インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも、ゴジコレにはまっている妖刀です。バーニングゴジラがなかなか出てこなくて苦笑いが出てきます。


さて前の話でついに赤い眼の機龍が現れました。今回は機龍がどう動くのか、お楽しみに


では本編どうぞ!


暴走

「キィィ……キィィァァァアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

機龍が吼えた。その声は今まで通りの機械的な声ではない。もっとこう……そうだ、ゴジラだ。まるでゴジラの意志が憑りついたかの様になり、声に機龍の声ではないものが混じっている。

その佇まいは今までの機龍のような勇ましいものではなく、尾は意味もなくユラユラと揺れ、手は小指から順に握ったり放したりを繰り返す。

そして最も特徴的なのは赤く染まった目だ。その目は自我を持たぬ紅い2つの光となっており、夜においてその無機質な狂気の光が3人を見下す。

だが皮肉なものだ。その自我の無い様に見える姿が、自我という名の本能を宿してる姿だなんだということを。

 

 

 

 

 

楯無はいきなりのことで驚きを隠せずにいた。シャルロットの病室内でのISの展開、隠していたはずの航を一回で見つけてそのまま人質にしたこともそうだ。

実際あの時はとても動揺したが、楯無の勘で逆に煽ってみたらどうなるかと思ったのだ。そして勘は的中。まさかの楯無の口から出た「航を殺してみなさい」発言にシャルロットは大きく動揺を隠せない。

その隙に楯無は床にばら撒いたアクアナノマシンでシャルロットを拘束。そして航の救出を目論んでいたが、そこでまさか航が楯無の言葉で大きく傷つき、そのまま機龍を展開したのだ。

だが機龍の展開がいつもと違い、とても禍々しく、楯無の感じたことのない恐怖に進むことも逃げることもできなかった。

そして現れた機龍はいつもと違いカメラアイの色が赤かった。これは楯無も瞳が赤だが、彼女のはルビー色の美しいのに対し、機龍は血の色とでも言わんばかりに真っ赤だ。

この時彼女は航に通信を繋ぐも拒否され、そしていきなりの腕による薙ぎ払いで3人まとめて外にはじき出されたのだ。

そして現在。

 

「機龍の目が赤い……」

 

機龍が周りを首を動かしてみてる間、楯無は蒼流旋を構えたまま四方八方に散らばったアクアナノマシンを回収している。

幸いにもシャルロットも逃げておらず、目が回っているのか木にぶつかったまま指1本も動いていない。だが問題は鈴だ。

現在鈴は先程の衝撃で本人の意識はあるものの、青龍刀2本は刀身の途中から粉々に砕け、甲龍のPICが不調で中破のまま墜落。おかげで自分を守ってくれる鎧はあっても飛ぶことができないという状況だ。ISはPICが無ければそれはただの重い鎧と化す。だからといってこの現状でISを解除して助かるとは言えない。

そのため、彼女の元へ寄って急いで安全圏へと運ばないといけないが、今はナノマシンの回収が先だ。これで攻撃を仕掛けられたら薄い防御力が今は紙装甲なのだから、へたに喰らうだけで大惨事だ。

 

「まさか暴走とはね……冗談じゃないわよ……!」

 

この時楯無は目の赤い機龍を見て呟いた。

もしそうだとしたら、機龍はこの後確実に暴れ出す。不意打ちとは言え、自分を含む3機のISを病院の外に弾き飛ばすだけのパワーを持った機体だ。そしておそらく……。

 

「先程のあれが本当なら、機龍はリミッター無しの完全体。一応前に対峙したことはあるけど……」

 

思い浮かぶは機龍が展開された後に聞こえた女性のボイスに近い音。それが最終安全装置の解除と言っており、そしてリミッターの強制解除。それ故にあれだけのパワーを出せるのだろう。そして病院の屋根をいともたやすく突き破り、屋上で自分たちを見下すとは……。

楯無は小さく歯噛みした。

幸いにも今は、機龍は首を動かして周りを見ているだけだ。すでにナノマシンの回収を終えた楯無は機龍がこちらに視界を向ける前に鈴の元へと下り、彼女の元へと寄る。

 

「鈴ちゃん、大丈夫!?」

 

「な、何とか……。甲龍が守ってくれましたから……。でもアレって……」

 

「えぇ……機龍が暴走を始めたわ」

 

「えっ……!?」

 

鈴は昔、一夏たちと一緒にそう言う映像を一緒に見ていたから機龍が暴走をした時の映像を見たことがあるのだ。そのため暴走機がどれほど恐ろしいかを知っているが、実際に見るのでは迫力が桁違いであった。

その時、機龍が一瞬だけで他を見たが、彼女は機龍と目があったような気がした。その時感じた赤く冷たい目は今年感じた中でも上位の恐怖となるだろう。

そして機龍の太腿部ブースターが展開され、轟音を響かせながらその巨体を浮かし、屋上に張られていた金網を足の爪で引き裂きながら前進をし、ブースターを切ってそのまま急降下。そして地面にあと5mを切ったところで先程の轟音以上の推力でブースターを使用し、ゆっくりと着地した。

そして目の前にいる3人を睨みつけ、うるさいほどの声での咆哮を上げ空気を震わせた。

 

「キィィァァアアアアア゛ア゛ア゛!!!!」

 

「くっ!私が足止めするから鈴ちゃんは逃げて!」

 

「は、はい!」

 

刀奈はバックユニットこと重装型パックを展開。刀奈の頭を囲うようにコの字になってる藍色のバックユニットは刀奈のハイパーセンサーにリンクされて目標を四式機龍と認識。そして使うミサイルを装填させていつでも使用可能にする。

そして蒼流のバックユニットの側面部からミサイルが放たれ、弧を描きながら機龍へと迫った。

 

 

 

 

 

「くそっ……あの小娘はいったい何をしているんだ!」

 

「あーもう通信に出ない!わけわかんないし!」

 

ここはIS学園のモノレールがある駅から反対側の海岸。昼だと綺麗な海岸が見ることができるこの場だが、今この場には海上には黒色の船が1隻に、黒色のウエットスーツみたいのを着た女性たちが数人おり、彼女たちは手にサブマシンガンなどを持っており、その内1人が何か無線みたいのをもってぎゃあぎゃあ喚いていた。

彼女達はデュノア社現社長こと、マーサ・デュノアが送り込んだ部隊「ノワール」。現在彼女たちは今回の目標であるシャルロット・デュノアの回収のために、フランスからわざわざ日本のIS学園までやってきたのだ。

そして指定時間の日本時間の0時45分を過ぎても一切現れず、それどころか通信不通な状態なのだ。そのためこちらから通信を送るも、シャルロットが一切反応しないため隊員に苛立ちは浮かび始めているというわけだ。

 

「ったく……誰か偵察にでも行きなさいよ!」

 

「なら手伝おうか?」

 

「む、頼む……ん?」

 

その時誰が話しかけてきたのか?と思い振り向くと、その顔を見たとたんに彼女は顔色が真っ青に変貌していく。

 

「き、貴様らは……!?」

 

「さて、おとなしく捕まってもらうぞ」

 

そこにいたのは織斑千冬を筆頭にした教師たち5人がいた。彼女たちは全員学園のISを装備しており、千冬は近接ブレードの切っ先をノワールの方に向けている。

いったいなぜ教師たちがいるのか理解できないノワールの隊員たち。全員驚愕と戸惑いを隠せず、じりじりと後退を始めるが、教師たちは距離を付けず離さずで近づき、ゆっくりと彼女たちを囲んでいく。

 

「なんでわかったという顔してるな。簡単なことだ。シャルロットデュノアに盗聴器を付けていた、ただそれだけのことだ」

 

「なっ!?……くそっ、あの小娘めぇ……!」

 

こうとなっては退却が一番なのだろう。だがすでに遅く、彼女たちの周りには武装を展開した教師たちがすでに自分たちを囲んでいるのだ。現在彼女たちのはISが3機。他は武器は持っていても防弾使用のスーツを着た隊員たちだけだ。

そのためこちらも武装を展開してお互い一触即発という雰囲気を纏っており、動くことができない。

さてどうしたものかと思う中、この沈黙を破ることが起きた。

 

 

ドドドドォォォン!!!!

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

それはとても大きな爆発音であった。いったい何が起きたのかわからない面々を放っておくかのように、立て続けに何回も爆発音が響き、病院側の空が赤色に染め上げられる。

千冬はいったい何が起きたのか分からなかったが、思い当たるは楯無たちが戦闘を開始したということだけだ。だが、それにしては爆発物が多い。楯無の使うバックユニットはそういうものが多いが、今までここまでの爆発力を見せたたことはない。だとすると一番に思い当たるのは……。

 

「まさか篠栗……機龍か!?」

 

その時だ。今までの中で一番大きい爆発が起き、病院の一角が吹き飛ぶ。そこのあたり一帯は舞い上がった煙によって覆われ、その中で銃撃音なども聞こえ、何か金属をはじいてる音も時折響く。

だがその時、その中でとても鈍く、重い打撃音が響く。するとどうだ、煙の中から2つの影が現れた。

 

「くぅぅ……!!」

 

「キィィァァァアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

そして煙を引き裂いて現れたのは、両腕に武装を展開したシャルロットと高速で迫る四式機龍の姿であった。

 

 

 

 

 

この時シャルロットはその性能に戦慄を覚えていた。

 

「くぅ……速すぎる……!だけどそれだとパイロットが……!」

 

機龍は最悪自分なら目がレッドアウトでもしかねないほどの急加速、急停止、急旋回を繰り返しながら自身に迫ってくるのだ。

そもそもいきなりこうなったのは先程、更識楯無がバックユニットから放ったミサイル群が機龍の前で爆発。その時に正気に戻ったシャルロットだったが、この時ハイパーセンサーに砂嵐が走り、いきなりの不調ながらも応急に処置して元の状態に戻した。

だがその時、煙の中から何かとても速いものが近づいてくると勘ともいえる感覚が彼女の中をめぐり、シャルロットはその場をスラスターで急速旋回と急速後退で離れる。すると先程いたところにたくさんの弾が刺さったのだ。

ロックオンもしていないためアラームが表示もされなかった状況で、よく躱せたなと心の奥で自分をほめるが、いったい何が放ってきたのか。

その時、目の前にある炎の中でユラリと影が見えた。だがその大きさが今まで見たISとかの比じゃない大きさ、ハイパーセンサーには6mという規格外の数値が表記されているのだから。

そして目の前にいたのは紅蓮の炎を切り裂きながら重い足音を響かせて自身に近づいて来る機龍の姿だった。

 

「え、なんで……」

 

シャルロットはISの反応を最小限にしていたのにバレたことに動揺を隠せない。

そう、楯無が放ったのは唯のミサイルではなく、アクアナノマシンを詰めたチャフだったのだ。そのため機龍は一時的に目標を見失い、怒り狂ったかのように吼えながらあちこちに0式レールガンを連射。その際に楯無は鈴を抱えて彼女が安全と思える場所まで避難したのだ。

そう、シャルロットはそのための囮にされたのだ。

 

「キィィァ゛……」

 

「逃がしては、くれないみたいだね……」

 

そしてシャルロットは右手に腕部固定のシールド付きのガトリング、左手にバズーカを展開。そして長筒ともいえるバズーカの後ろ半分を肩に載せ、シャルロットはガトリングの銃口を機龍に向ける。そして引き金に指をかけ、いつでも撃てるようにする。

だがその時、20にも迫るロックオンの警告音(アラート)が一斉に響き、指がピクリと反応した。その出元はすべて機龍から出ており、彼女はやばいと感じ急いで逃げようとしたが……。

 

「キィィァァァアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

咆哮と共にバックユニットからロケット弾が12発、側面からミサイルが8発放たれ、高速でシャルロットの元へと向かう。だが彼女は冷静にガトリングから弾を吐きミサイルを冷静に落としていく。その後もミサイルは連射され続け、そして煙が2機を包むように煙を充満させ始める。

シャルロットは機龍がすばやく動いてることを想定してガトリングから大量の弾を四方八方にばら撒く。すると、金属同士のぶつかって弾く音が聞こえ、その場所と想定される場所にバズーカを放ち、大きな爆炎が起きた。

だが機龍は全ブースターを起動。そしてその時に起きた爆炎を切り裂くようにシャルロット目掛けて一直線に突っ込む。

 

「なっ!?は、速いーーー」

 

「ギィィァァァアア゛ア゛ア゛ア゛!」

 

シャルロットは急いでガトリングのシールド部を前に構えてそのまま衝撃に備えるが、ぶつかった瞬間金属同士が当たっと思えないほどの轟音が響き、力負けしたシャルロットはそのまま煙の外へと吹き飛ばされる。

そして舞い上がってる煙から弾き飛ばされるように外に出たシャルロットだが、スラスターを操作して体勢を立て直す。

だが機龍も先程の衝撃で勢いが大きく落ちるも、再びブースターを点火して大出力で彼女の元へ腕を振りかざして鋭い爪を立てる。そしてシャルロットの顔めがけてその爪は素早く突き出されるが彼女はバズーカを瞬時に格納、そして左手には刃の厚い超振動ブレードが1振り握られており、それによって体勢を変えるとともにその突きを刃に沿って躱す。

だがその勢いによって刃こぼれが一気に生じ、機龍から一時離れたときに見た刃はもう途中亀裂が入るほどにまでボロボロになっていた。

 

「何なのさ、この威力……!1回でも喰らったら……っ!?」

 

その時いつの間にか近づいた機龍からの切り裂かんとする右フックをシャルロットは体を瞬時にのけ反らせて躱し、そのまま反動を付けてジャンプした後にブレードを機龍の目に突き立てる。

それによってカメラアイを保護していたバイザー部ともいえるものが砕け、それと同時にボロボロになったブレードも砕けるが、シャルロットはそのままブレードを中にあった血の色の様に赤く染まった内部カメラアイに強打させた。

 

「ギィィァ゛ア゛ア゛!!??ギァァァァアアアアア!!!!」

 

機龍は身体にダメージが入ったことに驚きを隠せず、ブースターを前に吹かしてシャルロットから距離を取る。

 

「そう簡単にはやられないよ!」

 

シャルロットはもう一本ブレードを展開すると同時に不敵な笑みを浮かべて、機龍は小さく唸るだけでその場から動かない。

 

(そのまま動かないで……)

 

シャルロットは先程の咄嗟に出た攻撃で機龍が動かないのに小さく安堵しながらも、今の状況勝てる見込みが低いため逃げたいという衝動に駆られるが、下手に動けば再び襲ってくる可能性が高いと判断し、恐る恐る後ろに下がっていく……かのように見えた。

だがシャルロットは逃げるどころか逆にスラスターを後ろに吹かすようにし、右手には大口径の重マシンガン、左腕には身長大の大きさもある十字架が装備される。だがその十字架の普通なら下側になる部分の先に、とても太い釘の先端が取り付けられてる謎の装備を展開したのだ。

まるでパイルバンカーのようだが、デュノア社には灰色の鱗殻(グレー・スケール)というラファールリヴァイブに取り付けやすく、瞬時に高威力をたたき出す武器があるのだ。

それに対してこの武器は灰色の鱗殻(グレー・スケール)をおもちゃに見せてしまうほどの威圧感をさらけ出してるのだ。名は死への墓標(デッド・グレイブ)。今は無き企業が作り出した、超高威力を目指した大型パイルバンカーである。

 

(これがあればさすがに機龍も……!)

 

シャルロットは杭の当てる場所をシーリング部が見える腹部にロックオン。いつでも使えるように安全装置も外す。

そして瞬時加速(イグニッション・ブースト)で懐に入り込んで仕留めようとした時だった。

 

「キィィィァァァァ……」

 

いきなり機龍が口を開き、小さいながらも息を吐くように鳴く。いったい何をする気なのだろうか、シャルロットは十字架のを盾の様にして身構える。

その時だ、機龍の背中にパチっバチッと紫電が走ったのだ。

 

「何をする気……?」

 

これ以上何かされては不味い。シャルロットは一気に機龍に近づいて仕掛けようとした。だが。

 

それは閃光だった。

 

機龍の口が眩しく光ると同時に稲妻のような閃光が走る。それは雷の形をした暴力の塊という名のメーサーであり、地面を切り裂くように走った後を熱で融かしたかのような赤いマグマ状の物へと変化させ、そのままシャルロットの元へと向かう。

 

「っ!」

 

これは野生の勘だった。シャルロットは瞬時加速(イグニッション・ブースト)でその場を離れるが、微かに掠めた装甲は真っ赤になったかと思った瞬間電子レンジにかけた卵の様に破裂。その時の溶けた装甲によって自身のシールドエネルギーが大きく削れ、焦ったシャルロットはそこの装甲をパージした。

 

「今のは!?」

 

そう焦る間にも機龍の口からはメーサーが放たれ、空間を切り裂いたメーサーは空気中の水分を加熱、それにより多量の水蒸気を生み出すことになり、瞬時にしてシャルロットの視界を蒸気が包む。だが瞬時にカメラはその状態に適応し、機龍からロックオンを外さない様にする。

そのためか彼女はメーサーを当たらないように躱していくが、ハイパーセンサーでしか感知できないような拡散したメーサーによって装甲が炙られ、部分部分水膨れになったかのように膨れ上がる。だが機体が異常を示すほどのダメージでもないと判断したシャルロットは、死への墓標(デッド・グレイブ)を盾にするように構えて右手の重マシンガンを出して弾を吐き出しながら機龍へと近づく。

それに気づいた機龍はメーサーを放つのをやめ、まるで待ち構えてるかのように手を少し広げ、腕部レールガンを放つ。だがその弾は死への墓標(デッド・グレイブ)で弾かれ、シャルロットは急速に機龍へと近づいていく。

だが彼女は気付いていなかった。ラファール・リヴァイブ・カスタムはダメージによる損傷報告を出さなかったのではなく、出す機能がすでに破裂して壊れてるということを。

 

「はぁぁぁぁあぁああああああ!!」

 

シャルロットはそのまま死への墓標(デッド・グレイブ)を盾にしたまま機龍と激突。だが空中とは言え一方的な質量の差で彼女が押し戻され、そのまま機龍が掌を開いてシャルロットの顔に右手を伸ばす。だが彼女は体を捻ってそれを躱し、さらに右手にあった重マシンガンを格納し、機龍の右手より下へもぐりこんだ後、死への墓標(デッド・グレイブ)の杭先を胸部に当てて引き金を引いた。

 

「キィィィァァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 

その衝撃で大きくのけ反る機龍。シャルロットは機龍に反撃のチャンスを与えない様にシャルロットは離れずに再び引き金を引く。すると十字架の重なり合ってる部分から大型の薬莢が排出され、それと同時にガズン!という重い音が響く。そして再び引き金を引くと薬莢排出と同時に杭が射出され、それを3、4、5発と放っていく。

して弾数1を残して9回放ったシャルロットは動きを止めて顔を上げると、そこにはカメラアイの光を失い、項垂れるように動きを止めた機龍の姿があった。

 

「これでやった、の……?」

 

シャルロットは機龍が動かないのことに驚きを隠せなかったが死への墓標(デッド・グレイブ)が連続使用によるオーバーヒートでいきなり火を噴き始めたため、彼女はそれを機龍の方に向けてパージする。

そして機龍に当たった瞬間大爆発を起こし、その後煙が周りに建ちこめる。

 

「よし、これで……!」

 

そしてシャルロットは機龍にとどめを刺そうと、もう1機の死への墓標《デッド・グレイブ》を展開して強く握りしめる。

だが彼女は忘れていた。相手は“人間”ではなく、“怪獣”であることを。

そして煙を切り裂き、機龍の尻尾がシャルロットを横薙ぎに吹き飛ばした。

 

「がっ……」

 

メキメキと骨が悲鳴を上げる音がし、その時シャルロットは横腹に体を真っ二つにするのではないかという衝撃を受け、そのまま木々をへし折りながら病院の1階の壁に激突。木々によって速度が落とされたせいもあり、壁には大きな罅が彼女を中心に走り、パラパラと部分部分が崩れ落ちる。

 

「ぁ……が……」

 

シャルロットは呻き声にもなってない呻き声を上げながらも無理やり自分の意識を保ち、ふらふらと立ち上がる。

そして宙に浮き、恐らく集合してるであろうデュノア社の回収部隊の元へと逃げようとする。だが……。

 

「キィイイイア゛ア゛ア゛……」

 

「ひぃ……!」

 

聞こえるは自分の息の根を止めようとするものの声。シャルロットは急いでここから逃げようとするも、先程の衝撃でPICが大きく不調。スラスターも半分以上が死んでおり、逃げるにはとても遅い速度しか出せなかった。

 

「そ、そうだ。武器を!」

 

思い出したかのように格納領域(バススロット)から武器を取り出そうとするが、いくら頭でイメージしても、声に出して展開しようとしてもラファールの手に武器が握られることがない。今のラファール・リヴァイブ・カスタムは機龍との戦闘によって大きく損壊。電子板関係もほとんどが損傷してることもあって、まともに四肢に向けての伝達が行えてないのだ。

それを知らないシャルロットは強い絶望に襲われ、冷や汗を大量に流し始める。

これはやばい。逃げないと死ぬ。

その時、後ろからシャルロットの首を片手で掴むものがいた。この時視界に写ったのは銀色の装甲。四式機龍だ。

シャルロットは機龍に首を掴まれ、気道がふさがれたことにより強い苦しみを感じ、必死にもがき始める。

 

「やめ……。苦し、い……」

 

だが機龍はその手を緩めることなく、ただ赤く光る眼を彼女に向ける。

その時、機龍の背びれからバリバリと紫電が走り始め、不規則的に背びれが発光しだしたのだ。いったい何をする気なのだろうか、シャルロットはどうにか逃げようとしても、機龍のその馬鹿力から逃げ出せるはずもなく、無意味にもがくかのように体を動かしていた。

そして、衝撃が走った。

それは比喩的なものではない。その衝撃によって下にあった木々は吹き飛び、真下にあったものはまるで溶けるかのように消滅し、シャルロットの纏っていたラファール・リヴァイブ・カスタムのシールドエネルギーが一気に削られていく。

これはゴジラの使う体内放射のように見えたが違う。それらの影響は、そこまで遠くない海岸にいた教師たちとノワールの面々に大きく作用していた。

その影響によりISはいきなりの機能停止。おまけに格納も出来ないことによってISを纏っているもの達はいきなりの荷重によって地面に縫い付けられるかのように伏せる。

機龍が放ったもの。それは体内放射なんかではない。範囲内の機械を狂わせ、最悪機能停止にまで追い込む電気による破壊の衝撃。

 

電磁パルスだ。

 

それによって近くにあった病院、学生寮は停電を起こし、遠くから阿鼻叫喚の声が聞こえるが機龍からしたらどうでもいい話。ただ機龍の目的は、電磁パルスを使った際に手から弾き飛ばされた女を殺すことだけであった。

 

 

 

 

 

「ぅ……あ……。ここ、は……?」

 

シャルロットはラファール・リヴァイブ・カスタムの絶対防御によって護られ、機龍の放った電磁パルスにも、地に落ちたときの衝撃からもなんとか無事でいられた。

 

「ここは……どこ……?」

 

だが彼女の様子がおかしい。先程の覇気は全く感じられず、まるでただの少女の様に見えた。そう、先程の電磁パルスによって彼女を動かしていた洗脳が解け、今の彼女は洗脳される前のシャルロット・デュノアとなっているのだ。

 

「体が重い……あれ、なんで私、ISを……?私の適性Dなのに……」

 

彼女は今の状況が分かってないのか、ラファール・リヴァイブ・カスタムを脱ごうとし、その重さから脱げないことに苛立ちを感じていた。

だがこの時、自分の体がとても痛むことに気付く。いったいなぜなのか……。顔を頑張って動かし、痛む場所を見た彼女は一瞬で顔が真っ青になり、冷や汗がドンドン垂れてくる。現在彼女の左の二の腕が青黒く変色しており、動かすたびに激痛が走るのだ。骨折だ。それにからだあちこちが焦げ、自分の肉体から焼けたとても臭い肉の臭いがする。

 

「嫌ぁぁぁああああ!」

 

痛みで悲鳴を上げるシャルロット。だが悲鳴の振動によって激痛が走り、悲鳴すら上げる余裕をなくし、ただ涙目になりながら周りを見渡す。

ただ見えるのは自分を中心に物が吹き飛び、木々がなぎ倒されている。遠くには何か建物が見えるが、今の時間帯ゆえか電気は点いておらず、暗闇の中にぼんやりと浮かび上がっていた。

だがその時、何かとても重い足音が聞こえ、彼女は恐怖を感じたのか息を殺す。ズン……ズン……と響くその足音は、まるで怪獣の足音のように聞こえ、シャルロットは涙を流しながらそれが行き過ぎるのを待ったが、どうしても自分の方に近づいてるようにしか聞こえない。

そして木々をへし折る音と共に自分の前に現れたのは、白銀の装甲に赤い無機質な光を放つ目。口からは小さく唸り声を上げており、長く太い尾が重々しい音を響かせ地面に叩きつけられる。

その正体、四式機龍はシャルロットを見つけると空を見上げ、大きな咆哮を上げる

 

 

「キィィァァァアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

「っ……!」

 

その音量によって片耳の鼓膜が破れながらもシャルロットは耳を塞ぎ、目を固く閉じて咆哮が止まるのを待つ。だが割と早く止まったため、恐る恐る手を放して目を開くと、機龍がシャルロットを見下すかのように見ていたのだ。

 

「ひぃ……ぁ……!」

 

そのただ見られるだけなのに恐怖を感じたシャルロットは歯をガチガチと鳴らしながら、小さい悲鳴を上げる。

そして機龍は自分の足を上げて彼女目掛けてその足を振り下ろすが、それを見たシャルロットには無意識に『逃げろ!』と脳内が知らせ、痛みで小さく悲鳴を上げながらも無理矢理体を動かし、横に転がった。

すると1秒も経ってないだろう、先程シャルロットがいたところに機龍が轟音と共に足の裏でそこを踏みつけていたのだ。

 

「い、嫌ぁ……!死にたくない!」

 

シャルロットは急いで逃げ出した。だが国家代表レベルの実力であった洗脳状態とは違い、今はまともにISを使えぬただの女子。

まともに使えぬISを纏った状態となるとその速度は亀より遅く、機龍はそれをジロリと見た後、脚で彼女を蹴り上げ、小さい断末魔を上げたシャルロットを木に叩きつける。

そしてズン……ズン……と重い足音を響かせ、機龍がシャルロットに近づき、彼女の前に立った後、小さく体を身震いさせる。

 

「キィィィァア゛ア゛ア゛……!」

 

「ひぃ……!」

 

そして機龍の尻尾が持ち上がり……。

 

 

 

 

 

彼女の悲鳴が夜の森に響き渡ると同時に、4トンも重量がある尻尾が強く叩きつけられる音が響いた。




機械の龍は突き進む。それは何のため、誰のため、それは誰にもわからない……。

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