インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも、お気に入り登録数が10件も減って驚きを隠せなかった妖刀です。いったい何がダメだったのか?楯無アンチと見られた?それともシャルロットの扱い?うーん、わかんね。
ただ自分は楯無さん、もとい刀奈が一番好きだから本音したくはないが、後のことでいろいろあるし……。

そしてSHモンスターアーツでGMKゴジラが予約開始されましたね。自分はもちろんすでに予約済みです。早く来ないかな♪




では最新話をどうぞ。


月下の龍

夜11時56分。三日月が地を照らす中、シャルルは航が入院している病院の前に立っていた。

 

「作戦は今日……。今度は成功しないと……!」

 

あの失敗以降、シャルルはそのことを一夏に怒鳴り散らそうにもそれではモヤモヤが取れず、おまけに義母にも通信機越しに怒鳴られ、そのストレスは最頂点に達しようとしていた。

そして周りの女子、まあ少数だが、彼女たちから不審な目で見られるようになり、それもストレスの原因となる。

だがそれも今日で終わりだ。

 

「さっさと終わらせたい……」

 

今回の作戦内容は篠栗航の誘拐だ。なぜこうなったかが分からないが上には上の理由があるのだろう。彼女はそれに従う歯車でしかない。

そしてこれが終われば自由だと言われているが、こんなことをしておいて自由など本当にあり得るのか?

彼女はそんなことを一寸ばかり考えるが、そんなのは後回しだと切り捨てた。

 

「さて、始めますか……」

 

病院玄関は厳重に閉められており、そう簡単に入ることができない。だが職員がでる裏口はどうだろうか?

シャルルは病院外にある監視カメラをハッキングして自分の姿が見えないようにしながら裏口へと進んで行く。

監視カメラの数は外にあるので20。全ての監視カメラが死角ができない様に作られているため、その内シャルルが通るルートの7つそれら全てをハッキングによって解除する。

そして誰にも見つからない様に進んで行き……。

 

「よし、ここは鍵1つだ。これぐらい……、よし……!」

 

ピッキングをして20秒で鍵を解除し、中に入り込むシャルル。

この時、病院の監視カメラとは違うカメラが、シャルルを捉えていたことに、彼女は知らない……。

 

 

 

 

病院に侵入し、通路途中の監視カメラをハッキングで無力化して行きながらシャルルは病院全エリアを結ぶ階段へとたどり着く。

 

「ここまでは順調だ……。さて、階段を使って彼のいる病室まで向かわなくちゃ……」

 

いつどこに罠が仕掛けられていてもおかしくない。シャルルはISのハイパーセンサーだけを起動して周りに何もないかを確認しながら階段を1歩1歩上っていく。

航がいる病室は5階の奥の部屋。そこまで道のりは長いが、これで焦れば己の負けとなる。そのためシャルルは急ぎたい気持ちを押さえながら、病室へと進んで行く。

 

(おかしい……。ナースステーションに誰かいてもおかしくないのに、誰もいない……どういう事……?)

 

3階、階段近くにはナースステーションがあり、そこには終日看護婦がいる。そのためいつも通りそこは電気がついているのだが、中には誰もいなかったのだ。

病室の見回りに行ってるのか?もしそうなのだとしたら地味に難易度が上がる。腰に付けてる刃渡り20センチのナイフの柄に軽く手を当て、シャルルはナースステーションを後に……

 

 

コツン……コツン……

 

 

「誰!?」

 

小さな物音にシャルルは振り向いて身構える。だが何も音がしない。

何かの聞き間違いだろうか……。シャルルはこの3階を後にするのだった。

 

 

 

 

 

それから順調に階段を上がり、ついに5階へとたどり着く。だがここからが正念場だ。

シャルルは足音を一切立てずにハイパーセンサーで周りを確認しながら進んで行く。

そんなことしながら現在午前0時37分。

恐らく作戦通りならもうそろそろフランスからの特殊部隊が到着するころだ。自分の左手に付けてる腕時計を確認し、そして病室の前にたどり着いたため、手動になった扉をゆっくり開け、中をのぞき込む。そこでは病室のベッドが盛り上がっており、そこから寝息が聞こえる。後頭部しか見えないが熟睡してるのだろう。

 

(よし……寝てる。だけど気付かれたら不味いから……)

 

シャルルが格納領域(バススロット)から取り出したのは手榴弾らしきものだったが、これは中身が火薬でなく催眠ガスに近い効能のガスが入り込んでいる。プラスチック製のピンを抜くと、中に入ってる水と固形物が化合してガスを発生するため、空港とかの検査で引っかからないということらしい。

そしてピンを抜いて病室に転がす。そして白い煙が立ちこみ始めるが、ハッキングのため煙探知機は作動しない。

そして5分ほど待って窓を自動でオープンに設定し、煙が去った後、シャルルは縄を麻袋を展開する。そして寝てる航を捕縛しようと手を触れた時だ。

航がいきなり振り返った。

 

「っ……!?人形!?」

 

シャルルは行きなりのことで固まってしまう。彼、いや彼を模した人形の顔には『おバカさん♪バーカ♡』と煽りたっぷりに書かれていた。

次の瞬間、シャルルはいきなり足が持ち上がったと思うと、気づけば網に捕まっており、そのまま宙づりになったおかげでうまく身動きが取れない。

その時シャルルは苦痛と焦りの表情を見せる。

 

「くっ、罠か!」

 

「あらら、こんな簡単な罠にかかるなんてね」

 

「更識……楯無……!」

 

その時天井の一部が落ち、そこから1人の女子が下り立った。

そこに立っていたのは、ISスーツ姿の更識楯無だった。

シャルルは怒りの形相で楯無を睨みつけるが、楯無はそれを受け流すかのように見返し、小さく笑う。

 

「ふふっ、どうだったかしら?最初からはめられていた気持ちは。罠がなかったから楽だったでしょ?」

 

「何で貴様が!」

 

「当たり前よ。私の家は対暗部用暗部。まあ……カウンター部隊ってとこかしら。まあ貴女みたいなのを捕まえるのが仕事なのよ」

 

そして手に持ってた扇子を広げ『現当主』と言う文字を見せ、シャルルは眉間に皺を深く刻む。

 

「そもそも貴女のやってること、最初っから筒抜けなのよ?一夏君を脅したときとか全て、ね」

 

「な、何でそのこと……」

 

「はぁ……。貴女、盗聴器がつけられてることぐらい気づきなさいよ」

 

「なっ!?」

 

楯無はあまりの間抜けさに呆れ、シャルルはそんなことに気付かなかった驚きと、そして間抜けな自分に対する怒りをあらわにした。そしてこの捕縛してる板から抜け出そうともがくが、裏が鉄板で仕込まれてるためそう簡単に抜け出せない。

その時、半開きの扉が開き、そこからISスーツ姿の鈴が勢いよく入ってきた。

 

「楯無さん!」

 

「えぇ。証拠もしっかりと出来たし、あとはフランス政府に突き出すだけね」

 

「なっ、なんで鈴が……なるほど、一夏の敵討ちってわけ?」

 

最初は驚いてたシャルルだったが、途中からニヤニヤとした笑みを浮かべてきたため、それが気に入らなかった鈴は鋭い目つきでシャルルを見返す。

 

「なら何だって言うのよ」

 

「すごいね、わざわざ好きな人のためにそんなことできるって」

 

「だ、だだ、誰が好きな人よ!私は……その……」

 

先程まで怒っていた鈴だが、級にモジモジし始め、顔を赤くして俯く。

楯無はこんな状況下でモジモジしてる鈴にため息を漏らし、キッとした表情でシャルルを見つめ、扇子の先を彼女に向けた。

 

「まあそんなことは置いといて、シャルル……いや、シャルロットデュノア。貴女をーーー」

 

「断らせてもらう!」

 

「「きゃあ!?」」

 

そのときシャルル……いやシャルロットは専用機である『ラファール・リヴァイブ・カスタム』を展開し、網を強制的に破壊、そして壁に向かって突進し、大穴を開けて隣の病室へと転がり込み、そしてまた壁に穴をあけて逃げ出したのだ。

 

「こんな狭いとこでISを使うなんて!」

 

シャルロットの扱い方に驚きを隠せないが、最悪の事態を感じた楯無は『蒼龍』を展開。そしてシャルロットが通った通路を追いかけるかのように進んで行く。その後ろには鈴も『甲龍』を展開して付いてくる。

そしてシャルロットを追いかけるが、彼女は2人に向けてマシンガンをで弾幕を張って近づかせない様にしてくる。

そのまま突き進んでいくと、6つ先の病室の床に3階まで通じる大穴が置いており、そこを下りてまた進む。

そして彼女たちが見たものは……。

 

「くそっ……離、せ……!」

 

「五月蠅いなぁ……。おとなしく捕まってよ」

 

航の首を右手1本で掴んで持ち上げてるシャルロットの姿があった。

 

まさかこの場所、航の避難場所を見つけるとは……。

彼女の首の掴み方は巧妙で、少しでも指を動かせば骨が折れるようになっており、下手な衝撃も与えられない。そのためナノマシンによる奇襲も成功率がとても低く、攻撃できない。だが逆にシャルロットも何かすれば2人を激高させて潰される可能性も高いから動けない。

お互い膠着状態へと陥った。

 

 

 

 

 

航は意識が若干薄れていくなか焦っていた。今日の昼ごろ、楯無から「仕掛けるから部屋の場所変更ね」と言われ、それで3階の病室へと移り変わって、そして病室で『四式機龍』の待機状態である手甲を付けて供えていた。

そして今夜、5階の方で何か大きな音が聞こえたため、「始まったか……」と小さくつぶやく。

それから何分経っただろうか。いきなり轟音が近くで響き、そして身構えるや否や、ISを纏ったシャルロットが自室の自分の向かい壁を打ち破って表れたのだ。

 

「なぁ……!?」

 

飛んできた瓦礫から身を庇うために腕をクロスさせて防いだが、これが悪手だった。この時完全に視界がふさがってしまうため、シャルロットからしたら良い的となり、そしてシャルロットが体を反転させると当時に航の首を右手で掴み、そして持ち上げる。

 

「き、機りゅーーー」

 

「させないよ!」

 

その時量子を纏い始めてた航の胸部に“ナニカ”を張り付ける。すると航の体大きく電流が流れたかのようにのけ反る。それと同時に量子が消え、電流が消えると航は力尽きたかのように四肢をだらんとしている。

 

「な……何をしやがった……!」

 

「ん?剥離剤(リムーバー)を使っただけだけど?」

 

剥離剤(リムーバー)。それがマーサから送られた奥の手ともいえる代物だ。

性能はISを搭乗者から強制分離するものであり、最初はカプセルに入ってるが、それを相手に張り付けると中に入ってる機械によって強力な電流が流れ、搭乗者とISとの繋がり(リンク)を一時的に破壊するのだ。だがこの一時的が強力なものであり、待機状態のなったISを取り上げてしまえばもうそのISの搭乗者は使えなくなるのだ。

だが剥離剤(リムーバー)はまだ世界的にも試作段階でしかできない。いったいどこから調達したのか……。

そして今、シャルロットの手には機龍である手甲が握られている。

 

「くそっ……離、せ……!」

 

「五月蠅いなぁ……。おとなしく捕まってよ」

 

航は首を絞めつける手の力が強まることで意識を手放しそうになる。

 

「航!」

 

その時楯無と鈴が現れた。

 

「あ、来ちゃったんだ。でもこれ以上来てみなよ。彼の首、へし折れるよ?」

 

そして先程の場面へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

「デュノア……!やっと本性を現したと思ったら……、ここまで過激だったとはな……!」

 

「それは向こうの2人に言ってね。君がおとなしく捕まってくれれば、こう手荒なことはしなかったんだから」

 

もう言ってることが支離滅裂だ。航にはそうしか感じられなかった。

今動けるのは自分の手だ。実際彼女は航に強い気概は与えることができない。だからと言って首を掴まれたままのため、いつかは意識が落ちる。

 

「こい、つ……放し、やが、れ……!」

 

「あーそんなに暴れない方がいいよ。首が折れちゃうかもしれないでしょ?」

 

航は両手を使って首を掴んでる手を放そうともがくが、シャルロットは興味なさそうな目で航を見返す。そして少し手に力を入れ、航をさっさと落とそうとするが、航は気力だけで意識を保ってるという状況だ。

 

「あ……が、ぁ……!」

 

苦しいためか、航が呻き声を上げる。

 

 

誰ガ傷ツケル

 

 

その時、剥離剤(リムーバー)で剥がされ、いまはシャルロットの手の平に握られている手甲の装甲の装甲が軋む。

 

 

オォン……

 

 

「な、何の、音……!?」

 

それは獣の呻き声のように聞こえた。だが、それにしても重圧が重すぎる。

この時シャルロットは自分の手を見る。すると、手甲、『四式機龍』の待機状態の手甲から紅い怪しいオーラが出始めてるのだ。

 

「な、なによこれ……!」

 

 

航、傷ツケタ

 

同族ニ傷ツケタ

 

敵ハ滅ボス

 

 

その時だ。シャルルはいきなり機体から警告音(アラート)が鳴ったため、機体を見るとそこには、シールドエネルギーが1割がっつりと奪われてることが表示される。

いったい何があったのか調べたがすぐわかった。機龍だ。

手甲からは紅い紫電が走り、それが航を掴んでいる右手に強いショックを与え、ワタルの首から手を放す。そのまま航は床に落ち、首を押さえつけられていたおかげで咳をするが、よろよろになりながらもその場を離れようとするが、足に力が入らない。

 

「このぉ!」

 

シャルロットは急いで機龍を投げだすかのように手放し、銀色の手甲は床に叩きつけられる。そして跳ねるようにして手甲は転がり、それが航の手元へ動きを止める。

航はそれを素早くつかむと、両手に装着し、そして叫んだ。

 

「来い、機龍!」

 

 

オォン……!

 

 

同時になる呻き声。

その時、オーラの大きさが大きくなり、そして紅蓮の光が爆発した。

 

「「「きゃあ!?」」」

 

楯無、鈴、シャルロットはいきなりの光に手で顔を覆う。それは光のはずなのに、まるで嵐のど真ん中に放り込まれたかのような感覚が襲い掛かる。

その時聞こえたのは床が崩落する音、バリバリと雷が走る音などが聞こえる。

そして光が収まり、3人は恐る恐る顔を覆っていた手を下すと、そこには下半身が床を貫き、頭部が若干天井を崩している。四式機龍がいた。

機龍の大きさは6m。普通ISは大きくても3mほどで、現在機龍以外のISで膝を若干曲げているほどのため、機龍は規格外の大きさゆえにこういう若干間抜けな感じの姿になるのだが……誰も、何も言えなかった。いや、言える空気ではなかったのだ。

 

「わた……る……?」

 

機龍の目が赤い。

楯無は何か嫌な予感が胸中で膨れ上がってくるため、恐る恐る彼に声をかけてみるが、一切反応が返ってこない。

 

 

GOZILLAsystem起動します。最終安全装置解除。ロック部からのシールドエネルギー充填。満タンまで10、9、8……。

 

 

不快な機械ボイスだった。

それと同時に、楯無はとても強い恐怖を感じた。そこに航がいるはずなのにそこにいない。目の前にいる“ソレ”はいったい何なのか……。楯無は手を伸ばす。

 

「わた……」

 

その時、だ。

 

「キィィァァァアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

機龍が吼えた。

シールドで保護されてるのを忘れてしまうほどの大音量に全員が耳を塞ぐ。

そして機龍の右腕が横薙ぎに振るわれ、病室の機材を吹き飛ばしながらシャルロットへと迫る。シャルロットは逃げようとしたが、先程の咆哮で体が竦んでるのか動くことができず、シールドを急いで展開して防御する。

だがそんなのでどうにかできるというわけでもなく、そのまま吹き飛ばされて壁を突き破って外に飛び出す。

 

「くぅっ!」

 

シャルロットは姿勢制御しようとするが、スラスターがさっきの衝撃で一時的ながら使用不可となり、そのまま地面へと叩きつけられる。

何時攻撃を仕掛けられてもおかしくない。シャルロットは急いで立ち上がり、そして病院の大穴の開い壁を見る。

 

「……いな、い!?」

 

「グォォ……」

 

声が聞こえた。いったいどこから……。

そして顔を上にあげる。

奴は屋上にいた。

その尾はいつもみたいな動きでなく、滑らかに生物的に。指は動きを確かめるかのようにゆっくりと握り締めたり放したりを繰り返す。

月の光で装甲の影が黒く染まり、紅い2つの無機質な光がシャルロットを見下す。その威圧から機龍がとても大きく見え、シャルロットは立ち竦んでしまった。

 

「ぅ……ぁ……」

 

シャルロットが見たもの。まるでその姿は……

 

「グォォ…………キィィァァァアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 

月下に吼える黒い龍だった……。




悲しみの龍は吼える。何処にも味方がいないことに。

そして龍ただ動くもの全てを敵と見ることにした。

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