インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
では本編どうぞ!
「ったく、権利団体の女性陣はどこまで我らを邪魔するんだか……。おかげで隊の配備とか大きな遅れが出てしまったではないか……」
自室で瞬は煙草を吸いながら小さくため息を漏らす。思い出すは最初以降の会議で女性権利団体所属の女性自衛官や政治家がいろいろ野次を飛ばし、時には裏工作をされて隊員が集まらなくなるなどのことが起き、ついにはあれから1週間は経ってしまったのだ。
それが原因で何人の犠牲者が出たのか分からない。報道局の方にこのことをニュースで取り上げるように言っても、全くニュースには出ず、新聞にも掲載されない。
今の人間はここまで怪獣の恐怖を知らないのか……。そのことを悲しく思うが、あの女性陣にとってはどうでもいいことなのだろう。
「まあそこそこの隊員を用意できたし、何とかISも3機用意できた。開発陣がああいう武器を作ってくれたから少しはどうにかなるだろう……。本音はあと1機はISが用意できたからよかったが、パイロットが……」
そう使える4機分の内3機分のIS搭乗者は用意できたが、あと1人見つかってないのだ。
この時瞬の頭の中にIS学園が思いつくが、流石にあそこは駄目だと首を横に振る。生徒を現場に連れていくなど言語道断であり、家城燈は戦闘より諜報向けでそこまで戦えない。他の教員で怪獣の脅威を分かってくれる織斑千冬は、恐怖を知ってる分協力してくれるだろうが、そもそも自衛隊側が学園の力を借りないって約束してるから、借りるというのはしたくない。
だがどうするか……。瞬は再びため息を漏らす。
「一応立候補はいたが……こやつらは使いたくないんだよな……」
瞬はパソコンで隊員の明記の欄をスライドさせて下ろしていくと、その中でいくつか赤の枠で囲まれている隊員がいる。
これらは権利団体の派閥に入ってる隊員で、いろいろと男性隊員と問題を起こしており、それでブラックリストとしてこうやった赤枠で囲まれているのだ。その数はざっと30人。
なぜこんなにいるのにクビとかにならないのかというと、女性権利団体が裏でいろいろしてるせいでこちらからはもう手出しができない状態へとなっており、流石の瞬も諦めてしまってるのだ。
そして3度目のため息を漏らした後、瞬は窓の方へと歩み寄って、すでに暗くなった空を見上げる。
「さて、作戦まであと4日……。予定より結構遅れてしまったが、これでやっと住民の避難と蟲の駆除が行える。これで邪魔が何もなければいいが……」
そして時は経ち4日後。
午前7時半、八王子駐屯所から自衛隊の幌付きトラック数台に通信指揮車、さらには装甲車数台が渋谷に向けて動き出す。
ここ最近見なくなった光景に周りの住民は驚きを隠せず、家のかなにいた人は外に出てくるわ、マンションから見下ろすわと少し騒ぎになっていた。
そして『自衛隊を解体しろ』と書かれたのぼりを掲げる女性陣がたくさん現れるが、警官等に止められ車両の邪魔にならない様にする。
「ったく。これから何しに行くのかわかってるんだろうか?」
「わかってないでしょうね。一応この前ニュースで流れてたけど視てた人がどれぐらいいたか……」
先頭車両の指揮車に乗ってる
スイッチを入れていたのだろう、通信機越しに他の車両からのため息が聞こえたが、2人はそれを聞かなかったことにする。
そして空気が悪くなったため、話題を変えることにする。
「そういえば仁さんの娘さんってIS学園にいるんでしたっけ?」
「ああ、そうだが」
「お子さん育てるのって大変ですよね?仁さん、前に降格させられて……」
「ああ。まあ子供1人育てるのには問題なかったがな」
「でもIS学園って確か、こっちの人手が足らないときに……」
「だから俺らが頑張って、IS学園から徴兵とかしないようにしないとな」
「ですね」
お互いに軽く笑いあい、自衛隊の車両は渋谷へと向かうのであった。
午前8時20分。車両は渋谷へと着き、現場である渋谷一帯を封鎖してもらってる警察官に封鎖用テープを外して車両を通してもらうようにする。
なぜ渋谷一帯を封鎖してるのかというと、今回の作戦にISを使うために民間人のけがを未然に防ぐため、住民には全員避難してもらい、自衛隊が問題なく動けるようにしてるのだ。
そして現場に着いた後、隊員はそこにテントを張って指揮所などをテキパキと作り上げていく。
その後自身の使う武器の簡易チェック。ISの方も自身の使う武器を展開して問題ないかをチェックしていくが……。
「なぜ貴様がそこにいる!今回の編隊に組み込まれてないはずだ!」
「はあ!?こっちは組み込まれてると上の方から聞いてきたんです!」
何かあったのだろうか。全員は目を動かして声のした方を向くと、そこには仁二尉と1人ISパイロットがもめており、女性隊員のIS乗りたちはその女の顔を見るなり少し嫌そうな顔をして、再び作業を再開する。
何故嫌そうな顔をしたかと言うと、前に瞬が見ていたブラックリスト隊員の1人である
実際彼女のIS技術は十分高く、日本代表候補生でいたのだが、女性権利団体の方から自衛隊に着けと命令された後に現在の1曹の地位にいる。なおこの地位につけたのは裏でいろいろやったからだそうだ。
「そもそもなんで私を入れてくれなかったんですか!立候補したんですよ!?」
「今まで何回問題を起こしたと思っている!?というよりどうやってここに来た!?」
その後2人はずっと言い合いとなっていたが、他の隊員に宥められてとりあえず今は準備の方を優先することに。だがその間にも奥に引っ込められた里奈に対して警戒を緩めず、先程までピリピリしてた雰囲気にさらに別のピリピリとした雰囲気が充満するのであった。
そして現在午前8時30分。路地裏へと続く道数か所に隊員歩兵4名IS持ち1名ずつと歩兵5名ずつが立っており、誰も経ってないとこの入口には電線が4m上まで張られており、完全にそこから出入りできない様にされている。
男性隊員こと歩兵達の武装は、89式5.56mm機銃、高粘度のトリモチ弾と催涙弾を撃ち分け可能なグレネードランチャー。そして対メガヌロン用に開発された特殊武器等だ。なおグレネードランチャーは、アメリカから今回の件で輸入したものである
そして女性隊員のISは全機ともに緑系の迷彩塗装を施したラファールリヴァイブで、
「全員センサーに問題はないな?」
『はい』
センサーとは対メガヌロン用に作られたハイパーセンサーモドキのことで、前に楯無がISのハイパーセンサーで見れないと言ってたため、どういうことか解析をしていくと赤外線を完全に遮断し、体温もほとんど出ないために、どう対処するかにおいて開発されたものである。まあハイパーセンサーの強化等が主だが、開発部が4日は徹夜した物のため、性能は期待できるだろう。
そして午前9時。ついに作戦開始時間となり、各所から隊員が突入を開始する。道が狭いため、主に男性隊員が前で、後ろはISがいるのがこの時の基本的な編成だ。
途中開始から約20分。東から入った班はメガヌロンが現れないことにおかしいと警戒しながら、歩を歩めていく。
「ったく、ISでも倒せなかった相手を……。まあやるしかないか」
「そうだな。たとえ周りから何言われようと、市民を護るのが自衛隊の役目だからな」
「私語を慎め。秋椿、奴らは見えるか?」
「まだ姿は確認できていません。ただセンサーには反応はなく、今のところは大丈夫かと」
まだあどけなさの残る黒髪の女性隊員
それは不味いと、この中で一番身長も階級の高い
「そう焦るな。奴らはまだ現れん」
「で、ですが……!」
「そのセンサーがそう伝えてるんだろ?少しは自分の使ってるISを信じてみろ」
「は……、はい!」
割と簡単に通じたな、と誰にも気付かれない程度に苦笑いを浮かべる現は、実際はそうではないと知っているためわずかに冷や汗を流す。
「前の角から10m先に反応!こちらに向かってきています!」
「全員打ち方用意!」
そして全員が武器を構え、
「た、助けてくれぇ!」
角から現れたのは、ボロボロのスーツを着た30代の男性サラリーマンで、顔や手から血を流しながら自衛隊の方へとよろよろで寄っていく。
「大丈夫ですか!?」
「た、助けてくれぇ……。もうこんなとこ嫌だぁ……」
「大丈夫です。私たちが助けに着ましたから」
「そ、そうか……よかった……」
そして極度の緊張が解けたのか、サラリーマンはそのまま気を失ってしまい、膝を着いてうつ伏せに倒れそうになったところを隊員の抱えられて、そのまま背負われる形となる。
「よし、このまま一回本部に戻るぞ。人を抱えたままだと何か有事が起きた際に不利になる」
「「「はっ!」」」
だがこの時もう一つ反応が入り、それを詮索したら一直線にこちらに向かってきてることを知る。しかも壁を高速で突き抜けるかのような反応。これは……。
「木島さん!地下からこちらに迫ってきてます!」
「なっ!?……健二!マンホールから離れろ!」
「えっ、うおぉ!?」
その時
「健二くん!」
焦った凛は急いで彼の元に寄るがこの時彼は完全に気を失っており、ヘルメットをかぶってなかったら恐らく即死だっただろう。
そして原因であるマンホールのとこを向くが、それを見たとき凛の顔は真っ青に染まる。
「ギキィィ!」
そこにいたのはメガヌロンの2m級で、砕いたマンホールの穴から上半身を出した状態で姿を現しているのだ。そして穴の外に足を掛けて下半身も露わにしていく。
先程まで食べていたのだろう。この時メガヌロンの口からは何か人の手らしきものが見え、それを見てしまった隊員たちは全員顔をしかめる。
そしてこちらをジロリと見た後、腹部先端から水を噴射して一気にこちら側へと襲い掛かってきた。
「させない!」
この時凛が近接ブレードを展開。そして突っ込んできたメガヌロンをどうにか受け止めるが、突進の威力が高いせいか後ろに約3mほど押し下げられる。
「秋椿!」
「行ってください!私が足止めしておきますから!」
「くっ……!わかった。だが必ず帰って来い!いいな!」
「はい!」
その返事の後、怪我人であるサラリーマンと気絶した健二を連れた隊員たちが逃げていくのをハイパーセンサー越しに確認して、そして全力をこのブレードに押し当て、メガヌロンを一歩一歩ながら後ろへと押し戻す。
地面に爪を立てて押し戻そうとするメガヌロンだが、ガリガリと空しく後ろに押し戻される音が路地裏に響き渡る。
元々剣術使いの家に生まれた凛にとってはこのような状況何回か経験してるため、このような芸当ができ、そして。
「はぁぁ!」
凛は左手にグレネードランチャーを展開。そして地面に向けて弾を放ち、地面にあたった弾はその中から大量の煙を拭き出す。それはそこの路地裏一帯を覆い尽くすほどであり、それを放った後凛は一気に後ろへと後退して煙の中へと消える。
「ギィィ!!!???」
この時メガヌロンはあまりの目の痛み、呼吸器官からくる激痛等に悶えていた。その痛みに逃げようと下水道に逃げようとしても前が見えず、ただよろよろと壁にぶつかるばかり。突進しようとしても脚に力が入らない。
「ガッ……ガッ……キィィ……」
そしてメガヌロンは完全に気を失うのであった。
その時煙の中から人影が見え、そしてメガヌロンの首関節に大型の刃物、近接ブレードが突き刺さり、そしてグチィという音と共に首が斬り落とされる。
そうした張本人、秋椿凛は急いで催涙弾が作り出す煙から抜け出す。
「ふぅ、どうにかなったわ。さて急がないと……!」
そして先に行かせた隊員の元へと急いで飛んでいく凛。道のりは先程と同じ道。そうでもしないとここはすぐに迷うのだ。右左と角を最小限の動きで曲がり、
この時割と近くのところから発砲音が聞こえた。音的に89式5.56mm機銃、恐らくこの近くにいる隊員のだろう。
だがこの近くの隊員で自分のとこかもしれないと判断した凛は、急いで狭い路地裏を駆け抜ける。そして発砲音がしたと思われる場所にきて凛は見た。
「ふぅ、どうにかなった……。お、そっちは仕留めたか?」
「ギイィィィイイ!!!」
凛が見たもの。それは、壁にトリモチ弾で完全に動きが絡め取られて動けなくなってるメガヌロンと、
首を必死に動かして抜け出そうとするも全く動けない様はまさに滑稽であり、凛は火炎放射器を展開してメガヌロンを焼却する。
「ギィィィィィ!!」
断末魔を上げるメガヌロン。首を動かしてひたすらもがくが、結局は先程と変わらず、そのまま暴れる力を失って焼死するのであった
そして再び本部目掛けて移動を開始する班であったが、この時センサーに異常な反応が示される。それを知った凛は顔を真っ青にさせる。
「何よ……これ……!」
この時センサーに30……いや、40を超える無数の反応が示される。
「どうした!?」
「メガヌロンの数が40……いえ、50ーー」
「ちぃ!急ぐぞ!」
そして全員が急いで路地裏を抜け出し、そして見たのはビル群にメガヌロンがうじゃうじゃと蠢く光景だった。
下には普通科隊員が機銃を撃ち、上空ではISが火炎放射器などを駆使してメガヌロンの大群に攻撃を仕掛けていた。
「何だよこれは!」
その光景はまさに地獄絵図。犠牲者がどれほど出てるか分からないが、あまりの窮地に足がすくみそうになる。
だが逃げるわけにもいかず、全員は武器を取って構えるが……。
いきなり地響きが起き、全員がバランスを崩しそうになる。そして収まったと思ったら、再び地響きが起きた。
「コレは地震じゃないぞ!」
その時目の前のアスファルトに大きな罅が入る。
この時1人の隊員は気付いた。地面から何かが掘って移動してると。それも途轍もない大きさで。
嘘だ、嘘だと言ってくれ……。そう願うも、無情にも真実が目の前へと表す。
「ギィィアァァァォォォォ!!」
目の前に広がる道路を砕き、地中から現れたのは、10mをも軽く超す15m級という巨大なメガヌロンだった……。
突如アスファルトを砕き現れた巨大メガヌロン。自衛隊はこれをどう対処するのか!?
お楽しみに!
では誤字羅出現報告(なければいが)と感想をどしどし待ってます!