこにあったのは……」
「ギギッ」
「チチチ」
「カカカ」
マンションの壁にびっしりとメガヌロンが張り付いていた。その数は何十、いや100体はいるのだろうか。ただ不気味な鳴き声を上げながら、何かを待ってるようにその場に佇んでいる。
3人はいったい何なのかと思って機銃をメガヌロンに向ける。これで引き金を引きたいところだが、それが原因で一斉に襲われたら元も子もない。そのため慎重に近づくと……。
だがそのとき、パキパキ、ピキッ、という何かが割れていく音が鳴り響く。その音はほぼ一斉に鳴り響き、何かと目を凝らす3人。そして3人の目に映ったのは、脱皮をしようと背中が割れていくメガヌロン達の姿であった。
「こいつら、成虫になる気だ!」
「撃ち落とせ!」
現の言葉と同時に機銃の引き金に指をかけ、そのまま引く3人。そして放たれた弾丸は3、4発脱皮中のメガヌロンの背中に当たると、そのまま壁から剥がれて水中に没していく。昆虫は脱皮したての体などはとても柔らかく、そのため豆鉄砲にしか感じない89式5.56mm小銃でも倒していけるのだろう。
そして1発も漏らすことなく当て続ける3人だが、その数が多すぎるためか先にマガジンの弾切れを起こし、すぐに新しいのを装填する。そして引き金を引いていくが……。
「あぁもう!ISを使わせてもらいますよ!」
あまりの数に業を煮やしたのか凛が自衛隊使用ともいえる迷彩色のラファールリヴァイブを展開し、その右手には、ISに装備できるように改造された、対戦車ヘリの3銃身20ミリ機関砲を展開。ミニガンのように両手持ちになったそれを、目の前にいるメガヌロンの壁に標準を向けて引き金を引く。
マンションの壁を舐めるかのように弾は当たっていき、あまりの弾速と弾数に張り付いていたメガヌロンがボトボトと落ちていく。脱皮中は完全に無防備のため20ミリ機関砲の一撃が致命傷となり、脱皮すらする時間もない。だからと言って攻撃しようにも脱皮の準備が終えたため動けず、現と健二が持つ89式5.56mm小銃でも落とされていき、瞬く間にそのマンションに張り付いていたメガヌロンが断末魔を上げながら殲滅していく。
そしてカラララ……と弾を吐き終えた3銃身20ミリ機関砲はただ回転し続け、そこに残ったのは弾痕が大量に残ったマンションの壁と、それに張り付く千切れ残ったメガヌロンの脚あった。
「さすがIS、と言ったところか……。見事に殲滅して見せたな……」
現はこの結果に驚きながらも満足げに言い、健二もこのことに目をぱちくりさせながらもうなずく。だが数が圧倒的に足りない。そのため一時凛を近くに呼び戻し、そしてこのこと浸水してない場所に立てた拠点に向けて発信するが、電波障害が起きてるのかノイズ塗れで通信がつながらない。
「どういうことだ……?」
「分かりません。ですが、ここはいったん下がりましょう」
凛の提案により拠点に戻る3人。だが途中、つないだままの無線から大音量のノイズが流れ出した。まるでそこに、何かあることを示すかのように……。
その途中、彼らはとんでもないものを発見してしまう。
「なっ……!?」
「なんだこの数は……!?」
そこで見たのは、いくつものビルに張り付くメガヌロンの大群であった。その数は軽く100、いや、もしかしたら200も超えるかもしれない。それらは微動だせず、ただビルとビルの間を進むボートとISをじっと見ていた。
3人はあまりの光景に完全に固まっており、ただ茫然とメガヌロンがいるビル群を見続ける。だがそんな中、パキパキとメガヌロン達の背びれが割れ出したのだ。
「っ!?」
ついにここでも脱皮が始まったため、3人はすぐに武器を構えて発砲する。特に3銃身20ミリ機関砲がメガヌロン達を落としていくが、その数があまりにも多すぎて処理が間に合わない。その間にも無事なのが脱皮を果たし、体を硬化させようと羽を伸ばし始める。
だがそうさせまいと機銃を撃つ3人。それによって羽が千切れて飛べずに落ちるものや複眼を潰されたり柔らかい状態の体をハチの巣にされて落ちるのが続出する。
だが、どうしても間に合わないのだ。
脱皮したメガヌロンは成虫と化し、その黒い背中に薄茶の胴体、長い腹の先には3本の針がある。そして大きな羽を羽ばたかせ始めた“メガニューラ”の大群は、次々と脱皮した抜け殻から脚を放し空へと飛び始める。
「ダメ!間に合わない!」
凛の悲鳴と共にメガニューラはいっせいに飛び立ち、そして凛めがけて一斉に突っ込んできたのだ。それに驚いた彼女だが、すぐに3銃身機関砲を使って対抗するが、最初はどうにか拮抗していたもののあまりの数に押されてしまいそのまま大群に呑まれ、そして水面にたたきつけられる。
「凛!ってやべっ……!?」
そして健二が見たのは自分たちに向けて迫ってくるメガニューラの大群だ。そして機銃と通信装置を船内に捨て、健二と現は水面に急いで飛び込む。そのとき体に装備していたものの重量で沈みそうになるも、訓練していたおかげか溺れずに済み、顔だけを水面から出して空を見上げた。
それは太陽が隠れると言わんばかりにメガニューラの大群が移動し、それらは南に向けて大移動を始めた。
「いたたた……。現さん!健二君!大丈夫!?」
そのとき、水面に叩きつけられて水没してた凛が顔だけ出して彼らに近づく。
「一応、な……」
「水に飛び込んで助かった……」
そしてメガニューラの大群は彼らの上を通り過ぎ、そのまま太平洋へと出た。
メガニューラは気づいたのだ。はるか海の向こうにいる、動くとても大きなエネルギー反応を。その200にもなるメガニューラたちは群をなし、そのエネルギーの塊へと一直線に向かっていく。ずっとずっと先へ。
そしてメガニューラの大群が目にしたのは、海面に背びれをわずかながら出してる、ゴジラの姿であった。
そして次の日のことだった。新聞、テレビのニュースで空を覆い尽くすほどのトンボが報道されたのは。