インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

54 / 81
あー、さっさと超翔竜編後半でもある3巻目に入りたい。でも書いててやっぱり情報量が多すぎる、さてどうするか……。



では本編どうぞ!


動き出す世界

そこはとても暗い空間であった。全体はコンクリートで覆われ、天井には今は使われていない電灯が6つほど付いている。

この空間はとても血生臭く、床にたくさんの人間の死体が転がっていた。だがそれらは、一部がワニにでも食いちぎられたかと言わんばかりに部分部分が欠損しており、その欠損部分に何やら植物の根らしきものが近くまで伸びていた。

それらをたどっていくと、そこにあったのは巨大なバラだった。

床からの大きさは6m強。だが花はまだ咲いておらず、蕾のまま。だがその蕾の中には何やら口のようなものが見え、その口には鋭い牙が生えそろっている。

そして花のつぼみから下、茎は床に向かうほどに直径は緩やかにながら太くなっていっており、途中には何やら内部、もとい黄色いなにかが見えるが、そこからは人間の、女性の上半身が生えていた。

服は何も着ていないためそれなりに膨らみのある乳房などは丸出し。肌は植物のせいか若干緑色となっており、その髪の色は深い緑色となっている。その顔つきは女性というには少し幼く感じ、どちらかというと少女と言えるだろう。そして血よりも紅く、虚ろなその瞳はただ何もない壁を見つめ続ける。

 

「姫、ご飯の時間でございます」

 

その時、薔薇がある場所から20m離れたところにあるこの空間の壁。そしてそこに取り付けられている扉から1人の茶髪の男性が、手にトレイらしきものを持って現れたのだ。そのトレイには何やら人間の食べれそうな食べ物が載せられており、男性は足元に散らばっている死体や根を踏まないように注意しながら薔薇、もとい彼女に近づいた。

だがこの時、男性は彼女が自分の方を向いていないことに気付く。

 

「どうかされましたか?」

 

「……航が呼ンデる。行カナくちャ」

 

その声はまるでとても綺麗な、見た目に不相応なほど澄んだ女性の声だった。

薔薇は床に這っている蔦を使い、重い音を立てながら壁の方へと移動を始める。普通の植物なら絶対あり得ないことだが、この薔薇は普通ではなかった。

 

「姫!いけません!貴女はこの場にいないと―――」

 

「邪魔」

 

男性は彼女を止めようとしたが、いつの間にか近くにあった、するどい牙がある顎のついた蔦が迫ってきており、そのまま男性の肩甲骨から上を食いちぎる。そして顎から食いちぎった分を吐き出し、大量の血を噴出しながら男性だったものはその場に倒れ、そこに新たな血の池を作る。

 

「航……私がいるカラ……。彼方は私ダケのもノ……」

 

その虚ろな目は何を映しているのかわからないが、ただわかるのは、ろくでもないということだけだ。

そのとき、天井につけられていたスピーカーからノイズの音が聞こえ、そして男性の声が「あー、あー、」と聞こえたため彼女は忌まわし気にそちらの方を向いた。

 

『姫、勝手に出ていこうとするのは困るんだが』

 

「……何よ、ソれノ何が悪いの?」

 

『そんなわがままお姫様には、躾が必要だな』

 

その言葉とともに、天井から何か液体が降り注いだ。それは薔薇の表面に付くと同時に白い煙を上げ始め、彼女は痛がるかのようにうずくまる。

 

「ぎゃあああああアアアア゛ァ!!!!!」

 

それは先ほどの可愛らしい声とは大違いの断末魔だった。なぜなら、今降り注いでるのは専用の除草剤なのだから。だがそれだと枯れてしまうのではないかと思われるが、この薔薇はそう簡単に枯れたりはしない。

だが彼女の動きを制限するには十分な代物だ。

 

「痛い痛いイタい痛イ!」

 

『止めてほしかったら動くのをやめろ』

 

「わかった、ワかッタから!もう止めて!お願い!」

 

そしてぴたりと止む除草剤の雨。そこに残ったのは除草剤によってボロボロになった花弁と、ずたずたになった茎に引っ付いたままの彼女の姿だ。

 

「ぅ……ぅ……」

 

痛みのせいかまともに言葉も話せず、ただ彼女は痛みに苦しむばかり。だが声はそんなのは知らないといわんばかりに、事をすらすらと話していく。

 

『貴女はここのシンボルのようなものなのですから、逃げられては困ります。そして彼についてですが、すでにこちらに戻ってこれるように手は打ってありますので、おとなしくお待ちください』

 

そしてブツンッという音とともにスピーカーから音が消え、そこに再び静寂が戻る。

その中、彼女は口から血がこぼれながらも、まるで呪詛のように言葉を発し続ける。

 

「航……痛いよ……。なんで来ないの……?助けてよ……」

 

彼女の蚊の鳴くような悲しい声は、この空間に溶けていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

同時刻、ここは太平洋。その中でアメリカのバージニア級原子力潜水艦『バーミンガム』は、現在任務を終えてハワイ基地からアメリカに向けて進路を取っていた。

今の世の中女尊男卑。そのため陸軍や空軍は軍縮軍縮を半強制的に行われていたが、海軍だけはその惨状から免れることができた。答えは簡単だ。ISなんかで海を支配することは到底不可能と言われてるからだ。

そのため上の口うるさい政治家も何も言うことができず、ただギャーギャーいう女尊男卑に染まった人間しかいないのだった。

そのバーミンガムの艦橋(ブリッジ)で、艦長を務めている男、サウス・ハミルトン中佐はただ自分の席である艦長席に座り、目を瞑っているだけであった。

その長方形ともいえる顔の骨格に、金髪の角刈り頭。そして目元には縦一閃の傷跡があることから歴戦の勇士漂う雰囲気をさらしだしており、身長190近くもある身長のせいで、ただならぬ威圧感をさらしだしている。

ただそのせいもあって、周りにいる兵士たちは堅苦しい空気の中黙々と作業する部下たちも、さすがに疲労が見え隠れしている。

そのため、空気を少し変えようとして……。

 

「そういや中佐、娘さんがIS学園に入ったんですって?」

 

鋭い目つきで部下をにらみつけるサウス。それで息をのむ部下たちだったが、サウスの目じりがおちて二へラ~とした緩み切った表情になる。

 

「おお!聞いてくれよぉ!愛しいティナが自分の夢を叶えるために海を渡って日本に行ってるんだぜぇ?ったくあのモンスター塗れの国に行かせたくないのに、「お父さん嫌い!」って言われたくないから行かせるしかないだろ?そしてだな―――」

 

彼、見た目に反してすごい親バカなのである。おかげで今はなしてる間も喜怒哀楽がひょいひょい変わっていき、聞いた部下、もとい副長であるニック・オービタルも見た目から反して面白いサウスに、少し笑いがこみ上げる。

 

「なんだ、俺の何がおかしいんだ?」

 

「いえ、艦長みたいな家族持ちがうらやましくて……。俺、帰ったら彼女にプロポーズするんです」

 

「おお、そうか!ならば結果が良かったらお祝いしてやらないとな!帰ったら頑張ってこいよ!」

 

「は、はい!」

 

檄を飛ばしてもらうとは思ってなかったのか、少し上ずった返事をするニック。それを皮切りに周りにいた兵士たちもゲラゲラと笑い出し、先ほどの重苦しい雰囲気と打って変わってとても楽しそうな雰囲気を出していた。

 

「やっぱ艦長の親バカっぷりは面白いですよ。その顔で喜怒哀楽がいろいろ変わりますし」

 

「なんだとこのヤロウ!ぶっ飛ばしてやる!」

 

そう言いながらも笑い飛ばすサウス。実際彼はそういいつつも部下が優秀なためか殴った回数も指で数える程度でしかない。そのため

 

「さて、あと1日あればアメリカに着くから全員気を引き締めろよ!」

 

『了解!』

 

そして全員が改めて気を引き締めた時だ。ソナーを担当しているマリク・ドレッドノードが、頭につけていたヘッドホンから異音がなっているのに気づき、すぐにサウスに知らせる。

 

「ソナーに反応!距離、1000!推定速度は40ノット!」

 

「何!?」

 

マリクの声は艦内放送で他のエリアにいる隊員たちにも響き、それはどよめきとなって広がる。

現在45ノットも出せる船はほぼ無く、あっても水上を走る船だ。そのため潜水艦となると、、そんな船が一切ないことをサウスは知っている。マリクの間違いだといいたいが、彼の耳に間違いは一切なく、ただこちらに向けて距離が縮まっていることを伝える。

 

「……我が国にそんな潜水艦ありましたっけ……?」

 

「いや、ないな……あったら俺ら海軍が知ってるはずだ……。発令所、艦長。魚雷管制員を配置につけろ」

 

ちんちんと速度速度通信機が鳴り、艦内に制動がかかり始める。

 

「目標、増速!以前こちらめがけてい移動しています!」

 

明らかに狙いはこのバーミンガムだ。そのため逃げるためにこちらの速度を上げるが……。

 

「目標さらに増速!推定速度60ノット!距離70!」

 

ここまで迫っていたのか。サウスは驚愕を隠せないが、館内放送に向けて叫ぶように伝える。

 

「総員、対ショック用意!」

 

そして衝撃が走った。それで艦長席から投げ出されそうになるサウスだったが、どうにか握力で肘置きから手放すことなかったため、どうにか怪我せずに済んだ。

 

「隔壁損傷!魚雷管制装置も作動しません!」

 

メキメキと金属がつぶれる音が艦橋にも響き渡る中、サウスはこれがどこの船からの攻撃かを考える。

だがそう裕著な時間はなく、今も船の損傷率は上がっており……。

 

「機関、停止しました……」

 

その絶望に染まった声が響き渡る。もうこの船は水面に向かって上がる術をなくし、沈んでいくしかないのだ。

 

「ゴァァァァァァアアアアアア!!!!」

 

船内に大きな音が響き渡る。それは獣のような声であった。だがこんな海中にそんなのいるわけが……あった。

 

「まさか……くそっ!これが奴の餌だということを忘れてた!」

 

「か、艦長!?」

 

「総員、この船を捨てる!脱出ポッドへと向かえ!」

 

サウスはそう叫ぶが、隊員はとても暗い表情だ。

 

「艦長……すでにそのエリアは水没しました……」

 

「何……!?なら救難信号だ!すぐにしろ!」

 

そういうが、もう家に帰る術がない。それを知った瞬間、サウスは絶望に染まった表情を浮かべる。

そして水圧も高くなってきたのか、環境の隔壁も凹み始めたため部下たちはどうするんだといわんばかりに、サウスの方を見つめる。そういうサウスもここで死ぬ気は全くなく、最期になるであろう指示をする。

 

「お前ら―――」

 

サウスが何か言おうとした時だ、隔壁が水圧に耐えられなくなったのか、艦橋にも海水が浸水し始める。そのとき弾けたボルトがニックの頭を貫き、彼は何が起きたかを知る前に絶命。それを引き金に他の隊員たちもここから逃げ出そうとするが、住居ドックに続く扉を開けたとたん大量の海水が流れ込んできたのだ。

 

「うわぁ!?」

 

それによって先ほどより浸水率が大幅に上がり、艦橋もすでに水没寸前。その中サウスはズボンのポケットに入れていた写真を取り出し、それを見つめる。それは彼が数年前に撮った、家族との写真。そこには可愛い笑顔を浮かべる10歳ほどの女の子とその女の子の頭をなでるサウス。そしてそれを見て笑みを浮かべるサウスの奥さんと思われる女性の姿があった。

 

「ティナ……サラ……すまない……。俺はもう、家に帰れそうに―――」

 

そして海水に飲み込まれたサウスは、意識を永遠に失うのだった。ただ手に握りしめた写真だけは、最期まで手放すことなく……。

 

 

 

 

 

「グルルル……」

 

現在ゴジラは何十年も眠り続けた分のエネルギーを吸収するため、付近にいた原潜に手あたり次第襲い掛かっていた。中には魚雷をぶつけてくる船もいたが、ゴジラはあまり痛みを感じないどころか、逆に怒らせる原因となってしまい、そのまま轟沈させられて中の原子力、もとい核エネルギーを吸収していってるのだ。

今回沈めたバーミンガムもその中の1つであり、ゴジラはエネルギーをおいしくいただいている。この40年眠り続けてきたせいか、身長も60mから71mと大きく成長しており、今となっては昔使えなかった体内放射も使えるのだ。

そして今、爪を立ててしがみついてるバーミンガムから大きく空気が漏れ出し、そのまま深淵へと落ちていく。それと同時に小爆発も起きているが、ゴジラからしたら痛いと感じることもなく、ギチギチと握力を強めたりして船体を締め上げる。

その時だ、ゴジラは何か感じたのかバーミンガムから離れ、そのまま海面の方、上を見上げた。

 

「グォォォ……?」

 

それは昔の自分を見たようだった。親を殺され、嘆き、怒りに震えるあの日を。人間を死ぬほど憎んだあの日を。

ゴジラはそれが何なのかとても気になった。これは同族がいることと取ってもいいのか、それとも……。

だがゴジラは今は回復を優先する。会いに行きたくなったら会いに行けばいい。同族なら今は動かぬ親にうれしい報告ができる。

少し期待を膨らませて、ゴジラは次の原潜を襲うために移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

ここは東京渋谷。現在メガヌロンによって水深20mは水没しきったこの都市で、メガヌロン達はその時を待っていた。

体も前より一回りは大きくなっており、四肢もがっちりとした体形になっている。だが今彼らは全く動かず、死んでるようにも見えるのだ。

そのとき奴らは感じた。とてもつもない脅威が迫ってきているのを。そのため早々と脱皮しなければならないが、早くともあと1週間はないとそのときになれない。ただじっと動かず、脱皮のための準備を進めるのだった。

 

超翔竜を完成させないといけない……。

 

目的はただそれだけ。そのためにメガヌロン達は待ち続けた……。

 

 

 

 

 

ここは太平洋、インファント島。現在どこの国の領にもできないこの島の奥、そこにある大きな山の中にある遺跡の跡に2匹の巨蛾はいた。

片や翼長100m。羽の模様は黒や黄色やオレンジといった鮮やかな模様となっており、体のいたるところに柔らかそうな体毛を生やしており、蒼いサファイヤのような眼で少し慎重そうに周りを見渡している。

そしてもう一方、遺跡跡の神殿の祭壇のようになってるところに居座っている同じ羽の模様を持つ翼長109mの巨蛾、モスラはゆっくりと羽を羽ばたかせていた。

この2匹は40年前、東京の品川地区にて現れた双子のモスラの幼虫が成長した姿であり、その姉の方である祭壇に居座ったモスラは現在あることをしようと羽をゆっくりと動かしていたのだ。

その時だ、羽から何やら光の粒子の様なものが漏れ始めたのだ。それは神殿の下に舞い降りていき、そして神殿の前に集まり始めて何やら丸いものを形とっていく。

そしてそこにできたのは、水色と白の2色で彩られた大きな卵だった。そう、これはモスラの産卵。そのため彼女は、誰にも邪魔されないこの場で卵を産んだのだ。

彼女はなんとなく感じ取っていた。この数か月後に何万と人が死ぬ大きな災いが来ることを。そして、それに備えて次の世代を残しておくことを。




てかリアルどうしよう。次とその次の話までしか書き貯めがない。その次と次の次は書いてる途中だし。学校中間テスト近いし。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。