インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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シルバーウィークのため、来週も更新するよ!



では最新話どうぞ!


メガヌロン

巨大メガヌロンが現れたとき、現場にいる自衛官。そして少し離れた場所で現場を封鎖している警官たちの動きが止まった。そこ光景は今まで見たことで一番の異質であり、現実とは全く離れた感覚がしたからだ。

先程まで戦っていた2~3m級のメガヌロンでも現実離れしているのに、それよりずっと大きいとなると……。

その時15m級メガヌロンが吼え、その衝撃で近くにあった建物のガラスが割れて破片が地面に落ちる。

この時いきなりの咆哮に対応が遅れた隊員が耳を押さえて蹲る。

 

「おい!、どうした!?」

 

他の兵士が声を掛けるが、言葉が聞こえてないのか、困惑の表情を浮かべる耳を押さえたままの隊員。

 

「お前、鼓膜が……!?」

 

これではいい的だと判断し、その隊員をほろ付きトラックの荷台に入れた後、近くにいたメガヌロンの口の中に銃弾を叩き込み、1体見事に殺すとこに成功する。

この時再び地響きが起き、「何が起きるんだ!」そう叫び、周りにいる隊員たちも警戒力を一層強くする。

 

『渋谷駅方面に大型メガヌロンが出現!』

 

この時通信からとんでもないことが知らされる。それを聞いた隊員は顔を真っ青にしながらも、気が動転しない様に叫んで気を持たせる。

 

「なっ!?あんなのがもう1体!?どうなってんだよ!渋谷は!」

 

その間にもメガヌロンたちが迫ってきており、その隊員は機銃をもって近づいてくるメガヌロンにありったけの銃弾を浴びせるが、その硬い外皮によって銃弾が弾かれ、メガヌロンが1歩1歩ゆっくりと近づいてくる。

 

「ギギッ、ガァァ!」

 

「このくそッたれがぁぁぁああ!」

 

そしてメガヌロンが隊員にとびかかり、迫りくる銃弾をものともせずにそのまま隊員に覆い被さり、その大きな口でその顔を食い破ろうとするのだが、自分の腹に拳銃の銃口が向けられてるのを知りもしなかった。

 

「これで死ねええ!!」

 

そして引き金を何回も引き、パンッパンッと乾いた音と共に銃弾がメガヌロンの柔らかい腹部の外皮を貫き、そのまま手に持ってた機銃でメガヌロンの複眼を片方破壊する。

 

「ギ、ギギィ!!」

 

だがそれでまだ死なぬメガヌロンは、ただでは死なぬと隊員の顔に前肢の爪を突き立て、そのまま目を抉り、そして痛みで銃を手放した隊員を喰い殺そうと牙を喉元に突き立てるが。

 

「させない!」

 

そこにIS『打鉄』が放ったライフルが残った複眼を破壊し、その痛みに顔を天に向けるメガヌロン。そしてむき出しの下顎に銃弾が数発叩き込まれ、その命が断たれるのであった。

そして負傷した隊員を先程負傷者を入れた幌付きトラックの荷台に乗せる。

 

「皆!この虫の目を狙って!そしたら動きを鈍らせることができるわ!」

 

「すでにやってるよ!」

 

この時打鉄に載ってたパイロットがそう言って自衛隊全ての無線に知らせるが、返ってきたのは既に分かってるという怒声に似た叫びだった。通信相手も余裕がないのだろう、バラララと機銃の連射する音が聞こえそして向こう側から一方的に通信を切られる。

 

「ったく、あと何体いるのよ!」

 

一方的に切られてたことに普通なら何か思うだろうが、今はそんな余裕がまったくない。下手に気を抜けば一瞬で群がられて殺されてしまうという恐怖が彼女に引き金をずっと引かせているのだった。

この時自衛隊の損害は実際3割。普通科の被害は多々である中ISは全機とも無事だが、パイロットにはすでに疲労の顔が見え隠れしており、最初は命中率90%ほどだったその腕も、60~70%まで落ち込んでいる。

その中でも隊員はひたすら銃弾を叩き込み、メガヌロンをできるだけ殺していくのであった。

 

 

 

 

 

その中、里奈1曹は全く経験がないからか、先程からメガヌロン1体も殺せておらず、その見た目の気持ち悪さからか、引き気味にただ銃弾を垂れ流してるだけで、周りに迷惑しかかけていなかった。

そのため「後ろに下がってろ!」「邪魔だ!どけ!」等と言われる始末で、全くの役立たずと化していた。

 

「このっ、くぅ!なんで死なないのよ!」

 

ひたすらアサルトライフルで銃撃してるものの、弾はそのまま外皮に突き刺さったりするものの、致命傷に至らず、メガヌロンが跳びかかってきたりしてそれを飛んで回避を繰り返すが、周りみたいにさっさと殺せないことに焦燥が募っていた。

そもそも彼女の武装はISでの戦いでは使えるが、対メガヌロンではそこまで力を発揮するわけではなく、今の状況みたいにせいぜい外皮に突き刺さる程度なのだ。まあそこを連続で狙って体内に無理やり叩き込むという強引な技もあるが、彼女の腕前ではそんなのは無理だろう。

その間にもアサルトライフルからサブマシンガンに変更してひたすら撃ち続けるが、アサルトライフルよりも威力が低いサブマシンガンでは外皮さえも傷つけることが出来ず、ただ無駄弾を履き続けてるだけだったが、弾が2m級メガヌロンの複眼を砕き、頭の中を銃弾が蹂躙することによって神経経路がちぎれ、メガヌロンの動きが止まる。

 

「へっ……?」

 

この時メガヌロンの動きが止まったことに目を点にする里奈1曹。その後近づいて近接ブレードでツンツンと突くが、反応がないことに嬉しいのか顔がニヤニヤし始める。

 

「よし、仕留めーー」

 

「「「あんたはいい加減に引きこもってろ!邪魔!」」」

 

「えっ……?」

 

この時満場一致ともいえる周りの言葉に固まる里奈1曹。

実際彼女がやっと1体仕留めてる間に周りは6~7体は仕留めており、おまけに彼女が仕留める分のメガヌロンが周りに分配されることで大きな負担を与えているのだ。

それで彼女の余りにも能天気な行動。これに頭に来た近くの隊員たちは彼女を睨みつけるようにして、先程の叫び声をあげ、彼女に面食らわせたのだ。

 

「え、私が邪魔……?嘘ーー」

 

ドォォォォォン!

 

「な、何なの!?」

 

里奈は先程の言葉に茫然としていたが、いきなりの爆発音によって正気をとりもどし、周りを見渡す。するとビルの向こう側で黒煙が上がっており、いったい何があったのか飛び立ってみると、そこには墜落したと思われるヘリコプターの破片が辺り一帯に散乱しており、その中で人体の一部らしきものと、落ちたときの衝撃でバラバラになったと思われるメガヌロンの死骸が散らばっていた。

里奈は炎上する肉の臭いと燃料の臭いに顔をしかめ、この時空を見上げると、そこには15m級メガヌロンが里奈の方をしっかりとその複眼で捉えていたのだ。

 

「ギィィィィイイイイァァァァァァアアア!!!!!!」

 

そして大型メガヌロンは威嚇するかのように吼え、里奈目掛けてその大顎を地へと突き立てる。見た目に反して素早いその動きにどうにか反応し、里奈はその場を急速離脱をし、そのまま顎が地面を抉り、ヘリコプターの残骸を空へと散らす。

 

「何よこの速度!?でたらめじゃない!……まあいいわ。その大きさなら攻撃当て放題だし」

 

そしてバズーカを展開し、そのままメガヌロンに近づいて至近距離で複眼を狙い、引き金を引く。そして放たれた弾は煙を尾に引きながらメガヌロンの複眼へと向かい、そのまま直撃し爆発を起こす。

 

「ギィィィィアアア!」

 

「こんな大きな的だとねぇ!」

 

そして2発、3発と連続で引き金を引き、メガヌロンの複眼の部分で爆発が連続して起き、煙がメガヌロンの顔を覆っていく。

 

「やったわ!」

 

自分の勝利を確信し、銃口を下に下げてニヤリと笑みを浮かべる里奈。だがこの時通信が入り、上空で浮いたままそれに出る。

 

「はい、何でしょうか」

 

『里奈1曹!何処に行ってた!早く帰ってこい!……このっ、来るぁぁぁぁあああ!!死ねぇぇぇええええ!!』

 

その時本部から帰還命令が入ったが何が起きてるのか、ただ断末魔と銃声が聞こえ、そしてメガヌロンの声が聞こえた。

そう、本部のテントはすでに壊れており、ただ仁一尉は機銃で迫りくるメガヌロンを相手しながら必死に通信してるのだ。

 

『くそが!……何!?……分かった。1曹、もう渋谷は撤退する。戦闘ヘリ等の要請が却下された今、すでに戦える戦力が少ない。そのためーー』

 

「ギィァァァアアアア!!!」

 

『っ!?くそっ!1曹、そいつの足止めできるか!?』

 

「ふふっ、任せてください。なぜなら私、さきほ……ど……」

 

『……?おい!どうした!答えろ、1曹!』

 

里奈はその光景に絶望していた。

 

「う……そ……」

 

何故なら、10m級は複眼に亀裂があまり入っておらず、更に3m級メガヌロンが多数湧いてきたのだから。その絶望的な光景に完全に立ちすくんでしまい、もう泣きそうな声が震えてる状態で通信を行う。

 

「鷹月さん!無理です!た、たた助けてください!」

 

『お、おい!ならすぐに帰って来、うぉぉ!?』

 

「えっ……鷹月さん……?」

 

彼の悲鳴と共に通信は途切れ、完全に孤立したと錯覚する里奈。

その時、ビルの陰に隠れていた1体が彼女に跳び付き、油断していたせいで取りつかれ、他に数体が跳び付いてきたせいでバランスを崩し、そして地面に叩きつけられる。

この時武装を展開しようとしたが、手の部分に噛みつかれてるせいで武装展開ができず、そして彼女に群がってる数体がその牙を彼女に突き立てはじめたのだ。

 

「嫌ああああ!!!誰か!誰か助けてぇぇぇええええ!!」

 

彼女は通信で他のISに助けを求めるも、実際向こうも数に押されてるせいで動けず、彼女を助ける暇もない。その間にも彼女に群がったメガヌロンはその牙をシールドエネルギーが切れるまで突き立て続ける。ガンッガンッと鈍い音がしつつもエネルギーは削れていき、そして2桁を切ったところでもう彼女は助からないと悟ったのか、涙を流しながら笑い始める。

 

「ははっ、ははは……。もう助からないの……?いやぁ……だ」

 

そしてエネルギーは尽き、ついにISは防御能力を失い、空腹に飢えた牙が彼女の皮膚に突き刺さり、そして彼女はその激痛によって断末魔を上げながら、バラバラになってメガヌロンの胃の中に収まるのであった。

なお、彼女が纏っていたISが見つかったのはこれから約2週間から3週間後のことである。

 

 

 

 

 

15m級メガヌロンは地面に穴を掘り続けていた。

先程地表に現れた際、周りが何かしてくるかと思ったが、己より小さいのが動きを止めてるおかげで再び穴を掘ることにし、地下鉄を潰し、その下にある洪水が起きたときに使われる地下貯水槽を破壊し、さらにその下。

目指すは地下水脈。それを掘り起こすことによってこのエリアを水没させ、そして自分たちの住みやすい場所とし、安全に脱皮して成虫になれるようにしなければならない。

それが王になるための前座作りであるのだ。

その鋭い嗅覚を駆使し、どんどんと地面を掘り進むこと地下300m。地下は最初と比べて湿気が多くなり、体についてる泥がそれによって流される。

その目的の場所はもうすぐそこ。

一心不乱に15m級メガヌロンは穴を掘り続けた。

 

 

 

 

 

その頃“元”本部があった場所では、今戦える隊員が負傷兵を乗せたトラックをこの戦闘エリアから逃がすためにメガヌロンの足止め作業を行っていた。大体の路地裏へと続く道はトリモチ弾で時間稼ぎとなっており、もう被害の量的に全滅に近い状況となってる自衛隊は、もう隊員の士気もどうにか気力で保ってるという状況だ。

 

「くそっ!まだ高校生になったばかりの娘がいるんだぞ!こんなところで死んでたまるか!今度美味しい料理店に行く約束してるのにさぁ!」

 

メガヌロンとの戦闘で顔に爪による切り傷を負った仁は、すでに機銃の弾切れを起こしており、手榴弾さえも使い果たした今、それでも負傷兵を逃がすため、ISパイロットから予備の近接ブレードをもらい、それを己の筋力を駆使してその刃を振るっていた。

近接ブレードの重さは約20キロ。成人男性でも振るうのが難しい近接ブレードを何とか刃だけメガヌロンに充てることに成功している。

普通ではこれで殺せるはずもなく、すぐに返り討ちに遭うのだろう。だが仁は、刃を当てた瞬間に柄に備え付けられているトリガーを引いた。

 

「ピギィィィ!?」

 

この時メガヌロンの体がビクリと天を仰ぎ、そして体を痙攣させ、その後口から涎をダラダラ流した状態で地面にはいつくばる。

そう、この近接ブレードには引き金を引くと刃に大量の電圧が掛かり、触れた相手の神経の大半を焼き、そして身動きを取れなくなるという装備がなされているのだ。

実際これは水陸両用であるメガヌロンにとても有効な手であり、常に体が湿ってるメガヌロンだとよく体内を電気が巡るのだ。

そして近接ブレードの重さで腕が悲鳴を上げ、ブレードの切っ先が地に付き、肩で息をしながら次のメガヌロンを切ろうとするが、IS達がそれを自分の近接ブレードで焼き殺し、そして仁含む男性隊員系5名を護るかのような陣形を取り始める。

その時、上から独特のローター音が聞こえ、上を振り向くとそこには自衛隊の多用途ヘリがこちらに向けて降りてきていたのだ。

一体どうやってきたのだろうか。誰が連絡したのだろうか、それが気になって仕方ない仁。

 

「私が連絡しました。」

 

そう言うは凛。実際装甲車も数台潰され、トラックもないとなると

実際戦闘ヘリを要請した時、それに出たのが女性自衛官だったため拒否されたが、女性が要請から上手く行ったのだろう。その後凛達ISパイロットに抱えられてヘリの中に入れられ、そして勢いよく高度を上げ始める。

そして最後まで残った隊員と見るはあちこちのビルにメガヌロンがうようよ動き回ってる渋谷の光景だ。

作戦失敗。

これで今後の自衛隊がどうなるのか実際目に見えてるが、今となってはどうすることもできない。

ただその悔しさが心の中で暴れるが……。

 

「ん?……な、何よあれ!?」

 

この時ヘリを護衛するように配置されてたISのパイロットがとある異変に気付いた。10m級メガヌロンと8m級メガヌロンが消えており、そして再び地響きが起きてるのか、その振動で建物のガラスが落ち、いくつか建物が崩れ落ちたのだ。

そして

 

「「「「きゃああ!!??」」」」

 

「「「「うおおお!!??」」」」

 

アスファルトを吹き飛ばし、大きな水柱が間欠泉の様に勢いよく拭き出したのだ。その高さは約20mほどで、しかもそれが2つ、3つとその数がドンドン増えていき、ありえない速度で渋谷を水没さえていくのだ。

 

「なんだよこれ……」

 

仁はあまりの光景に言葉を失う。渋谷はもう10か所に上る水柱によって相当な速さで沈んでいく。その光景はまるで津波にのまれゆく街のようで、残っていた車などが大量の水によって流されていく。

 

「ギィィィィアアアア!!!」

 

「ギギァァァアアアア!!」

 

ただ沈みゆく渋谷で夕日が、ビルの上に登って吼える巨大メガヌロン2体を照らし続けるのであった。まるでその勝利を喜ぶかのように……。




ついに渋谷戦は自衛隊の敗北で終わってしまった。そして沈む渋谷。これからどうなってしまうのか!





……次回予告なんて慣れないことするんじゃないな。




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