インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも、散々な成人式を迎えた妖刀です。お酒を飲んでも一切酔うことができませんでした。



まあ、最新話をどうぞ。


疑心暗鬼

フランス、デュノア社。そこの社長室で、現社長であるマーサ・デュノアは現在通信を開いており、その相手に激高していた。

 

「何失敗してるのよ!この馬鹿が!」

 

『申し訳ありません……。ですがーー』

 

「言い訳なんて聞きたくないわ!いい、わかってる!?これで失敗すればこの会社は潰れるの!貴女がここの社運を握ってるのよ!?」

 

『はい……それは、承知しております』

 

「なら何で失敗したの?」

 

この時、通信相手であるシャルル・デュノアは小さく奥歯からギリリと音を鳴らす。あんなこと言っても信じてもらえるのだろうか?だが言わなければ、さらに暴言が降り注ぐ。

言って降り注ぐのと言わずに降り注ぐ。どちらがマシなのだろうか。そしてシャルルがとった応えは……。

 

『それは……篠栗航のIS、『四式機龍』の情報をハッキング途中に四式機龍が逆にハッキングを独自に行い、それにより中継に使ったラファール・リヴァイブ・カスタムが内外ともに損傷。そしてーーー』

 

「何してるのよ!この間抜け!」

 

マーサは余りの報告に檄を飛ばし、机に手を強く叩きつける。自分が作り上げたこの娘がここまでダメだったことに強い苛立ちを感じ、頭を強く掻き、そして頭を抱えた。

そして一方的に通信を切り、そして椅子に力なく突っ伏す。

 

「ったく、何してんのよあの小娘は……!」

 

元から気が短い性格からなのか、彼女はただイライラが募りギリギリと歯を鳴らす。

ただでさえカークスを殺したときから彼を慕っていた男性社員が1/3ほどがいきなり反旗を起こし、その際に起きた社内暴動をISを使って強制的に鎮圧。

その後残った男性社員は何も言わずに黙々と仕事をこなしていくが、前より確実に開発班の動きが慢性となっている。

そのせいで最近は10円禿げが出来てきたりと体に影響が出てきており、若い男性社員に襲い掛かってペットにしたりとそれで発散してきた。

だがその矢先にこの報告。だがこれで中止となったらいろいろと不味い。そのためとりあえず冷静になって、次はどうするか考えることにした。

 

『お悩みの様ね、マーサ』

 

その時、いきなり通信が入る。そして相手が映る画面には自分以上に美しいブロントの髪に紅い瞳の美しい女性が映っていた。画面に映ってる彼女は赤のドレスを着てるのか、肩が見えている。

 

「何の用よ、スコール」

 

そう呼ばれてスコール、スコール・ミューゼルはフフッと小さく笑う。その妖艶さは男なら簡単に堕ちていただろうが、マーサからしたらただの挑発行為にしか見えない。

 

「まあそんな怖い顔しないの。私たち、肌を重ねあった仲じゃない」

 

「……いきなり何?」

 

「聞いてたわよ?娘さん、失敗したんですって?」

 

「……何で知ってるのよ」

 

この時マーサの声はドスが入ったかの様に低かったが、スコールは飄々とした感じに話す。

 

「え、だって通信開いたけど貴女が気付かないから丸聞こえだったもの。これで聞くなと言われる方が酷よ」

 

「なっ!?何時の間に繋いでいたのよ!?そしてあんなの娘じゃないの知ってるでしょ」

 

「まあね」

 

「で、要件は?」

 

マーサは先程の叫び声で疲れたのか、少し小さい声で言い、それをスコールは笑みを浮かべて返す。

 

「ねぇ、こっちで作り上げた物を使ってみない?」

 

「作り上げたもの……?」

 

「えぇ。今そっちにデータを送るわ」

 

そしてパソコンにEメールが入る。それを開き、マーサは中身を見ると驚きの表情を浮かべた。

そして驚きの表情は口角が上がっていき、ドンドンと笑い声が上がってくる。

 

「どう?」

 

「ふふふ……有効に使わせてもらうわ」

 

「そう、ありがとうね。じゃあ今から送っておくから。届ける相手はシャルロット……じゃなくてシャルル・デュノア宛でいいの?」

 

「えぇ、お願い。あ、それと使い方説明書も付けておいて」

 

「わかったわ。じゃあ2日後にデュノア社から届く様にしておくから」

 

「わかったわ」

 

「じゃあ幸運を祈るわ」

 

その言葉を最後に通信は切られ、画面は真っ黒となる。

そしてマーサは再びシャルルに通信を繋いだ。

 

「貴女にとあるものを送っておくわ。それを有効活用して彼のデータ、いや、彼の機体ごと捕まえて来なさい。詳しいことは送られたものと一緒に入れてるからそれで確認しておきなさい」

 

『え、ちょ』

 

「いいわね?コレは命令よ?」

 

『……はい、わかりました』

 

そしてマーサは通信を切った。これでどうにかなる。失敗したら最悪あの娘を切り捨てればいい。そう考えながら、彼女はストレス発散にペットがいる部屋へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ、本当に何も考えてないわね、あのお馬鹿さん(マーサ・デュノア)は」

 

スコール・ミューゼルは小さく笑うかのようにして、その後に部下にその“ブツ”を出すように命令を出す。

 

「こんなおいしい話に簡単にかかるとは思わなかったわ。まぁ、いいテストケースにはなるかしらね?」

 

そう言って、彼女は今いる部屋の椅子から立ち上がる。

そして扉のドアノブに手を掛けて。

 

「さて、何人が犠牲になるのかしらね」

 

そう呟くとともに部屋を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

 

病室で航はベッドに腰掛けて暇を持て余してるのか、両手に握力30kg用ハンドクリッパーを握って緩めてを繰り返しており、ただスプリング部がギチッギチッという音を病室に響かせている。

体がほぼ回復したとはいえまだ検査入院に近い形になっており、すでに『1/50スケール 90式メーサー殺獣光線車』もメーサー部も組み終わってすべてを完成させてしまい、ただ暇で暇で仕方ないのだ。

 

「148、149、150……終わり!」

 

そしてハンドクリッパーを手放し、そのままベッドに倒れ込む。その顔はとてもつまらなさそうにため息を漏らしている。なぜこうなってるのかというと……。

 

「前に鈴と本音が来たのに、なんで刀奈が来ないんだよ……」

 

そう、楯無もとい刀奈がいまだ見舞いに来ないのだ。ただでさえ助けてもらった時のお礼を目を覚ました際に言いそびれたおかげで未だ言えておらず、若干モヤモヤした気分でいるのだ。

そのモヤモヤした気分を解消しようといろいろしているのだが、どうしても晴れないため、早く来てもらってお礼を言いたいのだ。ならば電話などで呼ぶなりすればいいのだろうが、いくら電話をかけても彼女は忙しいのか一切出ることなく、メールを送っても返信がないため、おかげで余計にモヤモヤする。

 

「メールぐらいは返信してよ……もう……」

 

ため息とともに言葉を漏らす航。特に苛立ちは感じなくても、何かあったのかと不安を感じてしまい、前に本音っちが見舞いに来た際に「楯無は元気か?」とつい聞いてしまったぐらいだ。その時は「会長は元気だよ~」返されたが、なぜか不安が拭いきれない。

そうやって考えが堂々巡りしてるときに扉がノックされたため、返事してから中に入ってきたのは、個々の病院の看護師であった。

 

「篠栗さーん。お手紙が来てますよー」

 

「手紙?誰からだ?」

 

看護師が持ってきたのはA4ほどの大きさがある茶封筒であり、航はそれを受け取って軽く持ち上げてみる。

 

「差出人は……日本政府……?どういうことだ……?」

 

「では私はこれで」

 

そして看護師は出て行き、病室には手に封筒をもって首をかしげる航だけがいた。

厚さは1センチほど、重さはスマートフォン2つ分ほどの重さだ。そして封筒を振ってみたらたくさんの紙が入ってる時の特有の音がし、相当なプリント類が入ってることがわかる。

 

「耳を当てても爆弾の入ってるような音がしないし……。何か重要な書類、だよな……たぶん」

 

そして恐る恐る裏にされてる封を解いていく。

中に入っていたのは、たくさんの写真だ。

 

「何だこれ?……まあ見ていってみるか」

 

航は何の写真なのか気になり、一枚一枚見ていく。

その写真には楯無が写っていた。

その次の写真にも楯無が写っており、彼女が自分の家の前に立ってる姿が写っている。

 

「ん?何時の間に俺の家に……?」

 

そして次の写真をめくる航。

そこには彼女が家の中に入り込む姿が撮影されており、その次は母と楯無が一緒に縁側を歩いてる姿が写っている。この写真達にはいったい何の意味があるのか?航はただそんなことを気にしながら次をめくる。

そこに写っていたのは、楯無がナイフのようなもので母に馬乗りになって突き刺す写真であった。

 

「えっ……?」

 

航の写真をめくる手が止まる。コレはいったい何なんだ。何で刀奈が母をを殺そうとしてる。どういうことだ。訳が分からない。

頭の中はこの時から思考がぐちゃぐちゃになり始め、半ば考えることができない状態へとなっていく。そして手が震えながらも、航は次の写真を恐る恐るめくる。

そこに写っていたのは父と対峙する楯無の姿。そして何枚にも分けられて2人の戦う姿が撮影されており、そして彼女に刺殺された姿もしっかりと撮影されていた。

だが航はそこまで見ずに、写真が彼の手から零れ落ち、ベッドの上に散乱する。

 

嘘だ……。嘘、だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。嘘だ!

 

この時、彼の目は焦点があっておらず、口元が震え歯からカチカチと音が鳴る。全身からはベッタリと気持ち悪いほどの汗がでており、体が恐怖で震えだしてる。

 

「そ、そうだ……こんなの嘘だ……。刀奈がこんなこと……だから……!」

 

航は否定した。彼女がこんなことするわけないと。刀奈は2人に護衛を付けてくれると。だがその護衛の姿が写った写真は1枚も無く、まるでその言葉は嘘であったかのように感じた。

これが嘘だと思いたい。だから藁にも縋る思いで封筒に手を伸ばす。すると……。

 

「な……てが、み……?」

 

その時封筒から1文の手紙が零れ落ちた。航はをそれ手に取り、震える手で折られた紙を開いていく。

 

「な、なにが書かれ……っ!?」

 

その内容を読んだ航は絶句した。内容は簡潔に言うと「政府から更識に下した命令であり、彼女はそれを実行。さらに彼女は信頼を盾に自分を殺そうとしてる」と。

 

「俺が……殺され……!?」

 

手からは手紙が零れ落ち、航の体は大きく震えあがる。それを押さえようと自分を抱きしめるように手を回すが、それでも震えは止まらない。

 

「俺……死にたく……」

 

その時、コンコンと扉がノックされる音がしたため、航は急いで資料を布団の中へと隠してそして震える声で返事をする。

 

「だ、誰です?」

 

「私。刀奈よ」

 

そして自動ドアが開いた先に立っていたのは更識楯無、もとい更識刀奈。先程の資料に書かれいた、数週間前に自分の両親を殺した……かもしれない人物だ。

航は彼女の目的がいったい何なのか分からず、無意識にながら僅かに身構える。

だが彼女は部屋に入るなり、少しモジモジとして航から目を逸らす。まるで何かについて後ろめいてるようで……。

 

「か、刀奈。いったい何の用……だ?」

 

「その……航……」

 

それで何か言おうにも顔を逸らしたりするため、航は無意識にイライラが募ってしまう。あの資料が来る前であったらこんなの気にしなかったであろう。だが、どうしてもあの資料のことが脳裏にちらついてしまい、航の顔はドンドン眉間に皺が寄って怒りの形相へと変貌していく。

 

「だから何の用だって言ってるんだよ!」

 

「っ!?わ、航!?」

 

「あっ!ご、ごめん!なんかいきなり怒鳴ってしまった……」

 

航はいきなり怒鳴ったことに落ち込んでしまい顔を俯けるが、刀奈が優しく彼を抱きしめる。

あぁ、いつもの刀奈だ……。大丈夫だ、だから疑ったことを謝り、助けてくれたことのお礼を言おう。

航は安心して彼女の腰に手を回して抱きしめようとする。

 

「私もごめん……。航にこんな目にあわせてしまうなんて……。私だってこういう事にはしたくなかったの。でも、ごめんね……」

 

この時航は目を見開き彼女の腰に回そうとした手の動きが石になるかのように止まった。

今、何て言ったのか……?こういうこと……?彼女は俺を……?

 

嘘だ……

 

嘘だ……

 

嘘だ!

 

航は頭の中でそのことを否定するも、あの資料の血に染まった彼女の姿が思い浮かべてしまう。

その時だ。

 

 

ーー彼女が私たちを殺したのよーー

 

 

いきなり声がした。

その声は母親の声にとても似ていた。だがとても冷たく、まるで吹雪の中にいるかのような冷たさ。

 

本当なのか……?

 

ーーえぇ、本当よ。だから彼女を信じちゃダメ。貴方も殺されるわーー

 

 

今彼には彼女の顔が見えないが、彼女はいったいどんな表情をしてるのか。悲しんでるのか、嗤っているのか、ただその恐怖が体中を走り、両手で力一杯彼女を自身から引きはがした。

 

「きゃあ!……航、どうしたの?顔色が悪いわよ?」

 

「な、何でもない!で、用件って何なんだ!」

 

とても荒い言い方。航の顔が真っ青であることに一体どうしたのかと刀奈は不安げな表情を浮かべるが、航からしたらそれが演技にしか見えず、警戒力をじわじわと上げていくだけである。

航の言い方にムスッとしながらも、刀奈は今回話すべき重要な要件を話す。

 

「え、えぇ。それで用件なんだけど、今から一週間後にこの病室から別の病室へと移ってもらうの」

 

「……それだけか?」

 

「……実は、シャルル・デュノアがその日に襲撃を掛けてくる可能性が高いことが予測されたから、この部屋に罠を仕掛けて待ち受けるの。だから航は安全な場所に移動してもらうってわけ」

 

「そう……わかった……」

 

航がとても抑揚のない声で答えるため、刀奈は心配そうに彼に声を掛けた。

 

「航、本当にどうしたの?さっきから様子がおかしいよ?私でよかったら相談に乗るから」

 

彼女の声は心の底からとても心配そうにした声であったが、それは航の逆鱗に触れるだけでしかなかった。

 

「五月蠅い!俺は忙しいんだ!出て行ってくれ!」

 

この怒鳴り声を上げた後、正気に戻った顔に戻り刀奈の顔を見る。彼女の目からは涙が零れ落ちそうになっており、それを悟らせまいと言わんばかりに我慢しており、体もプルプルとわずかに震えているのだ。

 

「う、うん、ごめんね。忙し時にいきなり押しかけて……。わ、私すぐに出て行くから……!」

 

そして刀奈が逃げるかのように病室を出て行った。それで声をかけることができずに見送るしかできなかった航は、フラリとベッドに倒れるかのように腰かけ、そして頭が項垂れてそれを両手で支える。

 

「なんでこうなったんだよ……!俺は……俺は、刀奈を信じられないのかよ……!?誰か、教えてくれ……!」

 

蚊の鳴くような声で、航は悲痛な叫び声をあげた。

 

 

 

 

 

それは暗い空間であった。そこには全身黒ずくめの、顔に仮面をつけた人たちがいた。からだのフォルムからして女性なのだろう。彼女たちはその暗い空間で仮面から見える1つ目をギョロリとのぞかせていた。

 

「社長からの命令だ。龍を得た娘を回収しろとのことよ」

 

「それは何時なんです?」

 

「1週間後の日本時間午前0時にIS学園よ」

 

「「「「了解」」」」

 

そして彼女たちは再び闇へと消えゆくのだった……。




二人の仲は狂いだす。これは誰が悪いのか。そして二人はどうなるのか……。

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